映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』の概要:「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」(73)「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(75)に続く、リリー・シリーズ3作目。浅丘ルリ子の演じる売れないレコード歌手のリリーは他のマドンナと一線を化す特別な存在で、男はつらいよシリーズ全48作中4作品に登場する。
映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』の作品情報
上映時間:104分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ、ラブストーリー
監督:山田洋次
キャスト:渥美清、倍賞千恵子、下絛正巳、三崎千恵子 etc
映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』の登場人物(キャスト)
- 車寅次郎(渥美清)
- 東京は葛飾柴又生まれのフーテン。テキ屋稼業をしており、一年中旅暮らし。仲間内ではすでに兄貴分。自分と似たような境遇のリリーには他の女性とは違う特別な感情を持っており、親友のような関係でもある。
- リリー(浅丘ルリ子)
- 売れない歌手。若い頃にレコードデビューしたが全く売れず、全国各地の小さなキャバレーなどで歌って、生計を立てている。7年ほど前に旅先で寅さんと知り合い、とらやの人々とも顔なじみ。苦労している女性で、男に甘えようとしない。離婚歴がある。
- さくら(倍賞千恵子)
- 寅さんの異母妹。頼りない兄のことを愛情深く支え続ける賢い妹。昔からリリーは寅さんにとって最高のパートナーだと思っている。
- 国頭高志(江藤潤)
- 寅さんとリリーが沖縄で間借りした家の長男。父親はすでに他界し、母親と高校生になる妹と暮らしている。リリーのことを親身になって心配する。
映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』のあらすじ【起】
新緑の季節。葛飾柴又の帝釈天参道にあるだんご屋の「とらや」では、さくらがおいちゃんやおばちゃんといつものように世間話をしている。裏手にあるたこ社長の印刷工場で働いている博は、頼まれたチラシを届けるため、キャバレーへ配達に行く。
配達先の近くで、博は仕事場へ向かう歌手のリリーを見かける。博に声をかけられたリリーは、約5年ぶりの再会を喜び、とらやの一同や寅さんのことをしきりに懐かしがる。博は“今晩にでも来ませんか”とリリーを誘うが、リリーは今日の仕事が終わるとすぐに地方へ旅立つのだという。リリーは相変わらず苦労しているらしく、顔色も悪かった。
その晩、リリーの話をしていると、珍しく寅さんから電話がある。さくらからリリーが逢いたがっていたという話を聞き、寅さんも久しぶりにリリーのことを思い出す。リリーとは真剣に結婚を考えたこともあり、恋多き寅さんにとっても印象深い女性だった。
それからしばらく経ったとある休日。さくらたちは近所の水元公園へあやめ見物に行こうとしていた。そこへひょっこり寅さんが帰ってくる。出かけることを隠そうとした一同に寅さんは“身内なのに水臭い”と文句を言い、すぐに出て行こうとする。その時さくらが、先ほど届いた寅さん宛ての速達に目を止める。それはリリーからだった。
映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』のあらすじ【承】
リリーはキャバレーで歌っている最中に血を吐いて倒れ、そのまま入院していた。リリーは生きる気力を失くしており、死ぬ前にもう一度だけ寅さんに逢いたかったと手紙に綴っていた。寅さんはすぐにリリーのもとへ行こうとするが、リリーの入院先は沖縄だった。
一番早く行くには飛行機に乗るしかないが、寅さんは飛行機が怖い。散々みんなに迷惑をかけながら、寅さんは何とか翌日の飛行機で沖縄へ飛ぶ。ヨレヨレになって沖縄へ到着した寅さんは、すぐにリリーのいる病院へ向かう。
