映画『波止場(1954)』の概要:波止場を仕切る悪の力に元プロボクサーの若き青年が立ち向かう。1954年公開のアメリカ映画。同年のアカデミー賞では8部門を受賞。主演のマーロン・ブランドはこの作品で初のオスカーを手にした。
映画『波止場』 作品情報
- 製作年:1954年
- 上映時間:108分
- ジャンル:ヒューマンドラマ、フィルムノワール、ラブストーリー
- 監督:エリア・カザン
- キャスト:マーロン・ブランド、エヴァ・マリー・セイント、リー・J・コッブ、ロッド・スタイガー etc
映画『波止場』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『波止場』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『波止場(1954)』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『波止場』 あらすじ【起・承】
元プロボクサーのテリー(マーロン・ブランド)は、ニューヨークの波止場で日雇い労働者として働いている。この波止場を仕切っているのはマフィアのボスのジョニーで、彼は労働者たちから違法に賃金をかすめ取っていた。テリーの兄であるチャーリーはジョニーの右腕で、テリーもジョニーから可愛がられていた。
ある晩、テリーはジョニーの命令で友人のジョーイを屋上へおびき出す。公聴会でジョニーの不正行為を証言する予定だったジョーイは、ジョニーの手下によって屋上から突き落とされ殺されてしまう。彼を殺したことにテリーは不満を漏らすが、ジョニーには逆らえなかった。
警察が事情を聴いても、ジョニーを恐れて誰も真実を語ろうとはしなかった。大学から帰省していたジョーイの妹のイディ(エヴァ・マリー・セイント)は、その辺の事情が分からずバリー神父に兄は殺されたのだと訴える。
テリーのところへも警察が来て公聴会で証言するよう言うが、テリーは無視していた。しかし、イディの姿に胸を打たれたバリー神父は労働者たち“ともに闘おう”と呼びかける。
バリー神父の呼びかけで教会に集まった労働者たちは、ジョニーの手下にひどい暴力を受ける。混乱の中、ジョニーの命令で偵察に来ていたテリーは、イディを連れて逃げる。テリーはイディに惹かれ始め、自分のしたことを話すべきか悩み始める。
誰もが逃げ腰になる中、デューガンという労働者だけが勇気を出して警察に全てを話す。しかし、公聴会で証言する前日、彼は仕事現場で事故に見せかけ殺されてしまう。バリー神父は彼の亡骸の前で演説をする。それを聞いたテリーは、後日バリー神父に全てを話す。
映画『波止場』 結末・ラスト(ネタバレ)
バリー神父に言われ、テリーはイディに真実を話す。テリーを愛し始めていたイディは、彼が兄の殺害に関わっていたことにショックを受け、その場から立ち去ってしまう。
テリーが裏切りそうだという話はジョニーの耳にも入っていた。チャーリーは何とか弟をかばおうとするがジョニーは許してくれなかった。チャーリーは仕方なくテリーと会う。
一旦はテリーを殺そうとしたチャーリーだったが、やはり弟を殺すことはできずテリーを逃してくれる。
テリーはイディのもとへ行き、2人は愛を確かめ合う。その時ジョニーの手下たちが“兄貴がお前に会いたがっているぞ”と外で叫んでいる声が聞こえてくる。
外へ出たテリーが見たものは路地裏に吊るされたチャーリーの死体だった。激昂したテリーはイディが止めるのも聞かず、銃を持って兄の復讐へと向かう。
しかし、いつもの酒場にジョニーの姿はなく、バリー神父に説得されテリーは公聴会で証言することで兄の復讐をしようと決心する。
公聴会でテリーはジョニーのジョーイ殺しを証言し、彼を追いつめる。ところが、テリーの仕事仲間たちは彼を裏切りとして白い目で見るようになる。
イディは2人で遠くへ行こうと言うが、テリーはいつものように波止場へ向かう。しかしテリーだけが仕事をもらえない。テリーはジョニーたちのいる事務所へ乗り込み、大勢の労働者の前でジョニーを罵倒する。半殺しにされてもひるまないテリーの姿を見て、仲間たちもテリーに賛同し始める。
