映画『フルートベール駅で』あらすじとネタバレ感想

フルートベール駅での概要:2009年の元旦の夜にアメリカで実際に起きた、警官による射殺事件。被害者は無抵抗で、丸腰の黒人青年。この事件に対してだけではないが、今でもアメリカでは、警官による暴力に対して、全米で抗議デモや集会が行われている。監督には新人のライアン・クーグラー。主演には『クロニクル』でデビューしたマイケル・B・ジョーダン。国籍、国境関係なしに観て欲しい秀作だ。

フルートベール駅で あらすじ

フルートベール駅で
映画『フルートベール駅で』のあらすじを紹介します。

2008年大晦日の夜。カリフォルニア州に住むオスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)は22歳の青年。結婚はしていないが、メキシコ系の妻ソフィーナ(メロニー・ディアス)とTこと娘のタチアナ、そして彼の母親ワンダ(オクタビア・スペンサー)に囲まれて、極平凡だが、幸せな日々を送っていた。この後、彼の身に降り掛かる悲劇を思えば、心が居た堪れなくなる。

12月31日。この日はちょうど母親の誕生日でもある。でもオスカーにとっては、何の変哲も無い平凡な1日が始まろうとしていた。朝起きてシャワーを浴びて、愛する娘を幼稚園に、妻のソフィーナを職場に送り届ける。いつもと変わらない朝だった。だが現在、オスカーには職がない。道中、誕生日のお祝いに母親に電話する優しい彼。車を走らせ最初に向かった場所は、元々働いていた職場スーパーマーケットに赴く。馴染みの親友と軽く会話を交わし、上司に職場の復帰の打診を図るも、断られてしまう。偶然隣にいた買い物中の女性ケイティー(アナ・オライリー)に話しかける。大晦日にお祝いする料理を何にするか迷っていた彼女に、オスカーは祖母に電話をかける。ケイティーのために南部料理の作り方を祖母から教えてあげようという、彼なりの優しさだった。仕事も断られ、働く場所のない彼。一度家に帰る彼。妹のシャンテから電話が入る。何気ない会話。オスカーはもう一度、誰かに電話を掛ける。それは、昔のシャブ仲間だろう。まだ家に残っていた薬をズボンの中に入れて、家を出る。途中、妹に頼まれた母親に渡すポストカードを購入し、その足でガソリンスタンドへ。彼の目の前で野良犬が轢かれてしまう。血まみれのその犬を抱き上げる優しい彼。約束の駐車場に着いたオスカー。シャブ仲間はまだ来ていない。彼は岩場に腰掛け、1年前のことを思い出していた。

2007年の大晦日。彼は刑務所にいた。麻薬の売人だった彼は、捕まっていた。そんな彼の元に彼の母親ワンダが面会に訪れる。娘タチアナの日々の他愛ない成長の話。そこに白人の囚人が彼と彼の母親を罵る。激高する彼に、母親は冷静になれと釘をさす。娘の将来を嬉しそうに話すオスカーに、ここにはもう来ないと、ワンダは冷たく言い放つ。すぐカットする息子の態度と、孫のこれからの行く末を案じて、冷たい態度を取る母親。

そんな過去を背負ったオスカーは、海に麻薬を捨てる。過去と決別しようと苦悩していたのか。約束通り、シャブ仲間が来るが、そこにはヤクはもうない。車に残していた微量のヤクを仲間に手渡す。その後、退勤したソフィーナを迎えに訪れる。母親の誕生日ケーキを受け取るオスカー。その足で彼らは、幼稚園にタチアナを迎えに行く。娘を愛する父と父親を愛する娘。どこにでもある家族の風景。幸せそうな彼ら。ソフィーナの実家に寄って、娘を今夜預かって欲しいと頼っても、断られるが、姉の家に預けろと彼女の母親はアドバイス。家に戻って、今夜出掛ける準備をする2人。どこか元気のないオスカーに具合を尋ねると、彼は初めてソフィーナに解雇されたことを打ち明けた。しかも2週間前に。今までウソをついていたことに苛立つ彼女。彼らはケンかをし、今後のことで落ち込んでしまう。その後、母親の家に家族3人で訪ねる。大晦日と母親の誕生日を家族全員で祝うために。祖父や祖母、母や父は集まり、お祝いムード。すごく大切な時間だ。女性陣は食事の準備。男性陣は居間でテレビを。どこにでもある家族の風景だ。食事を済ませ、台所で会話を交わす親子。これが最後の会話。カウントダウンのために仲間と街に出るという彼に、母親は電車を使うことを薦める。車は危険だからと。娘をソフィーナの姉に預ける。ここでも親子の最後の会話。娘は父親に行って欲しくないと、寂しそうにする。そんな彼女を宥めるオスカー。本当は、このあとどうなるか娘タチアナは知っていたのかもしれない。その後、駅で仲間と落ち合う2人。車内は新年を祝おうと、多くの人々で賑わっていた。だが、電車は遅延を報告。この時PM23:55分を告げていた。車内で新年を迎える羽目になった彼らは、車内で突然音楽を流して、踊り始める。実に若者らしい。微笑ましい光景だ。そして、白人も黒人も関係なく、皆一緒になって新年を迎えた。2009年1月1日のことだった。

