映画『孤独な天使たち』の概要:周囲と打ち解けず両親を心配させていた14歳の少年が、久しぶりに再会した異母姉と地下室で秘密の一週間を過ごす。巨匠ベルナルド・ベルトリッチ監督の若々しい感覚に驚かされる2012年公開のイタリア映画。デビッド・ボウイの音楽が効果的に使われている。
映画『孤独な天使たち』の作品情報
上映時間:97分
ジャンル:青春、ヒューマンドラマ
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
キャスト:ヤコポ・オルモ・アンティノーリ、テア・ファルコ、ソニア・ベルガマスコ、ヴェロニカ・ラザール etc
映画『孤独な天使たち』の登場人物(キャスト)
- ロレンツォ(ジャコポ・オルモ・アンティノーリ)
- 14歳の中学生。繊細で独自の世界を持っており孤独を好む。精神科医のカウンセリングを受けている。音楽や昆虫が好き。誰のことも傷つけたくないと思っている。
- オリヴィア(テア・ファルコ)
- ロレンツォの異母姉。父親を奪ったロレンツォの母親を憎んでいる。18歳頃まで写真やビデオアートの作品で個展をしたりしていたが、ヘロインを覚えて薬物依存症になっていた。
- アリアンナ(ソニア・ベルガマスコ)
- ロレンツォの母親。略奪愛でロレンツォの父親と結婚した。変わり者の息子のことを心配しており、過保護に育てている。
映画『孤独な天使たち』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『孤独な天使たち』のあらすじ【起】
14歳のロレンツォは孤独を好む神経質な少年で、学校に馴染めなかった。両親はそんな息子を心配して精神科に通わせていたが、あまり効果はなかった。そんなロレンツォが泊りがけのスキーウィークに参加すると言い出し、母親のアリアンナは有頂天になる。しかしロレンツォには秘密の計画があった。
ロレンツォは合宿費用を払わず、そのお金である部屋の合鍵を作る。さらに一週間分の飲み物や食料を買い、ペットショップでアリの巣作りが見られる水槽を購入する。
合宿の出発日。アリアンナは集合場所までロレンツォを送って行こうとするが、ロレンツォは途中で降ろしてくれと車内で騒ぎ出す。ロレンツォは計画通り車から降り、集合場所へ行くフリをしてバスに乗る。ロレンツォの目的地は自宅マンションの建物内にある地下室だった。ロレンツォはこの一週間をここで過ごすためにいろいろと準備してきたのだ。
地下室には一応洗面台やトイレがあり、マンションの前の住人だった伯爵夫人の家具なども置いてあった。ロレンツォは孤独に浸れる居心地のいい空間を作り、電話をしてきた母親には楽しくスキーをしていると嘘をつく。
映画『孤独な天使たち』のあらすじ【承】
翌日。地下室に突然ロレンツォの異母姉であるオリヴィアがやってくる。オリヴィアは母親とカターニアで暮らしていたが、自分の荷物をロレンツォの自宅宛に送っていた。しかし家政婦は家に入れてくれず、荷物は地下室にあると言われたらしい。
ロレンツォの父親はオリヴィアの母親と別れてアリアンナと結婚した。オリヴィアは自分の父を奪ったアリアンナを憎んでおり、いろいろと問題を起こしていた。以前はオリヴィアが父親を訪ねてロレンツォの家へ来ていたが、最近は全く来なくなっていた。オリヴィアは慌ただしく自分の荷物を確認してすぐに何処かへ行ってしまう。
真夜中。帰って来たオリヴィアは行くところがないからここに泊めろと外で騒ぎ出し、ロレンツォは仕方なく彼女を入れてやる。ロレンツォはスキーに行く予定だったが親には内緒でここにいるのだと説明する。オリヴィアはすぐに眠ってしまう。
翌朝。ロレンツォは自分のペースを乱されて苛立っており、オリヴィアを追い出そうとする。しかし母親からの電話でオリヴィアは先生のフリをして口裏を合わせてくれ、アリアンナの携帯番号も手に入れる。弱みを握られたロレンツォはオリヴィアの言いなりになるしかなかった。
映画『孤独な天使たち』のあらすじ【転】
オリヴィアは朝から調子が悪そうで、何度も吐く。オリヴィアは薬物依存症になっており、クスリ断ちの禁断症状が出始めていた。夜になってもオリヴィアは苦しみ続け、ロレンツォを心配させる。
少し落ち着いたオリヴィアは、もうすぐ友達と夢だった馬のいる農場での生活を始めるので、それまでにどうしてもクスリ断ちをしておきたいのだと話してくれる。しかしオリヴィアは苦しみのあまり暴れ出し、ついにロレンツォもキレてしまう。それでも“助けて”と泣きながらすがりついてくるオリヴィアを放っておけず、ロレンツォは彼女のために睡眠薬を調達しに出かける。
