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映画『ユリゴコロ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ユリゴコロ』の概要:カフェを経営し恋人とも結婚を間近に控えた主人公だったが、ある日突然、恋人が失踪。それをきっかけに亡くなったと聞いていた母親の過去を知ることになり愕然とする。殺人を中心にそれぞれが葛藤する様を描いた切ないサスペンス。

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映画『ユリゴコロ』の作品情報

ユリゴコロ

製作年:2017年
上映時間:128分
ジャンル:サスペンス
監督:熊澤尚人
キャスト:吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ、佐津川愛美 etc

映画『ユリゴコロ』の登場人物(キャスト)

美紗子(中学生:清原果耶 / 大人:吉高由里子)
幼い頃から感情を持たず、感情を生み出すためのユリゴコロを殺人に見出し、罪悪感を抱きつつ人を殺し続ける。夫洋介と息子亮介に深い愛情を抱いており、左腕の内側にみつ子がつけたリストカットの傷痕がある。
洋介(松山ケンイチ)
大学生時代、少年を殺害したとして、深い罪悪感を抱いている。生真面目で知的。美紗子と結婚後は塾講師として生計を立てる。美紗子の真実を知った後は、彼女と決別し息子を育て上げる。
みつ子(佐津川愛美)
調理の専門学校にて美紗子と出会う。高校時代に男関係で心に傷を負いそれ以降、リストカットを続けている。美紗子と仲良くなり、心を寄せあうようになる。
亮介(松坂桃李)
美紗子の息子で洋介に育てられる。山小屋風のレストランを経営し、恋人千絵との結婚を目前にしていたが、千絵の失踪により母、美紗子の過去を知ることになる。殺人鬼の息子であることに苦悩する。
千絵(清野菜名)
大学卒業後、やくざと結婚してしまい離婚しようとするが、脅されて娼婦にされてしまう。逃亡先で亮介と出会い恋に落ちるが、夫に発見され捕縛される。
細谷(木村多江)
千絵の元同僚であり友人。亮介の母親と同じくらいの年齢。実は整形手術にて容貌を変えた美紗子。他人となって別の人生を送っていたが、千絵が息子と恋仲にあることを知り、助けようとする。

映画『ユリゴコロ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ユリゴコロ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ユリゴコロ』のあらすじ【起】

幼い頃に母親を亡くし父子家庭で育った亮介は、自然溢れる山小屋風レストランの経営に成功し、恋人千絵とも結婚の約束をして順風満帆な人生を送っていた。だがある日、千絵が忽然と姿を消してしまう。
失意に暮れていた亮介だったが、末期のすい臓がんで抗がん剤治療をせず服薬のみで余生を送りたいと言う、父親洋介の様子を見に自宅へと向かった。

しかし、父親は出かけているのか留守。亮介は洋介の書斎へ向かい、半開きになっていた押し入れからある1冊のノートを発見する。ノートには『ユリゴコロ』とタイトルが明記されており、それには1人の女性の人生が赤裸々に書かれていた。

少女、美紗子は幼い頃から感情を持たず、言葉も話さなかった。医師からは感情を持ち、言葉を話すためのきっかけとなるユリゴコロがないと言われる。彼女にとって世界は棘だらけで、身体にひっつき虫のオナモミがついている気がして、嫌で仕方なかった。そんな折、デパートでミルク飲み人形を発見した美紗子。彼女はその人形を自分と重ねユリゴコロを得る。

その後、美紗子は小学校へ入学したが、やはりどこか変わっていたため、友人には相手にしてもらえず。
そして、雨が降る日。彼女は友人を近くの沼へ落とし見殺しにするのである。そうすることで、少女は強い感情を得ることを知り、殺人がユリゴコロになるのであった。

中学生になった美紗子は、自分が周囲とは異なった存在であることを自覚し、ユリゴコロにばかり心を傾けるようになった。そして、公園にて少年を事故に見せかけ殺害。実際はユリゴコロという言葉などなく、恐らく医師は拠り所と言ったに違いない。

