映画『恋愛小説家』の概要:ジャック・ニコルソン演じる癖の強い恋愛小説家とヘレン・ハント演じるシングルマザーによる不器用な大人のラブストーリー。本作で主演の2人は共にオスカーを受賞。1997年製作のアメリカ映画。
映画『恋愛小説家』 作品情報
- 製作年:1997年
- 上映時間:183分
- ジャンル:ラブストーリー、コメディ
- 監督:ジェームズ・L・ブルックス
- キャスト:ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハント、グレッグ・キニア、キューバ・グッディング・Jr etc
映画『恋愛小説家』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『恋愛小説家』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『恋愛小説家』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『恋愛小説家』 あらすじ【起・承】
メルビン・ユドール(ジャック・ニコルソン)はマンハッタンのアパートに1人で住む恋愛小説家で、性格は偏屈、そして異常なほどの潔癖症だ。
隣人の画家サイモン(グレッグ・キニア)がゲイで犬(バーデル)を飼っていることを毛嫌いしており、周囲からは毒舌家の冷血人間だと思われていた。
メルビンは毎日同じ店で食事をするが、自分の席も勝手に決め“不衛生だ”という理由で使い捨てのナイフとフォークまで持参する始末。当然、店からは嫌われていた。
ただ、ウエイトレスのキャロル(ヘレン・ハント)にだけは弱く、彼女がメルビンの担当ウエイトレスのようになっていた。
キャロルはシングルマザーで、喘息に苦しむ息子のスペンサーと母の3人暮らしだった。
いつもスペンサーの心配をしているキャロルは、デートをしても女になりきれずにいた。
ある日、サイモンの部屋に不良少年たちが強盗に押し入り、サイモンは重度の怪我を負わされ入院する。
そして、メルビンは行き場のないサイモンの愛犬バーデルの世話を押し付けられてしまう。
最初は嫌々だったが、賢いバーデルにメルビンは愛情を感じ始め、バーデルもよくなつく。
しかし、サイモンは退院し、バーデルを失ったメルビンはすっかり落ち込んでしまう。
しかも、いつもの店へ行くとキャロルの姿はなく、怒ったメルビンは店を追い出されてしまう。
メルビンはすがるような思いで、キャロルの自宅まで“店に戻ってくれ”と頼みに行き、そこでキャロルの大変な状況を知る。
一方、展覧会の失敗や高額な入院費によりサイモンは破産し、アパートを出なくてはいけなくなる。怪我の後遺症も重く、サイモンは完全に人生のどん底にいた。
映画『恋愛小説家』 結末・ラスト(ネタバレ)
メルビンはコネを使い、キャロルの家へ医者を送り込む。
その医者は名医で、スペンサーの病気は治ると約束してくれる。さらに費用は全てメルビンからもらっていると告げ、キャロルを驚かせる。
キャロルはメルビンの意図が読めず、夜中にメルビンのアパートを訪ねる。
そしてメルビンに“あなたとは絶対に寝ない”と告げ、帰っていく。
メルビンは下心があったわけではないが、好意を抱いていたキャロルの言葉に傷つく。
一方、キャロルもスペンサーが元気になり余裕が生まれたことで、逆に女として今の自分がいかに惨めかを思い知らされ、情緒不安定になっていた。
そんな中、サイモンは両親にお金を工面してもらうためボルチモアへ向かうことになり、メルビンが付き合う羽目になる。そして、キャロルも誘われ、一緒に行くことにする。
道中でキャロルとサイモンはすっかり打ち解け、メルビンはそれが面白くない。
やっとレストランで2人きりのデートが実現するが、緊張のあまり余計なことばかり言ってしまい、キャロルを本気で怒らせる。
サイモンは予想通りゲイであることを嫌っている親から拒絶され絶望していたが、キャロルの裸を見て、久しぶりに絵を描く気になり元気を取り戻す。
しかし、メルビンとキャロルは互いに素直になれないまま別れてしまう。
メルビンは絶望するが、同居を始めたサイモンに励まされ朝4時にキャロルのもとへ行く。
メルビンはキャロルを散歩へ連れ出し、やっとキャロルへの気持ちを素直に伝える。
キャロルもそんなメルビンを受け入れ、2人は仲良く朝一番の焼きたてのパンを買う。
映画『恋愛小説家』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『恋愛小説家』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
メルビンという人物
ジャック・ニコルソン演じる主人公のメルビンはとにかく癖の強い人物だ。
冒頭で隣人サイモンの愛犬を勝手にダストシュートに捨てる行動やサイモンとその友人に対する侮蔑的な発言、新しい石鹸を次々使い捨てる様子を見ただけで、メルビンがいかに毒舌家で偏屈な潔癖症かが伝わってくる。
つまりとても嫌な親父なのだが、物語が進むにしたがって私たちはだんだんメルビンを好きになる。
メルビンは確かに変わり者だが、犬のバーデルのこともキャロルのことも毛嫌いしていたサイモンのことも、人並み以上に世話をするとても心優しい男なのだ。
最初にメルビンの優しさに気づいたのはバーデルで、この辺りの演出が実にうまい。
メルビンという人物には裏表がない。しかし“裏表のない人間なんていない”と思い込んでいる大人には、それがなかなか理解できない。だからキャロルも困惑したのだ。
この主人公を作り上げた脚本、演出は素晴らしい。
そしてジャック・ニコルソンはやっぱりうまい。
キャロルの苦しみ
この物語のもう1人の主人公がヘレン・ハント演じるキャロルだ。
キャロルもメルビン同様、人物の作り方がとてもいい。
特に、ずっと息子のことだけを心配して生きてきたキャロルが、突然訪れた安息の日々に戸惑い、女としての惨めさに気づいて、母親に泣きながら心の内を訴えるシーンは印象的だ。
病気の息子を抱えてがんばるシングルマザーのキャロルと不器用な中年男メルビンのラブストーリーで本作が進んでいたら、本作の面白さは半減しただろう。
途中でキャロルが息子の病気から解放され、単純に喜ぶのではなく新たな苦しみを感じるようになる設定が物語に深みを与え、キャロルへの共感性を強くする。
ヘレン・ハント演じるキャロルはとてもキュートで、メルビンが惚れ込むのもわかる。
邦題が示すとおり、恋愛映画であることは間違いない。しかし通常思い描く恋愛映画のような甘々しさは一切なく、普段恋愛映画を観ない私でも繰り返し観てしまう。それは一つには恋愛の進行と同時に、強迫性障害を持つ主人公に訪れる変化が描かれているからだと思う。障害もあり自分の世界に閉じこもっていた主人公が、最後にドアに鍵を閉め忘れていたことに気づくところこそが山場だ。そして言うまでもなく、オスカー俳優ジャック・ニコルソンとヘレン・ハント。この二人のもたらす空気感は、やはり何度観ても飽きないのだ。(男性 40代)
映画『恋愛小説家』 まとめ
これは文句なしに面白い映画だ。
とにかく主人公のメルビンとキャロルが魅力的で、本作によりジャック・ニコルソンとヘレン・ハントがともにオスカーを獲得したことも頷ける。
脚本、演出ともに秀悦で、小道具の使い方やちょっとした台詞もうまい。
観客はぐいぐい物語に引き込まれ、いい大人でありながらあまりに不器用な2人の恋の行方が気になって仕方なくなる。
まさにお手本のようなラブストーリーだ。
コメディ要素もしっかりしており、誰が観ても楽しめる映画だろう。
そして、犬のバーデルがものすごく可愛い。演技もうまい。ぜひこれは観て確かめてほしい。
みんなの感想・レビュー