ロレンツォはバスに乗って入院中の祖母の病室へ行く。父方の祖母はオリヴィアにとってもおばあちゃんだった。ロレンツォは祖母が常用している睡眠薬を拝借し、地下室へ帰る。
地下室にはオリヴィアの友人のフェルディナンドという中年男性がいた。ロレンツォはオリヴィアが勝手に人を入れたことでスネてしまい、フェルディナンドを早々に追い出す。フェルディナンドはオリヴィアの写真を買ってくれた。オリヴィアは睡眠薬を飲んで眠り始める。ロレンツォも睡眠薬を飲み、オリヴィアの隣で眠る。
映画『孤独な天使たち』の結末・ラスト(ネタバレ)
ほぼ丸一日眠り続け2人は真夜中に目をさます。オリヴィアはお腹がペコペコだったが、地下室に食料はなかった。2人はロレンツォの自宅に忍び込み、食料やビールを調達してくる。オリヴィアはアリアンナのタバコも盗む。
2人は地下室で晩餐会を開く。オリヴィアは写真やビデオアートで大きな賞をもらったこともあるアーティストだったがクスリにはまってやめたことや、昔の彼氏と一緒に農場へ行きやり直すことなどを話してくれる。
オリヴィアはデビッド・ボウイの「スペース・オディティ」を聴きながら踊り出し、ロレンツォを強く抱きしめてくれる。ロレンツォもオリヴィアを抱きしめ返す。
オリヴィアは“麻薬はこれきりやめる”こと、ロレンツォは“隠れるのはやめてちゃんと生きる”ことを互いに約束して眠りにつく。しかしオリヴィアは寝付けず、こっそりヤクの売人からヘロインを購入する。オリヴィアは葛藤の末、ヘロインの入った包みをタバコのボックスにしまう。
翌朝。2人は地下室を出て、ロレンツォはオリヴィアをそこまで送って行く。“2人のスキーウィークをまたやりたいね”と言いながら、ロレンツォはオリヴィアに笑顔で別れを告げる。ロレンツォの表情はとても明るくなっていた。
映画『孤独な天使たち』の感想・評価・レビュー
ベルナルド・ベルトルッチ監督の本作品は、内向的なティーンエイジャーの弟と、フォト・アーティストとして各地を巡る姉が絆を取り戻していくヒューマン・ムービーです。
テーマソングとしてデヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」が使われていて、イタリア語版の歌詞で「ロンリー・ボーイ、ロンリー・ガール」として作中に流れます。
ラストのダンス・シーンは本当に素晴らしくて感動します。人生に迷う人や、自分は独りぼっちだと感じたことのある人に是非観ていただきたいです。(女性 30代)
大人へと成長する過程の繊細な時期の少年・少女達の心が、丁寧に描かれた作品だと思う。この年頃ではないと生み出せない、独特の危うさと純粋さを感じる。人と関わることが苦手なロレンツォの気持ちも、父親に裏切られ自暴自棄になってしまったオリヴィアの気持ちも理解できる。悩みや傷を抱える二人だからこそ、一緒に過ごしたことでほんの少し前を向けたのだと思う。成長した彼らがどんな大人になっているのか、見てみたいなと思った。笑顔で暮らしていたら良いと思う。(女性 30代)
本作は、周囲と打ち解けず両親を心配させていた14歳の主人公ロレンツォが、久々に再会した異母姉と地下室で過ごした一週間を描いた青春ヒューマンドラマ作品。
ナイーブな少年とドラッグ中毒の姉は二人とも孤独で、表面上ではあまり描かれていない感情の奥深くに触れていた。
地下室という空間やそこに差し込む光の映し方、カメラワークの美しさが素晴らしく、また、劇中に使われていたデイヴィド・ボウイの『Space Oddity』がマッチしていてとても良かった。(女性 20代)
『孤独な天使たち』というタイトルがまさにピッタリな今作。孤独を感じ、独りで居ることで自分を保っていられるロレンツォと、自分の才能を理解しつつも薬物から抜け出せないオリヴィア。2人ともかなり独特な世界観を持っていて、最初はオリヴィアのことを鬱陶しいと思っていたロレンツォも次第に心の内を理解していきました。それは2人にしか分からない孤独や寂しさが共通していたからだと思います。
自分を見つめ直し、新しく進んでいこうとする2人がとても凛々しく見えました。(女性 30代)
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