この記事では、映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2015年 |
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上映時間 | 107分 |
ジャンル | ホラー ミステリー |
監督 | 中村義洋 |
キャスト | 竹内結子 橋本愛 坂口健太郎 滝藤賢一 |
製作国 | 日本 |
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の登場人物(キャスト)
- 私(竹内結子)
- 小説家。本名は不明。怪談雑誌に、読者の体験談を基にした実話怪談の連載を持っている。オカルトに対しては懐疑主義。同じ小説家の夫、直人がいる。一軒家を建てる準備中。久保さんの体験談と内容に興味を持って、2年近い時間をかけて、久保さんと共に調べていくことになる。
- 久保さん(橋本愛)
- 都内で建築デザインを学ぶ女子大生。“久保さん”という名前は仮名。ミステリー研究会の部長もしている。岡谷マンション202号室で一人暮らしを始めたことから、不可思議な現象に遭遇してしまい、その体験談を“私”に送る。そして“私”と、土地の過去を調べていく。
- 平岡芳明(佐々木蔵之介)
- 小説家の男性。“私”や直人の知人。“私”と同じ喫茶店で、編集者と打ち合わせをすることがある。筋金入りの心霊マニアで、嬉々として怪談話を語る。三澤とは知り合い。
- 三澤徹夫(坂口健太郎)
- 九州の怪談話に詳しい、九州出身の会社員の男性。平岡と同じ筋金入りの心霊マニアで、平岡の知人。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のあらすじ【起】
読者からの体験談を基にした、実話怪談の連載をしている、小説家の“私”。
ある時、都内に住む女子大生の久保さんから、体験談が届いた。
一人暮らしをしている岡谷マンションの202号室で、畳を擦るような音が聞こえるらしい。
その年の秋、久保さんから続報が届く。
和室の中で、着物の帯のようなものを見かけたらしい。
久保さんは、着物を着た女性が首吊り自殺したイメージを抱いていた。
“私”は、投稿された体験談の中に、よく似た話があるのを見つける。
場所は、久保さんが住んでいるのと同じマンションの405号室だった。
マンションの和室から、床を掃くような音が聞こえるらしい。
不思議なところがある幼い娘は、和室の天井を指さして「ブランコ」と言うようになった。
やがてぬいぐるみの首に紐を巻き付け、それを「ブランコ」と言った。
久保さんに確認してもらうと、その家族はすでに引っ越していた。
久保さんは、ほかの部屋の住民や近所に住む人、不動産屋にも話を聞くが、マンションのどの部屋でも、一度も自殺や死亡事故などは起こっていなかった。
久保さんの隣の部屋には、新しい住人が越してきた。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のあらすじ【承】
半年後、久保さんの部屋の、前の住人の行方が判明する。
岡谷マンションに入居してから、人が変わったかのようにぼんやりすることが多くなった、梶川という男性。
そして引っ越し後、首を吊って自殺していた。
“私”と久保さんは、電話で連絡を取り合う仲になっていた。
自殺した梶川が部屋に戻ってきたのだろう、と考える久保さん。
しかし手紙の日付などから、“私”はそれを否定する。
201号室に住む主婦は、公衆電話からのイタズラ電話に悩まされていた。
その話を聞いた久保さんは、マンションが建つ前に自殺があったのではないか、と“私”に相談する。
“私”は久保さんに会いに行く。
岡谷マンションが建つ前の地図を見ていくと、数件の家があった。
その中の小井戸家は、ゴミ屋敷だった。
隙間を嫌っていた小井戸家の老人は、家の中で病死していた。
川原家の息子は、イタズラ電話と家庭内暴力が酷かった。
過去にさかのぼって調べていくと、高野家の話が出てくる。
高野家の娘の結婚式が終わった、その日の夜に、母親は首を吊って自殺していた。
