映画『007 ユア・アイズ・オンリー』の概要:ギリシャ沖で英国の調査船が沈没。船には潜水艦弾道ミサイルを誘導できるシステムが搭載されており、何者かがこのシステムを入手してソ連に売り渡そうとしていた。007ことジェームズ・ボンドは、東西の軍事均衡を破りかねないこの事態の捜査に乗り出す。007シリーズの第12作目。シーナ・イーストンが歌う主題歌は、英米で大ヒットした。
映画『007 ユア・アイズ・オンリー』の作品情報
上映時間:128分
ジャンル:アクション
監督:ジョン・グレン
キャスト:ロジャー・ムーア、キャロル・ブーケ、トポル、リン=ホリー・ジョンソン etc
映画『007 ユア・アイズ・オンリー』の登場人物(キャスト)
- ジェームズ・ボンド / 007(ロジャー・ムーア)
- 英国諜報部MI6に所属する諜報員。優れたスパイ活動の能力と、命の危険に晒されてもジョークを飛ばすほどの豪胆さを持ち、格闘術に長け、ヘリ、自動車などあらゆる乗り物の操縦をプロ並みにこなし、スキー、ダイビングなどスポーツも万能。唯一の難点は美女に弱いこと。
- メリナ・ハブロック(キャロル・ブーケ)
- 海洋学者ハブロックの娘。両親を殺したゴンザレスを殺して仇を取り、さらにゴンザレスを陰で操っていた人物を探るため、目的を同じくするボンドに協力する。幾たびもの危機をボンドに救われ、いつしかボンドに心惹かれるようになる。
- ビビ・ダール(リン=ホリー・ジョンソン)
- クリスタトスがスポンサーをするフィギュアスケーター。オリンピックでのメダル獲得が有力視されているが、コーチのブリンクの厳しい指導に嫌気がさし、練習をサボる口実を探している。男好きな性格で、コルティナで会ったボンドにも一目惚れしてしまう。
- コロンボ(トポル)
- エーゲ海の海運王。クリスタトスと共にレジスタントとして戦ったが、その後2人は袂を分かつ。当初、英国船沈没や海洋学者暗殺の首謀者と見られていたが、意外にもボンドに協力の意向を示してくる。
- アリスト・クリスタトス (ジュリアン・グローヴァー)
- 第二次世界大戦でレジスタンスとして戦い、英国女王から叙勲も受けているギリシャの富豪。そのため、親英派の人物としてボンドも気を許していたが、実は紳士な表向きとは裏腹に、残虐な別の顔を持っていた。
- ブリンク(ジル・ベネット)
- ビビのコーチで、自身も元は金メダリストだった。ビビに対する指導は厳しく、ビビはしばしば不満を漏らす。ビビがクリスタトスに反抗すると、彼女の指導の責任を厳しく問われたため、別のスポンサーを探そうとする。
- エミール・ロック(マイケル・ゴダード)
- 別名、ブリュッセルの殺し屋。ギリシャでのニックネームは「鳩」。診察中の精神科医を殺して脱獄。マルセイユと香港では麻薬組織に所属。現在はコロンボの右腕と思われていたが、実はクリスタトスに雇われていた。本拠地としている北イタリアのコルティナへ彼を追跡してきたボンドの命を狙う。
- ゴンザレス(ステファン・カリパー)
- キューバ人の殺し屋。ロックに雇われ、ハブロック博士を暗殺するが、メリナにボーガンで射殺され、両親の仇を討たれる。
- リスル伯爵夫人(カサンドラ・ハリス)
- リバプール出身の謎の女性。クリスタトスはボンドに「愛人商売のオーストリア女」と説明している。コロンボについての情報を得るため言い寄ってきたボンドのことを逆に探るため、ボンドの誘いに乗って一夜を共にする。しかし翌朝、ロックの仲間に殺される。
- Q (デスモンド・リュウェリン)
- 英国諜報部の発明家。ボンドをはじめ諜報部員にさまざまな武器を提供する。今回は立体人相グラフを使い、ボンドの証言から殺し屋エミール・ロックを割り出す。ボンドが乗るロータスにも毎回武器を装備しているが、本作品ではその装備は見られない。
- ゴゴール将軍(ウォルター・ゴテル)
- ソ連の将軍で、『007/私を愛したスパイ』など、007シリーズにたびたび登場する。沈没した英国船からATACシステムを入手しようと企てるが、その野望はボンドによって阻止される。しかし、ボンドのことをよく知る将軍は、そのことで彼に報復しようとはしなかった。
映画『007 ユア・アイズ・オンリー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『007 ユア・アイズ・オンリー』のあらすじ【起】
