この記事では、映画『八つ墓村(1977)』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『八つ墓村(1977)』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『八つ墓村(1977)』の作品情報
出典:https://video.unext.jp/title/SID0034436
製作年 | 1977年 |
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上映時間 | 151分 |
ジャンル | ミステリー |
監督 | 野村芳太郎 |
キャスト | 萩原健一 渥美清 小川真由美 山﨑努 |
製作国 | 日本 |
映画『八つ墓村(1977)』の登場人物(キャスト)
- 寺田辰弥(萩原健一)
- 東京で空港の航空誘導員として働く青年。幼い頃に母親と死別し、生地や父親のことは何も知らず育つが、岡山にある多治見家の後継ぎとして八つ墓村に呼び寄せられる。祖父の丑松の葬儀のあとも、自身の出生の謎を知るため村にとどまる。母親からは、自分は「龍のあぎと」という場所で生まれたと聞かされている。
- 金田一耕助(渥美清)
- 麦わら帽子に白シャツ姿の私立探偵。知り合いである大阪の諏訪弁護士に依頼され、井川丑松の毒殺事件を調査することになる。八つ墓村の血縁や28年前の事件を徹底的に調べ上げ、連続殺人の真相を明らかにしていく。
- 森美也子(小川眞由美)
- 八つ墓村の西側にあることから西家と呼ばれる家の未亡人。辰弥とは縁戚関係にあたる。夫と死別したあとは、大阪で手広く事業を手がけている。辰弥を岡山の多治見家まで案内する。
- 多治見久弥(山﨑努)
- 現在の多治見家当主で辰弥の腹違いの兄。病気で床に臥しており、余命幾ばくもない状態。親族の財産争いを知り、辰弥に財産を継がせるため多治見家に呼び寄せるが、何者かに毒殺され二番目の被害者となる。
- 多治見要蔵(山﨑努)
- 先代の多治見家の跡取り。妻がいるにも関わらず鶴子をさらい強引に妾にし、自宅の蔵に監禁する。鶴子が辰弥を連れて失踪したあと突然狂い、正妻を含めた村の住人32人を次々と殺害。その後、行方をくらます。
- 多治見春代(山本陽子)
- 多治見家の次女で辰弥の異母姉。一度よそに嫁ぐが、子宮筋腫を患い多治見家に出戻ってきた。美也子と共に、辰弥と癖のある村人たちとの仲介役を務める。辰弥と父・要蔵の関係について秘密を握っている。
- 多治見小竹(市原悦子)
- 多治見家の実質的な権力者である双子の老婆のうちの姉。親族が多治見家の財産を狙っていることを酷く嫌悪しており、辰弥に跡目を継ぐよう強く要請し村に引き留めようとする。
- 多治見小梅(山口仁奈子)
- 小竹の双子の妹。小竹に同調し、辰弥に跡継ぎを厳しく迫る。屋敷の離れから続いている鍾乳洞で遺体となって発見され、五番目の犠牲者となる。
- 井川鶴子(中野良子)
- 辰弥の実の母親。八つ墓村の郵便局で働いていたが、要蔵に無理矢理連れ去られて多治見家の蔵に監禁される。のちに生まれた辰弥には、父は外国にいると言い聞かせていた。
- 井川丑松(加藤嘉)
- 辰弥の母方の祖父。久弥の代わりに辰弥を探し出し大阪で面会するが、直後に毒殺され最初の犠牲者となる。辰弥と要蔵の関係を工藤校長から聞いて知っていた。
- 工藤校長(下條正巳)
- 村の小学校の校長。迷信に縛られず、村では数少ない常識人として慕われている。辰弥の出生の秘密を知る唯一の人物だったが、法事の席で食事に毒を盛られ三番目の犠牲者となる。
- 久野医師(藤岡琢也)
- 八つ墓村に唯一つある診療所の医師。医師としては心もとなく、県議会選挙に出馬し金を湯水のように使っている。多治見家の財産を狙っており、事件の被害者が一様に毒殺されていることから事件の容疑者になる。
映画『八つ墓村(1977)』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『八つ墓村(1977)』のあらすじ【起】
