この記事では、映画『HANA-BI』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『HANA-BI』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『HANA-BI』 作品情報

- 製作年:1997年
- 上映時間:118分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
- 監督:北野武
- キャスト:ビートたけし、岸本加世子、大杉漣、寺島進 etc
映画『HANA-BI』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
映画『HANA-BI』 あらすじネタバレ(起承転結)
映画『HANA-BI』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『HANA-BI』 あらすじ【起・承】
数ヶ月前刑事・西(北野武)の妻は子供を亡くしたショックで体調を崩していた。
病院に見舞いに来た西は医師から不治の病であるから完治が出来ない、余命もわずかであるという衝撃的な事実を突きつけられる。
現実から逃れられない西。
妻の傍に着いていても会話も弾まない。
そんな状況を知った同僚の堀部(大杉漣)は、西の代わりに張り込み捜査をかって出た。
しかしまたも西に良くない知らせが入る。
なんとその代わった張り込みで堀部が犯人に銃で撃たれたというのだ。
その傷は堀部の下半身の自由を奪った。
半身不随で車椅子生活を余儀なくされることとなってしまう。
西はなんとしても堀部を撃った犯人を捜したいと躍起になった。
そして駅の構内で部下の田中と発見。
すぐさま捕まえにいくが西は投げ飛ばされ、田中は撃たれ死んでしまう。
一緒にいた中村も撃たれてしまった。
堀部だけではなく部下を二人も撃たれ、一人を死に追いやってしまった。
怒りに任せた西は凶悪犯に向けて銃を撃ち、命中させた。
すでに息の無い遺体に向かって何度も弾を撃ち込むのだった。
このことがきっかけで西は懲戒処分となってしまう。
映画『HANA-BI』 結末・ラスト(ネタバレ)
余名わずかを宣告されたかわいそうな妻に最後の贅沢をさせてやりたくて、西はヤクザに借金をする。
そうして二人の夫婦はわずかだが幸せを感じることにつとめた。
そして車椅子生活になってしまった堀部は妻も彼の元を去っていた。
そして最後に元妻に言われた言葉で絵を描き始めていた堀部に絵画の道具などをプレゼントした。
西は堀部に対して申し訳なさでいっぱいだったのだ。
そして一緒に凶悪犯に向かってくれた田中の妻にもヤクザから金を借りて送金していた。
西の生活は日々落ちていく。
遂に借金返済に困り窮地に追い込まれた西は、銀行強盗をすることを思いつく。
パトカーを盗み、知り合いの車屋に改造させモデルガンも入手した。
そしてこの計画を本当に実行した西。
警察官に扮して入った銀行での強盗は成功する。
ヤクザに金を返し、そして多額の金を持って妻と最後の思い出を作るべく鎌倉旅行に行く。
しかしこのことを知ったヤクザは西を追いかけてきた。
妻との残り少ない時間を邪魔されたくない西は追ってきたヤクザ3人を射殺。
強盗の件で追ってきた元部下の中村に「少し時間が欲しい」と頼み、妻と二人で拳銃自殺をするのだった。
映画『HANA-BI』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『HANA-BI』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
最初から最後まで死が絡む映画
今までのヤクザ・刑事ものとは少しだけ違うのがこの映画。
北野武らしい死についての考え方が大いに露呈されているように感じる。
冒頭の愛する妻の余命宣告、同僚の怪我、部下の死、そして最後は自分たちの死、全てのエピソードに死がつきまといやるせなくなる。
北野映画と言えば俳優の豪華さが知られているが、今作に関しては少々不満。
大杉漣だけはベテランだが、後の俳優はいまいち。
コメディ感が強くなり少し残念である。
もう少し豪華なメンツをそろえていれば、まさに北野監督が撮りたかった男の人生観なのではないだろうか。
芸術的な演出効果
この映画は全編においてアートの香りがする。
物語自体は目新しい物では無く、想像できる範囲のものであるのだが映像の美しさは非常に魅力的である。