しかも娘には、東京で働いていた頃に堕胎した、という噂があった。
高野夫人は、いるはずのない赤ん坊の泣き声に悩まされていた。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のあらすじ【転】
久保さんは、引っ越しを決める。
一連の出来事を、小説にした“私”。
だが、高野夫人が言っていたという、赤ん坊が床からわいて出る、という表現が気になっていた。
編集者と打ち合わせをしていると、小説家の平岡芳明が話しかけてくる。
赤ん坊が床からわいて出る、という怪談話を聞いたことがあるらしい。
その後、“私”は新居を建てて引っ越しをした。
平岡から、怪談話の詳しい資料が届く。
自分で生んだ赤ん坊を、何人も殺した美佐緒という女性がいたのだという。
美佐緒が住んでいた長屋は、高野家があった場所に建てられていた。
美佐緒の事件から、さらにさかのぼると、吉兼家という存在が明らかになる。
平岡が、吉兼家の資料を持って訪ねてくる。
手がつけられないほど暴れる息子は、座敷牢に入れられた。
だが、座敷牢の中に作られたトイレを通じて、床下を徘徊することがあった。
美佐緒は、床下からの声を聞いていた。
吉兼家の墓がある菩提寺を訪ねると、後妻の三善という存在が明らかになる。
時折、顔が変わるという絵を、嫁入り道具にしていた三善。
三善の実家は、北九州にあった。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の結末・ラスト(ネタバレ)
平岡から、九州の怪談話に詳しい三澤を紹介される。
三善の実家、奥山家は炭鉱で栄えた家だった。
炭鉱で火災が起こると、生存者を見捨てて入口を塞いだため、恨みを買っていた。
奥山家最後の当主は、自らの手で家族を殺害していた。
奥山怪談は、聞いただけでも祟られるという噂だった。
“私”はかつて、没落した炭鉱王の土地に建てた家での実話怪談を書いていた。
投稿者の男性に話を聞くと、その家に住んでいた遠い親戚は自殺していたが、家はまだあると言う。
原因不明の肩こりで、首にコルセットを付けた“私”、久保さん、平岡、三澤は、その家に向かう。
そこには、呪われた品々で呪いを打ち消そうとした、抵抗の跡だけがあった。
その後、岡谷マンションで久保さんの隣に住んでいた家族が、無理心中事件を起こした。
新しい部屋でも、畳を擦る音が聞こえるようになった久保さんは、調査を辞めたいと告げる。
そして調査は終わった。
“私”の肩こりの原因は、奥山怪談とは関係がなかった。
しかしその後、イタズラ電話に恐怖することになる。
平岡の担当編集者は、奥山怪談の祟りに触れてしまった。
梶川が自殺した部屋に、事故物件と知りながら住む山本は、高野夫人の幽霊を目撃した。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
いわゆる「ドッキリ系」のホラーとは一線を画す、静かにじわじわと恐怖が染み込んでくる作品でした。音も映像も派手ではないのに、観終わったあとで背筋が寒くなるような後味の悪さが残ります。ラストで「穢れ」は場所だけでなく、人にも伝染するという事実にゾッとしました。この系統のホラーが好きな人にはたまらない一作です。(30代 男性)
実際にあってもおかしくないようなリアルさが怖かったです。事件の連鎖をたどっていくうちに、ただの怪談ではない深い因果関係が見えてくる構成が秀逸。竹内結子さん演じる「私」と橋本愛さんの落ち着いたやり取りが、逆に不気味さを増していて、ラストで観客自身が“穢れ”を受け継いだような感覚になります。(20代 女性)
物音も大声も少ないのに、静けさがこんなに怖い映画は初めてかもしれません。途中から“幽霊”の怖さというより、“土地に染み付いた因縁”そのものが恐ろしい。見えるものよりも、見えない“歴史”が人を殺すという恐怖の形は、日本的ホラーの真骨頂。映画館ではなく、家で一人で観たことを後悔しました…。(40代 男性)
