映画『あの夏、いちばん静かな海。』の概要:1991年制作の日本映画。北野武監督の第三作目の作品で、聾唖のカップルがサーフィンにはまりひたすら練習を積んでいき、最後は海に消えてしまうという悲哀に満ちた物語である。
映画『あの夏、いちばん静かな海。』 作品情報
- 製作年:1991年
- 上映時間:101分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:北野武
- キャスト:真木蔵人、大島弘子、河原さぶ、藤原稔三 etc
映画『あの夏、いちばん静かな海。』をフルで無料視聴できる動画配信一覧
U-NEXT | × |
---|---|
Hulu | × |
Amazonビデオ | × |
dTV | × |
TELASA | × |
TSUTAYA DISCAS | × |
ビデオマーケット | × |
Netflix | × |
※動画の配信情報は2022年5月時点のものです。配信状況により無料ではない場合があります。最新の配信状況は各動画配信サービス(VOD)の公式サイトでご確認ください。
映画『あの夏、いちばん静かな海。』 評価
- 点数:75点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
映画『あの夏、いちばん静かな海。』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『あの夏、いちばん静かな海。』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『あの夏、いちばん静かな海。』 あらすじ【起・承】
茂(真木蔵人)はゴミ収集車の清掃員として働いている。
ある日茂は仕事で言ったゴミ箱にサーフボードが捨てられていることに気がつく。
それは先端が欠けてはいたのだが、直せそうだと判断し持ち帰る。
そして恋人の貴子と海に行きサーフィンのまねごとをしてみた。
しかし当然初心者の茂るには出来るはずも無い。
練習を続けるうち、結局修正した先端も壊れ使い物にならない。
しかしサーフィンにはまった茂は新品でも中古でも良いから欲しくなり、貴子と見に行く。
サーフボードは思ったより高く、新品は12万以上、中古でも8万円はした。
手持ちも無く諦めた二人。
だが諦めず給料日に12万円を持ってあのサーフボードを買いに行った。
それ以来、休みになると海で練習をした。
ある寒い日、その日も同じように練習に来た茂にボードを買ったオーナーが中古のウェットスーツをくれた。
そして千葉でサーフィンの大会があることを教えてくれる。
映画『あの夏、いちばん静かな海。』 結末・ラスト(ネタバレ)
大会に出てみよう思い二人は千葉に向かう。
しかし車は無いため、途中で軽トラックに乗せてもらった。
だが軽トラは3人乗りが違反。
この運転手は捕まってしまった。
大会についても呼び出しの放送が聞こえなかった茂は失格となる。
オーナーの中島が後から来てくれたおかげで車で送ってもらう。
茂はサーフィンの魅力にとりつかれた。
中島はそんな茂に技術を教えてくれ、日に日に上手になっていった。
しかしのめり込みすぎて会社に行かなくなってしまう。
そんな茂を心配した貴子は会いに来て涙を流した。
そして会社の先輩もやってきて、会社に戻るよう怒ったのだ。
ウェットスーツで良いからと、そのまま仕事をさせた先輩の有り難みを感じた茂はその日からきちんと仕事もすることにする。
二度目のサーフィンの大会の日。
貴子も来てくれた。
中島もコーチとして同行してくれ、茂は努力の結果6位入賞した。
会社の先輩も一緒に喜んでくれて茂は最高だった。
その後も茂は海に行きサーフィンの練習を積む。
そんな茂を楽しそうにみつめる貴子だった。
しかし雨の日、いつものように練習に行った茂を追った貴子はサーフボードだけ砂浜に打ち上げられていることに気がついた。
茂はいない。
貴子はサーフィン大会で入賞した写真とボードを持って、以前いった大会の場所まで行った。
そこで海にボード共に流すのだった。
映画『あの夏、いちばん静かな海。』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『あの夏、いちばん静かな海。』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
会話の無い恋人達
この作品の主人公とヒロインは聾唖である。
しかし北野監督はこの二人のやりとりを言葉無しで見事に表現している。
また、聾唖であることを何の違和感も無く見せてくれるのはさすがで、監督自身が障害に対して差別的で無い事が見受けられるのも非常に気持ちが良い。
これに対して北野監督が「台詞作るのが面倒だから聾唖にした」という表現があったが、実際には差別的発言では無く奥行きのある演技を撮影したかったからなのでは?と勝手に良くとってしまう。
監督は特別扱いもせず、同情もせず。
ただ淡々とこの二人の人生の楽しみを描いている。
ボード販売店のオーナーが人間味溢れている
この色々二人にしてくれるオーナーは、実は最初ボードを買うときに他店よりも高く販売してしまったことに罪悪感をもっている。
だからこそウェットスーツをくれたり、大会を教えてくれたりする。
親切であり、聾唖の人への偏見を持った自分を恥じたのか。
いずれにしろこの作品の中で一番人間くさい人間が彼であることは一目瞭然だ。
ラストシーンの悲哀
まさか最後で茂が死ぬとは思わなかった。
北野映画はやっぱり最後に誰か殺すのだなという印象が強い。
確かに単純にサーフィンが上手くなるサクセスストーリーだと彼らしさも無く、そんな映画ならなにも北野監督のもので見る必要も無い。
その手のジャンルならハリウッドの映画を見ればきっちり爽やかに爽快な気分にさせてくれるに違いない。
人間の悲哀を描いた人間ドラマ。
まさにそんな見解がぴったりの作品である。
ろうあ者同士のカップルとサーフィンというのは正直、結びつきませんでしたがこの作品を見ると、私が勝手に障害に対して偏見を持っていたのだと気付かされました。たまたま始めたサーフィンにどんどん魅了されていく茂の姿はとても生き生きしていて、本当にサーフィンが好きなのだなと微笑ましく見ていました。そんな彼を見守る貴子の表情がすごく柔らかかったのも印象的です。
北野武と言うとヤクザ映画の印象が強かったので、こんなにも優しくて暖かくて悲しい作品も作るのだと驚いてしまいました。(女性 30代)
本作は、ある聴覚障害を持つ若いカップルが海でサーフィンの練習を重ね、最後には海へ消えていく姿を描いた北野武監督によるヒューマンドラマ作品。
北野武監督の作品はヤクザ映画のイメージが強かったので、この作品は障がいを持つカップルがサーフィンの練習に励む静かで爽やかな雰囲気で意外性があった。
北野ブルーの美しさも印象的だった。
そして、海でのラストシーンは、それまでの静けさを一気に打ち破るような展開で切なさと優しさの残る終わり方で穏やかな気持ちになれた。(女性 20代)
映画『あの夏、いちばん静かな海。』 まとめ
北野武監督の映画は人間味溢れていて、考えさせられるものが多い。
最近はヤクザ映画ばかりが彼らしい映画となっているが、このような海を映した爽やかな作品も何件かある。
聾唖ということに目を向けた彼の興味も面白く、若い聾唖のカップルがサーフィンを通して言葉など無くても心を通わせられるという素敵なシーンがたくさんある。
実際には内容がしっかりしていれば、台詞などいらないのかもしれない。
そんな風にさえ思ってしまうほど静かで穏やかな作品であった。
みんなの感想・レビュー