映画『おかあさんの木』の概要:息子たちを戦争に送り出し、その度に桐の木を植えた女性を描いた物語。一人、また一人と息子がいなくなっていく女性は、桐の木を植えることで寂しさを紛らわした。戦争の悲しみを伝えるための児童文学作品をもとにしている。
映画『おかあさんの木』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:戦争、ヒューマンドラマ
監督:磯村一路
キャスト:鈴木京香、志田未来、三浦貴大、平岳大 etc
映画『おかあさんの木』の登場人物(キャスト)
- ミツ(鈴木京香)
- 7人の息子を生んだ女性。戦争に巻き込まれ、息子たちを次々と戦地に送り亡くしていく。悲しみの中、苗木を植えながら息子たちを待つ。
- 坂井サユリ(少女時代:志田未来 / 老婆:奈良岡朋子)
- ミツ夫妻の昔馴染みである昌平の娘。しっかり者で、小さい頃からミツの一家と仲良くしている。現代でも、ミツが植えた息子たちのために植えた桐の木を守り続けている。
映画『おかあさんの木』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『おかあさんの木』のあらすじ【起】
現代。二人の男がある木の前で、土地の買収について話している。そして、土地の所有者に話を聞こうとサユリという老婆のもとを訪ねた。老婆は土地に植わっている木を切りたくないと話す。その木は”おかあさんの木”だという。そして”おかあさん”の話を始めた。
おかあさんはミツという名前で長野県のある村に嫁入りした。それから、7人の息子たちに恵まれた。6人目が生まれる時には、子宝に恵まれない実の姉夫婦から養子にほしいと頼まれ、誠と名付けられた男の子は姉の子供になった。そのため、7人目が生まれた時には六郎という名前になり、一郎から六郎までの6人と誠は元気に育っていった。しかし、ある日突然、ミツの旦那である謙次郎が心臓発作で死んだ。ミツは女手ひとつ、貧しい中で6人の息子を育てることになってしまった。夫がなくなり泣く事が多かったミツだが、子供たちに支えられることで、たくましく生きていった。
そして、世の中では戦争が始まり、ついに一郎に召集令状が届いた。一郎は皆に祝福されながら喜び勇んで出征した。一郎がいなくなり寂しくなったミツは、桐の苗木を1本植え、一郎の代わりに話しかけていた。
映画『おかあさんの木』のあらすじ【承】
さらに、二郎も徴兵され、ミツはまた苗木を1本植えた。当時は出征を皆で喜び祝福するものだったが、ミツは寂しさで二郎の苗木に話しかけるのだった。ついにある日、一郎の戦死が知らされた。見事な戦士を遂げたとし周囲は誉め称えたが、本当は死にたくなかったろうと言いながらミツは一郎の苗木に水をかけた。
さらに、三郎と四郎にも召集令状がきた。三郎は一郎の敵を討てると喜んでいたが、ミツは生きて帰ってきてほしいと切に願った。そして、ミツは新たに2本の苗木を植えた。間もなく三郎の戦死の連絡がきた。遺骨すら届かない知らせに、ミツは息子たちの死が信じられずにいた。
今度は、四郎の戦死の知らせが入った。四郎が戦死した場所であるガダルカナル島の砂だけが届けられ、お国のために死んだのだと言われた。4人の息子を戦地に送り、その内3人も亡くしたミツは”愛国の母”と周囲にもてはやされた。ついには女性誌に載るまでになった。ミツと昔からの馴染みである昌平と娘のサユリは、そのミツの様子を見て心配していた。
映画『おかあさんの木』のあらすじ【転】
ある日、実姉に養子にいった誠が訪ねてきて別れを告げてきた。自分の家ではお国のために戦えるのは自分しかいないので、志願で出征するという。親戚として幼少の頃から誠を見守っていたミツは涙を流して見送った。誠もまた、生みの母に小さな声でさよならを告げた。そして、ミツは誠の分の苗木を植えたのだった。
また、二郎の便りが最近返ってこないことを心配したミツは、自ら県庁を訪ねて問い合わせた。県庁では兵隊の家族たちが安否確認の為にごった返していた。そこに、沢山の警備に追いかけられる男が一人いた。その男は、”神州不滅”という日本を称えた文字を”神州全滅”と書き換え、非国民として追われていた。捕まったらきっと死刑だろうと皆が噂していた。県庁では二郎の安否は分からず仕舞いだったが、直後に二郎からの便りが届き、生きていることに皆が喜んだ。二郎は戦地の中国で出世していた。さらに、手紙の中には書いていなかったが、現地で恋もしていた。
