映画『小川町セレナーデ』の概要:オカマのエンジェルとの間にできた娘の小夜子を女手一つで育てるため真奈美が始めたのは場末の「スナック小夜子」。この不思議な親子と店に集まる人たちの悲喜交々を描いた2014年公開の人情コメディ映画。
映画『小川町セレナーデ』 作品情報
- 製作年:2014年
- 上映時間:119分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
- 監督:原桂之介
- キャスト:須藤理彩、藤本泉、安田顕、小林きな子 etc
映画『小川町セレナーデ』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★☆☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『小川町セレナーデ』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『小川町セレナーデ』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『小川町セレナーデ』 あらすじ【起・承】
真奈美(須藤理彩)はオカマのショーパブで舞台の裏方をしていた時、ダンサーのエンジェル(安田顕)と酔った勢いで一度だけそういう関係になってしまい妊娠する。一応エンジェルにそのことを告げた上で、真奈美は小夜子(藤本泉)を出産しシングルマザーとして育てていく決意をする。
一方、エンジェルは真奈美たちのことは気になりながらもオカマらしく1人で生きていくことにする。
真奈美は東京近郊の小川町で「スナック小夜子」のママとなり小夜子を育て始める。常連客相手のうらぶれた場末のスナックはそれなりに繁盛し、2階にある住居で真奈美と小夜子は仲睦まじく暮らしていた。
しかし小学生になった頃から小夜子は同級生たちに“スナック小夜子!”とからかわれるようになり、店を嫌い真奈美に対しても反抗的になる。
高校生になった小夜子は地元のヤンキーに弄ばれ、自殺したくなるほど落ち込む。そんな小夜子に真奈美は黙ってお茶漬けを出してやる。
小夜子は東京へ行く決意をし家を出て行く。真奈美は笑顔で小夜子を送り出し、1人になってからさめざめと泣く。一応エンジェルに報告の電話をするが、留守電を聞いたエンジェルは真奈美のメッセージを最後まで聞こうとはしない。
小夜子は男に優しくされるとすぐ夢中になり、しばらくして捨てられることを繰り返していた。失恋して泥酔した店でお茶漬けを出してもらい、真奈美を思い出した小夜子は家に帰ることにする。
帰ってきた小夜子は今でも店を嫌っており、真奈美が頼んでも店に出ようとはしなかった。
映画『小川町セレナーデ』 結末・ラスト(ネタバレ)
真奈美は客の来ない店にシングルマザーの亮子を雇い続けるようなお人好しで実は借金まみれだった。ついに店を手放すことになった真奈美が最後に常連客をもてなす様子を見て、小夜子の中で何かが変化する。
真奈美は借金取りの中村に権利書を渡し、店を片付け始める。しかし小夜子と亮子は諦めておらず、真奈美を連れ噂の繁盛店へ偵察に行く。なんとその店はオカマバーで、オカマたちの接客に感動した小夜子と亮子は、偽オカマになりオカマバーをやると言い出す。
小夜子は母の友人だと思っていたエンジェルに助けを求める。エンジェルは悩んだ末、力を貸すことにする。
エンジェルは偽オカマとして2人を徹底的にしごく。最初は反対していた真奈美も3人の熱意を認め手伝うようになる。ある夜、真奈美とエンジェルの話を盗み聞きした小夜子はエンジェルが自分の父だと知るが、その事は肯定的に受け止める。
店は大繁盛し、偽オカマの小夜子と亮子には熱狂的な常連客がつくようになる。しかし、2人とも女としてその常連客に惹かれ始め、オカマのフリが辛くなってくる。
借金を全額返済し店は継続できることになったが、中村に“うらぶれた前の店の方が好きだ”と言われる。そして真奈美もエンジェルも潮時だと感じ始めていた。
ついに亮子が“もう限界です”と言い出し、それに触発された小夜子まで愛する男のもとへ走る。亮子の恋は実るが、小夜子は“女は無理”と言われ振られてしまう。
傷心の小夜子をエンジェルは優しく慰め、店を去っていく。
真奈美はまた「スナック小夜子」を開店することにし、小夜子は再び東京へ旅立つ。
