映画『リトル・ミス・サンシャイン』あらすじとネタバレ感想

リトル・ミス・サンシャインの概要:90年代アメリカでミュージックビデオ業界やCM業界で名を馳せたジョナサン・デイトン及びヴァレリー・ファリス夫妻の劇場用映画の長編デビュー作。主演には、今最も注目されているアビゲイル・ブレスリン。彼女を固めるのは個性派俳優女優ばかり。インディペンデント・スピリット賞をはじめ、東京国際映画祭、アカデミー賞などで多くの賞を受賞したインディペンデント系作品の大傑作。

リトル・ミス・サンシャイン あらすじ

リトル・ミス・サンシャイン
映画『リトル・ミス・サンシャイン』のあらすじを紹介します。

フーヴァー家の主婦シェリル(トニ・コレット)は、夫リチャード(グレッグ・キニア)と2人の子どもがいる。前夫の間に出来た息子ドウェーン(ポール・ダノ)はテストパイロットの試験を受けるために「沈黙の誓い」を立てる不幸な15歳。末娘のオリビア(アビゲイル・ブレスリン)はぽっちゃりなのに、美少女コンテストを夢見る少し痛い少女。自殺未遂を冒し、帰る場所がなくなった彼女の兄でゲイでもあるマルセル・プルースト学者のフランク(スティーブ・カレル)。そして、ヘロインの使用が原因で老人ホームから追い出された、リチャードの口汚い父親で第2次世界大戦の退役軍人のエドウィン(アラン・アーキン)。リチャードはモチベーションスピーカーとライフコーチに務め、本の出版を夢見ながらも、実現できない冴えない中年親父。それぞれ個性豊かな家族で、それでいて皆負け犬だ。

フランクがフーヴァー家に身を置いた翌日、家族の元に1本の電話が入る。それは前にオリビアが受けた美少女コンテストの予選。落選していたが、上位の欠員が出てしまい、繰上げとして、オリビアが“リトル・ミス・サンシャイン”と言う美少女コンテストに入選した電話だった。歓喜のあまり騒ぎ出すオリビア。ただそのコンテストの会場はカリフォルニア州。一家が住む州はニューメキシコ州。飛行機でも行けない、退院したばかりの兄フランクを置いて行けない。その他の諸事情で家族全員が、黄色いワゴン車、フォルクス・ワーゲンに乗って、一路会場があるカリフォルニアに向かうことに。

その道中、家族一人一人に個人的な問題が、降り掛かる。ゲイのフランクは、自殺未遂の原因ともなった元恋人と遭遇。しかも、自分より若い彼氏を連れていたことに憤り、ショックを受ける。父リチャードは、家族を貧困から守るために、本の出版の契約が破棄になってしまう。祖父のエドウィンはヘロインの過剰摂取が原因で息を引き取ってしまう。悲しみに暮れる家族だが、コンテストに間に合わすため、遺体を運ぼうにも、州外への移動は違法と知り、こっそりワゴン車に遺体を積んで、コンテスト会場に向かう。そのまた道中、今度は長男ドウェーンが色弱だと判明し、パイロットの夢を断念。路肩に止めた車中から飛び出し、「沈黙の誓い」を破って、家族への不満を露にする。旅の同行までも、拒否してしまう。オリビアになだめられて、彼は旅を再会する。果たして、家族は会場コンテストに辿り着けるのか?オリビアはコンテストで優勝できるのか?

リトル・ミス・サンシャイン 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★★☆

作品概要

  • 公開日:2006年
  • 上映時間:100分
  • ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ
  • 監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
  • キャスト:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン etc

リトル・ミス・サンシャイン ネタバレ批評

映画『リトル・ミス・サンシャイン』について、感想批評です。※ネタバレあり

主演アビゲイル・ブレスリン

今やハリウッドきっての大女優になりつつある若くして演技派のアビゲイル・ブレスリン。本作『リトル・ミス・サンシャイン』では、特徴的な黒縁メガネ、ぽっこりお腹、天真爛漫な大きな瞳が印象的だった。彼女のキャリアは、3歳の時に出演した『トイザラス』のCMからだ。ちなみに、家族は皆芸能一家で、4歳上の兄スペンサー・ブレスリンも現在、俳優として活躍している。