ある墓地を訪れるジェームズ・ボンド。彼が花束を置いた墓石には、「テレサ・ボンド ジェームズの愛妻 ‘69没」と彫られていた。
その静寂な墓地には不似合いなヘリコプターが舞い降りてきて、ボンドはそのヘリに搭乗する。しかし、ヘリがロンドンのビッグ・ベン上空に差し掛かったとき、操縦士のヘッドレストに高圧電流が流れ、操縦士は即死する。
操縦士を失ったヘリは墜落しかけるが、操縦管が自動的に動き、墜落を免れる。ビルの屋上からヘリをリモコンでコントロールしていたのは、白猫を抱いて車イスに座る男だった。後姿からは定かでないが、男はかつてボンドの妻を殺したスペクターの首領・ブロフェルドとも思われる容姿だった。
男はヘリを操作して危険な飛行をさせ、ボンドを翻弄する。ボンドは操縦不能となったヘリの後部座席から操縦席に乗り移ると、リモコンで操作されている操縦管の回路を破壊し、手動操縦に切り替える。そして、逆に車イスの男を追跡、ヘリの足に男の車イスを引っかけると、高い煙突の中へ車イスごと投下してしまった。
その頃、アルバニアの領海で、英国の調査船セント・ジョージが沈没した。この船には潜水艦弾道ミサイルを誘導できる装置、ATACシステムが搭載されており、船は漁船に偽装し、そのシステムの試験を行っていた。ところが漁船の網に巨大な機雷が引っ掛かり、それが爆発して船は沈没。乗組員はATACが第三者の手に渡らぬよう、システムを破壊しようとしたが間に合わず、船は海中に沈んだ。
ソ連のゴゴール将軍は、沈没したセント・ジョージからATACを取り出すようギリシャのある男に依頼し、それを買い取る契約を結ぶ。
一方、英国政府は、アルバニア領海で公に沈没船の捜索ができないため、海洋学者のハブロック博士に調査を依頼する。しかし、博士は妻と共に、キューバ人のゴンザレスという男に殺される。
ボンドは、スペインのマドリッド付近に潜んでいるというゴンザレスを追跡し、彼の雇い主を突き止めるよう国防大臣と本部長から命じられる。その際ボンドに渡された資料には、“FOR YOUR EYES ONLY.”(読後焼却)と書かれてあった。
映画『007 ユア・アイズ・オンリー』のあらすじ【承】
ボンドはスペインへ飛び、ゴンザレスのいるクラブへ向かう。そこではプールサイドで美しい女性たちに囲まれたゴンザレスがいた。そこへ八角メガネのスーツ姿の男がやって来て、スーツケースに入った大金をゴンザレスに渡した。
双眼鏡でその様子を監視していたボンドだったが、ゴンザレスの仲間に襲われ、捕まってしまう。ゴンザレスは、仲間たちにボンドを殺すよう指示し、自分は飛び込み台からプールに飛び込む。その瞬間、どこからともなく飛んできた矢がゴンザレスの背中に突き刺さり、ゴンザレスはプールの水を朱に染め、死体となって浮かび上がった。
周囲が騒然とする機に乗じて、ボンドはゴンザレスの仲間を倒し、その場を脱出する。その際、ゴンザレスをボーガンで射殺した女性と遭遇した。それはゴンザレスに殺されたハブロック博士の娘、メリナであった。
メリナを連れて逃亡しようとするボンドだが、MI6が用意したロータス・エスプリターボは、敵が無理やり窓を破ろうとしたため、自爆装置が起動して大破していた。そこでメリナが乗ってきたシトロエン・2CVで逃亡を図るが、馬力がないためにすぐ敵に追い付かれてしまう。しかし、ボンドは持ち前のドライビング・テクニックを発揮して道のない山の斜面を突っ切り、敵の追撃を振り切った。
ボンドは、MI6随一の発明家であるQに依頼し、彼の開発した立体人相グラフで、ゴンザレスに金を渡した男を割り出す。男の名はエミール・ロック。殺し屋で、現在は北イタリアのコルティナにいるという。ボンドはすぐに北イタリアに飛んだ。
コルティナでボンドは、現地の連絡員フェララの手引きにより、ギリシャの富豪で新英派のアリスト・クリスタトスを紹介される。クリスタトスは、オリンピックで金メダルを目指すフィギュアスケーターのビビのスポンサーをしており、彼女の練習を見ていた。彼は、殺し屋のロックが、エーゲ海の海運王・コロンボの右腕であるという情報をボンドに提供する。
