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映画『ヒトラーの贋札』あらすじとネタバレ感想

映画『ヒトラーの贋札』の概要:「ヒトラーの贋札」(原題:Die Fälscher)は、2007年のドイツ・オーストリア合作映画。監督は「アナトミー」、「エニグマ奪還」などのシュテファン・ルツォヴィツキー。主演は「エニグマ奪還」のカール・マルコヴィックス。共演は「タトゥー」、「青い棘」のアウグスト・ディール。他にデーフィト・シュトリーゾフ、マリー・ボイマー、アウグスト・ツィルナーなど。本作は2008年の第80回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した。

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映画『ヒトラーの贋札』 作品情報

ヒトラーの贋札

  • 製作年:2007年
  • 上映時間:96分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:ステファン・ルツォヴィツキー
  • キャスト:カール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール、デーヴィト・シュトリーゾフ、マリー・ボイマー etc

映画『ヒトラーの贋札』 評価

  • 点数:85点/100点
  • オススメ度:★★★★★
  • ストーリー:★★★★★
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★★

映画『ヒトラーの贋札』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『ヒトラーの贋札』のあらすじを紹介します。

第二次世界大戦の終結直後、モンテカルロの一流ホテルに、札束が入ったスーツケースを持ったサリー(カール・マルコヴィクス)が入ってくる。1936年のベルリン。パスポートなどを偽造する贋作師サリーは、本名サロモン・ソロヴィッチというユダヤ人だった。彼は犯罪捜査官のヘルツォーク(デーヴィト・シュトリーゾフ)に捕らえられ、マウトハウゼン強制収容所に送られるが、彼のスケッチは親衛隊隊長に気に入られてナチスお抱えの画家になる。そして5年経ったある日、彼はザクセンハウゼンの強制収容所に移送される。そこではヘルツォークが囚人に贋ポンド紙幣を大量生産させる「ベルンハルト作戦」を指揮しており、贋札工場は隔離されていたが偽造に携わる囚人たちは厚遇されていた。そこでサリーは、元印刷工のブルガー(アウグスト・ディール)やコーリャらと共に、完璧なイギリスの贋ポンド紙幣を作り出す。ある日、アウシュヴィッツから送られてきた古紙から、仲間の子供たちが持っていたパスポートが見つかる。それは子供たちの死を意味しており、彼らは自分たちがナチスに協力し、同胞を苦しめているという現実に直面した。ブルガーは決起を促すがサリーは相手にしなかった。彼らの次の任務は贋ドル紙幣の生産だった。それにはブルガーの技術が必要だったが彼は協力せず、ヘルツォークは4週間以内に成功しなければ見せしめに5人を銃殺すると宣告する。作業員たちはブルガーを密告するべきだとサリーに訴えるが彼は拒否する。そんな中でコーリャが結核に侵される。サリーは国外逃亡を企てたヘルツォーク一家のパスポートを偽造して薬を手に入れ、贋ドル紙幣は期限までに完成した。しかし結核が親衛隊に発覚したコーリャは感染防止のために銃殺される。数日後、連合軍の侵攻を理由に作業は停止され機材が運び出される。親衛隊が去った夜、ヘルツォークは隠していた贋ドル紙幣を取りに戻るが、それを見つけたサリーは奪った銃で彼を殺害する。翌朝、囚人たちによって工場の扉が破られる。戦争から解放され、再びモンテカルロのカジノでサリーは狂ったように賭け続け散在してしまう。そして知り合った女性と海岸に佇むサリーは、「金は造れる」と彼女にうそぶくだけだった。

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映画『ヒトラーの贋札』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『ヒトラーの贋札』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

生かされるという地獄

ナチスに協力させられる主人公が、元偽札作りの悪党という点が異色の題材である。ここではまっとうな人間ではなく犯罪者を主役に描いているが、戦時下の状況では善人、悪人関係なく、ユダヤ人というだけで収容所に送られていたのだから、ナチスの片棒を担ぐところのみに生きる道が残されているというのも皮肉な話である。生かされるか殺されるかも解らないまま偽札作りに協力させられるという状況は、死を待つしかない他の収容所とは違って、虜囚とされながらも生きる尊厳が複雑な心理で描かれる。死というものを目の前にぶら下げられ働かされるという生き地獄の中でも、アウシュビッツの囚人たちより恵まれている事を喜ぶ場面などを見ていると、個人差はあるだろうが極限状態の中では人の心がこれほどまでに不確かに変わるものかと痛感してしまう。

戦争と金

ナチスの強制収容所にしても、それ以降のパレスチナ問題にしても、実話レベルでユダヤ人が絡む話というものはあまりにも悲劇的である。中東とアフリカ、ヨーロッパを結ぶその地形から常に侵略にさらされ、3つの大きな宗教の聖地となっているのもその要因であり、個人的なレベルで言えば皆がささやかに平和を願って生きている筈なのに、その平和の象徴である神の名の下におびただしい血が流されたという事実を考えれば、宗教に依存する人の心理もまた怖ろしいものである。人類が通貨というシステムを発明したところから、その不幸が始まったと言っても差し支えはないだろうが、一見戦争に無縁と思われがちな”金”というものの存在が、目に見えない部分で大きな影響力を持ち、国家レベルで偽造されていたという希な実話である。贋造されたポンドは総額で1億3200万ポンドに上り、うち約50%がスパイへの報酬、武器調達用などの海外の秘密工作に使用され、その量は当時のポンドの全流通量の約10%に相当し、戦後ユダヤ人のイスラエルへの逃亡資金や、イギリス軍と戦う独立派の武器調達のためにも多くが使われたと言われ、戦後まで多大な影響を及ぼしたところはその規模の大きさに驚かされてしまう。

映画『ヒトラーの贋札』 まとめ

多くのホロコースト映画とは視点が違い、捕虜としての理不尽な悲しみより、ナチスの戦略に手を貸さなければならないという、尊厳の損失がリアルに描かれて複雑な心境に陥る映画である。犯罪者の手口を技術として敵に利用されるという事は見方を裏切るという事でもあり、囚われながらユダヤ人の同胞を裏切ることに繋がるのである。理不尽に収容され死を待ちながらも、死を前にその同志を裏切る者はいないだろうという人道的な事を考えると、敵に利用されるという立場に立たされるのがいかに精神的な苦痛であるかは言うまでもない。しかしその中でも生きられるなら、主人公が「今日の銃殺より、明日のガス室だ」と言い切ってしまうような心境に陥ってしまうのも戦争の恐怖というものだろう。キリストを裏切ったというユダの姿と重なって見えてしまい、善と悪だけでは語ることの出来ない、人の持つ原罪というものにまで言及しているような一面を併せ持つ作品である。

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