映画『嗤う分身』の概要:サイモンは存在感が薄く、要領が悪い男だった。周囲から存在が認識されず、孤独を抱えていた。そんなサイモンの癒しとなっていたのは、同僚のハナの存在だった。ある日、サイモンと瓜二つの男が新入社員として職場に現れる。
映画『嗤う分身』の作品情報
上映時間:93分
ジャンル:コメディ、ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:リチャード・アイオアディ
キャスト:ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、ヤスミン・ペイジ etc
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映画『嗤う分身』の登場人物(キャスト)
- サイモン・ジェームズ(ジェシー・アイゼンバーグ)
- 存在感が薄く、要領が悪い。同僚のハナに思いを寄せているが、行動に起こす勇気はない。こっそりハナの部屋を覗き見し、ハナが捨てた絵を回収している。
- ジェームズ・サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)
- サイモンと瓜二つの男。サイモンとは正反対の性格で、社交的で要領が良い。女遊びが激しい。
- ハナ(ミア・ワシコウスカ)
- サイモンの同僚で、コピー室で働いている。ジェームズに好意を寄せる。孤独を抱えている。
映画『嗤う分身』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『嗤う分身』のあらすじ【起】
サイモン・ジェームズは存在感が薄く、要領が悪い男だった。7年間も勤務している会社では、守衛に顔を覚えてもらえずIDカードを見せるように要求される。さらに、上司には仕事の効率化についての意見を無視され、娘のメラニーの教育係を押しつけられる。
サイモンの母は介護施設に入っていた。母からしつこく呼び出しを受け会いに行くが、母はサイモンと会話せずすぐに眠りにつこうとした。母は周囲の人に、サイモンのことを変わった息子だと話していた。サイモンは施設の職員に呼ばれ、今月の入金が足りないと言われる。サイモンは説明もなく値上げしたことを抗議するが、職員は聞き入れなかった。結局、サイモンは財布の中に入っている全財産を渡した。それでも、入金額は足りなかった。
サイモンは同僚のハナに思いを寄せており、向かいのアパートに暮らす彼女の部屋を覗き見していた。ある夜、ハナが紙切れをゴミ捨て場に捨てたため、サイモンは回収した。紙切れはハナが描いた絵だった。サイモンがその絵を見ていると、窓の外から視線を感じた。望遠鏡で外を覗くと、双眼鏡を使ってこちらを見ている男性が屋上にいた。男性はサイモンに手を振った後、飛び降りた。即死だった。
飛び降り自殺の現場でサイモンはハナと会い、喫茶店に行くことになった。サイモンはハナとさりげなく手を繋ごうとするが、失敗に終わる。ハナは昨夜、飛び降りた男性に付き纏わないで欲しいと怒りながら伝えていた。ハナが自分のせいで自殺したのではないかと気に病んでいたため、サイモンは慰めた。サイモンがハナと良い感じに会話を進めていると、母から電話がかかってきた。サイモンは母との電話を簡単に終わらせ急いで席へと戻った。だが、ハナは楽しかったというメッセージを残して帰っていた。
映画『嗤う分身』のあらすじ【承】
サイモンはテレビを質屋に入れて、ハナのためにピアスを購入した。社員全員強制参加のパーティーに出席したときに、ハナにプレゼントを渡そうとした。しかし、名簿の中にサイモンの名前が見当たらず、パーティーに出席することができなかった。サイモンはこっそりパーティーに入ろうとするが、警備員に見つかり追い出されてしまう。
サイモンの部署にジェームズ・サイモンという新入社員が入社してきた。ジェームズはサイモンと瓜二つだった。サイモンは驚きのあまり、倒れてしまう。だが、同僚のハリスはサイモンの影が薄いため、サイモンとジェームズが似ていることに気づいていなかった。
サイモンはジェームズと出かけた。ジェームズはサイモンとは正反対の性格で、男らしく明るい性格をしていた。サイモンはハナに思いを寄せているが、上手くアプローチできない悲しい胸の内を話した。ジェームズは話を聞いていたが、途中で眠ってしまう。サイモンはジェームズを自宅に連れて帰り、ベッドに寝かせた。実は、ジェームズは眠っておらず、サイモンの様子をこっそり伺っていた。その後、サイモンが寝ている間に、ジェームズはいなくなっていた。
映画『嗤う分身』のあらすじ【転】
ジェームズはサイモンに適性検査の代役を任せ、代わりにメラニーの指導係を引き受けた。サイモンは替え玉がバレるのではないかと恐れるが、顔が同じだったためバレることはなかった。ジェームズはサイモンに後のことを任せ、メラニーと楽しい時間を過ごした。
ジェームズはハナへのアプローチ方法をサイモンに伝授した。サイモンはハナと出かけることになった。だが、ハナはサイモンを通して、ジェームズをデートに誘おうとしていた。サイモンは断ることができず、引き受けてしまう。ハナはサイモンに感謝するが、サイモンの名前すらまともに覚えていなかった。