その帰り道、ボンドはメリナの姿を見かけて、後を追う。そこへ2人の暗殺者がバイクに乗って現れ、メリナを襲う。ボンドはバイクの暗殺者を倒すと、メリナを帰国させるため、無理やり馬車に乗せ、駅に向かって走らせた。メリナは、何者かがボンドの名を語って彼女に送った電報を読み、この地に誘い出されたのだ。
ホテルに戻ったボンドの部屋のベッドで、ビビが待ち受けていた。恋多き乙女のビビは、一目でボンドのことを気に入ってしまったのだが、ボンドはビビのような少女を相手にせず、代わりに彼女をバイアスロン競技の観戦に連れ出す。
スキーでバイアスロン会場に着いたボンドとビビ。しかし、それはボンドの口実で、バイアスロン会場にビビを残し、ボンドはその場を去っていった。
ところが、そこにはロックの放った刺客が待ち受けていた。ビビの知り合いの東独のバイアスロン選手までが刺客の1人で、競技用の銃でボンドを狙撃する。他の刺客は、雪上仕様のバイクでボンドを追ってきた。
刺客の追跡をスキーで逃れるボンド。ついにはスキーのジャンプ台やボブスレーのコースにまで入り込み、ボンドは何とか敵の追跡を逃れた。
その夜、スケートリンクで練習をするビビを訪ねたボンドは、彼女から刺客の情報を聞き出す。ボンドが車に戻った時、同乗していたフェララは何者かに殺されていた。フェララの手には、鳩のマークのついたピンが握られていた。
映画『007 ユア・アイズ・オンリー』のあらすじ【転】
ボンドは地中海のコルフ島に飛び、そこでメリナと再会する。その夜、カジノのカードゲームで大勝しているボンドを、クリスタトスが見つける。2人で夕食のテーブルにつくと、少し離れたテーブルには、クリスタトスが「殺し屋ロックのボス」と説明していたコロンボが女性と夕食を共にしていた。
女性はリスル伯爵夫人といい、クリスタトスはボンドに彼女のことを「愛人商売のオーストリア女」と説明する。
ボンドはコロンボと別れたリスルに近づき、コロンボの情報を引き出そうとする。一方のリスルは、コロンボからボンドの身元を探るよう言われていたため、ボンドの誘いに乗る。2人は一夜を共にする。
翌朝、浜辺を歩く2人を、サンドバギーに乗ったロックたち一味が襲い、リスルはバギーに跳ねられ殺されてしまう。ボンドも敵に捕まり危機に陥るが、ダイバー服の男たちがやって来てボンドを救う。彼らの胸には、フェララの手に握られていたものと同じ、鳩の紋章があった。
ボンドの味方かと思われた男たちは、ボンドを殴打して気絶させ、連行した。ボンドが連れていかれた先は、コロンボの船の中だった。しかしコロンボはそこで、英国船を沈没させATACシステムを狙っている張本人は、自分ではなくクリスタトスだ、と言った。
コロンボとクリスタトスは、第二次大戦中、共にレジスタンスとして戦った仲間であったが、クリスタトスは後にコロンボと袂を分かち、ヘロインの密輸などを行っているほか、ソ連とも取引していた。
コロンボは自分の証言が真実であることを証明するため、その夜ボンドを連れて、仲間とともにクリスタトスの所有する倉庫を襲う。倉庫からは、コロンボの言う通り、英国船を沈めた機雷や、ヘロインを仕込んだロール紙が発見された。
ボンドはそこから車で逃走するロックを発見し、先回りして彼の車を銃撃する。ハンドルを取られて崖から半分落ちそうになった車を、ボンドは情け容赦なく、ロックもろとも崖下に蹴り落とした。
映画『007 ユア・アイズ・オンリー』の結末・ラスト(ネタバレ)
ボンドはメリナの協力を得て、ハブロック博士が使っていた潜水艇ネプチューン号で深海に潜り、沈没した英国船、セント・ジョージを発見する。そして、船内に残っていたATACシステムの装置を回収するが、海上では母船がすでにクリスタトスらに占拠されており、水中から浮上したボンドはATACを奪われる。
そして、ボンドとメリナはロープで縛られ、ボートで海を引き回され、サメの餌食にされそうになる。しかし、2人は協力してロープを切り、海中に沈んでいた酸素ボンベで呼吸をつないで、クリスタトスらの手から逃れることに成功する。
何とか母船に戻ったボンドたちだったが、すでにクリスタトスらは行方をくらました後で、手掛かりは絶たれたかに見えた。そのとき、船内にいたオウムが、クリスタトスの言葉を繰り返したため、ソ連とのATACの受け渡し場所が、ギリシャにあるシリルの僧院であることがわかる。