アビゲイル・ブレスリンの映画デビュー作は、M・ナイト・シャマラン監督の『サイン』。この時も末娘のボー・ヘス役を好演。デビュー作にして、メル・ギブソンやホアキン・フェニックスなど、名立たる名優と共演。この当時から役者としての演技力の片鱗が表れていた。その後兄のスペンサーと共に『プリティ・ヘレン』や『プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング』では兄弟役などで共演している。デビュー以来、確実にキャリアを積んできた彼女には、大きな転機が訪れたのは本作『リトル・ミス・サンシャイン』が大当たりしたことだろう。映画そのものも、インディ系作品に対して開催されるインディペンデント・スピリット賞で作品賞をはじめ4つ受賞を受けている。他にもアカデミー賞やゴールデングローブ賞など、世界が注目する映画の祭典で多くの受賞、ノミネートを受けている。例に漏れず、アビゲイル・ブレスリンもまた、アカデミー賞では助演女優賞史上4番目に最年少としてノミネートを受けて、当時話題にもなっていた。その後、少しの活躍があったものの、前作『リトル・ミス・サンシャイン』のような目立った活躍は見受けられなかったが、2009年に公開されたキャメロン・ディアスと共演した『私の中のあなた』では、実の母親を裁判を起こして訴えると言う衝撃的な内容で、またもや脚光を浴びた。次に『ゾンビランド』や『ニューイヤーズ・イブ』でも印象的な役どころに抜擢されていたが、この後もピタッと活動を控えていた彼女だったが、2010年以降に公開された作品『ザ・コール 緊急通報司令室』『8月の家族たち』『エンダーのゲーム』『ハウンター』では、立派に成熟した子役ではなく、一人の女優として難しい役柄などを好演している。また前者2作品ではハル・ベリーやジュリア・ロバーツなど、ハリウッドの大物女優との共演を果たしている。今後の彼女の活躍に期待が集まる。ハリウッドを代表する次世代の演技派女優に成長することを今からでも楽しみだ。

大型バスとロードムービー

本作『リトル・ミス・サンシャイン』で欠かせないのが、黄色いオンボロのワゴン車だ。このキーアイテムがバラバラだった家族を一つにする映画の中の素材なのだが、バスもしくはワゴン車などで旅をする映画は、いくつあるだろうか?近年日本でも公開されたトルコ発ロードムービー『おじいちゃんの里帰り』でもワゴン車が登場する。この作品も『リトル・ミス・サンシャイン』のプロットにとてもよく似ている。構成だけでなく、登場人物のキャラクターや物語の設定も似ている箇所がある。どちらも比較できそうな作品に仕上がっている。では、他にどのような作品があるだろうか?

まず私が真っ先に思い出せるのは『ゲット・オン・ザ・バス』。同作は1996年にスパイク・リー監督が制作した黒人映画。ネイション・オブ・イスラムのルイス・ファラカンが主導した「百万人大行進」に参加するためにワシントンDCに向かうため、そのバスに乗り合わせた数名の黒人たちによる群像劇。この映画の制作に当たって、ダニー・クローバーやウィル・スミスと言った黒人スターたちによる制作出資が行われたのは、有名な話だ。

次に思い浮かぶのはブラジル映画を世に広めた秀作『セントラル・ステーション』だろう。リオ・デ・ジャネイロの中央駅で、代筆屋を営むひねくれ者の中年女性ドーラの元に子供を連れた一人の女性が訪ねてくる。別れた旦那への手紙を代筆しに来たのだが、その直後その女性は幼い子供を残し、バスに轢かれて亡くなってしまう。身寄りの無くなった男の子ジョズエはドーラに助けてもらおうとするのだが…。見兼ねた彼女は、嫌々バスに乗せてまだ見ぬ男の子の父親を尋ねるのだった。その旅がドーラの性格を変える大きな出来事だった。ラストは号泣間違いなしのヒューマンドラマ。この作品で名を知らしめた監督ヴァルテル・サレスまたの名をウォルター・サレスはその後『モーターサイクル・ダイアリーズ』を制作。革命家チェ・ゲバラが誕生するまでのロードムービーだ。近年ではビートニク小説で人気を集めたジャック・ケルアックの小説『オン・ザ・ロード』を映画化。製作本数は少ないが、ロードムービーを得意とする監督の一人だろう。

3本目はオーストラリア発ロードムービー『プリシラ』だろう。ドラァグクイーンのバーナデット、ミッチ、フェリシアはシドニー在住の同性愛者向けのパフォーマー。ミッチがアリススプリングスのカジノで行われるショーの仕事のために2人の友人をバーナデットとフェリシアを誘って、3人で大型バス“プリシラ号”に乗って、旅をする姿を描く。荒廃した砂漠と煌びやかな衣装のコントラストが印象的だが、3人の個々の悩みも道中に露呈しながら、物語は進む。単なるゲイ・ムービー、ロードムービーとはいかない、ヒューマン要素も盛り込まれた名作となっている。

