映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の概要:事故物件でもないマンションで起こった怪奇現象をきっかけに、その土地の過去を探り、土地に残る穢れに触れた人々の姿を描いた。原作は、小野不由美のホラーミステリー小説。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:ホラー、ミステリー
監督:中村義洋
キャスト:竹内結子、橋本愛、坂口健太郎、滝藤賢一 etc
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の登場人物(キャスト)
- 私(竹内結子)
- 小説家。本名は不明。怪談雑誌に、読者の体験談を基にした実話怪談の連載を持っている。オカルトに対しては懐疑主義。同じ小説家の夫、直人がいる。一軒家を建てる準備中。久保さんの体験談と内容に興味を持って、2年近い時間をかけて、久保さんと共に調べていくことになる。
- 久保さん(橋本愛)
- 都内で建築デザインを学ぶ女子大生。“久保さん”という名前は仮名。ミステリー研究会の部長もしている。岡谷マンション202号室で一人暮らしを始めたことから、不可思議な現象に遭遇してしまい、その体験談を“私”に送る。そして“私”と、土地の過去を調べていく。
- 平岡芳明(佐々木蔵之介)
- 小説家の男性。“私”や直人の知人。“私”と同じ喫茶店で、編集者と打ち合わせをすることがある。筋金入りの心霊マニアで、嬉々として怪談話を語る。三澤とは知り合い。
- 三澤徹夫(坂口健太郎)
- 九州の怪談話に詳しい、九州出身の会社員の男性。平岡と同じ筋金入りの心霊マニアで、平岡の知人。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のあらすじ【起】
読者からの体験談を基にした、実話怪談の連載をしている、小説家の“私”。
ある時、都内に住む女子大生の久保さんから、体験談が届いた。
一人暮らしをしている岡谷マンションの202号室で、畳を擦るような音が聞こえるらしい。
その年の秋、久保さんから続報が届く。
和室の中で、着物の帯のようなものを見かけたらしい。
久保さんは、着物を着た女性が首吊り自殺したイメージを抱いていた。
“私”は、投稿された体験談の中に、よく似た話があるのを見つける。
場所は、久保さんが住んでいるのと同じマンションの405号室だった。
マンションの和室から、床を掃くような音が聞こえるらしい。
不思議なところがある幼い娘は、和室の天井を指さして「ブランコ」と言うようになった。
やがてぬいぐるみの首に紐を巻き付け、それを「ブランコ」と言った。
久保さんに確認してもらうと、その家族はすでに引っ越していた。
久保さんは、ほかの部屋の住民や近所に住む人、不動産屋にも話を聞くが、マンションのどの部屋でも、一度も自殺や死亡事故などは起こっていなかった。
久保さんの隣の部屋には、新しい住人が越してきた。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のあらすじ【承】
半年後、久保さんの部屋の、前の住人の行方が判明する。
岡谷マンションに入居してから、人が変わったかのようにぼんやりすることが多くなった、梶川という男性。
そして引っ越し後、首を吊って自殺していた。
“私”と久保さんは、電話で連絡を取り合う仲になっていた。
自殺した梶川が部屋に戻ってきたのだろう、と考える久保さん。
しかし手紙の日付などから、“私”はそれを否定する。
201号室に住む主婦は、公衆電話からのイタズラ電話に悩まされていた。
その話を聞いた久保さんは、マンションが建つ前に自殺があったのではないか、と“私”に相談する。
“私”は久保さんに会いに行く。
岡谷マンションが建つ前の地図を見ていくと、数件の家があった。
その中の小井戸家は、ゴミ屋敷だった。
隙間を嫌っていた小井戸家の老人は、家の中で病死していた。
川原家の息子は、イタズラ電話と家庭内暴力が酷かった。
過去にさかのぼって調べていくと、高野家の話が出てくる。
高野家の娘の結婚式が終わった、その日の夜に、母親は首を吊って自殺していた。
しかも娘には、東京で働いていた頃に堕胎した、という噂があった。
高野夫人は、いるはずのない赤ん坊の泣き声に悩まされていた。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』のあらすじ【転】
