映画『25時(2002)』の概要:スパイク・リー監督作品。デイヴィッド・ベニオフの小説「25時」に構想を得、監督の強い希望で9.11の同時多発テロ後のアメリカが抱える問題意識が盛り込まれている。逮捕された麻薬密売人と彼を取り巻く人々の、残された25時間の過ごし方を描く。
映画『25時』の作品情報
上映時間:136分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:スパイク・リー
キャスト:エドワード・ノートン、フィリップ・シーモア・ホフマン、バリー・ペッパー、ロザリオ・ドーソン etc
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映画『25時』の登場人物(キャスト)
- モンティ・ブローガン(エドワード・ノートン)
- 麻薬の売人。10年程稼いだが、とうとう捕まり、刑務所入所の時を待っている。裏社会で生きていただけあり、冷静で度胸がある。かつては優等生で、今も父や友を大切に想っている。
- ジェイコブ・エリンスキー(フィリップ・シーモア・ホフマン)
- モンティの友人。国語教師。実家はユダヤ系の資産家だが、その暮らしを嫌い質素な教員生活をするまじめな男。生徒の不良少女に惹かれてしまい、悩んでいる。
- フランク・スラッタリー(バリー・ペッパー)
- モンティの親友。理性的で頭が良く、証券会社で大金を動かしている。男の価値は社会的地位で決まると考え、自信に満ち溢れている。
- ナチュレル・リヴェラ(ロザリオ・ドーソン)
- モンティの彼女。プエルトリコ系移民の子だが、モンティと付き合うまで祖国に行ったことは無かった。セクシーな魅力を振りまくが、モンティを一途に想っている。
映画『25時』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『25時』のあらすじ【起】
9.11後のニューヨーク。朝靄に包まれるハドソン川を、一人の男が眺めている。麻薬密売人のモンティだ。傍らには愛犬のドイル。かつて虐待され道端に捨てられていたドイルを、一度は撃ち殺してやろうとしたモンティ。しかし、血まみれでも闘志を失わないドイルの目を気に入り、面倒を見て今では忠実な相棒となっている。
モンティの元に、一人の常連客がやって来た。既に切羽詰まった様子の客を、追い払う。実はこの時、モンティは既に警察の管理下にあった。刑務所に収監されるまでの、最後の25時間が始まった。
ドイルを連れ、コヴェントリー進学学校へ向かう。彼はかつて、奨学金を貰うほど賢く勤勉な生徒だった。バスケ部でも先発メンバーで、残した記録は最近ようやく破られたばかり。モンティは、長年の友人ジェイコブに会いに学校を訪れた。彼はこの学校で教鞭をとっていて、今夜の予定変更を伝えたかったのだ。
さえない国語教師のジェイコブは、授業でも生徒たちから軽視されていた。一人の女生徒などは彼に色目を使い、成績を上げろと教員談話室まで押しかけてくる始末。ジェイコブは内心で彼女を気に入っていたが、今日はモンティとの予定変更をもう一人の友人に伝える方が先決だ。友人のフランクは、証券会社で秒刻みの業務に追われていた。自らの分析力を信じ上司を出し抜いて、今日も大きな利益を生み出した。ジェイコブからの電話にも、ゆっくり相手をしてやる暇はない。
一方、モンティの高級アパートでは、恋人のナチュレルが彼の帰りを待っていた。朝から不在だったモンティを心配していたのだ。今の気持ちを彼女に聞かれ、逃げるか、ダメなら頭に弾丸を一発撃ちこみたいと言うモンティ。しかし、今晩は麻薬密売の元締めが自分の為にパーティーを開くし、もちろん逃げることは許されない。ナチュレルはモンティを風呂に誘うが、彼は誘いに乗る気にはなれなかった。警察がアパートにやって来たのは、彼女と風呂に入っていた時だったから。
映画『25時』のあらすじ【承】
麻薬取締局が令状を持ってやって来た時、彼らはまるで麻薬がどこに隠してあるかを知っているかのようだった。ソファのシートクッションに埋め込んである事は、ナチュレルと仕事仲間のコースチャしか知らないはずだ。コースチャは、ナチュレルを疑っている。収監前に彼女に真実を問いただすよう、けしかけるコースチャ。
