映画『アンフェア the movie』の概要:テレビシリーズとスペシャルドラマの続編。籠城をも可能とする警察病院に、立てこもり事件が発生。爆破事件に巻き込まれた雪平の娘も入院中であったことから、娘の救出をするため、病院内部へ単独で潜入する。シリーズの謎があらかた、この作品で明らかになる。
映画『アンフェア the movie』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:アクション、サスペンス
監督:小林義則
キャスト:篠原涼子、椎名桔平、成宮寛貴、阿部サダヲ etc
映画『アンフェア the movie』の登場人物(キャスト)
- 雪平夏見(篠原涼子)
- 警視庁公安部、公安総務課主任。警部補で男勝りの女傑。大酒飲みだが、無駄に美人。1人娘がいるが、離婚後は離れて暮らしている。娘に対し、母親らしいことをしたいと思っている。
- 斉木陣(江口洋介)
- 警視庁公安部、公安総務課管理官で警視。エリート管理官で雪平の上司。非常に優秀。言葉遣いは丁寧だが、やることはえげつない。実は、終わり良ければ総て良しというタイプ。
- 後藤国明(椎名桔平)
- 元SATの指揮官でテロリストのリーダー。過去、警察の内部告発をして逮捕された経緯から、上層部を恨んでいる。
- 戸田(成宮寛貴)
- 後藤の部下で立てこもりの実行犯。後藤を信奉しており、命令には逆らえない。黒色潰疽菌入手の際、防護服を破ってしまい細菌に感染してしまう。実は、心優しい好青年。
- 三上薫(加藤雅也)
- 警視庁刑事部鑑識課の検視官で、雪平の相棒的存在。優秀だが、お調子者の面がある。
映画『アンフェア the movie』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『アンフェア the movie』のあらすじ【起】
警視庁捜査一課から公安部へ異動した警部補の雪平夏見は、優秀な刑事である。数々の事件を解決し犯人を検挙した人数は多く、彼女を恨む者も多い。
そんな中、1人娘が雪平を狙った爆破事件に巻き込まれ、負傷してしまう。仕事にかまけてばかりで家庭を顧みなかった彼女だが、娘のことは命を懸けて守りたいと願っていた。
雪平の娘は豊洲警察病院へ搬送される。彼女は若い看護師に娘を頼み、病院から出た。
それと擦れ違いに、いかにもチンピラ風の若者が病院へやって来る。病院のエントランスでは、すでに何人かの仲間が入り込んでおり、彼らはおもむろに変装を始め、銃を手に病院を占拠。
爆破事件で亡くなった被害者の元へ、上司の斉木と謝罪に行っていた雪平。その帰りに豊洲警察病院で、立てこもり事件が発生したと知る。彼女は娘の身を案じ、急いで病院へ向かった。
豊洲警察病院は、対テロ用に設計されたハイテク型設備の病院だ。地下1階にある中央制御室で全てがコントロールされており、警視庁とも専用ネットワークで繋がっている。しかも、地下1階を含む地下収容設備は、有事の際にシェルターになる機能も備わっていた。つまり、この豊洲警察病院は、籠城可能な要塞とも言える建物なのである。
警視庁捜査一課の対策本部へやって来た雪平は、管理官に自分も参加させてくれるよう頼むが、公安には関係ないと参加させてもらえなかった。
問答していると、病院から人質が解放。雪平はその中に娘の姿がないかを必死に探すも、見当たらない。恐らくは、まだ病院内に残っているのだ。犯人からの要求もなく狙いも分からない。しかし、警視庁上層部では、おおよその目的が掴めているようだった。
恐らく、犯人の目的は検査入院している警察庁長官の確保だ。人質がまだ残っているにも関わらず、上層部はSATの突入を決定。だが、突入したSATは返り討ちに遭い、連絡が途絶える。犯人はSATの突入を予想していた。
映画『アンフェア the movie』のあらすじ【承】
雪平は娘のために、今まで母親らしいことを1つもしたことがない。故に、どうしても娘を助けたかった。彼女は単独で地下通路から病院への侵入を図る。