そこまで読んだところで、自宅へ洋介が帰宅。亮介は元気そうな父親と世間話をして帰宅。翌日も通常通りレストラン営業を行った。そこへ、千絵の友人だという女性、細谷が現れる。彼女はちょうど3日前、千絵と偶然会って亮介に伝言を頼まれたと言う。恋人の安否を知ることができた亮介は一先ず安心した。
夕方、実家へ帰宅した亮介は、父親がいないことをいいことにノートの続きを読み耽る。

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映画『ユリゴコロ』のあらすじ【承】

高校を卒業した美紗子は成り行きで調理の専門学校へ。そこで、リストカットを続けるみつ子と出会う。美紗子はみつ子と共感しユリゴコロを得た。だが、みつ子はリストカットをやめることができず。美紗子は彼女の望みを叶えるべく、みつ子の命を終わらせるのだった。

その後、専門学校を卒業した美紗子はレストランへ就職するも、仕事や上司のパワハラに疲れ果て1年で辞職。日銭を稼ぐために娼婦へと身を落とす。
数か月後、街角で元職場の上司と遭遇してしまい、誘いに乗るふりをして男を殴り殺した。

そこで、スマホが着信を知らせたため、ノートの世界から戻った亮介。手記を読むことで、何かが彼の中で変化し始める。
翌日、細谷が再び来店。彼女は千絵が通っていた大学から両親の居場所を見つけ出し、千絵の経歴を調べていた。

千絵は大学卒業後、ある男と結婚。相手がやくざだと判明したため、離婚しようとしたが、男は離婚に応じず千絵を娼婦として働かせていたと言う。
話を聞いた亮介は怒りから殺人欲求に駆られるも、恋人を取り戻したいと細谷に告げるのだった。
その後、亮介は父親が不在の日を狙い仕事の合間を縫って実家へ。ノートの続きを読み進めた。

娼婦に身を落として元上司を殴り殺した美紗子は、生活費に困っていたところである男と出会う。男は知的でとても生真面目な性質だった。美紗子は彼と過ごすうち、男にユリゴコロを感じるようになり、いつ殺してしまうのかと恐怖を抱くようになった。

映画『ユリゴコロ』のあらすじ【転】

男は大学時代、子供を殺してしまったことに深い罪悪感を抱いていた。それは、美紗子が中学時代、公園で少年を殺害した時のこと。あの時、大学生が少年を助けようと側溝の重い鉄板を持ち上げていた。そこへ美紗子が助けに入り、意図的に鉄板を落とさせたのである。そのせいで大学生は罪に問われ、深い罪を背負って男性機能も不能になってしまったと言う。あの時の青年が彼だったのである。罪は今も尚、男を苛み不眠の原因となっていた。
美紗子は自分がしたことで、罪のない男を苦しめていることに衝撃を受けた。だが、自分がやったことを告白できないまま、男との逢瀬を続ける。

そんな折、美紗子が妊娠していることが発覚。堕胎する金もないが、産むことも考えていない彼女に、男は自分と結婚し子供を育てようと言う。彼女は彼の言葉にほだされ、結婚して出産することにした。

自然に囲まれた長閑な田舎に一軒家を購入。2人はそこで平和な毎日を送り、やがて男の子が産まれた。
その後も穏やかな生活が続き、子供もすくすくと成長。しかしそんなある日、自宅に殺害した元上司の知り合いという男が現れる。彼はあの夜、元上司から電話を受けていたと言う。美紗子は今の生活を壊したくないあまりに男の誘いに乗り、ラブホテルで男を毒殺した。

数日後、自宅に警察が訪れる。ラブホテルで殺害した男の件だったが、手がかりはほとんどなく、現場にはオナモミの実が落ちていたらしい。美紗子は男と面識はあったが、それだけだと答えた。
しかしその後、彼女は話を聞いていた夫との会話で嘘を吐いてしまう。そのせいで、夫婦の間に僅かなひびが生じてしまい、美紗子はこれまでの罪を全てノートに記し自殺することにした。

映画『ユリゴコロ』の結末・ラスト(ネタバレ)