最後に紹介したいのはアメリカ映画の巨匠の一人であるフランク・キャプラ制作の『或る夜の出来事』だ。当時人気の短編『夜行バス』を映画化。バスが付くタイトルはヒットしないと言うジンクスからタイトルを『或る夜の出来事』変えての制作だった。筋書きは、裕福な令嬢の娘エリーは、半ば強制的な結婚が嫌で、家から逃げ出し、夜のバスに乗り込む。隣同士になった男が、失業中の新聞記者ピーターだった。馬の合わない彼らは、道中ケンカしながらも少しずつ距離を縮めてゆくと言う今ならありがちな内容だ。ただこの作品は元祖ラブコメと呼ばれ、アメリカ映画の礎を築いた作品の一つとして有名なのだ。制作費用は低予算、製作期間2週間と言う制限の中でスタッフは知恵を絞り、低予算映画を歴史に残る傑作にまで作り上げた。バスのシーンでは、予算が取れず本物のバスが使えないことから、手作りのバスを作った。ただ据え置き型のセットのため動かない。動いているように見せかけるため、なんと本番中スタッフがバスを揺らして、本当に走っているような演出をしている。なんたる苦労の表れだ。キャプラは、会社側との問題で自社での制作が出来なくなった。渋々無名で弱小スタジオ、コロンビアで制作する羽目に。これは、いわゆる左遷だったらしい。弱小の故、有名な役者もいなかったため、他会社の役者(クラーク・ゲーブルとクローデット・コルベール)を起用したのだが、弱小スタジオへの貸し出しに彼らは、不満を抱いていたようだ。だが、映画は見事に大ヒット。その年のアカデミー賞では主要5部門を受賞。弱小スタジオ、コロンビアをメジャー級に押し上げ、キャプラ自身もハリウッドを代表する監督になった。これは彼が専属で所属していた会社には、誤算だったかも知れない。この映画は、ラブコメだけでなく、ロードムービーの元祖としても今でも語られている。

ロードムービーや旅で欠かせないのは、その移動手段。バスのほかに車、バイクなどが必需品のキーアイテムだ。はたまた徒歩でのロードムービーも何作か存在する。前記事で取り上げた『さよなら、アドルフ』もまた徒歩でのロードムービーに分類されるだろう。乗り物は、人をどこまでも遠く運ぶことが出来る貴重な存在。映画の中で登場した彼らのように、バスに乗ってどこか遠くに旅に出てもいいかも知れない。その先の向こうに、私たちが変われる何かが待っているだろう。

リトル・ミス・サンシャイン 感想まとめ

この作品『リトル・ミス・サンシャイン』は非の打ち所がない程、よく出来ていると私は思う。人は誰しもが少しばかり負い目を感じて生きている。この映画に登場する家族のように。家族の中でただ一人、底抜けに明るく自信に溢れているのは娘のオリビアだけ。彼女は美少女コンテストに出場できる、それだけで胸が躍るのだろうが、いざ本番の雰囲気を見た家族は、彼女の行く末に一抹の不安を覚える。派手な衣装に濃い化粧、自信に溢れた他の参加者に、勝てるはずがないこの勝負。そう感じるのは、大人の事情を知る大人たちだけ。映画のラスト、家族はオリビアの出場を阻もうとするも、母親のシェリルに止められる。かくして、オリビアは恥を晒すためにステージに上がってしまう。最終が演技披露。彼女の選曲と振り付けは仲良かった祖父からものだ。でもその曲はエドウィンらしいあまりに卑猥な音楽リック・ジェイムスの『Super Freak』に合わせて、これまた卑猥な振り付けで会場はブーイングの嵐。主催者の女性は怒って、リチャードたちに止めさせるように詰め寄るも、一生懸命踊る娘の姿を見て、思わず踊りだしてしまう。それを見た叔父と長男も踊り出す。彼らにとって、一生懸命なオリビアを見て気付かされるのだ。たとえ負け試合であっても、最初から逃げ出すのではなく、真摯に向き合うことを。ラスト、ワゴン車は家族を乗せて帰路に着く。そこにはもう、バラバラの家族は存在しない。希望に溢れる“明日”に向けて、彼ら家族は走り出したのだ。おじいちゃんの遺体と共に。

楽曲のチョイスは最高だ。でもそれ以上に、家族が選択したことに、私は勇気付けられた。もしあの時、父親が一生懸命踊る娘を止めていたら、娘の夢を奪うことになる。それを一緒に踊るなんて。まるで主催者側に挑発するように。でも彼の選択は正しかったと、心からそう思う。また、健気に一生懸命踊る彼女の姿にも、どこか励まされる。落ち込んだ時、私は必ずこの作品を観て、勇気をもらっている。自分は負け犬ではないと。ただ、勝ち組と負け組のボーダーラインがあるとすれば、一体何を基準にしているのだろうか?

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