映画『ゼロの未来』の概要:近未来のどこかの都市。コーエン・レスは、会社と自宅を行き来する日々を送っていた。過労から、コーエンは在宅の仕事への変更を申請する。新たな仕事は、「ゼロの定理の解明」。孤独な男は、世界の原理を解き明かしていく。
映画『ゼロの未来』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:SF
監督:テリー・ギリアム
キャスト:クリストフ・ヴァルツ、デヴィッド・シューリス、メラニー・ティエリー、ルーカス・ヘッジズ etc
映画『ゼロの未来』の登場人物(キャスト)
- コーエン・レス(クリストフ・ウォルツ)
- 廃墟の聖堂に一人で暮らす中年男。一人称が「我々」で、周囲との関係を絶っており孤独。いつも、「ある者」から電話がかかるのを待っている。生真面目で融通が利かない。大手IT企業マンコムの、存在意義リサーチ部社員。
- ジョビー(デイヴィッド・シューリス)
- コーエンの上司。コーエンを「クイン」と呼ぶ。陽気で調子のいい性分。コーエンに一方的に友情を感じている。孤独で内気になっているコーエンに、ベインズリーを寄越す。
- ベインズリー(ミレーネ・シェーリー)
- ヒロイン。コールガールで、ジョビーに依頼されてコーエンに近づく。セクシーで色香漂う美女だが、父に捨てられた過去を持つ。最初はコーエンの性欲をかき立てることが目的だったが、彼の内なる悲しみを知り本気で惹かれる。
- ボブ(ルーカス・ヘッジズ)
- 15歳。マネージメントの一人息子で、マンコムの跡取り。実地研修ということで、マンコムでエンジニアとして働いている。天才プログラマーだが、わがままかつ自由奔放。コーエンのサポートとして、彼の家に度々押しかける。
- マネージメント(マット・デーモン)
- マンコムのCEO。顔写真のみで、その実際の姿を見た社員はいない。謎の多い男で、監視カメラを通じて社員の動向を観察している。コーエンの能力に目をつけ、「ゼロの定理」を解明するよう命じる。
映画『ゼロの未来』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ゼロの未来』のあらすじ【起】
コーエンは、ジョビーに半ば強制的にホームパーティーに招かれる。お騒ぎと人ごみが苦手で、コーエンは誰もいない物置部屋へ避難する。そこには、静かに本を読む男―マネージメントがいた。コーエンは、マネージメントに早速在宅勤務を要請するが、「イカれてる」と却下される。会場に戻ったコーエンは、居心地が悪くてたまらなかったが、偶然ベインズリーという女性に窮地を救われる。
翌日。マネージメントから、コーエンは、在宅で「ゼロの定理」(0-Tプロジェクト)解明業務に就くよう指示される。ジョビーに連れられ、コーエンは禁止区域とされる地下部屋に入る。「ニューラル・ネット・マンクライヴ」といわれ、マネージメントの頭脳中枢だった。コーエンは、この頭脳中枢にアクセスして方程式を解いていくのが主業とされる。
待望の在宅業務となり、コーエンは静かな空間で0-Tプロジェクトに着手する。しかし、解いてもゴール地点は見えず、コーエンは家にこもりがちになっていった。コンピュータのAIは、コーエンにどんどん公式の解析作業を求める。コーエンは精神を病み、バーチャルカウンセリングを受けるはめになった。
映画『ゼロの未来』のあらすじ【承】
追い詰められたコーエンは、これ以上このプロジェクトを取り扱うことは不可能だと思い始める。コーエンの心情を汲まないAIとは衝突し、コーエンは激してハードウェアを壊してしまう。どこから連絡が行ったのか、ジョビーが「現場調査」という名目でコーエンを訪ねてきた。コーエンの様子を見かねたジョビーは、友人にコーエンの世話を頼むよう言っておくと告げる。
その夜、ジョビーに依頼されたベインズリーがコーエンを訪ねる。ベインズリーは扇情的な衣装に身を包み、頭でっかちなコーエンを誘惑した。コーエンは激しく動揺するが、ベインズリーの導きによって少しずつ己の心境を言葉にしていく。若い頃のコーエンは、かなりやんちゃで平凡であることをひどく嫌っていた。そんな時、「ある者」から電話がかかってきた。それは、神のように偉大で高潔な「声」だった。「ある者」がコーエンに人生の意味を教えてくれ、コーエンは救われる。コーエンを哀れんだベインズリーは、彼の力になると自ら申し出た。
翌朝。連絡もなしに、インターンのボブがコーエン宅に押しかけてきた。ボブは、コーエンの仕事のアシスタントとして配属されたのだ。マネージメントの息子であるボブは、父はコーエンを支配していると指摘する。加えて、ベインズリーはマネージメントに雇われてコーエンに近づいた、と暴露した。
映画『ゼロの未来』のあらすじ【転】
コーエンは、ベインズリーに指示された通り、電気の通ったスーツを着て彼女のwebサイトにアクセスする。ベインズリーのサイトは、明らかにアダルトサイトだった。入室すると、コーエンの意識はVRの空間にアクセスする。陽が沈む海岸で、ビキニ姿のベインズリーが待っていた。コーエンはリラックスし、ベインズリーのリードで甘い雰囲気に身を委ねる。コーエンは、ベインズリーに好意を抱き始めていた。
