映画『スノーピアサー』の概要:現在人類が直面している地球温暖化という問題を新たな角度から捉えた作品。キャプテン・アメリカなどで有名な、主役カーティスを演じるクリス・エヴァンスは今回もその鍛え上げられた肉体を披露している。
映画『スノーピアサー』の作品情報
上映時間:125分
ジャンル:SF、アクション
監督:ポン・ジュノ
キャスト:クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、ジェイミー・ベル etc
映画『スノーピアサー』の登場人物(キャスト)
- カーティス(クリス・エヴァンス)
- 列車「スノーピアサー」の最後尾で暮らす青年。最後尾の一同をまとめ上げ、列車内での革命を密かに企んでいる。
- ナムグン・ミンス(ソン・ガンホ)
- 列車のシステム構築にも関わったエンジニア。現在はクロノールという薬物依存者になっている。
- ヨナ(コ・アソン)
- ナムグンの娘で、こちらも薬物依存者。勘が鋭く、扉の向こうを見渡せる特殊能力を持っている。
- ウィルフォード(エド・ハリス)
- スノーピアサーの製作者で、現在この世界のトップに位置する人物。
- ギリアム(ジョン・ハート)
- 最後尾に暮らす、全員リーダーと崇める老人。カーティスの憧れの存在。
- メイソン(ティルダ・スウィントン)
- ウィルフォードの部下で、高い位にいる女性。
映画『スノーピアサー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『スノーピアサー』のあらすじ【起】
2014年、人類は長年問題視されていた地球温暖化を打破する為、冷却物質CW-7を開発しました。しかしその効果は科学者たちの想定を超え、反対に地球は厳しい氷河期へと突入してしまいます。その寒さは年々厳しくなり、17年後の2031年には、とうとう地球上で生活できる生物がいなくなりました。
唯一、スノーピアサーという列車に乗り込んだ人類のみが生き残ります。しかしその列車の中では絶対的な差別社会が構成され、列車の先頭で生活する人間は大変裕福な日々を送っていましたが、最後尾になるにつれその環境は悪化、まるで囚人の様な扱いを受けていました。
最後尾で暮らすカーティスは、この差別社会を打破する為の革命を起こさんと企んでいます。先頭車両に向かう為には分厚い扉を幾つも開けていかなければいけません。そこでカーティス達は、現在はクロノールという薬物中毒になっているナノとその娘と、扉を一つ開けるにつきクロノールを2つ渡すという条件のもと協力関係を結ぶのでした。
映画『スノーピアサー』のあらすじ【承】
ナムのハッキング技術もあり、幾つか扉をこじ開けた一同でしたが、先頭車両の住人達も黙ってはいません。とある扉を開けた時、その車両には武装した兵士達が待ち構えていたのです。激しい戦いの中、列車は長いトンネルへと突入します。視界を奪われた一同に対し的は暗視スコープを装着しており、戦いは一方的になってきました。
しかし最後尾の仲間の1人が大きな炎を起こし、逆に暗視スコープを使っている敵の目を眩ませることに成功しました。そして大きな犠牲を払って、最後尾の住人達が勝利を収めました。彼らはこの列車の要となる給水セクションを掌握したのでした。また、メイソンという高い役職につく女性を捕虜として拉致し、彼女を盾としてこの先の道を進んで行くことに決めました。
一方カーティスは、現在最後尾を取り仕切っているギリアムという人物から、自分が死んだ後はカーティスが皆のリーダーとなる様に、と言われますが、カーティスは自分にその資格はないとその申し出を辞退します。
映画『スノーピアサー』のあらすじ【転】
最後尾からカーティスを含めた6人がメイソンを人質に進む事となり、列車内の学校に辿り着きました。しかし、なんと大勢の子供達の前で突如教師ともう1人の暗殺者がカーティス達に銃を向けたのです。不意を突かれた一同は次々と倒れ、生き残ったのはカーティスとヨナ、ナムの3人のみとなってしまいました。
そして先頭車両に辿り着いた時、ナムが自分の計画を話し始めました。ナムは外の気温が少しずつ高くなっていることを指摘し、今迄集めてきたクロノールには発火性があり、これを爆弾として利用し外の世界に出るというのです。しかし先頭車両から出てきた統治者、ウィルフォードの手下にナムが撃たれ、カーティスのみが先頭車両へと招かれます。
そこではウィルフォードが1人で座っていました。ウィルフォードはカーティスに、バランスを保つことの重要性を解き、自分とギリアムが協力して最後尾の住人達に反乱を起こさせ、その中で人数の調整を行っていた事を打ち明けるのでした。
映画『スノーピアサー』の結末・ラスト(ネタバレ)
今迄尊敬していたギリアムの本当の姿に打ちひしがれるカーティスに、ウィルフォードは自分の役割をカーティスに引き継ぎたいと提案してきます。呆然と立ち尽くすカーティスでしたが、ヨナが部屋の中でとあるものを発見します。なんと床下で以前攫われたティミーという少年が働かされていました。