怪談小説風の語り口が斬新でした。最初は少し地味だなと思ったけど、調査が進むごとにだんだんと事件の構造が見えてくるのが面白く、気づけば引き込まれていました。結末で「私」自身にも影響が出ている描写がゾッとして、終わってからじわじわ怖くなるタイプ。直接的な幽霊より、“残るもの”の怖さを描いた秀作です。(30代 女性)
ホラー映画としては異質な構成。なのにこんなにも怖いなんて…。回想、証言、記録などが淡々と積み上がっていくうちに、“この世界のどこにでも穢れはあるのでは”という気持ちにさせられます。特に、最後の「これで終わりではない」と感じさせる終わり方が最高。観終わったあとの静けさが、逆にトラウマになります。(20代 男性)
原作ファンとして期待していましたが、想像以上に映像化が上手くいっていたと思います。音の使い方が絶妙で、無音や環境音が怖さを倍増させている。実際に登場する“霊的存在”よりも、人間の証言や記憶の中に潜む“何か”が一番怖い。日常に潜む恐怖の描写としては国内でもかなり上位に入ると思います。(40代 女性)
「何かが起きる」ではなく、「何かが既に起きている」ことが怖い映画。直接的な恐怖描写は少ないのに、不穏な気配が全編にわたって続いていて、常に気が休まりませんでした。特に、竹内結子さんの穏やかな語り口が、逆に怖さを強調する演出になっていたのが印象的。静かな恐怖を求める人におすすめです。(50代 男性)
ホラーとしてだけでなく、ドキュメンタリー風サスペンスとしても楽しめました。視点があくまで“語り手”であること、そして複数の出来事が時間を越えて繋がっていく構成が見事。最後の最後に語り手自身が“穢れ”の中に取り込まれていく描写には震えました。スプラッターではない、本物の「怖さ」がここにあると思います。(20代 女性)
怖さの“余韻”でいえば、ここ数年で一番の作品。観終わってからふと日常の中で物音がしただけでビクッとするようになりました。しかも、その怖さはどこか説明がつかない。何か“まとわりつくもの”があるという恐怖を、理屈じゃなく感覚で伝えてくる映画。自分の部屋が不安になる作品は、これが初めてです。(30代 男性)
一見地味な映画ですが、だからこそ“リアル”に感じられる。ラストで明かされる「穢れは人にも伝染する」という事実が怖すぎて、思わず背中がゾワッとしました。直接的な幽霊や怪奇現象よりも、“自分が気づかないうちに巻き込まれているかもしれない”恐怖がずっと続く。思考型ホラーの最高峰だと思います。(30代 女性)
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』を見た人におすすめの映画5選
回路
この映画を一言で表すと?
孤独と死がインターネットを通じて感染する、静かに絶望が広がるホラー。
どんな話?
ある日から、突然人々が姿を消し始め、パソコンの画面には“死者の世界”との境界が映し出される。都市がゆっくりと崩壊していく中、人間の孤独が全ての原因として浮かび上がる異色のサスペンスホラー。
ここがおすすめ!
『残穢』と同様、恐怖の正体が“見える存在”ではなく、“概念や気配”として描かれているのが秀逸。日常の中に入り込む違和感と静かな破滅感が、じわじわと精神を侵食してくる名作です。
ノロイ
この映画を一言で表すと?
リアルすぎて眠れなくなる、ジャパニーズ・モキュメンタリーホラーの到達点。
どんな話?
オカルトライターが、ある一家の怪奇現象を追ううちに、古来の呪術「ノロイ様」との関連に辿り着くドキュメンタリースタイルのホラー映画。事件はやがて日本各地を巻き込む恐るべき連鎖に発展する。
ここがおすすめ!
『残穢』と同じく、記録や証言を積み重ねながら“見えない恐怖”に迫る構成。フェイクドキュメンタリー形式により、どこまでが現実でどこからが虚構か分からなくなる恐怖体験が味わえます。
仄暗い水の底から
この映画を一言で表すと?
母子の絆が生み出す哀しみと恐怖に、心がじんわりと震えるジャパニーズホラー。
どんな話?
離婚直後の母と娘が引っ越してきた古い団地で、水漏れと不気味な少女の存在に悩まされる。やがて明らかになる過去の事件が、現在の生活を脅かしていく。
ここがおすすめ!
