
結論から言うと、「コート・スティーリング」は爽快なクライム映画を期待すると肩透かしを食らい、違和感を楽しめる人ほど刺さる作品です。
2026年1月9日、日本で本作を鑑賞したMIHOシネマ編集部の映画専門ライターとして感じたのは、暴力・テンポ・ユーモアが噛み合いそうで噛み合わない、その“ズレ”こそが本作の正体だということ。
本記事では、ネタバレを含めつつ、この映画がなぜ賛否を呼ぶのか、どんな人におすすめできるのかを丁寧に解きほぐしていきます。
「コート・スティーリング」はどんな映画?まず結論から
本作は、元野球選手の主人公が、隣人の猫を預かったことをきっかけに裏社会へ引きずり込まれる犯罪映画です。
物語自体はシンプルですが、展開は終始予測不能で、観客を落ち着かせません。
次は、物語の全体像をネタバレなしで整理していきます。
ネタバレなし|あらすじをコンパクトに解説
主人公ハンク・トンプソンは、かつて将来を嘱望された元野球選手。現在はニューヨークでバーテンダーとして静かに暮らしています。
ある日、隣人から「留守の間、猫の世話をしてほしい」と頼まれたことがすべての始まりでした。
それ以降、見知らぬ男たちが次々と現れ、ハンクに暴力を振るい、何かを要求し始めます。
なぜ自分が狙われるのか分からないまま、状況だけが悪化していく──その不条理さが、この映画の軸です
次は、物語の核心に踏み込んでいきます。
ネタバレあり|物語が向かう先と“肩透かし感”の正体
ここからはネタバレを含みます。
本作の特徴は、大きな謎や陰謀が、観客の期待ほど壮大ではない点にあります。
裏社会の人間たちが追い求めていた“モノ”が明かされるにつれ、緊張感はむしろ静かに失速していきます。
多くのレビューで語られている通り、
「もっと何かあるはず」と期待した瞬間に物語が終わる
この感覚こそが、「コート・スティーリング」を忘れがたい作品にしています
では、この映画は失敗作なのでしょうか?
次は演出とキャラクターの視点から見ていきます。
演出と空気感|ダーレン・アロノフスキーらしさはある?
監督は『レクイエム・フォー・ドリーム』で知られるダーレン・アロノフスキー。
本作では、彼特有の精神的な追い込みやカメラワークよりも、90年代ニューヨークの汚れた空気感が前面に出ています
暴力描写は唐突で、生々しく、笑えるほど不条理。
しかし、その暴力が物語的なカタルシスへ昇華されることはありません。
この「盛り上がらなさ」は欠点でもあり、同時に本作最大の個性でもあります。
次は、キャストの演技に目を向けます。
キャスト評価|オースティン・バトラーはハマり役だったのか
主人公ハンクを演じたオースティン・バトラーは、終始受け身で、感情を爆発させない人物像を貫きます。
この抑制された演技が「物足りない」と感じる人もいれば、「リアル」と評価する人も多いです
ゾーイ・クラヴィッツ、レジーナ・キングら脇役陣も存在感は十分。
ただし、キャラクターの掘り下げは浅く、“もったいない”印象が残るのも事実です
では、この映画はどんな人に向いているのでしょうか。
「コート・スティーリング」がおすすめな人
- 王道クライム映画に飽きている人
- 物語より空気感を楽しみたい人
- 後味の悪さや違和感を考察するのが好きな人
次に、逆に合わない人についても正直に触れておきます。
正直おすすめできない人
- 分かりやすい伏線回収を求める人
- 爽快なカタルシスを期待する人
- 主人公の成長物語が見たい人
最後に、この作品が刺さった人へ向けて、関連映画を紹介します。
「コート・スティーリング」が好きな人におすすめの映画3選
レクイエム・フォー・ドリーム
この映画を一言で表すと?
救いのない現実に引きずり込まれる、精神破壊映画の金字塔。
どんな話?
夢や欲望に取り憑かれた人々が、徐々に破滅していく姿を描いた群像劇。観る者の心を容赦なく削る展開が続く。
ここがおすすめ!
アロノフスキー監督の“容赦なさ”を知るには最適な一本。 「コート・スティーリング」の違和感が、より理解できるはず。
ザ・バットマン
この映画を一言で表すと?
重苦しい空気に支配された、異色のヒーロー映画。
どんな話?
ゴッサム・シティを舞台に、若きバットマンが犯罪と腐敗に立ち向かう。陰鬱な世界観が印象的。
ここがおすすめ!
ゾーイ・クラヴィッツの存在感をより深く味わえる。
ドライブ
この映画を一言で表すと?
静と動が極端に交差する、孤独な犯罪映画。
どんな話?
無口な主人公が、ある事件をきっかけに暴力の世界へ足を踏み入れていく。
ここがおすすめ!
感情を語らない主人公像が、「コート・スティーリング」と重なる。
まとめ|この映画をどう受け取るかはあなた次第
「コート・スティーリング」は、万人向けの映画ではありません。
しかし、違和感・消化不良・肩透かしを楽しめる人にとっては、確実に記憶に残る一本です。
ぜひあなたの感想も、コメント欄で教えてください。
「刺さった」「分からなかった」──どちらの声も、この映画の一部です。






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