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映画『裸足の季節』あらすじネタバレ結末と感想

映画『裸足の季節』の概要:2015年カンヌ国際映画祭監督週間でヨーロッパ・シネマ・レーベル賞を受賞した今作は、さらにアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。トルコ出身ながら、映像の本場パリの映画学校で技術を磨いたデニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの長編デビューとなる本作は、トルコでの古い慣習に翻弄される5人の美しい姉妹を描く切ない群像劇です。

映画『裸足の季節』 作品情報

裸足の季節

  • 製作年:2015年
  • 上映時間:97分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
  • キャスト:ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシル、トゥーバ・スングルオウル、エリット・イシジャン etc

映画『裸足の季節』 評価

  • 点数:75点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★☆☆
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『裸足の季節』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)

映画『裸足の季節』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む

映画『裸足の季節』 あらすじ【起・承】

主人公の五人姉妹が暮らすのは、首都イスタンブールから約1000㎞離れた地方都市。両親を早くに亡くし、祖母と叔父に引き取られた彼女たちは、多感な十代の日々を謳歌していました。級友たちとの学校生活を送っていた姉妹たちでしたが、ある日、厳格な叔父によって監禁されてしまいます。
理由は「男子生徒と湖で遊んでいたから。」
この村にはいまだに、女性は結婚するまで処女を守らなくてはいけないという古い慣習が息づいていたのです。
その処女信仰ともいうべき慣習は厳格で、上の姉二人は病院に連れていかれ、医師に診断書を要求するほどのものでした。
その日から、叔父によって教育と自由な外出の権利を剥奪された彼女たちに、花嫁修業の義務が課せられます。村の女たちによる、料理や裁縫の授業。しかし、若く奔放な彼女たちにとって、そのかごの鳥のような日々は苦痛でしかありませんでした。

ボーイフレンドのいる長女ソナイは、妹たちの助けを借りて家を抜け出し、デートを重ねていました。そんな長女に習い、ある日、末っ子のラーレは、サッカー観戦に行こうと姉たちを誘います。トルコでは観戦中に暴動も起るほど熱心なサッカーですが、その日は、女性だけの観戦が認められていたのです。

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映画『裸足の季節』 結末・ラスト(ネタバレ)

試合当日、どうにか家を抜け出し、通りかかったトラック運転手にも助けられながら、試合会場にたどり着くラーレたちでしたが、その模様は中継され、放送されていたのです。
当然サッカー好きの叔父も近所の友人たちを家に招いて、鑑賞会を開いています。いち早く気付いた祖母や、花嫁修業の講師たちは、家のブレーカーを落とし、ついには村の電源まで破壊して、決死の思いでラーレたちを守るのでした。

そうしてなんとか、辛い監禁の日々を耐え抜く姉妹たちのもとに、上の姉たちから順に、次々と縁談が舞い込んできます。まだ成人にも満たない彼女たちでしたが、祖母は姉妹の縁談を急ぎます。
長女ソナイと次女セルマの縁談は順調に進みますが、その中で、三女エジェは心のバランスを崩してしていきます。
ある夜、夜半に目を覚ましたラーレの耳に、小さく鋭いエジェの叫び声が届きます。その後、薄暗がりに見えたのは叔父の姿。ラーレは、その理由を本能的に察知し、一刻も早く家を出る計画を本格的に思案し始めます。
そして最悪の出来事が起こってしまうのです。それは、三女エジェの自殺。彼女の死に悲しむ家族でしたが、祖母は、ついに四女ヌルの縁談も進め始めます。祖母は、自分の息子の愚行に薄々感づいていたのです。

そしてヌルの披露宴の夜、ふたりは家を出る計画を実行に移します。家に立てこもり、スキをついて車を盗み、ラーレの恩師が住むイスタンブールを目指すという稚拙な計画でしたが、ふたりはそれに望みをつなぎます。

すんでのところで家を無事に出て、1000㎞を旅した彼女たちを、その朝、恩師は抱きしめるのでした。

映画『裸足の季節』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『裸足の季節』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

美しすぎる五人姉妹

冒頭、学校から走り出す制服姿の五人姉妹の後姿。ファーストシーンから一目でわかってしまう彼女たちの美貌に、まずは圧倒されてしまいます。光に透ける亜麻色の長い髪と白い肌が、水しぶきにきらめくさまは、本当にそれだけで映画にする価値があるとすら思えるほどのものです。
その圧倒的でありながら少女の無防備さも兼ね備えた姿を余すところなく映しきる映像美は、まさかこれがデビュー作とは思えないほど卓越したものであり、また終盤までぶれずにあり続けます。終盤、イスタンブールを目指すバスの中でまどろむラーレとヌルに、その睫毛や頬に、再び心を掴まれてしまう。この圧倒的な映像美は、このキャストのこの瞬間でしかありえなかったであろう奇跡を感じさせます。

強い女性

全編にわたり、彼女たちは古い慣習に心から従うことなく反抗的であり続けます。その芯の強さが、わたしたちにはとても新鮮に映るのです。
たとえば日本でも似たような古い慣習はありましたが、大和撫子とたとえられる通り、日本女性たちが持つのは耐え忍ぶ強さです。ところが、このトルコ美人たちの強さは、時には好戦的ですらあり、そしてそれは老婆たちに電源を破壊させるまでのものなのです。このように色濃い民族性を反映させているのもこの映画の大きな魅力の一つといえます。

ラーレの瞳

この映画での主人公、ラーレの特徴のひとつが、姉妹の中でもひときわ大きな瞳です。映画はほぼすべて、彼女の目線で語られます。その純粋な瞳に映されたとき、たとえば叔父に代表される男性はひどく凶暴なものに映ったり、女性たちは悲しそうに映ります。
この一貫した目線から、映画が伝えようとするメッセージがしっかりと伝わってくるのです。

映画『裸足の季節』 まとめ

まずは彼女たちの美しさと光の映像美に魅了されっぱなしの約二時間でしたが、それだけではない、悲痛ですらある骨太な物語に、とても満足感がありました。トルコは現在、ISのテロ問題など情勢が非常に不安定です。その中でこのような映画を撮ったことの社会意義は、おそらくわたしたちが想像するよりもずっと深いものだったのだと思います。しかし、お堅い「社会意義」をきちんとエンターテインメントに昇華させ、観客に届けるその姿勢に、改めて映画の素晴らしさを感じました。

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