永禄九年、毛利に敗れた尼子義孝という武将が、仲間8人で山間のある村に落ち延びてきた。やがて彼らは村の外れに住みつき、村人たちと交流が始まる。しかし、毛利からの褒賞に目がくらんだ村人たちは、義孝ら8人の武将を騙し惨殺してしまう。首謀者で村総代の庄左衛門は、莫大な褒賞を与えられた。
ところが、庄左衛門はある日突然狂い出し、村人を殺して回ったあと自死を遂げた。村人は、これを落武者たちの祟りだといって恐れ、8人の亡骸を成仏させるための祠を建てた。そしてこの村はいつしか八つ墓村と呼ばれるようになった…
東京の空港で働く寺田辰弥は、自分が尋ね人になっていることを知り大阪の法律事務所を訪れる。辰弥は祖父であるという井川丑松と相対するが、直後に丑松は突然苦しみ出し絶命する。死体からは硝酸ストリキニーネが検出され、何者かに毒殺されたことが判明する。その後、辰弥は縁戚にあたる森美也子の案内で、岡山にある故郷の八つ墓村へ行くことになった。
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映画『八つ墓村(1977)』のあらすじ【承】
辰弥は美也子から、辰弥が故郷の多治見家の筆頭相続人であると聞かされる。多治見家の跡取りは辰弥の腹違いの兄である久弥だったが、彼は重病を患って寝たきりのため、跡継ぎとして辰弥を探させていたのだった。
辰弥の母・鶴子は、辰弥を連れて家を出たあと神戸で再婚。辰弥が幼い頃に病死していた。義父が新しい妻を迎え子供が生まれると辰弥は家を出た。鶴子からは生地や実の父親のことを聞かされなかったため、自分の出自については今まで何も知らずに育ったのだった。
美也子は、戦国時代にまで遡る多治見家のルーツと八つ墓村にまつわる言い伝えを教えてくれた。落武者を殺した当時の村の首謀者・庄左衛門は多治見家の先祖だという。
八つ墓村では28年前にも忌まわしい事件が起こっていた。辰弥の父だという多治見要蔵は、当時妻がありながら村の若い娘である鶴子を強引に妾にして、家の離れに監禁してしまう。しかしその後、鶴子は幼い辰弥を連れて村を出て行ってしまった。鶴子がいなくなったあと、要蔵は突如狂い出し、日本刀と猟銃で村人32人を次々と襲い惨殺。その後、行方が分からなくなったという。
映画『八つ墓村(1977)』のあらすじ【転】
丑松の葬儀が終わった次の日。辰弥は多治見家の屋敷で、病床に臥す異母兄の久弥、異母姉の春代、村の実権を握る双子の伯母・小竹、小梅を紹介される。しかし、久弥が辰弥に会うや否や、急に吐血して死んでしまう。丑松の時と同様に硝酸ストリキニーネによる毒殺と断定される。
丑松の事件を受けて調査を依頼され、私立探偵の金田一耕助が村にやって来る。金田一は多治見要蔵が辰弥の父親ではないことを調べ上げており、辰弥にそのことを告げる。
辰弥は夜中、小竹と小梅が屋敷の離れから通じている鍾乳洞に降りていくのを目撃する。辰弥は春代にそのことを教え、二人で洞窟に降りていくと、そこには鎧武者姿の要蔵のミイラが鎮座していた。
その後、出生の秘密を知っていると辰弥に話していた小学校の校長・工藤が毒殺される。続け様に、祈祷師の濃茶の尼も同様に毒殺された。村人たちは、辰弥が災厄を持ち込んだと憤怒し多治見家に押しかけてくる。その夜には、小梅と村の医師・久野が洞窟で遺体となって発見される。
映画『八つ墓村(1977)』の結末・ラスト(ネタバレ)
被害者が皆毒殺されていることから目星をつけていた久野医師が死に、警察の捜査は振り出しに戻ってしまう。村人が暴徒化しているため、金田一は辰弥にしばらく洞窟に篭っておくよう忠告する。春代が辰弥を心配して洞窟に入るが、真犯人に襲われ重傷を負ってしまう。辰弥が要蔵の子ではないことを知っていた春代は、最期に辰弥への想いを告げ、犯人の指を噛んで怪我をさせたと言い残して息を引き取る。