電車を降りた一同は、街を歩き始める。至る所で新年を迎えた人たちが賑わっていた。道中、ソフィーナがトイレに行きたいと、ある店でトイレを借りることに。あとから中年夫婦が現れた。奥さんがトイレに行きたいと。オスカーは彼女が妊娠中だと気付き、トイレを借りる交渉をする。気配りの出来る優しい彼。中年男性が、オスカーに話し掛ける。結婚についてだ。オスカーは今の状態では出来ないことを打ち明ける。男性はそんな簡単なことを、呟く。彼が結婚当初、お金も仕事もなかったとオスカーに話す。オスカーの今の状態とまったく同じ。それに勇気付けられた彼は、ソフィーナとの結婚を意識する。

帰りの電車の中、オスカーは昼間に会った女性ケイティーと車内で遭遇する。その電車の中には、刑務所の時に仲の悪かった白人のチンピラに絡まれる。騒ぎを聞いた電車は次の駅で停まる。そこに、鉄道警察のカルーソ警官(ケヴィン・デュラン)とイングラム警官(チャド・マイケル・マーレイ)が居合わせる。現場は騒然としていた。騒ぎを鎮圧させようと、何もしていないオスカーと彼の友人に、暴力を振るっていた。何もしてないオスカーは、警官に話を聞いてもらおうとするも、抵抗とみなされ、取り押さえられてしまう。その時、事件が起きた。イングラム警官が撃った拳銃が、無抵抗の彼の背中に命中。現場は、混乱を極めていた。駅の外で待つ妻ソフィーナの耳にも、銃声は聞こえてきた。オスカーの友人は皆、捕まり、その場に救急車が現れる。運び込まれるオスカーを見たソフィーナは、取り乱してしまう。

ハイランド病院に運ばれる彼を追って、母親ワンダや家族、ソフィーナも駆けつけた。オスカーは緊急手術中。その後、逮捕された友人も釈放され、病院に合流した。依然、オスカーの容態は悪いまま。肺を一つ摘出しても尚、内出血がひどく助かるかどうかも分からない。日が昇り、辺りが明るくなった頃、彼らはオスカーの死を知らされることに。髪に祈りを捧げ続けたオスカーの母ワンダ。その祈りも虚しく2009年1月1日。AM9:15。彼は静かに息を引き取った。享年22歳だった。

フルートベール駅で 評価

  • 点数:90点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2013年
  • 上映時間:85分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:ライアン・クーグラー
  • キャスト:マイケル・B・ジョーダン、メロニー・ディアス、オクタヴィア・スペンサー、ケヴィン・デュランド etc

フルートベール駅で ネタバレ批評

映画『フルートベール駅で』について、感想批評です。※ネタバレあり

ロス暴動とアメリカ銃社会。悲しみの連鎖

私がこれから話すことは、偏った意見かも知れません。また浅はかな知識を持っての話なので、間違った意見を呈するかも知れませんが、一つだけ言いたい事は、ただ真実を述べたいということです。

今から23年前、アメリカ・ロサンゼルスで起きた、ある大きな暴動。皆さんは覚えているでしょうか?1992年4月から5月にかけて、ロサンゼルスに住む黒人たちが、暴徒化し、暴力、略奪、器物損壊等、あらゆる人、物が傷付けられ、破壊された。その事件の発端は、白人警官による激しい暴力と、その事件の裁判の不当さが原因だった。事の発端は、ロドニー・キング事件。その事件は、黒人男性キング氏はスピード違反により捕まった時、20人の白人警官が代わる代わる彼に暴力を振るい、その結果、彼を死に至らしめた。その時の暴行が残虐で、医療記録によれば、顎を砕かれ、片足は骨折、片目は潰されていたという。また、この事件の裁判も聞くに堪えないもので、陪審員は全員白人。20名の白人警官のうち、4名が起訴されたが、揃って全員が無罪になってしまった。

時を同じくして、今度は15歳の少女が射殺されると言う痛ましい事件も起きている。ラターシャ・ハーリング射殺事件。彼女はオレンジジュースを買いに商店に訪れた。彼女は店でリュックにジュースを入れて、片手に小銭を持って、レジに向かったと言うが、その店の主人が万引きと勘違い、口論になったという。怒ったラターシャはジュースを台の上に置いて、店を出たと言うが、その店の主人、韓国人女性が彼女を後頭部を後ろから発砲し、射殺してしまったと言う。