久保さんは、引っ越しを決める。
一連の出来事を、小説にした“私”。
だが、高野夫人が言っていたという、赤ん坊が床からわいて出る、という表現が気になっていた。
編集者と打ち合わせをしていると、小説家の平岡芳明が話しかけてくる。
赤ん坊が床からわいて出る、という怪談話を聞いたことがあるらしい。
その後、“私”は新居を建てて引っ越しをした。
平岡から、怪談話の詳しい資料が届く。
自分で生んだ赤ん坊を、何人も殺した美佐緒という女性がいたのだという。
美佐緒が住んでいた長屋は、高野家があった場所に建てられていた。
美佐緒の事件から、さらにさかのぼると、吉兼家という存在が明らかになる。
平岡が、吉兼家の資料を持って訪ねてくる。
手がつけられないほど暴れる息子は、座敷牢に入れられた。
だが、座敷牢の中に作られたトイレを通じて、床下を徘徊することがあった。
美佐緒は、床下からの声を聞いていた。
吉兼家の墓がある菩提寺を訪ねると、後妻の三善という存在が明らかになる。
時折、顔が変わるという絵を、嫁入り道具にしていた三善。
三善の実家は、北九州にあった。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の結末・ラスト(ネタバレ)
平岡から、九州の怪談話に詳しい三澤を紹介される。
三善の実家、奥山家は炭鉱で栄えた家だった。
炭鉱で火災が起こると、生存者を見捨てて入口を塞いだため、恨みを買っていた。
奥山家最後の当主は、自らの手で家族を殺害していた。
奥山怪談は、聞いただけでも祟られるという噂だった。
“私”はかつて、没落した炭鉱王の土地に建てた家での実話怪談を書いていた。
投稿者の男性に話を聞くと、その家に住んでいた遠い親戚は自殺していたが、家はまだあると言う。
原因不明の肩こりで、首にコルセットを付けた“私”、久保さん、平岡、三澤は、その家に向かう。
そこには、呪われた品々で呪いを打ち消そうとした、抵抗の跡だけがあった。
その後、岡谷マンションで久保さんの隣に住んでいた家族が、無理心中事件を起こした。
新しい部屋でも、畳を擦る音が聞こえるようになった久保さんは、調査を辞めたいと告げる。
そして調査は終わった。
“私”の肩こりの原因は、奥山怪談とは関係がなかった。
しかしその後、イタズラ電話に恐怖することになる。
平岡の担当編集者は、奥山怪談の祟りに触れてしまった。
梶川が自殺した部屋に、事故物件と知りながら住む山本は、高野夫人の幽霊を目撃した。
映画『残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋』の感想・評価・レビュー
当初は、ホラーが主なのか、はたまたミステリーなのか混乱したが、最後まで観れば卓越したホラーミステリー映画だ。怖いものが脅かしてくることは少ないが、不穏感や恐怖感を徐々に増していく展開に心臓が縮みそうになるほどだ。
怪奇現象の謎に、過去を遡りながら紐解いていく様も好奇心と恐怖心を十分に刺激してくれた。そこまで、驚いたりということはないのに、最後は何故か疲労感が残るのは、展開の進め方が素晴らしいからだろう。(女性 20代)
誰にとっても身近である家という場所に潜む恐怖は、とても生々しく、まるで自分のことのように恐怖を感じます。住居に染みついた深い怨念は、呪いとして姿を変え、受け継がれ、新たな住居人に対して猛威をふるう、かなり恐ろしいです。
まるで実話怪談のようなリアリティは、見ていて引き込まれます。離れた家と家の怪異が、元を辿ると全ては同じというところに壮烈な恐怖を感じました。
この映画では各シーンに竹内結子さんの語りが入ります。彼女の淡々且つ穏やかな語りは、おどろおどろしく、しかし耳に心地良く響き、映画の世界観を引き立ててくれます。(女性 20代)
時系列がどんどん遡っていくにつれ、事実が繋がっていくという珍しい手法のミステリー作品。小説を元にした内容だけに、様々な伏線がパズルのように散りばめられているような印象。ホラー描写も、ジャパニーズホラー特有のじわっと鳥肌がたつように仕込まれていてなんとも薄気味悪いが、癖になる。正直エンディングは、あっさりしすぎていて非常にもったいなく感じるので、せっかくなら最後まで身近な恐怖としてしっかり寄り添った内容にまとめてほしかった。(男性 30代)
