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映画『アルバート氏の人生』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『アルバート氏の人生』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『アルバート氏の人生』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『アルバート氏の人生』の結末までのストーリー
  • 『アルバート氏の人生』を見た感想・レビュー
  • 『アルバート氏の人生』を見た人におすすめの映画5選

映画『アルバート氏の人生』の作品情報

アルバート氏の人生

製作年:2011年
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ロドリゴ・ガルシア
キャスト:グレン・クローズ、ミア・ワシコウスカ、アーロン・ジョンソン、ジャネット・マクティア etc

映画『アルバート氏の人生』の登場人物(キャスト)

アルバート・ノッブス(グレン・クローズ)
ホテルに勤めるベテランウェイター。小柄で初老の男だが、実は性別を偽り生きている女性。物静かで、気配りができ、正確な仕事ぶりが人々から評価されている。
ヘレン・ドーズ(ミア・ワシコウスカ)
アルバートと同じホテルに勤める若いメイド。色白で金髪の巻き毛が愛らしい。軽薄で、惚れやすい。賢くはないが、根は優しく、悪人にはなりきれない。
ヒューバート・ペイジ(ジャネット・マクティア)
ペンキ職人。大柄でガサツだが、どこか優雅で女にモテる。愛妻家で、妻は針子のキャサリン。辛い過去と、ある秘密を抱えている。
ジョー・マキンス(アーロン・ジョンソン)
ボイラー技士として、アルバートの勤めるホテルに雇われた男。実際はボイラーの知識はなく、ホテルのボーイだった。ずる賢く、粗野。暴力的な父を嫌い、自分は変わろうと努力する一面も。

映画『アルバート氏の人生』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『アルバート氏の人生』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『アルバート氏の人生』のあらすじ【起】

19世紀のアイルランド・ダブリン。街には、多数の失業者が溢れていた。しかし、ホテルの住み込みウェイターとして働くアルバート・ノッブスは、真面目で細やかな気配りのできる仕事ぶりから、失業とは程遠い顧客からの評価を貰っていた。

アルバートは仕事の出来る人物だが、口数は少なく、私生活では人と関わる事を避けていた。終業後、部屋で一人チップを帳簿につけ、マットの下に小銭を貯め込むのが日課だ。その小銭も、長い職業人生を経て、まもなく600ポンドに届こうとしている。このご時世、600ポンドはちょっとした財産だった。

ある日、アルバートは、ペンキの塗り替えに来た職人ヒューバート・ペイジとの相部屋を命じられる。眠りが浅いとか言い訳を並べ、断ろうとするアルバートだが、女主人のベイカー夫人には逆らえない。やむなく、先に休んでいたヒューバートの横たわるベッドに入るアルバート。服も着替えず、起こさないよう慎重に体を並べるが、ヒューバートから飛んできたノミに体をかきむしり、飛び起きて服をまくる。その様子を、ヒューバートに見られてしまった。アルバートの体は、女性だった。

この秘密を守ってくれと、ヒューバートに頼み込むアルバート。翌日からも、彼が秘密を漏らすのではないかと気が気ではない。あまりに不安げに付きまとうアルバートに、ヒューバートも秘密を明かす。彼もまた、女性だった。ヒューバートの場合は、結婚した男に暴力を振るわれ、仕事道具を奪って家を出た。そして夫の作業着で男として生計を立て、同じ孤独な身の上の同居人を見つけ、周囲の目を考えて籍を入れた。新しい結婚相手の名は、キャサリン。夫ではなく、妻だ。

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映画『アルバート氏の人生』のあらすじ【承】

ヒューバートの話は、アルバートにとって青天の霹靂だった。自分のような者でも、結婚が出来るのか。アルバートには、貯めた金でタバコ屋を始め、妻をめとるという夢が出来た。常連客の医師にその夢を語り、良い物件を見つけ、内装を想像する。しかし、妻に自分の秘密をどうやって打ち明けるのだろうか。

