『ヒミズ』あらすじとネタバレ映画批評・評価

ヒミズの概要:借金を抱えた両親を持ち、ホームレス住まいのスミダくんと、そんなスミダくんをなぜか慕い、ウザいほど付きまとう同級生、茶沢。2人はともに親の精神崩壊を目の前で見ており、彼らが抱える心の闇は深く、自分たちも精神崩壊に近い状態であった。スミダくんはとっさの勢いで父親を殺し、自分を追い詰め、未来が見えなくなっている。そんなスミダくんに未来を見せ、生きさせようとする茶沢。人間の人生、生きる意味、愛や憎しみ、すべてを、人間が生きるということのすべてを映像化した作品です。

ヒミズ

ヒミズ あらすじ

映画『ヒミズ』のあらすじを紹介します。

「スミダ、頑張れ!夢を持つんだ!」「ボート屋、なめんな。普通最高ッ!!!」「スミダくん!意義なしっ!!でも、スミダくんは普通じゃない」
ボート屋という名だけお店でホームレス生活をするスミダくんは両親が借金を抱え、毎日のように借金取りが来ていた。

なぜかスミダくんにウザッたく付きまとうも茶沢もまた、家族がはちゃめちゃだった。父親が借金を抱え逃げ出し、母親は精神崩壊状態。新しい彼氏を思われる男と一緒に茶沢が首を吊るための処刑台を作っていた。茶沢はもろい母を憎み、恐怖に怯えていたが、普段はそれを外に出すことはなくスミダくんにはちゃめちゃに絡んでいた。

親への憎しみ、抑えきれない感情をとっさの瞬間に爆発させるスミダくん。
「死にたきゃ死ね」父親にそんな言葉を吐かれた鈴木くんはついに父親を殺害する。しかし、実際に父親が動かなくなった瞬間、出た言葉は「起きろよ!!!起きろよ、くそ!!」殺したい気持ちももちろん本気だったのだが、死んでは欲しくなかったのだ。

自分が父親を殺したことでさらに精神が破壊されていくスミダくん。ともに生活していたホームレスも彼の様子を心配し、茶沢もまた彼に自首を勧めつづけた。

スミダくんとともに未来を見ようとする茶沢。茶沢と関わることで、次第に冷静さを取り戻していくスミダくん。
「時間はたっぷりある。立派な大人になる」そう茶沢に言われて、涙を流すスミダ。
まだ10代の2人が抱える心の闇はどこへ向かうのでしょうか。
悲しみ・憎しみ・愛や喜びの中で ”人が生きていく” ということをリアルに描いた作品です。

ヒミズ 評価

  • 点数:100点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★★
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

作品概要

  • 公開日:2012年1月14日
  • 上映時間:129分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:園子温
  • キャスト:染谷将太、二階堂ふみ、渡辺哲、吹越満、神楽坂恵 etc…

ヒミズ 批評 ※ネタバレ

映画『ヒミズ』について、2つ批評します。※ネタバレあり

名女優の誕生作品

主演を演じた二階堂ふみさんは、いまでは知名度が上がりTVでもよく見かけるようになりました。彼女はヴェネツィア国際映画祭で、最優秀新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞しています。可愛らしい笑顔からは想像できないほどの力強い演技を本作品で見せています。”宮崎あおいに似ている”という話を聞いたことがありますが、彼女の演技力は他の女優とは比べようもないほどの威圧感・頻拍感・緊張感を感じます。

舞台の背景が震災による津波がある

本作品は、東日本大震災で津波の被害にあった地域を舞台にしています。いたるシーンで放射能や原子力発電・復興補助金など、関連する話が出てきます。なぜ、園子温監督は震災後を舞台にしたのでしょうか。

この作品、じつは製作中に震災が発生しています。当初は原作の漫画通りに台本を書いていた監督。”日本の暗い世界に生きる世知辛い感じの若者たちの事情を描いて”いた監督ですが、震災後のストーリー変更について、こう語っています。

”1日1日が非日常だと思って、その終わり無き非日常を暮らす、暮らさざるをえない若者たちというものの、また新たなる絶望、ただしその絶望だけではもうやっていられなくなったと。単純な絶望感だけではそんなたやすいものではなくなったので、この非日常を生きるための何か打開策を、あるいは生きていく術をこの映画で自分も考えていきたいな”

毎日が平和であるという錯覚。その錯覚の中で、私たちはどう生きていけばいいのでしょうか。監督はこうも言っています。

これまでの作品は絶望的なものが多かった園監督は、今回、本昨品をつくりあげたことで、”絶望していられない、へんな言い方で言うと希望に僕は負けたんです、絶望に勝ったというよりは希望に負けて希望を持たざるをえなくなった”と言っています。

われわれは日々、何があろうと死ぬまでは生き続けなければいけません。希望なんて立派なものがなくても、未来を考えたりちょっと先のことを考えるだけで、絶望とう心の闇は少し明るくなるのかもしれません。

この世界はノンフィクションなのか?

こういった作品を見ていると、こういう生活をしている人が本当にいるのか。居るとしたら、彼らは何を考え、彼らの感情はどこへ行くのだろうか。そんなことをいつも考えています。
わたしは愛されて育ち、恵まれた環境で育ち、彼らのような人生は想像だにできません。
父親を殺した鈴木は、自分の手で父を埋める。その間も言い知れない感情が彼を襲い、訳もわからない叫び声を上げている。

「エイジ」という小説をご存知であろうか。重松清が著者であり、少年Aの事件をもとに書かれている。登場人物のエイジはとある事件を起こした同級生の気持ちやなぜそんなことをしたのかを考えているうちに、同じような事件を起こしそうになる。

本作品でも、スミダくんが通り魔と「殺してもいいんだよな」ということばに翻弄されたのもあり、父親を殺してしまう。しかし、それはスミダくんの弱さではなく、人は人によって良くも悪くも強く影響を受けるということを、強く訴えています。

「俺はだれなんだ。何をすればいいんだ。教えてくれよッ!」

きっと、愛されて育っていないだけで、人間はもろく弱い者になるんだと思います。それを「弱いせいだ。強くなれ。」ということは何も解決しない。自分が愛されていない、必要とないと思うだけで人はすでに死んでいるんです。そんなことを思わせられる作品でした。

まとめ

すばらしい作品でした。ことばにしようがありません。
現実の不幸、自分で思い込んでいる不幸。目の前に起こっている事実をどう考えるのか。それ次第で人は殺人もできるし、死ぬこともできる。そして、希望を持ったり優しさを持つこともできるのである。

本作品中の茶沢は自分も不幸な家庭環境であり、精神崩壊しつつもスミダくんを支える強さと自分を失わない芯を持っている。どんどん自分を追い詰めるスミダくんに共感できるからこそ、彼を愛おしく思い、彼の未来を心から心配している。

「泣いてでも人に助けを求めるくらいの根性見せろよ」
「合いもしない価値観を無理にでも受け入れて、…そこまでして助けてもらった後に何が残んだよ」

人間の究極の弱さは、自分の弱さを見せれないところかもしれませんね。意地を張ったり、見栄を張ったり、自分は強い・強く生きなきゃいけない・弱さを見せたらダメだ。でも、きっと人間は本当にもろいのです。
だからこそ、誰かがそばにいないといけなくて、人は1人では生きてけないのです。

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コメント

  1. 木村はむいち より:

    ミホシネマさん いつも的確な批評、感心します  凄いです

  2. 影山 美穂 より:

    当サイトにお越しいただき、ありがとうございます。木村様のお言葉、非常に嬉しく思います。これからも皆さんのお役に立てるようなレビューを執筆していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!