その後、辰弥はやって来た美也子と、自分の生まれた場所と聞かされていた「竜の顎(あぎと)」を洞窟内で発見する。美也子は春代と同じく想いを寄せていたと辰弥に告白した。その頃、金田一は今回の事件の真相を解明し、村人たちに説明していた。真犯人は美也子で、多治見家の財産を手に入れるため、祟りに見せかけて相続人を次々と手に掛けていたのだった。
竜の顎で愛し合った後、辰弥は美也子の指の怪我を見て彼女が真犯人であることに気づく。真相を知った辰弥を殺そうと襲い掛かって来る美也子だったが、落盤が起こり石の下敷きになって命を落とした。洞窟から飛び出した大量のコウモリは、生き残った小竹がいる多治見家を襲った。洞窟を出た辰弥は、炎上する多治見家を峠から眺め呆然と立ち尽くすのだった。
映画『八つ墓村(1977)』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
金田一耕助シリーズの中でも屈指の異様さと重厚さを誇る作品。山崎努演じる多治見要蔵の狂気、そして「祟り」という言葉に覆われた村の不気味な空気に圧倒されました。ラストでの真相解明も重々しく、単なる推理ものではなく人間の因習や歴史の闇を描いていて、深く印象に残ります。(20代 男性)
ホラーとしても、サスペンスとしても見応え抜群。冒頭の大量殺人シーンは本当に恐ろしく、目を覆いたくなりました。女性としては特に、村に根付いた女性蔑視や因習がリアルすぎてゾッとしました。横溝作品の中でも特に心理的に重たいですが、強く記憶に残る一本です。(30代 女性)
中学生のときにテレビで観て以来、何度も観返しています。土着信仰や閉鎖的な村社会の描写がリアルすぎて、現代でも通じる怖さを感じます。映像も音楽も不気味で、ラストの“八つ墓様”にまつわる伝説の真相が明かされるシーンは鳥肌モノ。金田一の存在感も抜群。(40代 男性)
女性としてはかなり衝撃的な内容でした。特に怨念や呪いといった描写が、ただのホラーで終わらず“女の生きづらさ”を象徴しているようで、胸が苦しくなりました。原作の複雑さをうまく映像化していて、金田一の語り口もどこか優しく、救いのあるラストが印象的でした。(40代 女性)
映画の冒頭から異様なテンションで進んでいく感じがクセになります。山崎努の狂演は日本映画史に残るレベル。殺人事件の真相を追う推理映画でありながら、因習や血縁の呪縛から逃れられないというテーマが重くのしかかってくる。映像と演出の完成度がとにかく高い。(30代 男性)
「怖いけど観たくなる」作品。少女時代に観てトラウマ級の恐怖を感じたけど、大人になって改めて観ると、これは単なる恐怖映画ではなく、“人間の罪と報い”を描いた社会派ドラマだと思いました。ラストで明かされる真犯人の動機も、どこか哀しくて切ないです。(50代 女性)
1977年の作品とは思えないほどのテンポの良さと映像美。特に雨のシーンや村の描写にこだわりを感じました。金田一耕助の静かな推理と対照的に、村人たちの感情の激しさがぶつかりあって、ただの推理劇では終わらない奥深さがある。ラストでの告白シーンは圧巻。(40代 男性)
若い頃は「古い映画」として敬遠していましたが、観てみたらとんでもない傑作でした。女性の視点で観ても、家系の重みや村の掟に縛られる恐ろしさが胸に迫ってきました。加藤治子さんの怪演も印象的で、女性の怨念というテーマが骨太に描かれているのが印象的でした。(30代 女性)
一つの村に積み重なった“血の因縁”が、何代にも渡って連鎖していくという構図が怖すぎる。横溝正史らしい「土の匂いがするミステリー」が全編に漂っていて、ホラーとしてもサスペンスとしても秀逸。要蔵の存在がすべての闇の象徴になっていて、最後まで息を呑みました。(20代 男性)
今のホラーやミステリーにはない“湿気”のような重苦しさがクセになります。女性として、登場人物の女性たちが抱えている痛みや屈辱に共感しすぎてつらくなりました。けれど、それを視覚化したこの作品の価値は計り知れない。怖いけれど、ずっと語り継がれてほしい作品です。(20代 女性)
映画『八つ墓村(1977)』を見た人におすすめの映画5選
『犬神家の一族』(1976)
この映画を一言で表すと?