アルバートは、ヒューバートが部屋に忘れたボタンを口実に、彼の家を訪ねた。妻のキャサリンは、よく笑う、明るい女性だった。アルバートにも優しく接し、彼らの家は、温かく家庭的な雰囲気に溢れていた。ヒューバートに促され、過去を語るアルバート。

アルバートは、金持ちの女が産んだ私生児だった。会った事のない実母の援助で、養母と共に修道会で暮らしていた幼少期。しかし、実母が死ぬと、二人は貧困街での暮らしへと身を落とす。養母が急死し、天涯孤独となった時、アルバートは14歳だった。彼女は男達に襲われ、「彼」として生きる決意をした。折しもウェイターの大量募集があり、こうして、ウェイターのアルバートが誕生したのだ。

ヒューバートの家を訪ね、アルバートの夢はより具体的になっていた。カウンターに立ち、喫茶室でくつろぐ妻の姿に思い浮かべるのは、同じホテルのメイド・ヘレンだ。愛らしい顔立ちのヘレンの事は、ヒューバートも褒めていた。しかし、ヘレンには既に付き合っている男がいる。ヒューバートと同じ日にホテルに雇われた、下働きのジョーだ。彼は前の勤め先で失態を犯しクビになり、職業を偽ってこのホテルに潜り込んでいた。

映画『アルバート氏の人生』のあらすじ【転】

アルバートは、ヘレンをデートに誘う。ヘレンは年上で無口のアルバートを恋の相手として見たことはなく、ジョーを口実にその誘いを断った。しかし、そのジョーからデートへ行くよう勧められるヘレン。年寄りに、金目の物を買ってもらえという算段だ。ヘレンもその気になり、アルバートは、言われるがままに高級チョコレートや帽子、高級酒を買い与えた。

ジョーは、アメリカに行って成功したいと願っていた。その為に、こっそり読み書きの練習もする。渡航費は、ヘレンを使ってアルバートから巻き上げようと考えていた。アルバートは毎回のデート費用に頭を悩ませるが、店の買取りも急ぎたいし、今だけの辛抱だと思ってヘレンの言いなりになっている。ヘレンは、風変りだが善良なアルバートを騙す事に嫌気がさし始めていた。アルバートに購入予定の物件まで見せられ、うんざりだ。

突然、ダブリンの町をチフスの猛威が襲う。ホテルでも従業員が二人死に、アルバートも病に倒れた。奇跡的に回復するが、ホテルは営業停止処分。町には多くの死者が出た。アルバートがペイジ家を訪ねると、キャサリンも亡くなっていた。ヒューバートに、共に暮らさないかと持ち掛けるアルバート。しかし、ヒューバートにとって、キャサリンは何にも代えられない存在だった。彼はキャサリンが縫ったドレスを出し、自分とアルバートに着せる。まるで女装といった出で立ちで、海岸を散歩する二人。本来の姿を取り戻し、少女のように瞳を輝かせ駆け出すアルバートに、自分らしく生きろと助言するヒューバート。

映画『アルバート氏の人生』の結末・ラスト(ネタバレ)

アルバートのヘレンへの恋心は、次第にホテル中の知るところとなっていた。誰もが、だらしないジョーに惚れ込むヘレンはアルバートにふさわしくないと考え、アルバートを止めた。しかし、アルバートはヘレンにプロポーズをする。店舗購入の手付金100ポンドも払い込んだ。それでも、ヘレンはジョーを選んだ。ヘレンは、ジョーの子を身ごもっていた。アメリカ行きを願うジョーに捨てられるという恐れが付きまとうが、アルバートの誠実すぎる態度はヘレンに愛を感じさせなかったのだ。

皆が恐れたとおり、ジョーは父親になる覚悟が出来なかった。ジョー自身、酒浸りの父親に殴られ、怯えながら育った男なのだ。彼は、忌み嫌ってきた自分が父と同じ道を歩む事を恐れていた。ヘレンの部屋で言い争う二人。使用人達が、心配そうに様子をうかがっている。そこへ、アルバートが乗り込んだ。再度ヘレンに結婚を申し込み、ジョーに食ってかかるアルバート。しかし、小柄で非力なアルバートは、簡単に壁に打ち付けられてしまった。

