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映画『ミステリー・トレイン』あらすじネタバレ結末と感想

映画『ミステリー・トレイン』の概要:単館上映を基本とする、いわゆる「ミニシアター系」の旗手として日本でも人気の高いジム・ジャームッシュ監督。音楽にも精通した彼が、今作でテーマとして掲げるのは「ロカビリー」。ロカビリーの帝王エルヴィス・プレスリーの出生地として名高いメンフィスのとある安ホテルを舞台とした、1989年のワンナイト・オムニバス・ストーリーです。

映画『ミステリー・トレイン』 作品情報

ミステリー・トレイン

  • 製作年:1989年
  • 上映時間:112分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:ジム・ジャームッシュ
  • キャスト:工藤夕貴、ジョー・ストラマー、永瀬正敏、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス etc

映画『ミステリー・トレイン』 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★☆☆☆
  • キャスト起用:★★★★☆
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★☆
  • 設定:★★★☆☆

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映画『ミステリー・トレイン』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『ミステリー・トレイン』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

ファー・フロム・ヨコハマ

アムトラックと呼ばれるアメリカを横断する旅客列車に乗り、メンフィスへ旅する日本人カップルのジュンとミツコ。革ジャンにオールバックなど、ロカビリー・ファッションに身を包みロカビリー音楽に夢中な彼らは、エルヴィスやカール・パーキンスの話題に花を咲かせます。

真っ赤なスーツケースを引き摺って、メンフィスの町へ降り立った彼らは、ロカビリーの聖地をめぐりながら、町の中心地に建つ安ホテルに宿泊を決めます。1泊22ドルのそのホテルは、テレビもなく、壁は薄く、薄汚れていて、とても上等とは言えません。それでも彼らは、故郷ヨコハマとメンフィスの町に想いを馳せながら、抱き合って眠るのでした。深夜にラジオDJが流すのはやはり、エルヴィス・プレスリーの「ブルームーン」です。

翌朝、エルヴィスの生家への訪問を計画する彼らの耳に一発の銃声が響きます。
「銃?」
「アメリカだからな。」
彼らはその音にさほど気を留めず、そのホテルをあとにするのでした。

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ア・ゴースト

メンフィス空港から帰路に立とうとしていた矢先、チケットトラブルに見舞われたラテン系美女のルイーザ。仕方なしにメンフィスの町で宿泊先を探しますが、金払いの良さを見抜かれ、各地でいらぬ買い物をさせられてしまうなどのトラブルに遭います。

うんざりしていた彼女が辿り着いたのは、中心地に建つ1泊22ドルの安ホテル。フロントで宿泊交渉に難航していたディディを、はやく泊まりたい一心で同じ部屋に泊めることを決めます。

眠りにつく少し前、寝物語にディディは、自分は恋人から離れ都会を目指す道中だと話します。話題に困ったルイーザはディディに、昼間に聞いたエルヴィスの幽霊を車に乗せたという話をしますが、ディディはメンフィスでは誰でも知っている都市伝説だと鼻で笑い、寝入ってしまいます。

しかしその夜、ルイーザのもとにエルヴィスの幽霊が現れます。驚いてディディを起こしますが、次の瞬間には彼の姿はなく、眠れないからと流したラジオから「ブルームーン」が流れるばかり。
翌朝の銃声にも気を留めない彼女たちは、ホテルで別れるのでした。

ロスト・イン・スペース

ディディの恋人だったジョニーは、彼女の急な旅立ちとレイオフによる休職を嘆き、ロカビリー音楽の流れる酒場で酒を煽っています。ディディの兄チャーリーと工場の仕事仲間で黒人のウィルは、そんな彼を慰めるべく夜の街に繰り出します。しかし、足りない酒を補おうと立ち寄った酒屋で、黒人のウィルへのあからさまな差別発言をする店主に対し、酔ったジョニーが発砲してしまったことから、この夜は事件へと発展します。

動転した三人は車を走らせます。カーステレオから流れるのは、「ブルームーン」。
やむなくウィルの親戚の経営する安ホテルへと身を隠す三人でしたが、酩酊したまま、その夜は眠ってしまいます。翌朝、事の重大さに困惑する三人は誤って一発、発砲してしまいます。
その音に動転した店の主人とベルボーイは彼らを泊めた従業員用の個室へと急ぐのでした

映画『ミステリー・トレイン』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『ミステリー・トレイン』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

何も起こらない心地よさ

ジム・ジャームッシュの映画の特徴に、その平坦さがあります。ストーリー上、大きな事件や分かりやすい起承転結はほとんどと言っていいほどなく、物語は淡々と進んでいきます。その平坦さが退屈で、彼の映画は肌に合わないという観客も多いのもまた事実。
ですが、それでもなお、一定層に高い支持を受けるのは、また平坦さでもあるのです。
わたしはこれをヒーリング・ムービーと勝手に呼んでいるのですが、何も起こらないからこそ心に波風を立てず、終始安心して物語の世界に浸れるので、とても癒されるのです。

ロカビリー音楽の妙

これもまたジャームッシュ映画に共通した特徴なのですが、劇中の音楽に強いこだわりがあります。今作では特にエルヴィス・プレスリーの町を舞台にしているだけあってロカビリー音楽の名盤が次々に登場します。
とくに目立つのが、物語のキーとなるエルヴィス・プレスリーの「ブルームーン」。真夜中のラジオから流れるこの曲が、この映画のそれぞれの物語を心地よくつなげます。

印象的なシーン

この映画の中には、たとえば往年の名作「ティファニーで朝食を」のオードリー・ヘプバーンが窓際に座りムーン・リバーを歌ったような、思わず観客が真似てみたくなるような名シーンと呼ばれるシーンが数多く登場します。
たとえば「ファー・フロム・ヨコハマ」では、夜のホテルの一室で仏頂面のジュンに真っ赤な口紅をつけたミツコがキスをして、ピエロのように赤い口紅の移ったジュンを見て「ほら、ちょっとは楽しそうに見えるわ」と笑いかけるシーンがあります。そのシーンのキュートなことといったら。思わず、恋人と一緒に真似てみたくなるような可愛らしい場面なのです。


ジム・ジャームッシュ監督作品の中で個人的に一番気に入っている作品だ。オムニバスであっても、ストーリーが相互に結びつく感じがなおさら良い。そして、スティーヴ・ブシェミとジャームッシュの相性が最高に良いのではないかと思う。

日本人とアメリカ人とイタリア人イギリス人の風貌で、それぞれメンフィスの映え方が変わってくるから面白い。工藤夕貴と永瀬正敏演じる80年代の若いカップルはおしゃれで憧れるし、国を超えたインディーズ系映画のコラボは凄く魅力的だ。(女性 20代)

映画『ミステリー・トレイン』 まとめ

ジャームッシュ映画の特徴を詰め込んだようなオムニバス・ストーリーですが、日本人キャストがメインで登場するものは他にないのでとても印象に残った映画となりました。ハリウッドの監督がやりがちな不自然さはなく、とても自然な、でもどこかおかしなカップルのジュンとミツコをはじめとして、どこかズレたキャラクターたちの愛嬌に思わず口元が緩みます。
疲れた夜に、お酒を飲みながら何となく観るのにちょうどいい映画です。眠くなったら、途中で眠ってしまったって良い。きっと夢で、エルヴィス・プレスリーの幽霊に出会えることでしょう。

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