この記事では、映画『殯(もがり)の森』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『殯(もがり)の森』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『殯(もがり)の森』の作品情報
出典:https://video.unext.jp/title/SID0085142
製作年 | 2007年 |
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上映時間 | 97分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | 河瀬直美 |
キャスト | うだしげき 尾野真千子 渡辺真起子 ますだかなこ |
製作国 | 日本 フランス |
映画『殯(もがり)の森』の登場人物(キャスト)
- 真千子(尾野真千子)
- 老人ホームで働き始めた新人介護士。過去に幼い息子を水難事故で失った過去があり、今もそれを夫から咎められて心に傷を負っている。働き始めてから介護の大変さを知り、続けていく自信がなくなるが、先輩介護士の和歌子に励まされて何とかやっていこうと決める。認知症を患うしげきにどこか亡き息子の姿を重ねる。
- しげき(うだしげき)
- 真千子が介護士として働く老人ホームの入所者。軽い認知症を患っており会話が覚束ないこともあるが、33年前に先立たれた妻・真子のことは今も忘れておらず度々名前を口にする。困った言動で新人の真千子を戸惑わせることはあるが、普段は少年のように屈託のない笑顔を見せる。
- 和歌子(渡辺真起子)
- 真千子の先輩介護士で老人ホームの主任。仕事に慣れない真千子に優しく言葉をかけてやりサポートする。「こうしなければいけないことはない」というかつての恋人の言葉を大事にしており、真千子に度々この言葉をかけて元気づける。
映画『殯(もがり)の森』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『殯(もがり)の森』のあらすじ【起】
茶畑が一面に広がる奈良の山間にある老人ホーム「ほととぎす」。介護士として働き始めたばかりで緊張している真千子は、先輩介護士の和歌子から「こうしなければいけないことはないから」といって励まされて仕事につく。
真千子は仕事を終え、帰宅すると息子の遺影に線香をあげる。彼女は不慮の事故で息子を失い、今は夫と別れ独りで暮らしていた。
次の日、ホームへ僧侶が説法のためやって来る。ホームの入所者の1人であるしげきは「私は生きているんですか」と僧侶に尋ね、他の入所者と共にあらためて生きることの意味を教わる。
その後、習字の時間で職員も含めて自分の名前を書くことになる。しげきは、横にいる真千子が書いた名前「真千子」を見ると、千を消して「真子」にした。真子とは、33年前に亡くなったしげきの妻の名前だった。しげきは、僧侶から「三十三回忌は仏の道に入る年で、奥さんはもうこの世には戻って来ない」と言われショックを受ける。そして、真子と書かれた半紙の文字を塗りつぶし真千子を困惑させる。
元夫に再会した真千子は、息子の死を責められ、三度自責の念に駆られる。
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映画『殯(もがり)の森』のあらすじ【承】
次の日、ホームでは今日がしげきの誕生日だと知った和歌子の呼び掛けで、ささやかなお祝いをしてあげることになった。誕生日プレゼントは何がいいかと聞かれたしげきは、しきりに「真子」と亡くなった妻の名前を口にした。
その晩、しげきは部屋にあるピアノを弾き始めた。彼の横には在りし日の真子が座っている。昔二人で弾いた曲を仲良く連弾している。やがて、真子はいなくなり、しげきだけがピアノの前に取り残された。
その後、真千子がゴミ箱のゴミを回収しに、しげきの部屋にやって来る。真千子が側に置いてあったリュックサックを拾い上げると、しげきは急に剣幕を変えて真千子を突き飛ばしてしまう。真千子は手を怪我してしまい、その日は和歌子に家まで送ってもらうことになった。落ち込む真千子に、和歌子は「こうしないといけないことはない」と言葉を掛けて彼女を慰める。
次の日、真千子が出勤すると、しげきが庭の木に登り和歌子が心配そうにしていた。木から落ちたしげきは、茶畑の方へ逃げていき真千子は彼を追い掛ける。しげきは茶畑でかくれんぼを始め、真千子もそれに付き合っているうちに楽しくなり笑顔が生まれる。
映画『殯(もがり)の森』のあらすじ【転】