その狭い場所には小さな子供しか入れない為に、ウィルフォード達は定期的に子供をさらっては強制労働を強いていたのでした。怒ったカーティスはクロノール爆弾に火をつけます。爆風から身を守る為扉を閉めようとしますが、機械の故障の為その扉が閉まりません。
そこで爆発の直前、ナムとカーティスがティミーとヨナを守る様に抱え込みます。そして大きな爆発の後、ティミーが最初に目を覚ましました。生き延びたのはティミーとヨナの2人だけで、2人は初めての地上へと一歩を踏みしました。ナムの予想通り地球上の温度は少しずつ上昇しており、2人が一気に凍りつくといった事はありませんでした。全ての生物が生き絶えたはずの地上で、2人の前を一匹の白熊が悠然と歩いて行きました。
映画『スノーピアサー』の感想・評価・レビュー
『キャプテン・アメリカ』などで知られるクリス・エヴァンス主演の近未来SF作品。氷に閉ざされた世界生き残った人々が乗る列車の中で革命を起こす青年の姿を描く。
ハリウッドを賑わす豪華キャストの共演にも注目だが列車内という閉鎖空間の中で繰り広げられる戦いや列車内ならではの演出も見事。
登場人物それぞれの正義がせめぎ合い構成されるストーリーは重厚で何が『正しい』のか、深く考えさせられる作品。(男性 20代)
人間が絶滅の危機に瀕しているにも関わらず、列車という小さな箱の中でさえも貧富の差があるのが皮肉な物語だなと感じた。戦いのシーンが何度もあり、人がやられるシーンは結構ショッキングだった。
貧困層と富裕層でただ単に揉めているだけでなく、裏で暗躍する者の存在があり、一体何が隠されているのかドキドキしながら見ていた。希望が感じられる結末だったが、それまでに絶望が多すぎて、あまり幸せな感じがしなかった。(女性 30代)
監督とキャストが最高すぎるという理由だけで鑑賞しましたが、ストーリーも秀逸でただの映画では収まらず、とても考えさせられるものがありました。
人類が滅亡の危機を迎えている時でも、今作に登場する人間たちの間には貧富の差や差別的な描写があり、客観的に見るとこの場に及んで…と呆れてしまうかも知れません。しかし、もし自分がこの列車に乗り合わせていたら…と考えると彼らと同じような行動を取り、自分が持つもの、立場を使って自分のことしか頭にないだろうなと感じてしまいました。
非常に深い作品で、見る時の気持ちによって感じ方が変わる作品かもしれません。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
氷に閉ざされた世界。生き残った人類が乗る永久機関である列車「スノーピアサー」。列車を舞台に食料の供給や階級という名の格差社会を分かりやすく見せています。
最下層に生きる者たちが、格差社会に革命を起こす!というのがこの映画のテーマですが、結局、殺し合いになってしまう。本来、ポン・ジュノ作品には、社会に対する痛快な批判と暴力性があります。
初の英語作品として、世界にポン・ジュノ作品をアピールしたつもりが、ただの殺し合いでエグさや暴力性ばかりが強調される形になり、残念です。
またキャスト面だけみると、ポン・ジュノ作品の常連俳優である、ソン・ガンホやコ・アソン、怪演が目立つメイソン役のティルダ・スウィントン、エドガー役のジェイミー・ベル、そしてウィルフォード役にエド・ハリスという豪華俳優陣に注目です!
これだけスゴイ俳優揃いだと観たくなるのですが、次々と死んでゆきます。イマイチ、俳優を生かしきれずに失速した感じがあります。このため、全米公開が未定なのではと想像してしまいます。
絶望だけでなく、希望をもっと描いていれば作品の印象が変わると思います。
ティルダ・スゥイントンは、イギリス出身の55才。「オルラルド」(92)で16世紀末のイングランドに生きた男装の貴族を演じ、ユニセックスな魅力を印象づけました。
不思議な人物で、何かショックを感じると性別が男から女へ変わるのです!ティルダの彫刻のような整った顔や独特のファッション・センスも注目されています。
彼女の代表作は、「オルラルド」以外では、「フィクサー」(07)や「ナルニア国物語 第1章ライオンと魔女」(05)の白の魔女役です。人間離れした役が多いのですが、彼女が演じると違和感なく楽しめます。
さて、本作では、狂った総理メイソン役。入れ歯を取り出したシーンにはゾッとしました!ポン・ジュノが描く人物の中で1番面白く、奇抜でした。
”汚いはきれい。きれいは汚い。”というシェイクスピアのセリフのように人間の生き汚さが、垣間見えてきます。これこそが、彼女の真骨頂ではないでしょうか。
列車を”ノアの箱舟”にして、人間の醜い争いを見せるという趣向は面白い。しかし、ポン・ジュノ流の社会批判や笑いが弱められたのではないか。
トンネルを通過する間、ナタなど農具を振り回し、殺し合うシーンはああ、またかと思うほど、人の死があっけない。
暴力ではなく、知性や友情で世界を変えられないか。そうできれば、ソン・ガンホやコ・アソンをはじめとした豪華俳優の演技も生きてくるだろう。
約8割を英語で、その他を韓国語で会話している点や途中で鮨屋がでてくるあたりは、ポン・ジュノらしい笑いを感じます。
B級映画だと気軽に観ることをお勧めしたい。またティルダ・スゥイントンの怪演が目に焼き付いて離れない!