この2つの事件が引き金となって、ロス暴動が起きたと言われている。いわゆる黒人差別の温床が、浮き彫りになったのでしょう。特に前者のロドニー・キング事件では、白人警官の壮絶な暴力がクローズアップされている。この悲劇を誰が予知できたのだろうか?誰も止められなかったのだろうか?警官達の腐敗は、今に始まった訳ではなく、昔から堕落した警官は数多くいたことを忘れてはならない。映画『チェンジリング』(監督クリント・イーストウッド)でもカリフォルニア市警の腐敗は描かれている。何十年経っても、警察官の腐敗は、継続されているのがよく分かる。

また、もう一つ取り上げなければならないのが、アメリカの銃社会の問題だ。過去には1992年に実際に起きた『日本人留学生射殺事件』もまた、アメリカが容認している家庭内銃所持を巡って引き起こされた悲しい事件だ。当時高校生の被害者は留学先で参加するハロウィーンパーティの訪問宅と間違えて、事件が起きた家に訪問している。彼は家人のロドニー・ピアースが言った“Freezeフリーズ(止まれ)”と“Pleaseプリーズ(どうぞ)”を聞き間違えて進入。その直後、ピアースに至近距離から撃たれて、出血多量で死亡した事件だ。アメリカで銃乱射事件は近年、後を絶たないが、この事件は日本でも衝撃的な事件として、今も私たちの記憶に残されているはずだ。今、個人もしくは家庭を守る上で欠かせない拳銃。それが、悪い方向に多様化されている現状に、目を背けてはいけないと思う。

本作『フルートベール駅で』で描かれている警官による暴力は、各地で大きく取り上げられている。ですが、このような事は昔からどの地域でも多発していたことだが、近年このように注目され始めたのは、私たちが手にしている電子機器の普及が、世に訴えるためのツールとして活用されている。スマートフォン、パソコン、デジタルカメラ。これらが、今まで見えてこなかった真実を映す鏡なのだろう。拳銃の乱用や警察官の暴力は、各地で取り上げられている。ロス暴動から20年余。アメリカは何も学べていないのだろう。ここで本作と似たような事件について取り上げてみたい。

①2011年7月5日。ホームレスの男性ケリー・トーマス氏が警官の暴力を受けて死亡した。彼は、乗用車の強盗事件の容疑者と間違われて警察に襲撃された。

②2014年8月9日。ミズーリ州セントルイス郡ファーガソン。武器を持たない黒人少年マイケル・ブラウン氏が警官に射殺された。

③2014年7月20日。カリフォルニア州サンタ・アナ。エドガー・バルガス・アルザテ氏が近所の家の庭の前で警官に包囲され、逃げようとしたところ、警察官から執拗な暴力を受けた。

④2014年8月19日。黒人男性ケイジーム・パウエル氏がコンビニで強盗したと言う通報を受けて、現場に駆けつけた警察官によって、射殺されている。到着後、15秒程度の話。

こうした警察官による市民への、特に黒人に向けての、暴力が後を絶たない事件が、アメリカで多発している。その根底には、差別が蔓延っているのは明確である。それと同時に、銃所持への規制を厳しく取り締まるべきであるのも明確だが、どちらも彼らの考えの中には、残念ながら差別撤廃に対しても、銃規制に対しても、反対意見が多いのも、事件が減らない事実ではないだろうか?アメリカが、州個別に国を統治するのではなく、アメリカ全体で一つのルール、憲法や法律を築き上げることで、アメリカ社会の流れや考え方も変わって行くことを、心から願いたい。本作『フルートベール駅で』のオスカー・グラントのような犠牲者を生まない為に、私たちは私たち自身の考え方そのものを、根本的に180℃変えなければいけないと、私は思うのです。

フルートベール駅で 感想まとめ

本作『フルートベール駅で』は、誰が悪いのか、と言う犯人探しをする作品ではない。一人の黒人青年の生きた証を、亡くなるまでの1日に焦点を当てた異色作だ。確かに、彼オスカー・グラントは道を踏み外し、悪の道へ堕落したことは事実だが、その事実を持ってしても、彼が銃殺される理由なんて、どこにあるのだろうか?彼は亡くなるまで、家族のため、妻のため、娘のため、必死に生きていたことが、彼自身の真実の物語だろう。

この作品を見て、私たちがどうあるべき人間であるかと言うことが、問われる映画だ。どんな生き方であれ、必死に生きたこと自体が、死して尚生きた証として、残された家族の心の中に残るのでしょう。

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