ノートの手記が母親美紗子のものだったと理解した亮介は、愕然としてしまう。そこへ洋介が帰宅し、美紗子が手記を書き上げた後、川へ投身自殺を図ったことを明かした。だが、亮介は冷静さを失い父親の話をまともに聞こうとはしない。

実家を飛び出した亮介は細谷に連絡を入れ、千絵の居場所を聞き出そうとする。しかし、細谷からは色よい返事をもらえず。今にも人を殺しに行きそうな様子だったが、心配して駆け付けた細谷に説得されひとまずは矛を収めた。

だが、休んでも悪夢に魘され、居ても立っても居られない。亮介は車を走らせ東京へと向かった。そうして夜明け前にようやく、千絵の居場所が判明する。亮介は包丁を手に勢い込んでアパートへ突入。しかし、やくざの事務所にいる者達はすでに何者かに皆殺しにされていた。奥の部屋から千絵を無事に救出した亮介は、死体の傍でオナモミの実を発見してしまう。

無事に帰宅した亮介は、千絵との会話で細谷の正体に気付き、実家の父親の元へ。美紗子が川へ入った日のことを聞き出した。
あの夜、美紗子の不在に気付いた洋介は川に浮かぶ彼女を救い病院へ搬送した。そこで、美紗子の手記を発見し愕然としてしまう。

一晩、思い悩んだ洋介は覚醒した美紗子を連れてダムへ。そして、妻に重りを持たせ飛び降りるよう促した。しかし、どうしても見殺しにすることができず、美紗子に手持ちの金と地図を渡し、彼女をその場に置き去りにしたのだった。

やはり美紗子は生きていたのだ。そう思った矢先、洋介が倒れてしまう。亮介は父親を救急搬送しその後、自宅へ。そして、細谷を別室に呼び出し、正体を問い詰める。すると、彼女は泣きながら事情を明かした。

美紗子はあの後、整形手術で顔を変えレストランに就職。洋介との約束を守って彼と息子には一切、関わらないようひっそりと過ごした。千絵と出会った美紗子は、彼女の手首にリストカットの痕を見つけ気に掛けるようになる。だがしばらく後、偶然会った千絵から亮介の話を聞き、十数年ぶりに息子へと会いに。感動に打ち震えた彼女は、千絵と息子の幸せを願い再び、人を手にかけたのである。

話を聞いた亮介は怒りに任せ母親の首を絞めたが、美紗子は死を受け入れる態度。そして、彼女は亮介に良識的な洋介に育てられた子であることを切々と話した。亮介は母親を殺すことができず滂沱の涙を流しながら、せめて生い先の短い父親を訪ねるよう話す。
すると翌日、美紗子は十数年ぶりに愛する洋介の元を訪れるのであった。

映画『ユリゴコロ』の感想・評価・レビュー

私はこの作品を舐めていた。R指定がついていないことを疑問に感じてしまう程、心えぐられるシーンが多い。しかし気付いたら心惹かれてしまっている、そんな不思議な魅力を持った作品だと思う。

ある女性について書かれた小説を偶然見つけてしまうことから、この物語は始まる。現代のストーリーと並行して、小説のストーリーが映し出されていく。正直登場人物に隠された関係性は、観ている内に薄々気付いてしまうレベルだとは思う。しかし、それでも見入ってしまう奇妙な世界観。この世界観を作り出しているのは吉高由里子の演技ではないだろうか。彼女の演技の振れ幅には驚かされる。(女性 20代)


感情を見出すための拠り所として殺人を犯してしまう女性の生き様と共に夫と息子の現在の様子が描かれる。
現代と過去の様子を交互に描きながら、真実が明らかになっていくので非常に引き込まれる。特にヒロインを演じた吉高由里子の演技が素晴らしく、夫役の松山ケンイチの独特な影のある演技がまたマッチしていて、夫婦になるべくして出会ったのだと感じさせられた。正直、現代パートが無くてもいいのではないかと思えるくらい、ストーリーと演技のクオリティが高い。どちらかと言うとあまり明るいテーマではなく、どんよりとした雰囲気が続くし、心を抉るようなシーンも多いが、なぜかそれが美しく見えてしまう不思議。今作は個人的にはかなりの上位にランクインする良作。(女性 40代)

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