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映画『雪の轍』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『雪の轍』の概要:トルコの世界遺産カッパドキアにてホテルを経営する元俳優の主人公。厳しい冬の訪れを前に妹、若い妻との間にある愛憎や、ある一家との確執を描いている。トルコの巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイランによる重厚なヒューマンドラマ。

映画『雪の轍』の作品情報

雪の轍

製作年:2014年
上映時間:196分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
キャスト:ハルク・ビルギナー、メリッサ・スーゼン、デメット・アクバッグ、ネジャト・イスレーシュ etc

映画『雪の轍』の登場人物(キャスト)

アイドゥン(ハルク・ビルギネル)
元俳優。亡父からの膨大な遺産を受け継ぎ、ホテルの経営をしながら物書きとして日々を過ごしている。穏やかな性格ではあるものの、傲慢で自分勝手なところがあり、妻ニハルのやることに口を出さずにはいられない。
ニハル(メリサ・ソゼン)
アイドゥンの若き妻。黒髪で美しい容貌をしているが、妻として尊重しているように見えて、実は子ども扱いしてくる夫には辟易としている。人を見下すような目つきをすることがあり、驕った考え方を押し付けることもある。心優しく慈善事業に勤しむ。
ネジラ(デメット・アクバァ)
アイドゥンの妹。アルコール依存症の夫と別れ、実家へと出戻った。夫へと未練を残しており、兄のコラムを酷評することで日々のストレスを発散している。ニハルの人を見下すような目つきにはうんざりしている。
ヒダーエット(アイベルク・ペクジャン)
アイドゥンの右腕のような存在で、弁護士と共に資産の管理を行っている。アイドゥンの側近として働いている。
ハムディ(セルハット・クルッチ)
イスマイルの弟で導師。人当たりが良く丁寧な言葉遣いをする。服役した兄のために一家を支えるため、本職とは別に働いた収入で家族を養っている。礼儀を弁えており、きちんと謝罪に訪れるしっかり者。
イスマイル(ネジャット・イシレル)
家賃が払えない住人。以前は鉱山で働いていたが、妻に付きまとう連中といざこざを起こし、服役していた。釈放後は仕事に就くことができず、家の外で酒を飲んでは帰るという生活を送っている。気が短く乱暴な面はあるものの、施しを受けないというプライドはある。

映画『雪の轍』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『雪の轍』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『雪の轍』のあらすじ【起】

トルコ、カッパドキア。元俳優のアイドゥンは年の離れた妻ニハル、妹のネジラと共にホテル経営をしながら裕福な暮らしを送っていた。亡父の遺産としていくつか住居も保持しており、中でもイスマイル一家は家賃を滞納していて何度、注意しても払ってもらえず、訴訟にまで話が進んでいたのだった。

その日、アイドゥンは使用人のヒダーエットと共に知り合いの元を訪ねていた。その帰り、イスマイルの息子がアイドゥンの車に投石。即座にヒダーエットが捕まえて来る。少年が小川を渡って逃げずぶ濡れになってしまったため、一旦家へと送って行った。すると、父親のイスマイルは家賃の代わりに家財を回収されたことで腹を立てており、息子の所業を叱った後、自宅の窓を自ら割って喧嘩腰になる。弟で導師のハムディが現れて仲介してくれたため、事なきを得たが、今度はハムディとの間で言い合いが始まる。

これまでに何度も話し合いを重ねてきたが、家賃の支払いが行われなかったため、強制執行官を派遣したことが互いの間に溝を作ったようだ。ハムディは家賃も払って窓も弁償するなどとできもしないことを言うのだった。

そんなある日、アイドゥンの元に集会所を新築するために支援して欲しいというメールが届く。妻ニハルは慈善家であるため、地元の名士である親友と共に支援について相談したが、ニハルは支援に反対。妻は緊急かそうでないかで支援の判断をしているらしく、新築する前に場所の工夫ができるはずだと言うのだった。

その後、ハムディが先日の謝罪をするために訪れる。あまり関わりたくなかったが、仕方がない。アイドゥンは資産の管理をするにあたり、ヒダーエットと弁護士にほとんどを任せているため、家賃に関しても詳しいことが分からない。

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映画『雪の轍』のあらすじ【承】

イスマイルは何らかの罪により刑務所に収監されていたらしく、出所後は地域に馴染めず仕事にも就けないようだ。そこへきて家賃滞納による立ち退き訴訟が発生したため、窮地に陥っていると言う。ハムディはアイドゥンに訴訟を取り下げて欲しいと頼み込むが、そういったことには全く関与していないため、ヒダーエットと弁護士に直接相談して欲しいと話した。

アイドゥンは普段、地方紙のコラムや本の執筆を行って過ごしている。毎夜、妹のネジラが書斎を訪ねて来るため、コラムの感想などを聞いていた。その夜はイスラム教の教えで悪に抗わないという点において議論が巻き起こる。この論争は翌朝の朝食時でも行われ、ニハルをも巻き込んで大論争。

そんな時、ハムディとイスマイルの息子がやって来たという知らせを聞く。どうやら昨日も来ていたらしいが、面倒で会わなかった。彼らはわざわざ歩いてホテルまで来ているようで、追い返すのも悪い。アイドゥンは2人と会うことにした。ハムディは甥に謝罪をさせようとして少年を連れて来たらしいが、甥は白目を向いて倒れてしまうのだった。