その頃、立てこもり事件を首謀した男、後藤が病院へ到着。彼らはバイオテロ計画のために、病院の細菌センターで黒色潰疽菌を入手。しかし、部下の戸田が細菌を取り落としてしまう。慌てた際に防護服が破れ、細菌に感染してしまう戸田。彼は後藤に抗血清を希望するも、必ず迎えに来るという言葉を信じ、閉鎖された施設に1人残った。だが、そこで幼い女の子が施設内にいるのを発見。女の子は雪平の娘だった。
対策本部に後藤から連絡が入る。彼は公安部の斉木を交渉相手に指名。ただちに斉木が呼ばれ交渉が開始される。奴らの目的は本来、存在するはずのない警察の裏金80億円。長官を人質とした後藤は、これを2時間で用意しろと要求した。
上層部は裏金の存在を頑なに否定。斉木と上層部とで意見が対立するも、上層部の命令通りに第2、SAT隊が病院へ突入した。
地下からの突入を目撃した雪平。SAT隊が殲滅される様子を影から見ていた。殲滅したのは第1、SAT隊である。返り討ちに遭ったのは、嘘だったのだ。しかし、雪平と三上は物音を立ててしまい、SAT隊に発見されてしまう。三上が残って足止めをしてくれることになった。
雪平はSAT隊の追尾を掻い潜り、娘の病室へ向かう。だが、娘の姿はない。彼女は対策本部へ連絡を入れた。自分が目撃したことを全て報告し、警察内部に内通者がいることを示唆。そして、内通者を誘き出すべく、嘘の情報を流した。
娘の病室に罠を仕掛けた雪平。彼女が流した情報通り、SAT隊が病室へ突入した。これで、内通者の存在が確実となる。問題は誰が内通者なのかだ。そこで、三上が無線で連絡をくれる。彼はどうやら無事らしい。1階のロビーで待ち合わせをすることにしたが、ロビーで元解析係の同僚を目撃してしまう。
後藤はかつて、SAT始まって以来の名指揮官として、部下からの信頼も厚い男だった。それがなぜ、復讐することにしたのか。
後藤から再び連絡が入り、拘束された長官の姿が画面に映し出された。80億もの大金は入金できないと断言する上層部。後藤は長官を容赦なく射殺。すると上層部は、裏金の存在を肯定する発言をしてしまう。後藤は入金しなければ、黒色潰疽菌を全国にばら撒くと脅した。
映画『アンフェア the movie』のあらすじ【転】
黒色潰疽菌とは、感染すると病変部が炭のように黒色になる病原菌で、進行の速さが大きな特徴である。感染経路は主に飛沫、接触で人から人へと感染していく。抗血清は病院に1人分、政府要人用に少量しか日本に存在していないと言う。保管用の全てが日本に散布された場合、80%の国民が1週間以内に死亡する計算となる。それだけ強い細菌だった。
雪平は娘にしか分からない合図を送る。娘は過去、トラウマから失語症だった。その時の合図を利用したのだ。建物のパイプ管を数回叩くと、気付いた娘も同じ回数を叩き返す。雪平は娘の居場所を探知した。辿り着いた先は感染病棟。施設は封鎖されており、入室はできない。なぜなら、黒色潰疽菌が散布されてしまったからだ。
ようやく娘と会えた雪平。娘は健気にも母親を待っていたが、彼女は恐らく細菌に感染している。戸田はすでに、病変部が黒色になっており拡大している。抗血清を打たなければ、2人とも数時間で確実に死に至るだろう。
雪平は上層部からテロリストに対抗しろと言われるも、内通者がいる今、その言葉に従うことはできないと命令を拒否した。
健気にも母親を慕う娘に心を打たれる雪平。娘は警察を辞めないで欲しいと言う。雪平は大事な娘を必ず助けると改めて決心し、斉木に潰疽菌の在り処を聞いた。細菌は恐らく、地下にあるだろうと目星をつける。
しかし、彼女はSAT隊に見つかり、暴行されてしまう。そこに、斉木が現れ雪平を助けた。
地下施設のダクトと地下鉄が通じている場所に到着。斉木はそこで、細菌散布装置を発見する。慎重に解体しなければ、たちまち散布が始まってしまう仕掛けだった。斉木が解体を開始。
首謀者の後藤は、無実の罪で刑務所に8年間入っていたと言う。彼は上層部の不正を告発しようとして、罪を被せられたのだ。入金しなければ不正を明らかにすると言い、上層部を脅し続ける後藤。
映画『アンフェア the movie』の結末・ラスト(ネタバレ)