パーティーの前に、モンティは父親と最後の食事をした。妻を失って以来、店の運営に手こずり荒んだ生活をしていた父。金に困って、息子が稼いできた汚い金も黙って受け取っていた。息子の逮捕を前に、父は過去を悔やみ、自分を責める。しかし、モンティには、父を責める気持ちは無かった。親子は過去を乗り越え、互いを想いやっていた。
そうはいっても、刑務所暮らしへの恐怖は大きい。特に、モンティのように美形の若い白人にとっては辛い場所になるようだ。ナチュレルのことは疑いたくないし、父親も恨んではいない。しかし一人になれば、彼らを罵りたくもなる。友人のジェイコブは愚痴ばかりだし、フランクはナチュレルに手を出すにきまっている。モンティは、アメリカの全てが憎らしくなっていた。移民も物乞いも、ゲイもブローカーもギャングもイスラム原理主義者も警官も、皆くたばってしまえ。
それでも、モンティはわかっていた。本当の大バカ者は自分自身だ。もはや誰も信じられないが、父と古い友人二人の事は信じられる。しかし、ナチュレルのことは何とも言えない。信じたいが、警察は彼女が密告したと匂わせてくる。二人の出会いは、彼女が18の時だった。まだ高校生だった彼女は、モンティの友人の妹のクラスメイトだった。公園で声をかけ、バスケの話で盛り上がったものだ。取調室で、モンティは、ナチュレルは無関係だと主張した。捜査協力の態度が刑期を左右すると言われても、そう貫きとおした。元締めのニコライの事も、とうとう口を割らなかった。
一方、友人二人は、フランクの部屋から9.11跡地を眺めていた。今晩は、モンティの為に楽しい夜にしようと誓う。真面目なジェイコブは、モンティが刑期を終えたら温かく迎えてやるつもりだ。しかし、フランクは、この関係は今夜で終わりだと考えていた。3歳の頃からの付き合いだが、今度ばかりは自業自得だ。薬を売って贅沢していた奴が刑務所から出てきて、今まで通り付き合えるはずがない。二人はクラブでナチュレルと落ち合い、モンティを待ってニコライのパーティーへ向かった。モンティの送別会であるパーティーは、有名なDJ目当ての何も知らない人々で大盛況だ。
映画『25時』のあらすじ【転】
VIPルームに通されるモンティ達。入口で、ジェイコブに色目を使う女生徒に見つかった。入場制限に引っかかった彼女は、ジェイコブの彼女を名乗って付いてくる。和やかな雰囲気で、思い思いに夜を楽しむが、ジェイコブと二人になったモンティが真面目に語りだす。自分は、堅気のジェイコブを尊敬している。自分が不在の間、犬のドイルを預けたい。ドイルの命を救ったのは、自分の人生で最良の行いだった。その責任を果たす為、協力してほしい。
次にモンティは、フランクと話をする。自分の欲深さを認め、弱気な姿を見せるモンティ。刑務所に行くのが怖いとこぼすモンティに、フランクは、思わず出所したら二人で店をやろうと提案する。モンティは信じないが、やはりフランクにモンティを見捨てることなどできなかった。強く自分を励ますフランクを見て、モンティは彼にある事を依頼する。自分の身を守るためだ。モンティにそっと耳打ちされ、フランクは頭を抱えてしまう。
その頃ジェイコブは、ハイになった女生徒に迫られていた。何とか追い払うも、同情を誘う身の上話や酒の力で、つい彼女にキスをしてしまうジェイコブ。すると、驚いたのか突然無表情になりジェイコブを見つめる女生徒。ジェイコブも、我に返りその場から逃げ出してしまう。
フランクもまた、追い詰められた気持ちになっていた。モンティの事を心配するナチュレルを捕まえ、責め立てるフランク。確かに、自分もモンティの悪行を見て見ぬ振りをしていた。しかし、ナチュレルはその金で生活していた。豪華な服を着て、ファーストクラスで祖国プエルトルコに行けたのは、モンティが麻薬を売りさばいていたからじゃないか。まるで金目当ての付き合いだったかのように言われ、怒ったナチュレルはフランクをひっぱたき、アパートへ帰ってしまう。
そして、モンティは一人、ニコライに呼び出されていた。ニコライ自身も、14歳の時に初めての刑務所暮らしを経験していた。その体験談でモンティを脅し、父親の仕事の面倒を見てやろうと持ち掛ける。もちろん、実質的には人質だ。モンティは、これまでもこれからも口を割らない事を誓い、父親は無関係だときっぱり断る。ニコライはその言葉を受け入れるが、最後に事の真相を明かした。警察にたれ込んだのは、コースチャだ。ピストルを渡し、始末しろという。しかし、モンティはこの逮捕をきっかけにニコライ達との縁を切ろうとしていた。ナチュレルを巻き込もうとしたコースチャに怒り殴りかかるが、ピストルはニコライの手下に渡し、後は好きにしろと言ってクラブを後にする。