暴力描写もやはり多く女性に犬猿されがちなのだが、実際にはそこがメインではなく芸術性があるシーンが多く全体のバランスが良い映画だということを感じる。
また場面の間に入る奇妙な絵は北野武直筆の絵画であるらしい。
それを探しながら観るのもまた1つの楽しみなのかもしれない。
音楽の効果
久石譲の音楽は絶品である。
特に武の映画にははまっていて、この音楽が映画を良質なものに仕上げている。
全体に緊張感の走る作品ではあるのだが、このサントラのおかげでやや緊張も和らぎ物語に陶酔させてくれるのだ。
北野武監督らしい“静と動”のコントラストが圧倒的だった。特に、余命わずかな妻・美幸との穏やかな時間と、元同僚のために借金取りへ容赦なく暴力を振るう西の姿が鮮烈に対比されている。銃撃シーンは最小限なのに強烈で、逆に夫婦の旅行シーンはどこまでも優しい。ラストで西が美幸と海辺で寄り添い、静かに自ら命を絶つ結末は胸が締めつけられるほど切ないが、同時に深い愛の形として美しく感じた。(20代 男性)
西と美幸のロードムービー的な旅が、とても詩的で心に残った。美幸の笑顔を取り戻すために西が見せる不器用な優しさが、暴力的な彼のもう一つの側面として丁寧に描かれている。中盤の強盗シーンは唐突で残酷だが、彼が家族のために追い詰められていたことを痛感させる。最後、海辺で美幸が西の肩に頭を預ける描写は言葉以上に重く、銃声が響く瞬間、2人だけの世界が完成したように思えた。(30代 女性)
“美しさと暴力”をここまで両立させた作品は珍しい。特に元同僚・堀部の絶望と再生の過程が心に残った。車椅子生活となり、自殺を考えながらも絵を描くことで希望を取り戻していく姿は胸を打つ。西が彼を助けるために借金取りを殺すシーンは衝撃的だが、同時に友情の深さを感じる。ラストで西が美幸を抱えながら迎える最期は、幸福と悲劇が同時に咲く“花火”そのものだった。(40代 男性)
物語としては非常にシンプルだが、感情表現の奥行きがとてつもなく深い映画だった。美幸の病気、堀部の絶望、西の背負った罪――そのどれもが静かに積み上がっていく。特に旅行中の無言のやり取りが印象的で、セリフがないからこそ2人の関係がより強く伝わってくる。ラスト、海辺のシーンでの“静かな死”は悲しいのにどこか優しく、涙が出るほど美しかった。(50代 女性)
西の暴力は徹底して無表情で、だけど美幸に向ける視線だけは驚くほど温かい。そのギャップが全編を通して圧倒的な緊張感を生んでいる。堀部が絵を描き始める展開も、暴力的な世界の中にささやかな救いを与えているようで良かった。最終的に西が全てを終わらせる選択をするのは悲劇だが、美幸の最後の笑顔がそれ以上に強く胸に残った。(20代 女性)
“説明しない物語”の極致とも言える作品だった。西の行動には常に理由があるのに、言葉として語られないため観客がその意味を想像して補うしかない。しかしその分、海辺のラストシーンの破壊力がすさまじい。美幸が小さく微笑んだ瞬間に、西のすべての罪と愛が一つの点に収束するようで鳥肌が立った。何度も観返したくなる映画。(40代 女性)
北野映画の中でもとくに感情が強く揺さぶられた作品。西が一見無感情に暴力をふるう一方で、美幸との時間だけは丁寧に、ゆっくり流れる。人生の残酷さと優しさが同じフレームに入る瞬間の美しさは圧巻。堀部の絵が象徴する“新しい命の色”も素晴らしく、ラストの選択がそのすべてを照らし出す。静かな余韻がずっと残った。(30代 男性)
終盤、西が美幸に花を差し出すシーンがとくに印象的。暴力と死に向かって突き進む彼が唯一守ろうとしたものが、美幸の穏やかな笑顔であることが強く伝わってくる。海辺での結末は悲しいが、2人にとっては唯一の“救い”でもあったように感じた。派手さはないが、深い悲しみと温もりが美しく同居する映画。(60代 男性)
堀部の絵画シーンが、物語全体のトーンを柔らかくしていてとても良かった。暗い世界の中に差し込む色彩が、希望の象徴のように見える。西の暴力的な行動は擁護できないが、それが“家族を守るための最終手段”として描かれているため切ない。ラストの銃声は悲劇であると同時に2人の愛の完成形にも思えた。(50代 男性)
この作品は“死”ではなく“愛”の映画だと強く感じた。西は暴力の連鎖から逃れられない男だが、美幸の笑顔を守る時だけ優しくなれる。その不器用な愛が全編に漂う。物語は多くを語らないが、その余白が観客の想像力を刺激する。海辺のラストで美幸が微笑む瞬間、悲しみよりも安堵が胸に広がった。心に静かに沈む名作。(30代 女性)
映画『HANA-BI』を見た人におすすめの映画5選
ソナチネ
この映画を一言で表すと?