しげきと真知子は、真子の墓参りのため車で山へ出掛けることになった。しかし、途中で車が脱輪して立ち往生してしまう。真千子は近隣の民家に助けを求めにいくが、その間にしげきがいなくなってしまい、真千子は慌ててしげきを探す。スイカ畑のかかしの裏に隠れていたしげきをようやく見つけた真千子だったが、逃げ出したので追い掛けると彼は転倒して持っていたスイカが割れてしまう。二人はそれを笑って食べ合った。
その後、真子の墓を目指してしげきは森の中へと入っていく。道という道はなくなり、「本当に道は合っている?」と真千子は何度もしげきに確認する。しかし、しげきは何も答えず歩みを進める。真千子の携帯に電話が掛かって来るが、電波が悪く切れてしまった。
いよいよ迷ってしまったと思った真千子は、ひとまず休憩しようと言うが、しげきは聞く耳を持たず歩き続ける。挙句には泥濘にはまって転倒してしまうが、それでもしげきは歩みを止めない。
映画『殯(もがり)の森』の結末・ラスト(ネタバレ)
やがて強い雨が降り出し、森の中にできた小川をしげきが渡ろうとする。真千子は渡ってはいけないと止めるが、しげきは言うことを聞かない。すると、上流から水がすごい勢いで流れてきたため、思わず真千子は「いかんといて!」と大声で泣き叫んだ。しげきはその声にようやく振り返り、真千子のいる方に引き返して来た。
辺りは暗くなり、森の中で焚き火をして夜を明かすことにした二人。横になるしげきだったが、雨で冷え切った体をがたがたと震わせ始める。真千子はしげきを抱きしめて懸命に体をさすり、声を掛けて励ました。
翌朝、目を覚ましたしげきは、森の中に真子を見つけて二人で踊る。真千子も目を覚まし、そんなしげきの姿を見つめるのだった。
再び歩き始め森の奥へ進むと、1本の木の棒が刺さった場所に辿り着く。しげきはここが真子の墓だと言い、リュックからオルゴールと妻の死後書き溜めていた日記を取り出した。しげきは真千子にオルゴールを手渡し、墓の前に穴を掘り始める。穴の中に入りうずくまったしげきを見て、真千子はオルゴールを鳴らすのだった。
映画『殯(もがり)の森』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
最初は静かで淡々と進む物語に少し戸惑いましたが、主人公のしげきと看護師・真千子の心の距離が森の中で少しずつ近づいていく様子に胸を打たれました。亡き妻への未練を抱え続ける老人と、深い喪失感を抱えた女性が、自然の中で心を交差させる姿がとても美しく描かれています。特に、しげきが森で迷いながらも亡き妻の墓を探すシーンは、涙なしには観られませんでした。死と再生、生と自然の融合が静かに心に響く作品です。(30代 女性)
この映画はエンタメ性や派手な展開を期待して観ると肩透かしを食らいますが、ゆったりとした時間の中にこそ大きな感情のうねりがあります。特に印象的だったのは、しげきが妻の墓を見つける場面。そこに至るまでの沈黙や自然音の使い方が素晴らしく、言葉よりも感情が伝わる演出に圧倒されました。何気ない風景と人間の営みの重なりが、こんなにも深いものだったとは…。観終わったあと、しばらく余韻が消えませんでした。(40代 男性)
死を扱っていながらも、なぜか温かさを感じる映画でした。真千子が抱える痛みと、しげきの静かな愛情が、森という空間の中で癒されていく過程に心が震えました。何度も繰り返される自然の映像も美しく、まるで心を洗われるようでした。人が人を思い出すこと、記憶することの尊さを実感できる作品。言葉に頼らず、感情をじっくり育てていくこの映画の静けさがとても好きです。(20代 女性)
鑑賞中は正直「地味だな」と思った部分もありましたが、時間が経つにつれてどんどん心に染み込んでくる不思議な映画でした。しげきの亡き妻に対する想いと、それを支える真千子の変化は、台詞の少なさの中で丁寧に描かれており、演技の力に引き込まれました。特にラスト、森の奥で佇むしげきの表情は忘れられません。人の悲しみと、それに寄り添う優しさの余韻が長く残る名作だと思います。(50代 男性)
映像がとにかく美しいです。森の緑、光、音がすべて物語の一部として生きていて、それだけで涙が出そうになる瞬間がありました。内容は決してわかりやすいものではありませんが、人の“喪失”と“再生”をこれほど静かに、そして深く描いた作品は他にないと思います。真千子の変化としげきの一途な想いに心を動かされました。観終わった後、自然の中を散歩したくなりました。(30代 男性)
セリフが少なく、音楽も控えめ。だけどその静寂が逆に心に刺さる映画でした。亡き妻の墓を探すしげきと、それに寄り添う真千子。2人が何も語らずとも感じ合う空気がとてもリアルでした。死者を想う気持ちと、それを受け入れていく過程が自然と共に描かれており、涙がこぼれました。死に関するテーマでも、ここまで穏やかな映画に出会えるとは思っていませんでした。(60代 女性)
