映画『僕達急行 A列車で行こう』の概要:とぼけたゆるい作風で人気を博した森田芳光監督の遺作となった今作。人気俳優の瑛太と松山ケンイチを主演に迎え、森田監督のオリジナル脚本らしい鉄道マニアの男二人のゆったりとしたロードムービーは進みます。
映画『僕達急行 A列車で行こう』 作品情報
- 製作年:2011年
- 上映時間:117分
- ジャンル:コメディ、青春、ヒューマンドラマ
- 監督:森田芳光
- キャスト:松山ケンイチ、瑛太、貫地谷しほり、ピエール瀧 etc
映画『僕達急行 A列車で行こう』 評価
- 点数:65点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★☆☆☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『僕達急行 A列車で行こう』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『僕達急行 A列車で行こう』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『僕達急行 A列車で行こう』 あらすじ【起・承】
丸の内の大手不動産会社に勤める小町圭と、鉄工所の跡取り息子の小玉健太は、ある日とある観光鉄道の車中で出会います。その後再開した二人は、鉄道に乗るのが好きという共通の趣味から急速に仲良くなっていきます。
趣味も仕事も順調な二人でしたが、恋愛となるとうまくいかない悩みも共通しています。小町は女性によくモテますが、「車窓を眺めながらイヤフォンで音楽を聴く」ことが趣味なため、女性とのデートが上手くいきません。小玉は女性が苦手なため、父親から紹介された女性とも上手く付き合えません。しかし、仲の良い友達と充実した趣味によって、ふたりの日々はそれなりに幸せに過ぎていきます。
マンションの更新と工事に伴い、住むところを失った小町は小玉の鉄工所の社員寮に身を寄せます。小町は、次に住むなら「トレインビュー」(窓から鉄道が眺められる)の物件を望む彼は、小玉とともに、休日は物件を探します。
そんなある日、小町に九州への転勤の話が来ます。出世街道に乗る彼にとってそれは実質左遷のような勧告であり、小町に気持ちを寄せる本社勤務の女性社員日向は悲しみ、小町の恋人あずさは怒りますが、九州の鉄道に乗れると彼は大喜び。そんな彼の喜びを理解し共感するのは小玉だけでした。
映画『僕達急行 A列車で行こう』 結末・ラスト(ネタバレ)
小町の転勤先の九州では、なかなか取得できない物件がいくつかありました。それらの物件を新たに担当することになった小町は、悩みますが、なかなか解決策が浮かびません。
そんな中、「青春18きっぷ」ではるばる小町の元へ遊びに来た小玉とともに、休暇を利用して九州のとあるローカル鉄道へ乗るため小旅行へ向かいます。気楽な鉄道旅行を満喫する二人は、旅先で派手な女性を二人連れた中年の鉄道ファン・筑後と知り合い、意気投合します。
再会のため連絡先を交換し、また仕事の日々に返っていく三人でしたが、こののち偶然の再会を果たすことになります。
小玉の会社が長年工場誘致を交渉していた大手食品メーカーの社長への接待に、本社から女社長が訪れます。彼女は小玉も夜の海に呼ぼうと言い出し、急遽担当ではない小玉が呼び出され、キャバレーに訪れた彼を待っていたのは、あのローカル鉄道の中年・筑後でした。出会った時とはうって変わって気難しい態度の筑後社長でしたが、二人になった途端、鉄道話に花が咲きます。彼らの親しさを見て取った上司は、交渉担当を小玉にしようと提案します。
その後、交渉が決まった小玉は、長年取得できなかった土地の主を何とか口説き落とし、工場誘致を決めます。これは九州支社でもかつてない大案件であり、彼は大手柄をたてて東京へと戻ることになりました。
東京の日々は、また前のように穏やかに進んでいきます。筑後が遊びに来たり、あずさとローカル鉄道へデートに行ったり、小町にも良い仲の女性が出来たりと彩はあるものの、ゆったりと進む物語は各駅停車で進んでいくのでした。
映画『僕達急行 A列車で行こう』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『僕達急行 A列車で行こう』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
ゆったりのんびり
森田監督作品に共通した作風なのですが、とにかく物語の進行がスローペースです。セリフも特徴的であり、普通の映画に比べると間の抜けた印象を受けがち。これにより、序盤こそ観客は面食らうものの、一時間を過ぎたあたりから、この作風の虜になってしまうのです。
映画にドラマティックを求める方にはお勧めできませんが、他の監督では感じたことのない風味を堪能できる監督はそう多くありません。独特なテンポを楽しんでください。
鉄道マニア必見
主人公ふたりの共通の趣味が鉄道であることから、物語の中には鉄道が数多く登場します。それは首都圏を走るおなじみの通勤鉄道であったり、観光鉄道であったり、ローカル線であったり、多岐にわたります。特にローカル線では、田園風景を走り抜ける可愛らしい鉄道の姿に、鉄道マニアでなくともうっとりしてしまいます。
また、鉄道カフェや鉄道模型など、マニアな趣味もそこかしこに登場します。
鉄道マニア・鉄道ファンの数は、年々増加傾向にあり、また多様化しています。にもかかわらず、しっかりと鉄道を題材にした映画はそう多くありません。
今作はそんな多くない映画の中でも、マニアでもそうでない方も楽しめる作りになっているので、ご家族で見るのにもおすすめです。
鉄道での撮影
上記の通り、今作では鉄道での撮影が大きな肝となっています。しかし当然、通勤列車として使われている車両内での撮影は困難を極めます。それを、通常ダイヤを全く乱すことなく撮影を行ったというのだから驚き。登場する車両、路線の数を確認すると、その小戸r期はさらに倍増します。
映画『僕達急行 A列車で行こう』 まとめ
特別鉄道ファンというわけでもなく、森田監督にもどちらかというと苦手意識があったのですが、蓋を開けてみれば、正確に言えば鑑賞し終ってみれば、この作品を好きになっているのだから驚きです。何がそうさせたのか、終始優しい映画のムードなのか、わかりませんが、休日の午後にゆったりとみるのには最適な映画です。
森田監督は今作が遺作ということで、このようにやわらかい雰囲気の映画がもう見られなくなるかと思うと残念でなりません。ご冥福をお祈りいたします。
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