この記事では、映画『あのこは貴族』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『あのこは貴族』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2020年 |
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上映時間 | 125分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | 岨手由貴子 |
キャスト | 門脇麦 水原希子 高良健吾 石橋静河 |
製作国 | 日本 |
映画『あのこは貴族』の登場人物(キャスト)
- 榛原華子(門脇麦)
- 開業医の家庭に生まれ、東京都の高級住宅地・松濤で両親と暮らしている。2人の姉は結婚しており、次は自分の番と張り切っていたが、婚約者に突然別れを切り出されてしまう。
- 青木幸一郎(高良健吾)
- 名家の生まれの弁護士。同年代の親戚は皆女性であるため、青木家の後継者として祖父に期待されている。慶応義塾大学出身で、立ち振る舞いが上品。
- 時岡美紀(水原希子)
- 慶應義塾大学に入学するタイミングで、富山から上京した。大学時代、講義が終わった後の講義室で、話したこともない幸一郎から突然「ノートを貸して」と言われた。
- 平田英穂(山下リオ)
- 美紀と同郷の友人で、美紀と一緒に慶應義塾大学に入学する。卒業後は富山に帰り、地元の企業に就職した。
- 相楽逸子(石橋静河)
- 華子の親しい友人で、独身のバイオリニスト。浮気癖の激しい父と、そんな父に泣かされる母を見て育ったため、結婚に希望も理想も持っていない。
映画『あのこは貴族』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『あのこは貴族』のあらすじ【起】
榛原華子は東京都の高級住宅地・松濤で両親と共に暮らす27歳。親は開業医で、2人の姉はどちらも医者と結婚している。
毎年恒例となっている榛原家の新年会は、高級ホテルの個室を貸切で使って行われ、この年は華子の婚約者も参加する予定だった。
しかし、会場に遅れて到着したのは華子一人で、婚約者には突然一方的に別れを告げられたという。華子の家族は、華子に新しい相手を見つけるよう助言しつつ、お見合いを勧める。
華子は私立の一貫校出身で、初等科の頃から仲の良かった友人たちとは今でも交流を続けている。その友人たちも次々と結婚し、華子以外で独身なのはバイオリニストの相楽逸子だけだ。
逸子は華子に、結婚相手探しは焦らずに、きちんと相手を理解してから結婚すべきだと助言する。
華子は、家族に勧められて整形外科医とお見合いをしたり、知り合いに男性を紹介してもらったりしたが、交際には至らなかった。
ある日、華子は姉の夫の紹介で、弁護士の青木幸一郎と出会う。幸一郎の紳士的な振る舞いに惹かれた華子は、幸一郎からの交際の申し込みを喜んで受けた。
映画『あのこは貴族』のあらすじ【承】
華子と幸一郎の交際は順調に進み、幸一郎は華子にプロポーズをした。華子は喜んで受けたが、その夜幸一郎のスマホを偶然見てしまい、着信欄に時岡美紀という名前を見つけ、不安にかられる。
美紀と幸一郎は慶應義塾大学の同級生だった。大学入学を機に、富山県から上京した美紀と、美紀の友人の平田里英は、学内での経済格差による境界線のようなものを感じる。美紀と里英は庶民で、境界線の向こうには、午後のお茶に5000円も払える金持ちがいると。
ある日美紀は講義の後、幸一郎に「ノートを貸して」と話しかけられる。幸一郎はコピーを取ったらすぐに返すと言ったが、お互い名前も知らず、ノートは返されなかった。
美紀の父が失業し、仕送りが出来なくなったため、美紀はキャバクラで働いて学費を稼ごうとしたが、両立は難しく、結局退学することになった。
ある日美紀の勤めるキャバクラに幸一郎が来店し、美紀は「私、お客さんにノート貸したかも」と声をかける。それがきっかけで幸一郎と美紀は関係を持つようになったが、幸一郎にとって、美紀との将来は視野になかった。
映画『あのこは貴族』のあらすじ【転】
美紀は25歳までキャバ嬢をしていたが、客からイベント企画会社を紹介されたことをきっかけに、水商売から足を洗った。
ある日、高校の同窓会で美紀は里英と再会し、お互いの近況報告をし合った。
里英は大学卒業後、富山に帰って地元の企業に就職したが、そこを退職してもう一度上京し、東京で起業するという夢を抱いているという。美紀は里英を尊敬し、応援すると約束した。
