映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』のネタバレあらすじ結末 | MIHOシネマ

「ばしゃ馬さんとビッグマウス」のネタバレあらすじ結末

ばしゃ馬さんとビッグマウスの概要:夢のあきらめ方がわからず、ばしゃ馬のように頑張り続ける主人公と、何もせずに自分を天才だと信じ込んでいるビッグマウスの男が出会い、夢との向き合い方を模索していく。人物描写のうまい吉田恵輔監督らしく、どのキャラクターにもリアリティと味がある。

ばしゃ馬さんとビッグマウスの作品概要

ばしゃ馬さんとビッグマウス

公開日:2013年
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
監督:吉田恵輔
キャスト:麻生久美子、岡田義徳、安田章大、山田真歩 etc

ばしゃ馬さんとビッグマウスの登場人物(キャスト)

馬渕みち代(麻生久美子)
シナリオライターになりたいという夢を追い続けている34歳。学生時代からコンクールへの応募を続けているが、一次審査も通過したことがない。すごく頑張っている自分が好きという側面もあり、周囲は若干引き気味。
天童義美(安田章大)
シナリオを書いたこともないのに自分を天才だと勘違いしている28歳。シナリオスクールで知り合ったみち代に片思い中。大阪弁で上から目線の発言を繰り返し、周囲をドン引きさせている。かなりイタいが悪い男ではない。
松尾健志(岡田義徳)
みち代の元彼。役者になるという夢をあきらめ、老人ホームで介護士として働いている。冷静で穏やかな人柄。面倒くさいみち代に対しても、基本的には優しい。
マツモトキヨコ(山田真歩)
シナリオを通してみち代と知り合った。常に先輩風を吹かせるみち代に内心ムカついている。虎視眈々とプロデビューするチャンスを伺っている。

ばしゃ馬さんとビッグマウスのネタバレあらすじ

映画『ばしゃ馬さんとビッグマウス』のあらすじを結末まで解説しています。この先、ネタバレ含んでいるためご注意ください。

ばしゃ馬さんとビッグマウスのあらすじ【起】

34歳の馬渕みち代は、プロのシナリオライターを目指して学生時代からコンクールへの応募を続けている。しかし未だに一次通過さえしたことがなく、落選するたびに“こんなに頑張っているのに!”と自己陶酔して泣いている。

みち代はいくつかのシナリオスクールに通った経験があるが、何かせずにはいられず、再びシナリオスクールに通い始める。道連れにされたシナリオ仲間のキヨコは、聞き飽きたような講義の内容を熱心にメモするみち代に内心呆れていた。

同じクラスの天童義美は、そんなみち代になぜか一目惚れする。まだシナリオを書いたこともないのに“脚本家”という肩書きの名刺を作っている天童は、上から目線でみち代に講釈をたれる。しかしみち代は全く相手にしていなかった。

ところが天童の友人に監督がいると聞き、みち代は態度を一変させる。みち代は天童の誘いに乗り、バイト仲間を誘って合コンへ行く。しかし天童の友人は建築現場の監督だった。天童は追い討ちをかけるように“俺が本気を出したらすごい”といつもの大口を叩き始め、みち代はすっかり不機嫌になる。

ばしゃ馬さんとビッグマウスのあらすじ【承】

そんなある日、シナリオスクールに映画監督とプロデューサーが来る。みち代はこのチャンスを逃すまいと監督に近づき、次のシナリオを読んでもらう約束をする。

監督が興味を示した「老人ホームを舞台にした介護士の話」を書くため、みち代は元彼の松尾が働く老人ホームでボランティアをさせてもらう。松尾も以前は役者を目指しており、今も夢を追い続けるみち代を応援してくれる。

天童は相変わらずシナリオも書かずに大口を叩き、みち代をイラつかせる。みち代は天童のことを松尾に愚痴るが、“昔はみち代もそうだった”と言われてしまう。天童は執筆活動をするため旅館に泊まり込むが、シナリオは一行も書けない。

みち代は松尾に未練があり、シナリオのためとはいえ、松尾のそばにいられることが嬉しかった。主人公のモデルを松尾にして第一稿を書き上げたみち代は、それを松尾に手渡し、さらに監督へ見せに行く。しかし監督からは“恋愛ものにしか思えない”とダメ出しされ、やんわりとシナリオの持ち込みを断られてしまう。みち代は悔しくて、徹夜でシナリオの直しをする。

ばしゃ馬さんとビッグマウスのあらすじ【転】

その無理がたたって、みち代はホームでの仕事中に居眠りをしてしまう。その間にお年寄りが汚物のついたオムツを口にくわえて大騒ぎになる。温厚な松尾もさすがに怒っており、介護に対する生ぬるい姿勢や綺麗事ばかり並べたみち代のシナリオを非難する。全て図星なだけに、みち代はつらかった。

スクールでは、マツコから低予算だが映画の脚本を書くことになったと聞かされ、みち代はさらに落ち込む。何も知らない天童はいつものように偉そうなことを言って、本気でみち代に怒られる。これには天童も参ってしまい、きちんとシナリオを書こうと決意する。