二重の仕掛けになっていた装置の解体に成功。散布3秒前だった。ただちに対策本部が行動を開始。雪平と斉木も細菌を持って逃走を開始した。途中、雪平は左腕に被弾してしまう。
左腕の治療で処置室へ来た2人。治療が終わった途端に後藤がやって来る。双方、銃を構え一触即発状態となる。抗血清と細菌を交換。後藤から感染病棟の暗証番号を聞くと雪平は娘を助けに、斉木は後藤を追った。
その頃、中央制御室では、かつて解析係だった雪平の同僚がハッキングで裏金を奪い、逃走を開始。後藤を裏切っていた。
彼女は駐車場に現れた斉木に、機密文書の入ったUSBを渡すも、彼に射殺されてしまう。そこへ後藤が到着。斉木と後藤は、警視庁内部の機密文書を入手することで利害が一致し、裏で手を組んでいた。しかし、ここに来て斉木がUSBの手渡しに渋る。斉木は自らの正義を貫くために、後藤を撃った。その一部始終を目撃してしまった雪平。内通者は斉木だったのだ。
テロリストに加担したSAT隊が、捜査一課の管理官率いる警官隊と銃撃戦を繰り広げる。だが、SAT隊は少数で警官隊は多数。争っても勝敗は見えている。SAT隊は大人しく逮捕されるも、撃たれた後藤が細菌を持って立ち上がる。最期の足掻きだったが、警官隊の銃撃に晒され命を落とした。
抗血清を娘に打った雪平。これで娘の命が助かる。彼女は大切な存在を強く抱きしめ、安堵するのだった。
細菌に感染していた雪平だったが、政府要人用の抗血清が間に合い命拾いする。彼女は斉木の行動を予測し、彼と話をすることにした。
警察内部の不正告発は元々、刑事だった雪平の父親が始めたことだった。それを同僚が引き継ぎ、斉木が実行したのだと言う。正義の警察が不正を行っているなど本末転倒である。だが、相手は組織。1個人では敵うはずもない。斉木は機密文書を手に、上層部と交渉するつもりだった。秘密を知ってしまった雪平が死ねば、計画は完璧になる。互いに銃口を向けるも、斉木が何者かに狙撃され斃れてしまう。雪平は機密文書の入ったUSBを斉木から託されるのだった。
映画『アンフェア the movie』の感想・評価・レビュー
次々と全貌が明らかになっていき、まさかと思う人物が裏で手を組んでいたり、また裏切られていたりと、目が離せない。娘を必ず助け出すという、母親としての想いが共感を呼び、機密文章が入ったUSBを託される、刑事としての最後の繋ぎだったのだろうと、信頼性も感じる。テレビドラマに引き続き、豪華なキャストと、謎が明らかになる面白いストーリーは、何度見ても飽きない。それと同時に、次の展開も気になる作品でもある。(女性 20代)
大人気テレビシリーズを映画化してコケた、そんな印象を受けてしまった。リアリティーの無さや、演出の雑さが目立ってしまったように感じる。映画館の大きなスクリーンでやるほどの価値は見出せなかった。
細かい部分で言うと、銃撃シーンなどの緊迫感のなさが気になった。演出次第でなんとかなりそうな部分は改善して欲しかった。
ストーリーも単調であり、お金をかけて映画化する必要はなかったのではないかと思う。スペシャルドラマならば納得できる。(男性 20代)
人気テレビドラマシリーズの映画化第1弾。篠原涼子演じる刑事・雪平夏見が、タイトルどおりのフェアでない理不尽な事件に迫るストーリーだ。
アンフェアな物事の裏には、それを図った人物が必ず存在している。さらに、その人物の周りにも協力者がいるものだ。
裏切りに次ぐ裏切りで、アンフェアは闇に葬り去られていく。そこに割って入る雪平の勇気、そしてそうせざるを得ないバックボーン。理不尽に立ち向かう主人公に思わず見惚れてしまうだろう。(男性 40代)
警察の階級ってよくわかりませんよね。公安部と言われても何をするところなのか…。ちなみに篠原涼子演じる雪平の「警部補」という階級は古畑任三郎と同じだとか。こち亀の両津勘吉は「巡査長」その上が両津の上司、大原部長の「巡査部長」そしてその上が「警部補」だそう。1番上の「警視庁長官」まではあと7階級あります。