東京に戻り、あるパーティーに参加した美紀は、会場でバイオリンを弾く逸子に注目する。美紀は逸子に声をかけ、自分の名刺を渡そうとしたが、名刺が切れていたため、会場にいた幸一郎から名刺をもらい、その裏に自分の連絡先を書いて逸子に渡した。
逸子は美紀と幸一郎とのやりとりが親密だったのが気になり、後日美紀と華子を呼び出し、3人で話をする。
美紀は幸一郎と華子の婚約を知らなかったが、知って傷付くこともなく、あっさりと幸一郎とは別れる決意をし、上京してきた里英と共に起業を目指す。
華子と幸一郎は結婚式を挙げ、新婚生活を始めたが、それは華子が夢見たような幸せとは程遠いものだった。
映画『あのこは貴族』の結末・ラスト(ネタバレ)
華子は、姑から早く子供を作れとせかされ続け、幸一郎の祖父が亡くなった後、幸一郎は華子に何の相談もなく、弁護士を辞めて政治家である伯父の秘書になると決めた。
心が疲弊した華子は、気晴らしにプランターで野菜を育てようとしたが、それを知った幸一郎は「野菜なら、買った方が早くない?」と、小馬鹿にしたように笑った。
ある日華子は、姑に強制されて不妊外来を受診した帰り道に偶然、美紀の姿を見つける。華子は美紀を追いかけて声をかけ、美紀の部屋に招かれる。
美紀の部屋から東京タワーを見て、自分の知らない東京の景色に感動する華子に美紀は「どこで生まれたって最高な日もあれば泣きたい日もある。大事なのはそれを話せる相手がいること」と話す。
美紀の言葉から勇気を得た華子は、幸一郎と本音で語り合う。名家に生まれたから辿らなくてはいけない道を辿るだけと語る幸一郎に、未来を見出せない華子は、離婚を決意した。
1年後、華子は逸子のマネージャーとして、コンサート会場で幸一郎と再会する。幸一郎は華子の、見たことのない生き生きとした表情に驚いた。
映画『あのこは貴族』の考察・解説(ネタバレ)
映画『あのこは貴族』で、幸一郎と華子の離婚理由は何だったのか?
映画『あのこは貴族』における幸一郎と華子の離婚の理由は、二人の価値観や人生への期待の違いにあると言えます。華子は東京の上流階級の家庭に育ち、家柄や伝統を重んじる環境の中で成長しました。一方、幸一郎も同じような環境で育った人物ですが、家庭や社会における役割を重視する性格でした。しかし、二人の間には求めるものや結婚生活に対する期待のずれが次第に生じてきたのです。
幸一郎は伝統や家族の名声を大切にする一方で、華子に対して特別深い愛情を抱いていたわけではなく、むしろ形式的な結婚を望んでいたように見受けられます。対照的に、華子は幸一郎との生活の中で、もっと個人的な絆や感情的なつながりを求めていましたが、彼からはそれが十分に得られず、徐々に孤独感を強めていきました。
華子は「貴族的な妻」としての役割を果たそうと努力しますが、幸一郎との関係は形式的なものにとどまり、愛情や感情面での結びつきは薄いままでした。彼女は幸一郎との間に心の距離を感じ始め、最終的には自分自身の生き方を見直すようになります。こうした相違が積み重なった結果、二人はお互いに幸せを感じられなくなり、ついには離婚という結論に至ったのです。
映画『あのこは貴族』の印象的なマナーシーンについて
映画『あのこは貴族』には、華やかで洗練された上流社会のマナーや習慣が随所に描かれていますが、その中でもいくつかの印象的なマナーシーンが存在します。映画全体を通して、登場人物たちの所作や言動は、彼らが育ってきた環境や価値観を如実に反映しているのです。
特に象徴的なシーンの一つが、華子が参加する社交の場での食事のマナーや会話の様子です。上流社会においては、外見や振る舞いが非常に重視され、特に食事の席ではひとつひとつの所作がマナーに則って行われます。このようなシーンでは、華子が適切なマナーを守りつつも、内心では自分の本当の感情を抑え込んでいる様子が見て取れます。彼女がいかに「貴族的な女性」としての役割を演じているかが感じられる場面と言えるでしょう。
また、会話の中でも、直接的に感情を表出するのではなく、遠回しに意見を述べたり、微妙なニュアンスを含ませて他者に配慮する姿勢が描かれています。これは、華子が育った環境において、感情を表面に出すことよりも、周囲との調和を保つことが重要視されてきたことを示唆しており、こうしたマナーが彼女の内面の葛藤を浮き彫りにしているのです。
これらのマナーシーンは、華子が自分の本当の姿を隠し、上流社会の規範に従って生きる様子を象徴的に表現しており、映画全体のテーマと密接に関連しているのです。
映画『あのこは貴族』で、幸一郎と華子が再婚する可能性はあるのか?