喧騒を遠くに聞きながら、耳から血を流し、アルバートはふらふらと自室に戻る。鍵をかける手もおぼつかないが、ベッドに横たわると不思議と気分が落ち着いてきた。脳裏に浮かぶのは、あの家庭的なペイジ家の居間だ。満足そうなほほ笑みを浮かべ、眠りにつくアルバート。

翌朝、変わり果てたアルバートを発見したのはヘレンだった。すぐに医者が人払いをし、遺体を調べて、その体に驚いた。長年性別を偽り勤めてきたこのウェイターの訃報は、町のちょっとしたニュースになった。ベイカー夫人はマットの下の財産を見つけ、手に入れた。ジョーはヘレンと生まれた子を捨て、アメリカへ行った。ヘレンは寝食を確保するため、ただ働きの身になった。

ベイカー夫人は、ヒューバートを再び雇う。「ちょっとした金」が手に入ったから、内装のペンキを全て塗り替えるのだ。費用はかさむが、問題ない。あてがわれた亡きアルバートの部屋で、友人の報われない人生を嘆くヒューバート。すると、窓から赤子の声が聞こえる。ヘレンの子で、名はアルバート=ジョーだという。ヘレンは、いずれこの子も取り上げられ、自分も追い出されるだろうと怯えていた。アルバートの遺した金をペンキの塗り替え代金として取り返す予定のヒューバートは、ヘレンに、一緒に何とかできないか考えよう、と持ち掛けた。

映画『アルバート氏の人生』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

とてもしっとりとした静かな映画です。
ホテルのウェイターを務めるアルバートは、自分の夢を叶えるために、女性ながら男装しています。自分を殺して、夢のために努力できる姿勢はとても尊敬できると感じます。
最終的には、夢も叶わず、想いを寄せた女性とも一緒に生きて行けずに亡くなってしまいますが、その顔は満足そうで穏やかでした。
夢半ばで死んでしまっても、最期の瞬間が落ち着いたものであればいいのかなと考えさせられる映画でした。(女性 20代)


グレン・クローズの演技がとにかく素晴らしかった。本来の性別を偽り生活しなければならない生活は、とても苦しいものだったろうと思う。しかも、アルバートだけでなく、ヒューバートも同じだったのだから驚きだ。アルバートが愛する女性との恋に破れてしまったことは切なかった。ヘレンの気持ちを思うと何とも言えない気持ちになるが、ペイジ家の居間を思いながら息を引き取ったアルバートは、やはり愛する人との穏やかな生活を切望していたのだろうと思う。(女性 30代)


19世紀のアイルランド、様々な事情から性別を偽って階級社会を生きる女性の物語。
当時、女性がたった一人で生きることは非常に困難であっただろうか。
何十年もの間、性別を偽って必死に生き抜いた主人公の強さや、結局夢も恋も叶わなかった切なさが胸を打つ。
女というだけで、その弱さに付け込まれる女性たちを思うと許すまじと感情が沸き上がるが、ヒューバートが彼女の夢を守ってくれることを信じたい。
誠実で物静かな印象だった。(女性 20代)


「女性」が「男性」よりも低く見られていた時代。ものすごく女性が生きづらい時代だったんだと感じます。女性であるが故に、収入が少なく、貧しい暮らしをしなくてはならない。今でこそ、女性も男性も分け隔てなく生きているように感じますが、公にはならないだけで、差別や不平等を感じたことのある女性は少なくないでしょう。
貧困から逃れるために「男性」として生きることを選んだ人生。私には到底考えられませんが、この時代にはそういう生き方も必要だったのだと感じ、悲しくなりました。(女性 30代)