ベッドで力なく目を閉じていたリリーは、懐かしい寅さんの声で目を覚ます。寅さんはリリーに優しく声をかけ、やせ細った手を握ってやる。手紙を読んで、遠い沖縄まですぐに駆けつけてくれた寅さんの優しさや、心温まるお見舞いをくれた柴又の人々のぬくもりに触れ、リリーは感涙の涙を流す。
寅さんは病院近くの安宿に滞在し、リリーを献身的に看病する。寅さんが来てからリリーは生きる気力を取り戻し、病気もどんどん良くなっていく。寅さんからの手紙でリリーの回復を知ったさくらは、兄を行かせて良かったと胸を撫で下ろす。
映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』のあらすじ【転】
リリーの退院が決まり、寅さんは彼女の療養先として海辺の民家の離れを借りてやる。母屋には夫に先立たれた母親と成人した息子の高志と高校生の妹が暮らしており、寅さんは母屋で寝泊まりさせてもらう。
寅さんが商売から帰ると、リリーは冷たいビールと夕飯を用意して待っている。リリーから風呂道具を手渡され、汗を流した寅さんは、離れでリリーの手料理に舌鼓を打つ。寅さんが酔っ払ってウトウトしかけた頃、母屋からお母さんの悲しい歌声が聞こえてくる。寅さんは眠る時には必ず母屋へ帰っていたが、2人は夫婦同然の暮らしをしていた。
リリーからの手紙で2人の様子を知ったとらやの一同は、何となく先行きが不安になる。しかしさくらは、わがままな兄と暮らせるのはリリーしかいないと考えていた。
ところが、リリーが元気になってくると、寅さんはいつものようにフラフラし始める。水族館でイルカの調教師をしている娘を気に入った寅さんは、足繁く水族館に通う。貯金も底をつき、リリーは高志に手伝ってもらって沖縄で仕事を探す。
リリーがまた歌手の仕事を始めると知った寅さんは、金の心配なんかしないでゆっくり療養するよう諭す。リリーは気丈に歯向かうが、すぐに悲しい顔をして“あんたと私が夫婦だったら別よ”と言って涙ぐむ。動揺した寅さんは、リリーの告白をマジメに聞かない。高志はずっとリリーに同情しており、いい加減な寅さんを責める。2人はつかみ合いの喧嘩となり、リリーはちゃぶ台をひっくり返して喧嘩を止める。バツの悪くなった寅さんは、リリーを残してどこかへ行ってしまう。
映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌朝、反省した寅さんは離れへ謝罪に行く。しかしそこにリリーの姿はなかった。置いてきぼりにされた寅さんは、大慌てでリリーの後を追って東京へ帰ろうとする。
それからしばらくして、帝釈天の参道では行き倒れ騒ぎが起こっていた。とらやでは“今時珍しいね”などと呑気なことを言っていたが、行き倒れていたのは寅さんだった。あれから寅さんは金のないまま船を乗り継いで鹿児島へたどり着き、3日3晩飲まず食わずで、ようやく柴又まで帰ってきたのだった。
数日後、元気になった寅さんから、さくらたちはこうなった経緯を聞き出す。帰る前の晩の話を聞き、さくらたちはリリーの切ない告白に胸を痛める。みんなは寅さんの無神経さを責め、何が何でもリリーを探し出して一緒になるよう説教をする。
その数日後、リリーが柴又へやってくる。リリーは寅さんに抱きついて自分の薄情を詫びる。寅さんはいつものように冗談ばかり言っており、肝心の話はしない。業を煮やしたさくらは、仕事中の博にも茶の間へ来てもらい、何となく沖縄の話を聞く。リリーは沖縄の悲しい歌を歌い、あの時自分はとても幸せだったと寂しげに語る。ぼんやりしていた寅さんは、“リリー、俺と所帯を持つか”とポツリと呟く。それは自然と口から出てしまった、寅さんの本音だった。
みんなが固唾を呑む中、リリーは笑って寅さんのプロポーズを受け流す。寅さんもリリーに従い、その話を冗談にしてしまう。2人はいろんな想いを押し殺して、笑顔で別れる。
夏。とある田舎の山道でバスを待っていた寅さんの前に、リリーが姿を現す。2人は粋なやり取りをして、再会を喜ぶ。寅さんはリリーに誘われるまま、賑やかに巡業バスへ乗り込んでいくのだった。
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