映画『8月の家族たち』の概要:父親の失踪をきっかけに、久しぶりに顔を揃えた家族は、胸に秘めてきた本音をさらけ出し、傷つきながらもそれぞれの道を選択していく。ハリウッドを代表する実力派キャストが顔を揃え、緊迫感のある群像劇を展開する。特に薬物中毒の母親を演じたメリル・ストリープの演技は圧巻で、その迫力に圧倒される。
映画『8月の家族たち』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ジョン・ウェルズ
キャスト:メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、クリス・クーパー etc
映画『8月の家族たち』の登場人物(キャスト)
- バイオレット・ウェストン(メリル・ストリープ)
- オクラホマ州の田舎町で夫のべバリーと2人で暮らしている。初期の口腔ガンを患い、薬物中毒に陥っている。攻撃的な毒舌家で、平気で人を傷つける。
- バーバラ・ウェストン(ジュリア・ロバーツ)
- ウェストン家の長女。現在は夫のビルと14歳になる娘のジーンとコロラドに住んでいる。ビルの浮気が原因で離婚の危機に瀕している。頼りになる長女だが、非常に気が強く、人のミスを許せない。
- アイビー・ウェストン(ジュリアンヌ・ニコルソン)
- ウェストン家の次女。姉と妹が故郷を離れたため、自分を殺して両親のそばで暮らしている。三姉妹の中で一番おとなしい。従兄弟のチャールズと愛し合っているが、そのことは秘密にしている。
- カレン・ウェストン(ジュリエット・ルイス)
- ウェストン家の三女。軽薄な性格で、男にだらしない。父親の葬式に婚約者のスティーブを連れてきて、家族に紹介する。スティーブは3度の離婚歴がある遊び人。
- べバリー・ウェストン(サム・シェパード)
- バイオレットの夫。読書と釣りと酒を愛する物静かな男。詩人として成功するが、ずっとアルコール中毒で、突然失踪する。湖で溺死しており、おそらく自殺。
- マティ・フェイ・エイケン(マーゴ・マーティンデイル)
- バイオレットの妹。よく太ったうるさいおばさんで、息子のチャールズを無能扱いしている。
- チャールズ・エイケン(クリス・クーパー)
- マティの夫。温厚で心優しく、誰に対しても紳士的。息子のことも愛している。
- “リトル”チャールズ・エイケン(ベネディクト・カンバーバッチ)
- マティの息子。父親譲りの優しい性格で、母親の冷酷な仕打ちにもじっと耐えている。アイビーのことをとても大事に考えている。
- ジョナ(ミスティ・アッパム)
- ベバリーが失踪直前に雇った住み込みの家政婦。ネイティブ・アメリカンで、料理が得意。物静かだが、芯は強い。
映画『8月の家族たち』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『8月の家族たち』のあらすじ【起】
ウェストン夫妻は、オクラホマ州の田舎町でひっそりと暮らしている。3人の娘はみんな独立し、次女のアイビー以外は遠方で暮らしていた。バイオレットは初期の口腔ガンを患っており、痛みから逃れるという口実で大量の薬物を摂取している。夫のべバリーは読書家の物静かな男だったが、常にお酒が手放せない。ベバリーに雇われた住み込み家政婦のジョナは、家庭内の重苦しい空気とバイオレットの毒気に驚く。
コロラドで暮らす長女のバーバラは、アイビーから“父が失踪した”という知らせを受け、夫のビルと娘のジーンを連れて実家へ帰る。バーバラとビルは現在別居中で、原因はビルの浮気だった。思春期を迎えたジーンも反抗的で、バーバラも悩みが絶えなかった。
バイオレットはバーバラの帰省を喜ぶが、すぐにいつもの毒舌を吐き始め、バーバラと喧嘩になる。バーバラはその様子から、母親がまた薬物中毒になっているのだと確信する。バイオレットは以前も薬物中毒になっており、警察沙汰の騒ぎを起こしていた。
その晩、警察からベバリーの溺死体が発見されたという知らせがある。ベバリーは愛用のボートに乗って湖へ出て、入水自殺を図ったらしい。バイオレットは現実を受け入れられず、パニック状態になる。
映画『8月の家族たち』のあらすじ【承】
ベバリーの葬儀の日。三女のカレンが婚約者のスティーブを連れて帰ってくる。派手なスポーツカーで帰ってきたカレンは、父親が亡くなったというのにスティーブとの惚気話ばかりしており、バーバラとアイビーを呆れさせる。スティーブは若いジーンに興味を持ち、今度最高級のマリファナを吸わせてやると声をかける。
葬儀は滞りなく終了し、自宅で身内だけの食事会が開かれる。三姉妹の従兄弟のチャールズは、寝坊して葬儀に出席できなかった。母親のマティは愚鈍な息子を罵るが、父親のエイケンは息子をかばう。
大量の薬を飲んだバイオレットは、食事の席で毒舌を吐き続ける。エイケンは必死で空気を和ませようと努力するが、バイオレットは手当たり次第にみんなを傷つけていく。バイオレットの敵意は娘たちにも向けられ、我慢ができなくなったバーバラは、力ずくで母親を押さえつける。食事会は壮絶な修羅場と化し、みんなは言葉を失う。
バーバラは家中の薬を探し出し、それを全部捨ててしまう。翌日には、無責任に薬を処方した医師のもとへ怒鳴り込んでいき、告訴してやると脅しを入れる。“リハビリ施設に戻る?”というバーバラの問いに、バイオレットは“誰の助けもいらない”と答える。バイオレットは寂しく不安だったが、人にうまく甘えることができなかった。