“静けさの中に突如訪れる暴力”が胸をえぐる北野武の原点的傑作。
どんな話?
ヤクザの中間管理職・村川が抗争から逃れるため、仲間と共に沖縄へ身を潜める。のどかな日常の中で束の間の安らぎを得るが、抗争はじわじわと彼らを追い詰め、残された道は悲劇へと向かっていく。“死”の影が静かに寄り添う、独特のテンポと空気を持つ作品。
ここがおすすめ!
『HANA-BI』と同じく“静と動のコントラスト”が見事で、日常の美しさと暴力の冷酷さが同じ世界に共存している。登場人物の心情を多く語らずに伝える北野演出が際立ち、観終わった後の余韻が深い。悲しみと諦観がゆっくり心に広がる名作。
アウトレイジ
この映画を一言で表すと?
“徹底した暴力と緊張が支配する”スタイリッシュな極道エンタメ。
どんな話?
巨大暴力団の内部抗争を背景に、裏切り・策略・報復が次々と繰り広げられる。主人公の大友は、組織の上下関係や裏切りに翻弄されながらも、自分の道を模索していく。シンプルでありながら力強い構成が魅力。
ここがおすすめ!
『HANA-BI』の“瞬発的でリアルな暴力”を好んだ人に最適。無駄な感情表現を削ぎ落とし、淡々と進む中で時折炸裂するアクションが強烈なインパクトを残す。北野武の演出の鋭さを味わいたい人におすすめ。
アカルイミライ
この映画を一言で表すと?
“生きる意味をそっと問いかける”黒沢清の静かな感情劇。
どんな話?
仕事にも人生にも希望を見失った青年・成島が、周囲の人物や不思議な出来事との関わりを通して、自分の内面と向き合っていく。事件と日常が淡々とつながり、現実と幻想が溶け合うような独特の空気感を持つ作品。
ここがおすすめ!
『HANA-BI』のように派手さはないが、“静かな時間の中に潜む感情”を丁寧に描写。登場人物の心の揺れを繊細に掬い取る物語で、観る人の解釈によって深さが変わる。孤独や喪失を抱えた人の心に静かに寄り添う映画。
ミッドナイト・ラン(異色の推薦)
この映画を一言で表すと?
“逃亡劇の中で生まれる奇妙な絆”が胸を温めるアクションドラマ。
どんな話?
賞金稼ぎのジャックは、横領容疑の会計士デュークを連行する任務を受ける。しかしマフィアやFBIが彼らを追い、過酷な道中で二人は衝突しながらも心を通わせていく。男同士の不器用な友情が描かれたロードムービー。
ここがおすすめ!
暴力の影に“優しさと人間味”が潜む点が『HANA-BI』と共通している。ハードなシーンもあるが、心温まる瞬間が必ず訪れる。過去の罪や後悔を抱えた人物が、旅の中で少しずつ解放されていく姿が胸にしみる。
シリアスマン(A Serious Man)
この映画を一言で表すと?
“日常の不条理と孤独をブラックユーモアで描く”静かな衝撃作。
どんな話?
真面目に生きてきた教授ラリーが、仕事、家族、宗教、全ての面で次々と不運に巻き込まれ、人生の意味を問い直す羽目になる。日常の中に潜む不条理を淡々と描きながらも、どこか笑える皮肉な物語。
ここがおすすめ!
『HANA-BI』のように“感情を内側に閉じ込めた人物のドラマ”が好きな人に特に響く。派手さは一切ないが、静かに胸を刺すような重さがある。淡々と積み上がる出来事が観客の心をじわりと侵食し、観終わったあとに深い余韻が残る。






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