映画『三人の名付親』の概要:ならず者の三人が砂漠に取り残された赤ちゃんの名付け親となり、“立派に成長するまでこの子を育てる”という母親との約束を守るため、過酷な砂漠地帯を進んで行く。命がけで小さな命を守ろうとする男たちの姿が感動的な西部劇。1948年公開のアメリカ映画。
映画『三人の名付親』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:西部劇、ヒューマンドラマ
監督:ジョン・フォード
キャスト:ジョン・ウェイン、ペドロ・アルメンダリス、ハリー・ケリー・Jr、ジェーン・ダーウェル etc
映画『三人の名付親』の登場人物(キャスト)
- ロバート・ハイタワー(ジョン・ウェイン)
- 通称ボブ。三人組のリーダー格。銀行強盗はするが銃を使うことは嫌う。
- ペドロ・エンカラシオン・アランゴ(ペドロ・アンメンダリス)
- 通称ピート。ラテン系で時々スペイン語を使う。陽気で心優しい男。
- ウィリアム・カーニー(ハリー・ケリー・ジュニア)
- 通称キッド。アビリーン出身のお尋ね者。歌が上手い。
- スウィート保安官(メエ・マーシュ)
- 通称パーリー。アリゾナで保安官をしている。妻と二人暮らし。
映画『三人の名付親』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『三人の名付親』のあらすじ【起】
ボブとピートとキッドの三人組は、テキサスからモルモン街道を通ってアリゾナへとやってくる。目的は銀行強盗で、その後90キロ先の国境を越えてメキシコへ逃亡する予定だった。
町に入ったところで「B.SWEET」の表札がかかった家を見てボブは爆笑する。主人のスウィート氏は奥さんからパーリーと呼ばれていた。奥さんはニュー・エルサレムから馬車で来るはずの姪夫婦がまだ到着しないことを心配していた。パーリーは実は保安官で、雑談するふりをしてキッドの本名を聞き出し、彼がお尋ね者であることを突き止める。
三人は町の銀行を襲い、金を手にする。しかしすぐにパーリーも到着し、逃亡の途中でキッドが腕を撃たれてしまう。それでも落馬したキッドを救い、三人は追っ手から逃げ切る。
パーリーはこの砂漠地帯で確実に三人を逮捕するには、水場を警備するのが一番だと考える。予想通り三人は水を求めて「モハべ・タンク」を目指しており、パーリーたちは汽車で移動を開始する。水場に警察の見張りがついているのを見たボブはパーリーの作戦を読み、作戦の裏をかいてテラピンへ行き、キッドの傷が良くなるまで森に隠れることにする。
映画『三人の名付親』のあらすじ【承】
厳しい砂漠地帯で激しい熱風にも遭遇し、道中は困難を極めた。しかも途中で馬に逃げられてしまい、三人はフラフラになってテラピンの水場に到着する。そこには一台のホロ馬車が置き去りとなっていた。
様子を見に行ったボブが馬車にいた女性から聞いた話はこうだ。女性はニュー・エルサレムから夫婦で来たが、夫が水場の水位を上げようとしてダイナマイトを使い、湧き水が溜まる岩盤を砕いてしまった。泥底のアルカリ水をなめた馬は気がふれて走り出してしまい、それを追って行った夫も死んでしまった。女性は4日間も一人で残され、水も尽きた。しかも彼女は臨月で、まさに今産気づいていた。
あまりの話にピートもキッドも言葉を失うが、放っておくこともできないとピートが出産の手助けをする。ボブとキッドはサボテンからわずかな水を水筒に絞り出していく。
母親は無事に男の子を出産するが、彼女の命は助かりそうになかった。母親は三人を呼び、“この子の名付け親になって欲しい”とお願いする。三人は快くその願いを聞き入れ、立派な大人になるまで名付け子を守ると母親に約束する。男の子は三人の名をとって「ロバート・ウィリアム・ペドロ・ハイタワー」と名付けられる。そして女性は愛しい我が子に最後のキスをして息絶える。
映画『三人の名付親』のあらすじ【転】
一方、パーリーは水場に三人が現れないことから、彼らがテラピンに潜んでいると予想する。パーリーと数名の警官は馬に乗ってテラピンへ向かう。
母親と約束したものの、育児経験のない三人は困惑する。しかし母親は木箱の中に赤ちゃんに必要なものをきちんと残していた。その中には育児書と聖書もあり、三人は育児書を頼りに赤ちゃんの世話を始める。