みち代は介護のシナリオも、ホームでのボランティアも辞めることにする。みち代は抱いた夢のあきらめ方がわからずに苦しんでいた。

ついにシナリオを書き上げた天童は初めてコンクールに応募し、みち代にも読んでもらう。みち代は天童のシナリオを褒めてくれた。天童は素直にそれを喜び、みち代に感謝する。

地元の友人の結婚式に出席したみち代は、プロの脚本家のフリをして自己嫌悪に陥る。一方、天童は初めて一次で落選するつらさを味わっていた。泥酔したみち代は天童に電話をかけ、唯一自分を肯定してくれる天童に慰められる。天童もまた、こんなにつらい思いをしながら頑張ってきたみち代のことを尊敬するようになる。

ばしゃ馬さんとビッグマウスのあらすじ【結】

春。みち代と天童はすっかり仲良くなっていた。マツコは2人に映画の話がダメになったことを打ち明ける。どうやらプロデューサーに弄ばれたようだ。

みち代は次のコンクールで一次審査も通らなければ、夢をあきらめようと決意する。最後は自分の話を書くことに決め、松尾にもそれを報告する。本気で夢と向き合い始めた天童と、これが最後になるかもしれないみち代は、お互いに励まし合ってシナリオを書く。

そして冬の初め。みち代はコンクールの授賞式の会場にいた。しかし大賞を受賞してスピーチを始めたのはキヨコだった。みち代はスポットライトを浴びるキヨコを静かに見守る。

実家へ帰ることにしたみち代は、引っ越しの荷造りをする。みち代は今まで書いてきたシナリオをダンボールに詰め、叶わなかった夢を封印する。

旅立つ前。みち代は天童に別れを告げにいく。天童はみち代を引き止めたかった。しかしみち代は介護の勉強を始めるつもりだとスッキリした顔で語る。天童はシナリオの参考にと前置きして、自分に告白されたらどうするかと聞いてみる。みち代は嬉しいけれどそれはないと答え、笑顔で去っていく。

ばしゃ馬さんとビッグマウスの解説・レビュー

非常にリアルなシナリオスクール

主人公のみち代は脚本家を目指してコンクールに応募を続けているが落選続きで、突破口を求めてシナリオスクールに通い始める。と言っても、すでにあちこちのシナリオスクールへ通った経験のあるみち代が今更基礎講座なんか受講してもおそらく大して意味はない。

ところがこの設定がかなりリアルで、実際のシナリオスクールにもみち代のような人が結構いる。私も経験者なのでわかるのだが、コンクールで大賞をとった人やすでにプロの仕事をしたことのある人が少なからずいる。そんな人が何のために通うのか不思議だったが、今思えばみち代と似たような動機だったのかもしれない。

さらに講師の話している内容も、自分のシナリオを発表し感想を聞かせてもらうという授業形式も全く同じで笑ってしまった。これは吉田恵輔監督か脚本を共同執筆した仁志原了がスクール経験者であることは間違いないだろう。今現在シナリオスクールに通うことを思案中の人にとってこの映画は非常に参考になる。実際のスクールもほぼあんな感じで、通っている人の雰囲気まであんな感じ。シナリオに対する感想までそっくりそのままで、経験者としては笑いのツボに入りまくりだった。

人間観察眼の鋭さ

脚本家というのは医者や弁護士のように国家資格が必要なわけでなく、天童のように“脚本家”の肩書きを自分で名刺に加えることは罪でも詐欺でもない。周りから単に“痛い人”と思われるだけで、名乗るだけならいつでも誰でも自由に脚本家になれる。ただ本当に脚本家で飯を食っていこうとすると現実的には大変だ。

“何がダメか”のはっきりした境界線が見えないので、みち代のような人は多い。しかし彼女の人柄を見ると正直言って“この人の本は面白くなさそうだな…”と思ってしまう。彼女のように自己陶酔型の“それでも頑張っている自分が好き”というタイプは物書きには向かない。このみち代の人物像は実在のモデルがいるのではないかと思えるほどよくできている。同じく“書いたことはないが言うことだけは一人前”という天童タイプもこの手の職業を目指す人には多い。イラっとする彼の傲慢なセリフもリアルで“いるわ〜、こういう奴”と何度も頷いてしまった。

こういう人間を冷静に観察し自分の作品に生かすことができる人がプロになれるので、そういう人にじっと観察されている側のみち代や天童の道のりは険しい。吉田監督は善良で痛い2人のジレンマを鋭く描き出しており、だからプロとして活躍しているわけだ。納得。

ばしゃ馬さんとビッグマウスの感想まとめ

一応軽いラブストーリーではあるが、大きなテーマは“夢との折り合いのつけ方”だろう。誰でも若い頃に大なり小なり“こうなりたい、ああなりたい”という夢を抱き、ほとんどの人がどこかでその夢に折り合いをつけて現実と対峙していく。34歳の主人公が“夢の諦め方わからない”と言って号泣するシーンは身につまされる。ダメだとわかっていても夢を追い続けていたいみち代の気持ちはよくわかる。

さんかく」で存分に発揮された吉田監督の人間描写の鋭さとシニカルな笑いのセンスが本作でも光っている。“小説は無理だけど脚本ぐらいなら書けそう”と思っている“自称 未来の脚本家”にはぜひ見て欲しい。ビッグマウス君を見て赤面するその人が見たい!

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