「遺産を巡る一族の闇が、静かに、そして残酷に暴かれていく」
どんな話?
巨額の遺産を残して亡くなった家長の奇妙な遺言を発端に、一族内で連続殺人が発生。名探偵・金田一耕助が事件の真相に迫っていく。因習と欲望が交錯する本格ミステリー。
ここがおすすめ!
横溝正史の代表作であり、『八つ墓村』同様、古い家系に秘められた因縁と狂気がじわじわと暴かれていく様が圧巻。市川崑監督による映像美も見逃せません。
『悪魔の手毬唄』(1977)
この映画を一言で表すと?
「童歌に導かれる連続殺人──美しき村に潜む怨念」
どんな話?
山間の村を訪れた金田一耕助は、手毬唄に見立てられた殺人事件に遭遇する。古い因習や過去の因縁が複雑に絡み合い、村に潜む深い闇があらわになっていく。
ここがおすすめ!
伝承や唄を鍵に進行する独特の演出が不気味さを演出。『八つ墓村』同様、地方の閉鎖性と過去の怨念が物語を濃密に彩る、重厚な和製サスペンスです。
『震える舌』(1980)
この映画を一言で表すと?
「恐怖は感染する──日常に潜む“見えない脅威”」
どんな話?
破傷風にかかった娘と向き合う両親の不安と狂気を描いた心理サスペンス。医学的恐怖と精神的圧迫感が交錯する、異色の日本ホラー。
ここがおすすめ!
血や殺人がなくても恐ろしい──そんな“精神的恐怖”を描いた名作。閉塞感や人間の壊れゆく様を丁寧に追う作風は、『八つ墓村』のような心理サスペンス好きにはたまらない一作です。
『影武者』(1980)
この映画を一言で表すと?
「他人の人生を生きることの苦悩と皮肉」
どんな話?
戦国大名・武田信玄の死を隠すため、影武者として選ばれた盗賊の男が、その役割を果たす中で葛藤し、運命に翻弄されていく。黒澤明監督による歴史ドラマの名作。
ここがおすすめ!
個人のアイデンティティと歴史の波に巻き込まれる人間ドラマは、『八つ墓村』の「過去に翻弄される現在」という構図とも共鳴。美しい映像と重厚な演出も魅力です。
『告白』(2010)
この映画を一言で表すと?
「復讐は静かに始まる──愛と狂気が交錯する衝撃のサスペンス」
どんな話?
中学校教師の告白から始まる、緻密で冷酷な復讐劇。美しくも不穏な映像と、観る者の倫理観を試す構成で、邦画サスペンスの新たな地平を切り開いた話題作。
ここがおすすめ!
村の因習や血縁の業がテーマの『八つ墓村』とは違った形で、人間の闇を鋭く描く心理劇。現代的でありながら、日本特有の湿った不気味さを感じられる作品です。
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