そんな警部補でも雪平は階級や部署なんて気にせずに、かなり破天荒ですね。ドラマシリーズも見ていなかったのでよくわかりませんが、こういう警察ものを映画で見るなら『踊る大捜査線』や『相棒』で十分かと…。(女性 30代)
冒頭の車爆破シーンから既に派手です。そして、テロリストグループによる病院のジャック、東京に炭疽菌をばら撒く等、ハリウッド映画さながらの展開が挑戦的で見事だと思いました。サスペンスの要素は意外と少なく、ガンアクションや肉弾戦が迫力満点です。雪平と娘が描く親子愛には、ほろりと落涙しました。ドラマから続くストーリーですが、ドラマを見ていなくても十分理解可能です。さらに、炭疽菌の恐ろしさについて知ることができ大満足です。(女性 30代)
人気テレビドラマシリーズに続く映画作品。テレビシリーズの前知識はあった方が良いが、ぎりぎりこれだけ観ても楽しめるかもしれない。テレビシリーズの方が時間を掛けられている分筋の緻密さというか「ああそうだったのか」感はある。それに比べると映画は若干薄味な気がしないでもない。それなりのテロ組織なはずなのにあまりにも篠原涼子が自由に動き回れ過ぎている点も少し気になった。しかし最後の最後でさらなる続編に繋がる展開となるのは良かった。(男性 40代)
みんなの感想・レビュー
①人気テレビシリーズの映画化
今作は人気テレビシリーズ「アンフェア」の劇場版である。警察内部の不正を暴こうとあがく公安の雪平を主人公とした、疑心暗鬼の世界を描いたドラマである。今回は2時間の映画版という事で、一つの事件を中心としたスケールの大きい話が展開していく。
今作のメインプロットは、警察病院の占拠事件である。この病院には実は警察庁長官が極秘入院をしていて、彼を人質にするためにテロリストたちが占拠したのだ。彼らの要求とは「警察内部の裏金の暴露」である。テロリストである後藤は、警察に裏切られているという過去を持ち、彼らは彼らなりの正義で動いているというのが今作の面白いところだろう。
後藤と雪平は、同じ目的のために動いているものの、その手段がまったく違うというのがこのシリーズのテーマともなっている。「アンフェアにはアンフェアを」が信条の雪平だが、絶対にやってはいけないラインというのが存在するところが、雪平を雪平たらしめている要因だろう。
②全体的に残念な映画版
とはいえ、全体的には残念な部分が多いのは否定できない。テロリスト占拠事件から、さまざまな裏の思惑が露呈していくという展開は面白いのだが、細部のディテールが非常にいい加減なのだ。まず設定としては、この警察病院は難攻不落の城のはずである。SATですら攻略の出来ない難攻不落の城だからこそ、雪平の単独潜入が重要になってくるのだ。ここらへんはハリウッド映画「ダイ・ハード」などでも同じである。
しかし、今作では雪平だけでなく、斉木や三上なども簡単に病院内部に潜入出来てしまう。こんな簡単に攻略出きてしまうのであれば、サスペンスなどは生まれようもない。加えて、裏切者が二転三転して登場するため、もはや元の大筋が曖昧になっている点ももったいない。疑心暗鬼にしたいという狙いはわかるものの、もう少しプロットを簡略化した方が良かったのではないだろうか。
しかし全体的には、テレビシリーズの路線を引き継ぎ、映画版として大幅にスケールアップさせた事は評価に値するだろう。だが警察内部の黒幕は、次回へと持ち越しになってしまうのは消化不良である。
難攻不落の警察病院の占拠事件。細菌兵器の使用。人質である警察庁長官。そして正義を貫こうとするテロリスト。ここで描かれている図式は「ダイ・ハード」でおなじみのものであり、また「ザ・ロック」でもあると言える。これらの映画の共通点は、主人公が唯一の頼みの綱であるという事だ。今作の場合だと雪平がそれにあたる。SATが全滅してしまった今、なんとか内部に潜入する事に成功した雪平の行動に、すべてがかかっているのだ。しかしここまでお膳立てが整っていながらも、後半がグダグダになってしまったのは脚本上の致命的なミスであろう。やはりこういったスケールの大きいテロ事件を描くのは、日本映画には不向きなのかもしれない。テレビ版の拡張番組として、軽い気持ちで楽しむのが正しい見方ではないだろうか。