労働者たちはジョニーの仕切る仕事をボイコットし、仕事の依頼主は怒ってジョニーを切る。テリーはフラフラになりながらその仕事場の倉庫へ歩き、仲間たちは彼に続いた。ジョニーは怒り狂うが、依頼主はテリーたちを倉庫へ入れてしまうとジョニーを無視してシャッターを下ろす。
映画『波止場』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『波止場(1954)』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
悲しき労働者と強気のイディとバリー神父
舞台は1950年頃のニューヨークの波止場だ。世界中から積荷の届くこの大きな港には大勢の日雇い労働者たちが仕事を求めて集まってくる。
そんな彼らのわずかな賃金から仕事の仲介料をかすめとっているのが、この波止場を牛耳るマフィアのボスのジョニーだ。この波止場の掟は“見ざる 言わざる”で、誰もがジョニーの報復を恐れ不正や暴力に目をつぶっている。労働者たちは悔しさも屈辱感もぐっと飲み込んで、我慢我慢で生きている。
だが、兄を殺されたヒロインのイディが怖いもの知らずに正義を訴えることから状況は変わり始める。イディに触発されたバリー神父は猛然と立ち上がり、ジョニーと闘うよう労働者たちを扇動する。それに唯一賛同した勇気ある男デューガン。彼は最初から殺される覚悟をしており、そして案の定殺されてしまう。
その後、主人公のテリーが彼の意思を受け継ぎジョニーと闘うのだが、窮地に立たされたテリーにイディは“2人で農場へ逃げましょう”と言う。そりゃあないぜ、セニョリータ。
テリーが逃げてしまえば波止場はもとの木阿弥で、結局何も変わらないではないか。
最後はテリーが頑張ってくれたから良かったものの、どうもこのイディと強引なバリー神父のキャラクターはしっくりこなかった。その分、主人公のテリーと労働者たちに感情移入ができたので、そういうことなのかもしれないが。
若き日のマーロン・ブランドの大物感
主人公のテリーを演じているのは若き日のマーロン・ブランド。私生活でも仕事の上でも何かとトラブルが多かったマーロンだが、俳優としての実力は誰もが認めざるをえないし、その功績は絶大だ。
彼の実力は本作でも余すことなく発揮されている。30歳手前のこの時期に、その演技力は、ほぼ完成されているように見える。若さゆえの青っぽさや力みが全く感じられない。
1950年に映画デビューしてからわずか4年でこの大物感を醸し出しているのだから、やはり彼は天才なのだろう。性格が災いして特に晩年は出演作に恵まれなかったことが非常に残念だが、それも天才ゆえの宿命なのかもしれない。
当時の色んな人々たちの内に秘められた想いが、この「波止場」とその時代のハリウッド映画に反映されているだろうことを考えるだけで、胸が一杯になる。
ジェームズ・ディーンなどと共に、冷戦下のアメリカの黄金期であるハリウッドで誕生した新しいタイプの俳優であるマーロン・ブランドも、素晴らしく個性的な演技を魅せている。マフィアのボスに立ち向かう英雄である以前に、ヒロイン目線で追いかけたくなるような男の魅力があることも事実だ。(女性 20代)
映画『波止場』 まとめ
古いモノクロ映画ではあるが、脚本のテンポも良く映像にも十分迫力がある。
本作を観ていると、後世の映画界に与えた影響を強く感じる。何箇所もどこかで見たようなシーンがあるからだ。著名な監督や俳優は、こういう作品から様々な影響を受け、新しい名作を生み出していくのだろう。
もちろん、古ければなんでもいいわけでは決してない。ただ、何十年も語り継がれ、生き残っている映画には必ず理由がある。こういう映画を観ると、その理由がよくわかる。
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