映画『あげまん』の概要:「お葬式」「タンポポ」「マルサの女」と立て続けにヒットを飛ばし日本映画界に旋風を巻き起こした伊丹十三監督・脚本作品の第五弾。男にツキをもたらす女“あげまん”を描いた1990年公開の日本映画。
映画『あげまん』 作品情報
- 製作年:1990年
- 上映時間:118分
- ジャンル:コメディ
- 監督:伊丹十三
- キャスト:宮本信子、津川雅彦、大滝秀治、金田龍之介 etc
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映画『あげまん』 評価
- 点数:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『あげまん』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『あげまん』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『あげまん』 あらすじ【起・承】
捨て子のナヨコ(宮本信子)は中学から芸者の置屋に預けられ、18歳の時に62歳の僧侶多聞院に水揚げされた。
水揚げの仲介役を務めたのは一ツ橋銀行頭取の千々岩(大滝秀治)だった。
ナヨコを妾にしてから多聞院の位はどんどん上がる。
3年後、多聞院が亡くなった際、ナヨコは多聞院の母から“あんたはあげまんだ”と告げられる。
10年後、ナヨコは千々岩の秘書として働いていた。
ある朝、満員電車の中で一ツ橋銀行の支店長をしている鈴木主水(津川雅彦)を痴漢と間違え喧嘩となり、それを見ていたコンピューター見合い会社の寿から声をかけられる。
独り身の長かったナヨコは寿の会社で相手を探してもらい、政界を裏で操る大物の大倉善武老人を紹介される。
大倉はすぐにナヨコのあげまん具合を見抜き、彼女をすっかり気に入る。
鈴木は一ツ橋銀行の得意先の娘瑛子と婚約していたが、最近は仕事も女性関係も全く上手くいかず、ついには瑛子を怒らせ別れてしまう。
得意先の瑛子の父親を怒らせたことで、鈴木は千々岩の怒りを買い左遷の危機を迎える。
しかし、ナヨコのおかげで左遷を免れ、2人は急接近する。
1年後、ナヨコの支えで仕事も女性関係も順風満帆となった鈴木は、ついに千々岩から取締役への昇進を告げられる。
しかし、その条件は瑛子と復縁することであり、鈴木はその条件をのみ瑛子とよりを戻す。
それを知ったナヨコは深く傷つき、大倉のところへ行く。
映画『あげまん』 結末・ラスト(ネタバレ)
ナヨコは大倉の購入した置屋で再び芸者を始め、2人は楽しく暮らし始める。
大倉は、現在の総理が“10億円で総理の席を譲ってもいい”と言っていることを、次期総理の椅子を狙う鶴丸に話す。鶴丸は大倉に金の融通を頼み、大倉は承知する。
千々岩がゲイであることを知っていた大倉は、ゲイクラブで褌男と抱擁する千々岩の写真を手に入れ、それをネタに千々岩を強請り、帳簿に残らない形で鶴丸に10億円融資するよう告げる。
そして、この件を一任されたのが鈴木であった。
鈴木は鶴丸の接待のお座敷で、ナヨコと久しぶりに再会する。
そこには鶴丸の次の総理と言われる犬飼政調会長も来ていた。
犬飼はナヨコを気に入り、しつこく言い寄る。
その晩、ナヨコは鈴木から“よりを戻したい”と言われるが断る。
そんな中、鶴丸が倒れ、犬飼は鶴丸が肝臓ガンの末期で長くないことを知る。
犬飼はナヨコを譲ることを条件に大倉へ鶴丸の秘密を教え、ナヨコをホテルで手篭めにする。
ナヨコは自分を売った大倉に怒りをぶつけるが、大倉は発作を起こす。
死期を悟った大倉は、ナヨコに10億の金になる鶴丸の念書を託して病院へ搬送される。
鶴丸が次期総理になれないと鈴木の立場が危なくなることを察したナヨコは、念書を持って鶴丸を訪れ、鶴丸に末期ガンのことを教えてやる。
観念した鶴丸はナヨコに10億を返すことを約束し、資金集めのパーティの最中に死ぬ。
鶴丸の死によって融資の責任をすべて押し付けられた鈴木は、千々岩と瑛子に追い詰められ、警察に突き出されそうになっていた。
そこへナヨコが10億円の札束を引きずりながらやってきて、鈴木のピンチを救う。
映画『あげまん』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『あげまん』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
伊丹監督の描くあげまんとは
宮本信子演じる主人公ナヨコは男にツキを呼ぶ“あげまん”なのだが、別に特別な何かを持っているわけではない。
伊丹監督はこの映画で“こういう女を男は求めている”という男から見た理想の女性像を描いているのだろう。
ナヨコはとても素直で情が深い。そして男によく尽くす。
ナヨコと対照的な存在として描かれている瑛子と違い、自己欲のために男の尻を叩くようなことはせず、ただ男を盛り立ててくれる。
つまり男の幸せがナヨコの幸せであり、ナヨコはそれで満足なのだ。
ナヨコのような女があげまんだと主張すると“女性蔑視だ!”と一部の人たちからは怒られそうな気もするが、ナヨコが男の理想であることには現実味があり“結局、男はこういう女が好きだろ?“という伊丹監督の問いかけは正しい。
大滝秀治という役者
宮本信子、津川雅彦など伊丹映画の常連組の中に大滝秀治がいる。
悟りきったような老人の印象が強い大滝秀治だが、伊丹映画ではかなり癖のある役を演じていて、これが面白い。
本作では、腹黒い銀行頭取の千々岩役で、しかも千々岩は男色という設定だ。
褌男だらけのゲイクラブで加藤義博演じる若い愛人を愛でる恍惚の表情と、それを隠し撮りされた写真を見た時の無言の慌てぶりは絶品だ。
晩年の大滝秀治しか知らない人には想像できないだろうが、大滝秀治はコメディをやらせてもうまいし、悪役が結構ハマる。
一癖二癖あるような人物を、あの独特の間で大滝秀治が演じると妙なリアル感と味が出る。
善人を演じる大滝秀治より、こちらの大滝秀治の方が本人も生き生きしているように見えるのは気のせいだろうか。
あげまんという言葉は今でこそ当たり前に使われますが、この作品から生まれた言葉なのだと知り驚きました。今作で描かれるナヨコは男の理想であり、夢のような女性。こんな女性がいたらいいなという妄想を作品にしたようなストーリーで女の私としても、とても興味深く見られました。
ナヨコは優しいだけでなく、奥ゆかしさや男を立てる器の大きさを持ち合わせていて、更にラストのシーンでは強さまでも見せてくれました。
ナヨコのような女性は女も憧れる存在です。(女性 30代)
映画『あげまん』 まとめ
商業デザイナー、CMディレクター、エッセイスト、俳優、イラストレーターなど、多才な前歴を持つ伊丹監督は、観客が喜ぶツボをよく心得ている。
ネタ選びとタイトルだけ見ても、この監督の異質なセンスを感じる。
本作のタイトル“あげまん”も、内容そのものを表しているのに強いインパクトがあり、この映画をきっかけに“あげまん”という言葉は市民権を得た。
本作は伊丹映画特有の毒を含みつつも、かなり気楽に楽しめる映画になっている。
伊丹映画の魅力はなんといってもそのエンターテイメント性にあるので、邦画にはなかなかないセンスのいい娯楽映画としてオススメしたい一本だ。
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