映画『8月の家族たち』のあらすじ【転】
その夜、三姉妹だけで酒を飲む。バーバラはアイビーにチャールズと何かあるのかと聞いてみる。アイビーは去年病気で子宮を摘出しており、それをチャールズだけに相談していた。それがきっかけで2人は真剣に愛し合うようになり、故郷を離れる計画を立てていた。アイビーは親の面倒を見るのは自分だけだと我慢してきたが、もうここを離れることに罪悪感は持たないと決めていた。バーバラとカレンに、反論する資格はなかった。
翌日、恋人同士のようなアイビーとチャールズを見て、マティが怒り出す。マティはチャールズを侮辱し、それを聞いたエイケンはマティに本気で怒る。バーバラはその現場に遭遇する。
マティはバーバラだけに秘密を告白する。それはチャールズの父親がベバリーであるという衝撃の事実だった。つまりチャールズは三姉妹の異母兄弟であり、だからアイビーとのことは絶対に許せないのだとマティは語る。バーバラは、この事実を知らせずに2人を止めて欲しいとマティに頼まれる。エイケンはおそらく気づいているが、ベバリーのこともチャールズのことも大好きで、マティのことも許していた。
その晩、スティーブとジーンは庭でマリファナを吸う。目を覚ましたジョナは、スティーブがジーンにいたずらしようとしているのを見て、スティーブに殴りかかる。騒ぎを聞きつけたビルは娘に手を出そうとしたスティーブを殴り、バーバラは親を侮辱した娘を殴る。カレンも深く傷つき、その夜のうちにスティーブとフロリダへ帰っていく。
映画『8月の家族たち』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌日、ビルもジーンを連れてコロラドへ帰る。ジーンは一言も口を効かず、バーバラは黙って2人を見送る。バーバラはビルとの関係は修復不可能なのだと感じていた。
アイビーは母親にチャールズのことを話しにくる。バーバラはなんとかそれを止めようと、話の邪魔をする。揉め始めた姉妹に、バイオレットはあっさり、アイビーとチャールズが実の姉と弟であることを告げてしまう。バーバラは昔から夫と妹の浮気を知っていた。アイビーはバイオレットを“人でなし”と罵り、泣きながら行ってしまう。バーバラは必死でアイビーを追うが、アイビーは戻らなかった。
バイオレットはベバリーが手紙を残していたことを告白する。夫婦はどちらかに何かあれば、残された方が貸し金庫のお金を出すと決めていた。ベバリーの手紙には連絡先が書いてあったが、バイオレットは貸し金庫のお金を出してから、夫に連絡した。しかしもう夫はそこにはいなかった。もし、お金を出す前に連絡していたら、ベバリーの自殺は止められたかもしれない。それでもバイオレットは、彼の死の責任を自分だけに押し付けるなとバーバラを責め始める。バーバラは“ママは強いわ”と言い残して家を出る。バイオレットは混乱し、娘や夫の名前を叫び続ける。そしてもう誰もいないのだと気づき、ジョナのもとへ行く。
バーバラは車を止めてひとりになって泣く。母親のもとへ戻るべきか、バーバラは葛藤していた。そして引き返すことなく、そのまま故郷を後にする。
みんなの感想・レビュー
私はブラック・コメディだと思う。きっと観る年代で感想は変わる映画だ。毒が強いけれど私の中にもある毒と違いはない。自分をどう生きるのかは自分次第だから。自分の価値観を考えるいい映画だった。
この作品の解説を探すと必ずジャンルにブラックコメディとある。
実際鑑賞するとわかるが、全くコメディの要素なんて無い。
むしろ、スタッフは本気でブラックコメディと思ってこの映画を製作したのであれば精神を疑う。
家族が父の失踪を期に集まるが、これがかなり闇を抱えている。
あげくに父親は見つかるわけではなく自殺。
水死体で見つかるという結末で、それを期に今まで隠していたお互いの秘密や思いを隠せなくなってくる。
この映画では唯一の常人扱いをされたベブリーも、実は義理の妹に子供を産ませているという大きな秘密を隠していたことが判明する。
人間はそれぞれ様々な闇を抱え、それぞれの人生を生きているということを思い知らされる作品であった。
このようにとってもコメディ要素は0なので、それを期待しパッケージやポスターに騙されて見るのであればオススメしない。
彼女の可愛らしさは永遠では無かった。
年をとっても素敵なままの印象が強い彼女であったが、やはりアップになると老けた様子を隠せない。
それどころか本当にジュリアなのか?と疑ってしまうほど可愛い気の無い表情をする。
演技なのか、老いなのかわからないが、残念な感じである。
見ていて疲れる作品だ。
人の心の中をこれでもかと露出する作品であり、いちいち疲れる描写が多い。
姉妹と母の確執は壮絶であり根深い。
それを目の前で見させられている感が満載。
肉親同士の心の声の叫びは、憎らしさが倍増で不味いところにいると思ってしまう。
居心地の悪い作品であった。
演技力に定評がある俳優揃いの作品である。
しかもメリル・ストリープの演技は恐怖すら感じさせる恐ろしさで、アカデミー俳優の実力を思い知らされる。
内容としては思ったほどコメディタッチでもアットホームな感じでも無い。
むしろ毒たっぷりで、愛情さえも憎しみに変わっているような家族の顛末に悲しさを感じてしまった。
日本で言うところの「渡る世間は鬼ばかり」のドラマティカル版とでもいうべきか。
もうこんな映画は観たくないと思う。