映画『25時』の結末・ラスト(ネタバレ)
タクシーに乗り込むモンティ、フランク、ジェイコブ。既に日が昇り始めていた。アパートでドイルをジェイコブに託し、眠るナチュレルを抱きしめる。残り時間は、あと二時間だ。
人気のない早朝の公園を歩く三人。モンティは、フランクに自分を殴るようお願いした。醜く腫れあがった顔で入所して、自分の身を守るのだ。殴れないと言うフランクを挑発する。止めに入ったジェイコブをモンティが殴り、フランクもついにモンティを殴るが、その顔はモンティ以上に苦痛に歪み涙に濡れていた。
望み通り、ひどい顔でアパートに帰るモンティ。ナチュレルは驚き、介抱しながら「待っている」と言って泣いた。モンティも、人生を台無しにしてしまったと言って泣いた。そこへ、父親がやって来る。刑務所まで、モンティと一緒に行きたいのだ。息子を助手席に乗せ、明るく喋りながら車を走らせる。冗談のような口調で、西へ逃げようかと息子を誘う。ここへ戻れば捕まってしまうだろうから、自分達は二度と会えなくなってしまうが、お前が逃げる気なら何でも協力すると言う。
父親の夢のような逃亡計画を聞きながら、モンティは眠る。そのまま車は西へ西へと走り、逃亡者たちの町へたどり着く。そこでは名を変え、職を見つけ、町に溶け込むのだ。免許証だって、上手くすれば作れるだろう。ほとぼりが冷めたら、ナチュレルを呼び寄せろ。子供や孫に囲まれ、父の死の知らせが耳に入ったころ、真実を教えてやればいい。普通の暮らしがいかに幸せなのか。父に逃がされたあの日があったから、今こうして命が続いていることを。
モンティは眠る。刑務所へ向かう車の助手席で、出会った時のドイルのように顔を腫らして、自分にありえたかもしれない、もう一つの人生を夢に見ながら。
映画『25時』の感想・評価・レビュー
この映画がすごく好き。
好きすぎてポスター買ったくらい好きです。
どこが好きと聞かれたら、クリストファー・ノートンも、今はなきフィリップ・シーモア・ホフマンも、「プライベート・ライアン」でストイックなスナイパーを演じたバリー・ペッパーも、ロザリオ・ドーソンも監督のスパイク・リーも、犬のドイルも全部好きです。
強いて言うなら、映画の空気なのでしょうか。
未来に引き継ぎたい、子供に観せたい映画No.1です。(女性 40代)
なんと言ってもパッケージがかっこいい作品です。映画の雰囲気を最大限に表現しています。
監督は名匠スパイク・リー。キャストもエドワード・ノートンにフィリップ・シーモア・ホフマンという豪華さでいい作品にならない訳がありません。
特にノートンの凄さが際立っています。コメディをやったかと思えば、今作のようにハードボイルドな役も似合う彼はまさしくカメレオン俳優でしょう。(女性 20代)
本作は、麻薬のディーラーをしていたモンティが何者かのタレコミによって逮捕、収監されることが決まり、そんな彼に残された一日を描いたヒューマンドラマ。
主人公モンティを演じたエドワード・ノートンの演技に引き込まれた。
モンティは感情をほとんど表に出さないが、心の奥底に仲間や家族を想う愛が感じられて格好良く素晴らしかった。
そして、劇中に度々登場する9.11の描写も時代背景をよく表していて、本作のストーリーと繋がっている。
自分も残りの人生悔いなく必死に生きなければと思った。(女性 20代)
陳腐な言葉になってしまうが、味わい深い一本。
主人公は聖人ではない。収監を待つ犯罪者だ。そこに心温まるエピソードや教訓はない。それでもこの作品が魅力的なのは、一つにはタイムリミットがある話だからかもしれない。自分に残された自由な時間の終わりが分かっていたら何をするのか、しないのか。それを想像すること自体が一つの旅を感じさせる。
そして「自分が選べなかった人生」への想い。自分に「あったかもしれない」別の人生に想いを馳せたときに湧く感情、それがこの映画にはある。だから味わい深いのだ。(男性 40代)
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