しっとり、じっとり怖い。派手な演出、いきなり驚かせる演出は無いが、暗く落ち着いた雰囲気が恐怖を倍増させる。その土地の過去の一つ一つのエピソードがとても怖い、特に赤ん坊の話は背筋がゾクっとする。関係が無い様に思えた因縁が過去を遡ると繋がっていくという面白い展開、遡るほどに恐怖度が上がっていく。知らない間に残穢が伝染してしまう恐ろしさ、自分の住んでいる部屋も、もしかして…と気になってしまう。一人で見るのはおススメできません。(女性 30代)
派手に驚かせるホラー作品ではなく、じっくりと恐怖が追い詰めてくるような作品。
どちらかというと、謎解きやミステリーと言った方がこの作品に合っているかもしれない。派手に驚かせるホラー作品は一瞬で終わるが、この作品はかなり後を引く。
竹内結子を筆頭に、出演俳優陣は実力派ばかりで見応えがあった。配役も脚本も個人的には満足である。若干ホラーシーンがチープなものに感じてしまった点だけ、残念だった。今作はホラー映画の中でもかなり異色なタイプなので、好みは分かれるかもしれない。(男性 20代)
竹内結子が主演のホラー映画で、題材は事故物件。邦画特有の気味の悪さがふんだんに出ていて面白い。
怪談雑誌で連載を続けている主人公の「私」の元に、橋本愛が演じる久保亜紗美から一通の手紙が届くところから物語は始まる。
事故物件の調査を進めるうちに、その土地に刻まれた過去や因縁が明らかになり、その理由が解明していく。
やはり、人間とは情念の深い生き物であると痛感させられる映画。最後は主人公ですら、ただでは済まないところもジャパンホラーの魅力である。(男性 40代)
物凄く日本らしいジメッとした雰囲気のホラー作品でした。視覚や聴覚的に驚かせてくるシーンは少ないですが、ミステリー要素を含みつつじわじわと観客を追い詰めていくような不快な怖さがありました。見た時よりも、その後思い出して怖くなる感じです。
事故物件でなくても、住んでいるその土地に代々伝わるものがあると知って、自分の住んでいる場所は大丈夫なのかなと心配になりました。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
原作者の小野不由美をモデルにした主人公の「私」や、実在する作家の平山夢明をモデルにした平岡芳明というキャラクター、小野不由美の夫で小説家の綾辻行人に当たる人物まで出演するという、現実と非現実の境界線をあいまいにした作品。
今は何もない土地でも、時間をさかのぼれば事件や事故が見つかるかもしれないという、自分にも当てはまるかもしれないというリアルでじわじわと追いつめてくるような恐怖感が漂う。
また、序盤に組み込まれた短編ホラーが、実はストーリーの中核にあたる「奥山怪談」の発生地での怪談話で、体験者も「奥山怪談」に係わってくるという意外なつながりを見せるのは面白い。
しかし謎を紐解くだけのストーリーで、「もうやめよう」と言って終わってしまうストーリーには拍子抜け。
突然ストーリーから放り出されてしまった感覚で、それまでの“いつ自分に起こってもおかしくない恐怖”が薄れてしまっている。
それなのに、結局主人公の「私」にはイタズラ電話がかかってくるし、周囲の人々にも何らかの現象は起こっているので、どっちつかずの中途半端なエンディングになってしまっている。
「私」が耳にする怖い話を再現した部分のざらついた質感の映像や、はっきり見えない幽霊のようなものの姿はダントツに怖い。
短編の怖い話を多く見せ、それらすべてに「奥山怪談」というつながりを持たせているので、最初はバラバラに思えても最後にピッタリ収まるのがちょうどいい。
平岡芳明や三澤徹夫が語る奥山怪談も、演じる佐々木蔵之介や坂口健太郎が笑顔で淡々と語るせいか、余計に怖く聞こえる。
橋本愛が演じた久保さんの普通っぽさや、竹内結子が演じる「私」の作家という雰囲気も、世界観に入りやすい。
作家の綾辻行人をモデルにした「私」の夫役の滝藤賢一は、パッと見ると本人そっくりで驚かされる。
ホラー映画というには異質な作品で、ミステリー要素を織り交ぜながら過去にさかのぼり、怪異の原因を突き止めるという珍しい映画。
突き止めたらあっさり終わるという物足りなさもあるが、もしかしたら自分が住んでいる場所にも過去に何かあったのでは、と疑いたくなる怖さがある。
Jホラー好きなら耳にしたことはあるだろう「ほんとうにあった!呪いのビデオ」シリーズのスタッフによる予告編では、映ってはいけないものが映っていたと語り、独特の世界観を表現していた。
作中で主人公の「私」が書いている怪談雑誌の短編集の映像化作品「鬼談百景」も存在する。