サイモンはジェームズの振りをしてハナとデートをすることになった。デートの間、ジェームズが無線でサイモンに指示を出していた。だが、サイモンはジェームズの指示通りに行動することが耐えられなくなってしまう。ジェームズはサイモンをトイレに呼び出し、入れ替わることにした。ジェームズは帰ろうとしたハナを呼び止め、何かを話し合った後キスをした。サイモンはその光景を目撃し、ショックを受ける。
サイモンは職場にレポートを提出しようとするが、ジェームズに奪われてしまう。ジェームズは自分が書いたものとして、奪ったレポートを上司に提出した。サイモンは驚き上司に訂正しようとするが、聞き入れてはもらえなかった。
映画『嗤う分身』の結末・ラスト(ネタバレ)
サイモンは望遠鏡でジェームズとメアリーが一緒にいる現場を目撃し、電話でハナを呼び寄せてジェームズ達と鉢合わせるようにした。サイモンの策略は上手くいくが、ハナがショックで泣いてしまう。サイモンはそんなハナの姿を目撃し、心を痛める。ジェームズに女遊びをやめるよう忠告するが、聞き入れなかった。ジェームズはサイモンのオフィスの鍵を奪い、これからも女遊びを続けることを宣言した。
サイモンはジェームズをクビにしようとするが、上司を始めサイモンの意見を聞いてくれる人は誰もいなかった。サイモンは逆に会社から追い出されてしまう。遺書を書いて自殺しようとしたとき、向かいのアパートにいるハナの異変に気がついた。ハナは薬を飲んで自殺を図り、流産していた。サイモンが発見したお蔭で、ハナは無事だった。
病院から部屋へと戻ったハナは、サイモンから借りた上着のポケットに入っている物に気づく。それは、ハナへのピアスの贈り物とハナが捨てた絵が貼られている手帳だった。
施設から母が亡くなったという伝言が留守電に残っていた。サイモンが葬儀に行くと、ジェームズが自分の振りをして参列していた。サイモンはジェームズの顔を殴った。ジェームズが鼻血を出すと、サイモンも同じように鼻血が出た。
サイモンはハナに会いに行った。ハナは自分の目の前にいるのが、サイモンだとはっきりと分かっていた。サイモンはハナに別れを告げ、部屋へと戻った。ジェームズがベッドで眠っていた。サイモンはベッドとジェームズの腕を手錠で繋いだ後、自分の顔や手をナイフで傷つけた。そして、ジェームズに手を振り、向かいのアパートから飛び降りた。サイモンの身体は飛び降り自殺した男性とは違い、ネットに当たって地面に落ちた。ハナはサイモンに駆け寄った。そこに、救急車が到着する。サイモンは救急車で運ばれ、ハナは付き添った。ジェームズは部屋で血を流して倒れていた。
映画『嗤う分身』の感想・評価・レビュー
薄暗いシーンが続いていたり緊迫感がある音楽が使われていたり、独特な雰囲気を持つ作品だった。コメディ×サスペンス作品と言っても、爆笑が起こるような笑いではなくブラックユーモア的な笑いのため、万人受けはあまりしないと思う。ストーカー気質のあるサイモンは若干気持ち悪さを感じるが、自分が上手く出せなかったり周囲に認めてもらえなかったり、そういう孤独感を感じる気持ちは理解できた。見終わった後あまりすっきりした気持ちにはならないが、抽象的な作品が好きな人なら楽しめると思う。(MIHOシネマ編集部)
みんなの感想・レビュー
アイゼンバーグの一人二役が見事な作品である。
挙動不審で目立たない男と、何をやるにしても要領がよく傲慢な男を使い分けている。
惜しむべき点は、周囲の反応があまり描かれなかった点である。
唯一描かれていたのは、ミア・ワシコウスカ演じるコピー係のハナの心境の変化だ。
自分の目の前で豹変を繰返すサイモン(ジェームス)に対し、人でなしという彼女の言い分が、周囲の言い分を代弁していると言える。
それ以上のものを感じて、雇ったのが社長なのだとすれば、この映画に学ぶべき事はあるだろう。
①アイゼンバーグの真骨頂
ヲタクを演じさせれば右に出るものがいないというアイゼンバーグの2役で持った映画である。
徹底的に主人公の視点に立って描く事で、解離する二重人格の主人公の苦悩を描き出す事に成功している。
もしもこれが、サイモンとジェームスを取り巻く、周囲の目から描いたとすれば、映画は冒頭10分で終わってしまうだろう。
周囲の人間にとって、サイモンはジェームスであり、ジェームスはサイモン。
今日はどちらの人格が現れるだろうかと、思っているからだ。
②社長はサイモンの人格障害を知っていた
社長は、おそらく何らかの形で、サイモンの解離人格障害が判っていた。
だからこそ、娘の世話というつまらない仕事をサイモンに、おしつけ周囲の社員にも、彼には最低限の事務的コンタクトしか取らぬよう注意していたのである。
しかしサイモンが、ある日マンションの上から飛び降りる『ある男』を見た事から、自分の中にある『ジェームス』を目覚めさせてしまい、社長の管理下におけなくなってしまう。
③原作を生かしていたか
残念な点の1つとして、この映画がドスドエフスキーの『分身』のリメイクであるにも関わらず、その点を生かしきれていなかった事である。
この映画公開前に、同じ大映系列の映画館で、ジェイク・ギレンホール主演の『複製された男』が公開された。
浮気している男が、いかにして浮気を隠し、本妻の元に戻るか、その過程が描かれていたのだが、描き方が、この映画と瓜二つ、もしくは、それ以上に最後の最後まで結論が判り辛い映画になっていたのだ。
その映画の後に公開されたのが、この映画だったので、観るものとしては、謎解きも簡単かつ二番煎じになってしまったかもしれない。