映画『あのこは貴族』の結末を見る限り、幸一郎と華子が再婚する可能性は低いと考えられます。二人の離婚は単なる誤解やすれ違いによるものではなく、根本的な価値観や生き方の相違が原因だったのです。物語を通して、華子は自分自身の人生や幸福について深く考えさせられ、幸一郎との関係が必ずしも自分にとって最良の選択ではなかったことに気づかされます。
幸一郎の方も、華子に対して特別な愛情を抱いていたわけではなく、彼にとっての結婚は社会的地位や家柄に基づくものだったことが描かれています。つまり、二人の抱えていた問題は単なるコミュニケーション不足などではなく、お互いの生き方や結婚観の違いが大きな要因だったのです。
華子は離婚後、自分自身と向き合い、上流社会の期待や伝統に縛られない、自分らしい生き方を模索し始めます。彼女が幸一郎と再び結ばれるとすれば、二人がそれぞれの価値観や人生観を大きく変える必要がありますが、映画の終わり方を見る限り、その可能性は低いと言わざるを得ません。華子が新しい人生を歩み始める姿が描かれていることから、彼女は自分の道を選んだと解釈できるでしょう。
映画『あのこは貴族』のラストシーンで二人の笑顔が意味するものとは?
映画『あのこは貴族』のラストシーンにおいて、幸一郎と華子の二人が見せる笑顔は、それぞれの人生を歩みながらも、過去の関係性について一定の理解と和解に達したことを象徴しています。このシーンは、二人が完全に別々の道を進むことを示唆しつつも、お互いに対する負の感情を乗り越え、感謝や敬意の念を抱いていることを表現しているのです。
二人の笑顔は単純に「幸福」や「再会の喜び」を意味するのではなく、むしろ彼らが過去を受け入れ、新しい自分として前に進む準備ができていることを示しています。華子は自分自身の人生を見つめ直し、幸一郎との関係から得た経験を成長の糧にしています。一方、幸一郎もまた、自分の生き方や価値観を少しずつ変化させていく兆しを見せているのです。
この笑顔は、二人が別々の道を選んだとしても、その過程で得たものが無駄ではなく、それぞれの成長に寄与したことを象徴しており、観客に対しても希望や前向きなメッセージを伝えているのです。
映画『あのこは貴族』で、幸一郎と華子が復縁する可能性はあるのか?
映画『あのこは貴族』のラストシーンを見る限り、幸一郎と華子が復縁する可能性は非常に低いと言えるでしょう。二人の離婚は単なるすれ違いや誤解によるものではなく、根本的な価値観や人生観の相違が原因だったのです。華子は結婚生活の中で表面的な幸せを追い求めることに限界を感じ、自分自身の内面的な充実や成長に目覚め始めます。このため、離婚後は自分らしく生きる道を模索し始める姿が描かれているのです。
一方、幸一郎にとっても華子との結婚が完全に「正解」だったわけではなく、彼の結婚観は社会的な期待や家柄に基づいたものだったことが強調されています。物語の中で、幸一郎が華子に対して深い感情を抱いていたわけではなく、ある意味で形式的に妻として迎えていた節が見受けられます。二人はお互いに多くを学び合いましたが、華子が自分の人生において新しい道を見出した以上、過去に戻ることは難しいでしょう。
映画の結末では、華子が自分の価値観を再確認し、幸一郎から離れて新しいスタートを切る決意をしています。このため、復縁の可能性はほとんどないと言えますが、互いに成長し、お互いを尊重し合う関係として今後も繋がっていく可能性は残されているのかもしれません。
映画『あのこは貴族』の幸一郎と華子はその後どうなったのか?