一方で、サユリは神奈川の軍事工場に行くことになった。昌平のいる郵便局で働いていた五郎に恋するサユリは、別れを告げ、なけなしの砂糖を使いおはぎを作って渡した。五郎は、サユリのおはぎが一番好きだと言い、気持ちに答えた。現代で男達に話をしている老婆は、その時の別れを思い出し泣いた。その老婆はサユリだったのだ。
映画『おかあさんの木』の結末・ラスト(ネタバレ)
ついに、五郎にも召集令状が届いた。六郎は家を離れて寄宿舎住まいだったため、五郎が家を出ればミツが一人になってしまうのだった。ミツは見送りの駅で五郎にすがりつき離さなかった。そこに看守が現れ、無理に引きなされ非国民とされた。警察で非国民として酷い扱いをされていたが、周囲の人間が助けて家に戻されることになった。
家に戻ったミツは五郎のために苗木を植えていた。戦争は長引き、男達の徴兵だけでなく、馬が持っていかれ、毛皮のために猫を取られ、寺の鐘まで集められる状況だった。ミツの家には県庁で会った非国民の男が納屋に逃げ込んでいた。この戦争が許せないと話す男をミツはかくまい、食事を与えた。
そして、とうとう六郎までもが戦地へ行ってしまい、7本目の苗木を植えることになった。息子たちに生きて帰ってきてほしいと願うミツ。しかし、誠は沖縄で、六郎は特攻隊で死んでしまったという知らせが入った。そんな中、五郎は戦地で二郎に再開して、ミツに手紙を送ってきた。二郎と一緒に必ず生きて帰るから、待っていてほしいという内容だった。
そして、広島と長崎に原爆が投下され、戦争が終わった。戦争は終わったと聞いても、ミツは信じられなかった。ミツの中では戦争は続いていた。ついに二郎の戦死が聞かされ、五郎は南の島で行方不明のまま帰らなかったのだ。終戦後一年が経ち、子供たちを待ち続けるミツ。息子たちを戦争になんて行かせるべきじゃなかったと後悔した。息子たちのことを考え続けていると、桐の木の下で”ただいま”と言う息子たち全員の姿が見えた気がした。そして、夫の姿も蘇り笑顔が戻るミツ。そのミツのもとに、幻覚でなく本当の五郎が戦地から帰ってきた。しかし、ミツは五郎と再会することなく、家の前で亡くなっていた。
話は現代に戻り、老婆であるサユリは、亭主の五郎は優しい人だったと話しながら眠ってしまった。
映画『おかあさんの木』の感想・評価・レビュー
戦争の残酷さを母親という立場でなくては、感じることが出来ない気持ちを表現することで、よりリアルに感じることが出来た。映画で観るのでさえ辛く苦しくなりますが、愛している子供たちが次々と戦地に向かって行ってしまうという気持ちというのは、経験しなくては本当の意味で理解することは出来ないのだろうと思った。
ただ、恋愛要素はこの映画には必要なかったのではないかと個人的には感じたので、そこは少し残念に思った。(女性 20代)
戦争の悲しみを別の角度から描いた今作は、7人の息子を戦争に送り出した「おかあさん」のストーリーをメインにして進んでいきます。
息子を戦争に送り出す度に、庭に植える「桐の木」。7本にもなるその木を、現代も守り続けている老婆が話し出すところから物語は始まります。
母に「ただいま」と伝えたかった息子たちと、「おかえり」と言ってあげられる場所を守って来た母。とても切なく、悲しいストーリーですが「母の温もり」を感じることが出来ました。(女性 30代)
戦争の惨たらしさを母親の目線で描いた作品です。7人の子供全員が男であるため、7回見送らなければならない。一郎の時は悲しさをかみ殺している様子でしたが、五郎の出征で耐え切れず涙する場面は胸を締め付けられました。
成長・出征・訃報が繰り返され、兄弟の顔を覚える暇がありません。淡々としていて、只々壊れていく母親の姿を見させられます。”お国のため”などと唱える日本人には非常に腹が立ちます。(男性 20代)
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