母親が残した赤ちゃんのミルクは四日分あった。しかし周囲のサボテンもなくなり、水の確保は深刻な問題になっていた。聖書に触発されたキッドは赤ちゃんの為にもニュー・エルサレムへ行こうと提案する。ボブとピートも賛成し、三人は赤ちゃんを抱いてすぐに出発する。
ニュー・エルサレムへ行くには砂漠を抜けて広大な塩湖と荒野を歩き、さらに山を越えなければならない。三人は少ない水を分け合い、太陽の熱から赤ちゃんを守りながらひたすら歩く。しかしケガで体力を奪われていたキッドが塩湖で力尽き、ピートも荒野で転倒して足を折ってしまう。自分に山越えは無理だと悟ったピートはボブと赤ちゃんに別れを告げ、ボブから銃を受け取る。赤ちゃんのために先へ進むボブの背後で、銃声が聞こえる。
映画『三人の名付親』の結末・ラスト(ネタバレ)
テラピンの様子を見たパーリーはボブたちが姪夫婦を殺し、さらに水場まで破壊したのだと誤解する。パーリーは復讐心に燃え、銀行頭取がかけた100ドルの懸賞金に自腹で50ドル上乗せして、部下たちのやる気を煽る。
山道を行くボブはついに倒れ込んでしまう。しかし彼の耳にキッドとピートの励ましの声が聞こえてくる。二人の名を呼び続けるボブの目の前に二頭のロバが姿を現す。ボブはそのロバに寄りかかるようにして先へ進み、ついに町の酒場へたどり着く。
クリスマスの酒場は賑やかだった。ボブはビールとミルクを注文し、客たちに赤ちゃんを見せる。そこへパーリーがやってきてボブに銃口を向ける。ボブは“負けたよ”と言って意識を失ってしまう。
後日。ボブはパーリーの自宅に留置されていたが、客人待遇で快適な日々を過ごしていた。赤ちゃんも一緒にこの家で世話をしてもらい、すくすくと育っていた。
ボブの判決の日。判事は名付け子をスウィート夫妻に譲り、この町に二度と足を踏み入れないことを約束するなら禁固20年の刑に無期限の執行猶予を与えると宣告する。しかしボブは“刑は受けるが、母親との約束は破れない”と答える。判事はその答えを待っていたのだと笑い、ボブに禁固1年と1日という最低の刑を宣告する。ボブは町中の人に見送られ、帰ってくるまで赤ちゃんをスウィート夫妻に託して、晴れ晴れとした顔で刑務所のあるユマへと旅立って行く。
映画『三人の名付親』の感想・評価・レビュー
ボブ、ピート、キッドの三人が銀行強盗を試み後にメキシコへ逃亡しようと作戦を立てていたが、保安官のパーリーに狙われてしまい、銀行強盗は成功したものの、パーリーからの逃亡が始まり、砂漠から抜け出すために水の確保や、傷の手当てなど最悪な状況の中で何とか生きようと奮闘する三人を応援したくなった。途中で妊婦に遭遇し、出産の手伝いを行い、彼女からの約束を守るため子供の名付け親になり、育てていく覚悟をした三人が勇ましく、あり得ない遭遇の中三人らしく切り抜く姿も面白かった。(女性 20代)
今敏のアニメ映画「東京ゴッドファーザーズ」に影響を与えた作品ということで観てみた。盗賊と保安官、荒涼とした砂漠、台詞の感じ等当時の西部劇のフォーマットが楽しい。テンポもよく砂漠でのシーンも見ごたえあり、盗賊が赤ん坊を託されたあたりの会話はアメリカの映画はこれが楽しいんだよね、という感じだ。しかし後半突然宗教的要素が濃くなりだすとこちらにはその素養がない為置いていかれ始めるが、当時のアメリカ人の宗教感を垣間見れた気分にはなれる。最後の大団円は再び愉快な西部劇のイメージとなり救われた。(男性 40代)
ボブ、ピート、キッドのキャラクターがそれぞれ個性的で明るいので見ていて楽しい気持ちになれました。銀行強盗をする悪い奴らだと一見思ってしまいますが、パーリーから逃げる中で出会った母親との約束を何があっても守り抜くと言う意志の強さは、男らしくてかっこよかったです。
ボブの判決が思わず顔がほころんでしまうものだったので安心したのと同時に、見ていてくれる人もいるのだなと温かい気持ちになりました。(女性 30代)
ジョン・フォードってこういうストーリーも撮るんだという新鮮さと驚きがある。
アクション全くないし聖書は難しいけどハートウォーミングな映画だ。日本でアニメのリメイクの元になったみたいだが、ぜひ現代版の実写も観てみたい気がする。
サルーンが法廷になったり選挙スペースになったりする西部時代の慣習がなんか好きだし、三人のアウトローが変化していく姿は西部劇の枠を超えてドラマとしても楽しめた。あまり見られない弱そうなジョン・ウェインも憎めないキャラクターに仕上がっている。(女性 20代)
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