コーエンは、解析作業でつまずく度、ベインズリーのVRにアクセスしてストレスを発散した。ベインズリーの提案で、コーエンは自分の行きたい世界をイメージする。すると、二人は全裸になり、眼前には巨大なブラックホールが広がっていた。コーエンの望んだ世界が暗闇であることを知り、ベインズリーは心の底からコーエンを救いたいと思う。コーエンは、ベインズリーの愛に執着していく…。
ボブの補助で、解析はうまくいった。その夜、コーエンはベインズリーのサイトに単純にアクセスする。そして、そこは単なるいかがわしい動画のサイトであることを知ってしまう…。コーエンは、以前VRでベインズリーと性交しようとした時拒絶されていた。そのこともあり、コーエンはベインズリーに疑念を抱く。
バーチャルカウンセリングで、コーエンは、「ある者」からの電話が自身の「妄想の産物」であることを知らされる。しかし、ボブはコーエンの魂から届いた声だと推測する。ボブは、ベインズリーのスーツを、コーエンの魂にアクセスできる仕様に作り替えた。
映画『ゼロの未来』の結末・ラスト(ネタバレ)
連絡を絶っていたベインズリーが、コーエンの元を訪れる。ベインズリーは、最初に近づいたきっかけはマネージメントの意向によるものだったと認めた。しかし、今ではベインズリー自身がコーエンに惹かれ、恋をしていると告白する。ベインズリーは、この街を去るところでコーエンにも一緒に来てほしいと願った。だが、半ば意固地になっていたコーエンはその愛を拒絶してしまう。ベインズリーは、黙って家を出て行った。
コーエンは、気分転換ということでボブに外に連れ出される。コーエンは、ボブにベインズリーを突き放したことを後悔していると明かした。その時、一人称が「私」になっていることを、ボブが見抜く。コーエンとボブは、腹を割って話し合ったことで、親近感が芽生えていた。しかし、元々身体の弱いボブは、過労で倒れてしまい自宅に戻る。
雷雨の夜。ジョビーが、コーエン宅を訪れる。ジョビーは、コーエンがボブを傷つけた責任を負わされて、会社を解雇されていた。コーエンに好意的だったジョビーは、すっかり落ちぶれてコーエンに怒りをぶつける。コーエンは、孤独な気分でボブが残したスーツを着用し、自身の魂にアクセスした。しかし、エラーが起きてコーエンは感電してしまう。
目を覚ますと、コーエンはマンコムの頭脳中枢空間にいた。マネージメント(人)がどこからか現れ、コーエンをプロジェクトおよび会社そのものからリストラする。コーエンは、興奮気味に「真実とは何か」とマネージメントに問い詰めた。マネージメントの答えは、「すべては無だが、無秩序そのものはカネを生みだす」。コーエンは、我を忘れたかのように頭脳中枢を破壊しだす。頭脳は一度自己修復するが、コーエンが激しく殴打したことで完全に機能を損なった。途端、ブラックホールが現れ、コーエンの数々の記憶が闇に吸収されていく。コーエンは、安らかな表情を浮かべて自ら闇に身を投げる―。
夕暮れの海岸。コーエンは、ベインズリーのいない浜辺に一人立ちすくんでいた。コーエンは、以前とは想像もつかない様子で、無邪気にはしゃぐ。オレンジの世界は、夜に向かっていくのだった…。
映画『ゼロの未来』の感想・評価・レビュー
『未来世紀ブラジル』のテリー・ギリアム監督が、秋葉原に着想を得て制作した作品。
コンピューターに支配された近未来の物語。
禁止事項の多い標識やついてくる看板、異常な監視、教会の廃墟化などに、近い将来実現されてもおかしくない程のリアリティーを感じた。
知識がないとついていけない難解さがあったが、平たく言うと孤独な主人公が様々な人と接して「生きる意味」を探し出すという内容だった。近未来だけれど、ノスタルジックな雰囲気や独特なヴィジュアルといった映像世界に驚嘆した。感覚で楽しめる作品。(女性 20代)
近未来を舞台にしていることもあり、不思議な感覚が心に残る作品だった。個人的には、サルバドール・ダリの作品を見ている感覚に近かった。「ゼロの定理」の解明作業については、専門的過ぎて正直意味が分からなかった。でも、孤独なコーエンが、様々な人との出会いを通して変わっていく姿を見ているのはおもしろかった。ベインズリーとコーエンのやり取りが好きだったので、コーエンが彼女のことを拒絶してしまうシーンは悲しかった。(女性 30代)
『未来世紀ブラジル』を初めて鑑賞した時になんだこれ…と良い意味で言葉が出なかったので、テリー・ギリアムの作品にはかなり期待をしていました。
今作も彼らしく、普通の目線で見ていたら意味がわからないし、楽しめないと思います。しかし、今作の主人公・コーエンは「天才」なんですよね。だからこそゼロの定理の解明に懸命になり、見たこともないような世界が見えたのではないでしょうか。
ストーリーは100%理解できなくても、映像の美しさや不思議な世界観を見るだけでとても面白い作品だと思います。(女性 30代)
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