介護施設の描写から始まるので、社会派かと思って観たら、まったく違う精神的な旅でした。人間関係というよりも、もっと根源的な「生と死」について語られているように感じました。しげきが抱える喪失感と、それに共鳴していく真千子の姿は、現代人にとっても他人事ではないように思えました。ラストシーンの森の静寂が、何よりも語りかけてきます。(40代 女性)
若い自分には難しい映画かな…と思いつつも観てみたら、意外と引き込まれました。最初は眠くなりそうだったけど、しげきが森に向かうあたりから一気に空気が変わる感じがして、最後まで見逃せませんでした。映像で語るタイプの映画って、こんなにも力があるんだなと感動。映画館で静かに泣いてしまったのは初めてかもしれません。(20代 男性)
久しぶりに「本物の映画を観た」と感じました。人の死に直面すること、思い出すこと、忘れないこと。それらを丁寧に描くこの作品は、エンタメ要素とは無縁ですが、その分心に深く響きます。真千子の苦悩が、しげきとの関わりの中で徐々にほどけていく様子がとてもリアル。涙が出るような派手な演出がないのに、自然と頬を伝う涙がある映画です。(50代 女性)
日本映画の静けさ、美しさ、奥ゆかしさが詰まったような作品です。カメラがとらえる木漏れ日や水の音、虫の声までもが、しげきと真千子の心情を代弁しているかのようで、息を呑むシーンが何度もありました。何度も観返すことで、新たな気づきがあるタイプの映画です。若い人たちにもぜひ観てほしい、日本の美意識を感じられる一本。(30代 男性)
映画『殯(もがり)の森』を見た人におすすめの映画5選
母なる証明
この映画を一言で表すと?
息子への無償の愛が暴走する、静かな狂気と母性が交差する韓国サスペンスの傑作。
どんな話?
息子が殺人事件の容疑者として逮捕されたことで、無実を信じる母親が自ら真犯人を探し始める物語。淡々とした日常から急激に緊張感が高まり、母親の深い愛情と狂気が丁寧に描かれます。
ここがおすすめ!
『殯の森』と同様に、静かな映像と人間の奥底にある感情を描いた作品です。母親役のキム・ヘジャの圧巻の演技、そしてポン・ジュノ監督らしい社会的視点が融合した物語は、観る者に深い余韻を残します。
あん
この映画を一言で表すと?
心に染み渡る、人と人のつながりと生きる意味を見つめる優しい物語。
どんな話?
どら焼き屋で働く男と、過去に重い十字架を背負った老女との出会いを描いた作品。共に過ごす時間の中で、それぞれの孤独や痛みが少しずつ癒えていく姿が静かに描かれています。
ここがおすすめ!
人間関係の中にある優しさと救いを描く『あん』は、『殯の森』のように静かな時間の中で心の機微を丁寧に表現しています。樹木希林の名演も見逃せません。
誰も知らない
この映画を一言で表すと?
「見て見ぬふり」を突きつけられる、切なさと怒りが入り混じる現代のリアルドラマ。
どんな話?
母に捨てられた子どもたちが、誰にも知られずにひっそりと生き延びていく姿を描いた作品。現実に起こった事件をもとに作られたこの物語は、観る者の胸をえぐるような痛みがあります。
ここがおすすめ!
是枝裕和監督の手腕によってリアリティと抑制の効いた演出が際立ち、『殯の森』と同様に「喪失」と「再生」の物語として深い感動を呼びます。ユウヤ役の柳楽優弥の演技も必見。
遠い空の向こうに
この映画を一言で表すと?
夢と喪失のはざまで希望を追う少年たちの実話に基づく感動ドラマ。
どんな話?
炭鉱町に生まれた少年が、人工衛星の打ち上げをきっかけにロケット工学に夢中になり、仲間と挑戦を重ねていく。家族との葛藤や貧しさの中で、希望の光を追い続ける姿に胸を打たれます。
ここがおすすめ!
『殯の森』のように、個人の内面に寄り添う繊細な描写が魅力。少年たちの純粋な情熱が人の心を動かす過程は、静かでありながら力強い希望を与えてくれます。
光
この映画を一言で表すと?
視えないものを“観る”ということを描いた、心を静かに揺さぶる詩的な作品。
どんな話?
視覚障害者向け映画の音声ガイドを担当する女性と、視力を失いつつあるカメラマンの出会いを通して、「見ること」「伝えること」の意味を深く掘り下げていく物語。
ここがおすすめ!
『殯の森』の河瀨直美監督が手がけた本作も、静謐で深い人間の内面を描写します。光と音を通じて感情を紡ぐ美しい映像美と、登場人物の心の揺らぎを丁寧に映した演出が魅力です。
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