ネジラにはアルコール依存症の元夫がいる。彼女は夫に抵抗し離婚騒動を起こして実家へと帰ったがそれ以来、元夫は依存症を悪化させネジラも落ち込んでばかりいた。近頃は抵抗せずに謝っていれば別れることはなかったかもしれないと考えている。そのことをニハルに相談すると、ニハルは悪くもないのに謝るのは違うと言う。すると、ネジラはこの家と兄夫婦のために自分だけが多大な犠牲を払っていると言い放つのだった。

その日の夜もネジラがアイドゥンの書斎を訪ね、コラムについて酷評する。アイドゥンのコラムは妹からすれば自己欺瞞のたまものらしく、上っ面だけを装っているらしい。兄妹はこのことについて更に議論。ネジラは贅沢で退屈な生活に飽き飽きしているようで、逃げられるなら逃げたいと思っている。そのストレスを兄へとぶつけることで晴らしていた。兄妹は最終的に互いを詰り合い、険悪な雰囲気となってしまう。

映画『雪の轍』のあらすじ【転】

翌日はニハルが主催する慈善事業の会合があった。外では雪が降り始め、アイドゥンは夫として会合へ出席しようとしたが、ニハルは遠慮して欲しいと言う。彼女が慈善事業を始めてから1年が経過しているが、これまで夫は何の興味も示さなかった。ところが、今回に限って参加するとはどういう風の吹き回しか。妻に言わせればそういうことらしく、会合に参加するつもりなら自分が別の場所へ行くとまで言うのだった。

仕方ないので退散したアイドゥン。ホテルに滞在していた客も本格的な冬が来る前に次々と出発して行く。翌日、アイドゥンはニハルに寄付のことを話した。すると、妻は互いに干渉せずに上手くやってきたのに、台無しにするのかと言う。対してアイドゥンは、若いニハルは恵まれた人生を送ってきたから本当の感謝もできないのだと指摘。夫は妻へと一方的に不満を述べた。元はと言えば、妻の力になりたいがための出来心だったが、ニハルは放っておいて欲しいと叫ぶ。

そこで、アイドゥンはニハルに慈善団体の収支と活動の詳細を明かし、自分に全て預けろと言い始めた。妻にしてみれば、自分を子ども扱いする夫からの業腹な申し出である。ニハルはとうとう全てを諦め、アイドゥンに慈善団体の書類を全て明け渡した。ところが、夜遅くになって手間取る作業が面倒になったのか、アイドゥンは首を突っ込むのはやめると言って書類を戻してくる。彼は本の出版にあたってイスタンブールへ行く予定になっており、翌日には出発するらしい。傲慢で自分勝手なアイドゥンは自分が何をしたかも分かっていない。彼はこともあろうか、妻へとそれを問うのだ。
ニハルは夫へと内心を全て吐露して別れたいと告げたが、アイドゥンは聞いているようでいて受け流している。彼は妻の慈善団体へと匿名で寄付をすると部屋から出て行った。

翌日、外は一面の雪景色になっていた。飛行機は運休していたが、列車はまだ運行している。ヒダーエットに駅まで送ってもらったが、列車が来るまで時間がある。アイドゥンは線路へと出てふと、イスタンブールではなく親友の名士が住む牧場へと向かうことにした。

映画『雪の轍』の結末・ラスト(ネタバレ)

牧場まではかなりの距離があったが、無事に到着。親友はヒダーエットとアイドゥンを歓迎したが、アイドゥンはヒダーエットに牧場にいることは秘密にしろと言う。親友の家にはニハルの慈善団体へ協力している教師も来ていた。
アイドゥンは教師を殊の外、警戒していたが、夕食を共にして和やかな雰囲気になると彼への警戒を解く。

同じ頃、ニハルは1人でハムディの家を訪ねる。倒れた甥が肺炎を患ったためだ。ハムディは快く彼女を家へ迎えたが、ニハルには長居するつもりはなく部屋を別にしてハムディからイスマイルの事情を聞くことにした。

服役前は鉱山で働いていたイスマイルだったが、彼の妻に付きまとう連中がおり追い払ったことで逮捕されたらしい。被害者への治療費と賠償金で借金は膨れ上がり、服役後は彼のことを怖がって誰も雇ってはくれない。ハムディだけの収入ではとても賄いきれるものではなく、副業するしかないと言う。そこで、ニハルはアイドゥンからもらった寄付金をそっくりそのまま、ハムディへと渡した。寄付金はかなりの大金で、恐れおののくハムディ。しかしそこへ、イスマイル当人が現れ、何の理由もなく大金を貰う謂れはないと、その大金をニハルの前で暖炉へと投げ捨ててしまうのだった。

春まで戻らないつもりだったが、農場に一泊した後、帰路へと就いたアイドゥン。妻は別れたいと言っていたが、彼女を愛する気持ちに変わりはなく彼には別れるという選択肢はなかった。ニハルには申し訳ないが、アイドゥンは新たな自分を受け入れてもらうしかないと心を固めるのであった。

映画『雪の轍』の感想・評価・レビュー

トルコの世界遺産カッパドキアを舞台に元俳優の主人公とその家族、主人公が抱えている問題を交えた3時間16分という長尺の会話劇。時間だけを見ると非常に手が伸びにくい作品ではあるが、見てみるとあっという間に終わったという印象。内容もさることながら、第67回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを授賞するのも頷ける。

ストーリーが進むにつれて、主人公が酷く傲慢で身勝手な人物という印象に様変わりする。中盤以降からは誰もが溜まったストレスで苛立ち、息が詰まりそうになる。そうして、カッパドキアに厳しい冬が訪れ真っ白な雪が積もる。その様子がまるで、それぞれの醜さを隠していくように見える。(MIHOシネマ編集部)

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