シリルには無数の僧院があるが、かつてクリスタトスと共に戦ったコロンボは、その拠点が岩山の上の修道院メテオラにあることを見抜いていた。崖上の敵に見つからないよう、ボンドは切り立った岩の斜面をよじ登って潜入を試みるが、あと一歩のところで敵に見つかり、ロープを切られてしまう。
辛うじてハーケンに繋ぎ止められたロープで落下を免れるボンドだが、敵は執拗に岩に打ち込まれたハーケンを外し、ボンドを岩山から落とそうとした。ボンドはロープにぶら下がったままハーケンを敵に投げつける。これが見事に命中し、敵は落下、ボンドはぶじ岩山の頂にたどり着く。
ボンドはメリナとコロンボ、その仲間をゴンドラで引き上げると、クリスタトスのアジトに潜入した。
修道院には、イタリアからフィギュアスケーターのビビが、コーチのブリンクと共にやって来てトレーニングをしていた。クリスタトスは、次はキューバに行くため、急いで準備をするよう2人を催促する。ブリンクは、クリスタトスの傲慢な言動に愛想を尽かし、新たなスポンサーを探そうと考えていた。
ボンドたちが建物に潜入したとき、ちょうどブリンクと遭遇したため、彼女に案内をさせ、クリスタトスを追い詰める。両親の仇であるクリスタトスをメリナが殺そうとするが、ボンドはそれを制した。その隙を狙ってクリスタトスがボンドに銃口を向けるが、その背後からコロンボがナイフを投げつけ、クリスタトスにとどめを刺す。
やがて修道院には、KGBのゴゴール将軍がATACシステムを受け取りにヘリでやって来た。ゴゴール将軍は、ATACを手にしているのが英国諜報員のボンドであることに意外な顔をするが、ボンドにシステムを渡すよう手を差し伸べる。
ボンドはATACを将軍に渡すと見せかけて、崖下へ放り投げる。ATACは途中の岩に当たって破壊された。「これでお互いにATACを持っていない。デタントだ」というボンドの言葉を聞くと、ゴゴール将軍はニヤリと笑い、再び部下と共にヘリで去っていった。
かくしてボンドは、ATACシステムがソ連の手に渡ることを防いだ。負傷したコロンボをビビが介抱していた。それを見てボンドはメリナに「(ビビが)新しいスポンサーを見つけた」と言って笑った。
MI6では、Qがボンドの腕時計に仕込んだ衛星通信装置で呼びかけていた。今回の事件を解決したボンドに対し、サッチャー首相が直々にねぎらいの言葉を伝えるためであった。その時、船上でメリナとキスを交わしていたボンドは、うるさい腕時計を外してオウムに預ける。
首相はボンドに「何か望みがあったら言いなさい」といい、オウムが「キスしてほしい」というと、サッチャーは「それはちょっと…」と言って、顔を赤らめる。国防大臣は慌てて回線を切断した。
ボンドがメリナの服を脱がそうとすると、メリナは“For Your Eyes Only, darling.”(あなただけよ)とささやく。そして、服を脱いで裸になった2人は、海底に潜り、かつてメリナの父が発掘を手掛けていた海底神殿を泳ぎ回るのだった。
映画『007 ユア・アイズ・オンリー』の感想・評価・レビュー
敵役のインパクトが薄目なのでなんとなく自分の中ではシリーズ中でも印象が薄い一本だったのだが、あらためて見返すと実に色々なアクションがあり見どころに溢れている。空中から始まり、陸上ではカーチェイスにスキーチェイス、そして驚くのは水中のシーンだ。およそ40年前にどうやって撮ったのだろうと思う。そしてこれは好みの問題も大きいがロケ地が魅力的なのだ。特に後半の断崖は誰かがデザインしたものではないのが不思議な程見事な景観で、且つ設定にも寄与している。
実はなかなか良くできた一本。(男性 40代)
監督がジョン・グレンに変わり、ルイス・ギルバートが作る娯楽映画っぽい雰囲気が一新されました。今作は正統派なスパイアクションという感じで、ロジャー・ムーアボンドのお茶目で堅苦しくない感じも無くなってしまっていた気がします。
見る人や世代によって「007らしい」と思う基準は少し違うと思うのですが、個人的にはロジャー・ムーアはルイス・ギルバート監督との作品の方が合っていたかなと感じます。
アクションのクオリティも上がってきて見所は増えましたが、ストーリーにもう少しメリハリが欲しかったなと思いました。(女性 30代)
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