“場所に染みついた記憶と呪い”という、『残穢』と共通するテーマを扱う一作。単なる幽霊話ではなく、人間の寂しさや孤独がじわじわと浮かび上がる余韻のあるホラーです。
死国
この映画を一言で表すと?
郷土の信仰と呪いが生んだ、“帰郷系”怪談ホラーの原点的作品。
どんな話?
故郷・四国に帰った女性が、かつての親友の死と、その土地に伝わる風習や因習に触れながら、次第に怪異へと巻き込まれていく。
ここがおすすめ!
土地に根付いた“穢れ”や因果の描写が、『残穢』と通じる部分。ホラーでありながら郷愁も漂い、死者との対話を通して“記憶が残す恐怖”を体感できます。地方に伝わる言い伝えが好きな方にも。
アザーズ
この映画を一言で表すと?
全編に張り詰めた緊張感と、衝撃の真実に戦慄するサイコホラー。
どんな話?
戦後間もない英国の屋敷に住む母と子。日光に弱い娘のため屋敷は常に暗く、そこに“何か”の気配が忍び寄る。やがて母は、家の秘密と自身の運命を知ることになる。
ここがおすすめ!
『残穢』のように「音」「静けさ」「記憶」の恐怖を最大限に活用した作品。霊の存在だけではない、人間の心の闇と過去の“穢れ”が明かされるラストは、衝撃と余韻を残します。
みんなの感想・レビュー
原作者の小野不由美をモデルにした主人公の「私」や、実在する作家の平山夢明をモデルにした平岡芳明というキャラクター、小野不由美の夫で小説家の綾辻行人に当たる人物まで出演するという、現実と非現実の境界線をあいまいにした作品。
今は何もない土地でも、時間をさかのぼれば事件や事故が見つかるかもしれないという、自分にも当てはまるかもしれないというリアルでじわじわと追いつめてくるような恐怖感が漂う。
また、序盤に組み込まれた短編ホラーが、実はストーリーの中核にあたる「奥山怪談」の発生地での怪談話で、体験者も「奥山怪談」に係わってくるという意外なつながりを見せるのは面白い。
しかし謎を紐解くだけのストーリーで、「もうやめよう」と言って終わってしまうストーリーには拍子抜け。
突然ストーリーから放り出されてしまった感覚で、それまでの“いつ自分に起こってもおかしくない恐怖”が薄れてしまっている。
それなのに、結局主人公の「私」にはイタズラ電話がかかってくるし、周囲の人々にも何らかの現象は起こっているので、どっちつかずの中途半端なエンディングになってしまっている。
「私」が耳にする怖い話を再現した部分のざらついた質感の映像や、はっきり見えない幽霊のようなものの姿はダントツに怖い。
短編の怖い話を多く見せ、それらすべてに「奥山怪談」というつながりを持たせているので、最初はバラバラに思えても最後にピッタリ収まるのがちょうどいい。
平岡芳明や三澤徹夫が語る奥山怪談も、演じる佐々木蔵之介や坂口健太郎が笑顔で淡々と語るせいか、余計に怖く聞こえる。
橋本愛が演じた久保さんの普通っぽさや、竹内結子が演じる「私」の作家という雰囲気も、世界観に入りやすい。
作家の綾辻行人をモデルにした「私」の夫役の滝藤賢一は、パッと見ると本人そっくりで驚かされる。
ホラー映画というには異質な作品で、ミステリー要素を織り交ぜながら過去にさかのぼり、怪異の原因を突き止めるという珍しい映画。
突き止めたらあっさり終わるという物足りなさもあるが、もしかしたら自分が住んでいる場所にも過去に何かあったのでは、と疑いたくなる怖さがある。
Jホラー好きなら耳にしたことはあるだろう「ほんとうにあった!呪いのビデオ」シリーズのスタッフによる予告編では、映ってはいけないものが映っていたと語り、独特の世界観を表現していた。
作中で主人公の「私」が書いている怪談雑誌の短編集の映像化作品「鬼談百景」も存在する。