映画『あのこは貴族』の結末では、幸一郎と華子のその後の具体的な展開については明示されていませんが、二人がそれぞれ別々の人生を歩んでいくことが示唆されています。華子は自分の心の中に抱えていた「貴族的な生活」への疑問や葛藤を解消し、伝統や格式に縛られない新しい自分を見出し始めます。彼女は上流階級の期待に応えるだけの人生ではなく、自分自身の意思や価値観に基づいた生き方を選択するようになるのです。
一方、幸一郎は華子との結婚生活を通じて、自分が何を大切にしているのかについても少しずつ気づかされます。表面的には家族や伝統を重んじる人物として描かれていた彼ですが、離婚をきっかけに自分自身の人生を見つめ直す必要性に気づかされるのです。華子と別れることで、幸一郎は伝統に囚われない、自分自身の意思で人生を選択する力を持つことが求められるようになります。
二人が再び一緒になることはないかもしれませんが、物語の中でそれぞれが学び、成長していくことが強調されています。華子は新しい人生に向かって一歩を踏み出し、幸一郎もまた自己の再定義を始める兆しを見せているのです。
映画『あのこは貴族』でジャムを舐めた華子のシーンが意味するものとは?
映画『あのこは貴族』において、華子がジャムを舐めるシーンは、彼女の内面の変化や自由への憧れを象徴するものとして解釈できます。物語を通して、華子は上流社会の厳格な規範や期待に縛られ、自分の感情や欲望を抑圧して生きてきました。彼女が常に周囲の目を気にしながら、自分らしく生きられなかったことが、ストレスや孤独感を増幅させていたのです。
ジャムを舐めるシーンでは、華子が一時的にその規範から解放され、自分の欲求に素直に従って行動する瞬間が描かれています。これは彼女が上流社会の「貴族的な女性」としての役割から抜け出し、自分自身の感情や欲望を解き放ち始めていることを示唆しているのです。ジャムを舐めるという一見些細な行為が、彼女にとっては自由や自分らしさを取り戻すための一歩であり、華子が規範から解放される瞬間を象徴的に表現しているのです。
このシーンは、華子が自分の人生を自らコントロールし始める転機を暗示しており、彼女が自分自身の選択を大切にし、自由に生きることを決意したことを表しています。
映画『あのこは貴族』はなぜつまらないと思われるのか?
映画『あのこは貴族』がつまらないと感じられる理由の一つは、物語の展開が緩やかで、派手なアクションやドラマチックな展開に乏しいためかもしれません。この作品は上流社会の中で生きる女性たちの内面の葛藤や、伝統や家族の期待に縛られることによる苦悩を描いています。物語はゆっくりと進行し、登場人物たちの感情の機微が丁寧に描写されるため、劇的な起伏やテンポの速い展開を期待する観客にとっては、退屈に感じられる可能性があります。
また、この映画が扱うテーマである登場人物の内面的な葛藤や社会的な階級の問題が、難解で共感しにくいと感じる観客もいるかもしれません。特に上流階級の生活や価値観に馴染みのない人にとっては、物語に感情移入することが難しいと感じる場合もあるでしょう。
さらに、結末も明確な解決を提示せず、オープンエンディングの形を取っているため、物語の結末を期待していた観客にとっては、すっきりしない印象を受けることがあります。このようにゆったりとした進行や内面的なテーマ、解釈を観客に委ねるような結末が、「つまらない」と感じられる要因になっているのかもしれません。
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