数年後、釣り堀で孫の面倒を見ながら言い合いをする真奈美とエンジェルの姿があった。
映画『小川町セレナーデ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『小川町セレナーデ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
なぜかちょっと退屈
この映画は設定も話もキャストも面白いのになぜかちょっと退屈だ。それはもっと見たいところが短くて、大していらないと感じるところが長いからだと思われる。
前半部分は小夜子の成長を中心に物語が進む。小夜子が店を嫌う理由と男運の悪さが主に描かれているが、それが少し退屈なのだ。おそらく観客は安田顕の演じるエンジェルと「スナック小夜子」の様子をもっと見せて欲しい。
後半部分でやっとエンジェルが店に登場するが、そこでも観客が見たいのはこの不思議な3人の親子関係がどうなるかであり、特訓や開店準備のシーンはあんなにいらない。オカマバーでダンスのシーンばかりなのは、喋らせると偽オカマの2人が全くオカマに見えないからか。とにかくアイドルにしか見えない藤本泉のダンスシーンが長すぎる。
この映画の見所は決して藤本泉の可愛さではないはずで、いらない部分を省いて時間を短くするか、観客の見たいツボをしっかり押さえていればもっと面白い作品になった気がしてならない。
脇役が活躍するシーンの面白さ
「スナック小夜子」で働くシングルマザーの亮子が常連客の間下に告白するシーンはかなり印象に残る。亮子を演じる小林きな子はデブキャラでコメディセンスもしっかりしており、彼女の存在価値は大きい。間下を演じる高橋洋も少ない出番ながら“気持ち悪い笑顔”にものすごいインパクトがあり、うまい役者さんだと感心した。
本当に素人の爺さんにしか見えないいか八郎の“生きてりゃいい”にもグッときたし、借金取りの金山一彦が熱く語りだすシーンも良かった。大杉漣が友情出演したラーメン屋のシーンも短いが印象深いシーンだ。
こういう部分に監督のセンスを感じるし、このトーンで全体がまとまっていれば評価はかなり高くなっていた。
本作は、閉店に追い込まれた母のスナック「小夜子」を再建しようと奮闘する娘と、スナックに来る客との交流を描いた人情コメディー作品。
ラスト、ラーメン屋の店主がママのエンジェルにレディースだから100円引きだよ、と100円玉を返すシーンが印象的で好きだった。
このシーンに限らず、一つ一つの描写が丁寧なところもまた良かった。
テンポの良い展開とハートウォーミングなストーリーに心が満たされ、小夜子に通いつめたくなる、そして何度も観返したくなる作品。(女性 20代)
もし自分がこういう家庭環境で生まれ育ったとしたら、小夜子のようにお母さんの元に帰って孝行できるかなと考えてしまいました。お父さんがオカマなのが悪いわけでもないし、お母さんがスナックをしているのも悪くないのですが、多感な年頃だったら自分に起こる嫌なことの原因を人のせいにしたくなると思うんです。
そんな思いを抱え、反抗しながらも心のどこかで父のことも母のことも受け入れていた小夜子は本当に偉いなと感じました。
のんびりとしたストーリーで大きな盛り上がりが無いのが少し残念ですが、見てよかったと思える作品です。(女性 30代)
映画『小川町セレナーデ』 まとめ
この映画の中で描こうとしている世界観にはとても共感できるし、目の付け所も好きだ。
社会的に“負け組”な人々にスポットを当て、その悲しみやたくましさを見つめるこの監督の視点には人間に対する愛情と優しさを感じる。
ただ、どうも全体に統一感がない。監督本人の意向ではない外的要因でこうなってしまったのだろうか。何となくそう感じるのはこの映画のエンディング曲がなぜかアイドルグループの「私立恵比寿中学」であること。全然この映画のトーンに合っていないし、この監督の趣味だとはどうしても思えない。あくまで個人的な推測だが、いろいろあってこうなってしまったのかなというチグハグさが映画本編にもある。
監督・脚本は新人の原桂之介で、本作により新藤兼人賞・銀賞を受賞している。才能のある監督だと思うので、次回作に期待したいところだ。
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