グレン・クローズの演技が本当に素晴らしい。19世紀末のアイルランドで、女性であることを隠し、男性として生きる主人公アルバートの姿は、静かだけどとても力強く、見ていて胸が締めつけられました。夢を持ちながらも誰にも心を開けず、最後には誰にも看取られず亡くなる結末が本当に切なかったです。社会に押し込められた女性の生き様が描かれた、静かだけど衝撃的な作品でした。(30代 女性)


最初は淡々とした雰囲気に戸惑いましたが、徐々にアルバートの過去や思いが明かされていくにつれて、どんどん引き込まれていきました。自分を守るために男として生きるしかなかったアルバート。淡い恋や小さな夢さえも踏みにじられる彼女の人生に、時代の冷酷さを感じました。ラスト、アルバートの死後に残されたわずかな金とノートが、彼女の人生の孤独さを物語っていて涙が出ました。(40代 男性)


アルバートがレストラン経営を夢見るシーンは、とてもささやかなのに、それがどれだけ彼女にとって大きな希望だったのかと思うと心が痛みました。ヘレンとの関係が進展するかと期待しましたが、ジョーによって利用され、最後にはアルバートの命が散ってしまう展開はあまりに悲しい…。でも、この映画を観て「声を上げられない人」の存在に目を向けるきっかけになりました。(20代 女性)


正直なところ、地味で暗い映画という印象は拭えませんでした。でも見終わってから、アルバートの生き方がずっと心に残りました。女性であることを隠し、ひたすら真面目に働き続け、誰にも心を許さない。でもその背景には壮絶な過去と、生きるための必死の選択があったことが分かり、涙が止まりませんでした。社会から見えない人の人生に、こんなにも深く感情移入した映画は初めてです。(30代 男性)


「生きるために嘘をつく」ことの切実さが描かれた作品。アルバートのように、自分らしく生きることすら許されない社会の不条理に強い怒りを感じました。誰にも頼れず、誰からも必要とされないまま、ただ淡々と生きてきた人間の人生って、こんなにも痛ましいのかと。ラストで希望が見える展開を期待していたけど、静かに終わるところもまた、リアルで心に残る余韻がありました。(50代 女性)


グレン・クローズの変貌ぶりに圧倒されました。彼女の無表情な演技の中に隠された感情が、見れば見るほどに深くて、何度も巻き戻して表情を確認したくなるほど。アルバートと、同じように男装して生きるヒューバートとの交流はとても尊く、やっと見つけた“仲間”との時間が短すぎて悲しかったです。もっと二人の人生が交差していたら…と願わずにはいられませんでした。(40代 女性)

映画『アルバート氏の人生』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『アルバート氏の人生』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

キャロル(2015)

この映画を一言で表すと?

誰にも言えない想いが、静かに心を燃やす――美しく切ないラブストーリー。

どんな話?

1950年代のニューヨークで、上流階級の既婚女性キャロルと、若き百貨店店員テレーズの間に芽生える秘めた恋。社会的偏見と家庭のしがらみに阻まれながらも、ふたりはお互いに惹かれ合っていく。

ここがおすすめ!

抑えた演出と繊細な演技が胸を打つ傑作。『アルバート氏の人生』同様、時代の価値観に抑圧されながらも本当の自分を求める人物の姿に共感できます。美しい映像美と静かな情熱に心奪われる作品です。

ボーイズ・ドント・クライ(1999)

この映画を一言で表すと?

“本当の自分”で生きることの痛みと尊さを描いた衝撃の実話。

どんな話?

実在の人物ブランドン・ティーナの人生を描いた作品。性自認を理由に社会から拒絶され、迫害されながらも男性として生きようとした若者がたどる、壮絶な運命と真実の愛の物語。

ここがおすすめ!

『アルバート氏の人生』と同じく、ジェンダーとアイデンティティをテーマにしており、社会の冷たさと個の尊厳を強く問いかけてきます。ヒラリー・スワンクの名演は必見。重く深いけれど観る価値のある一作です。

リリーのすべて(2015)

この映画を一言で表すと?

性別の境界線を越えて“本当の私”を生きた人の、勇気と愛の記録。

どんな話?

世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの実話をもとに、画家として生きる夫アイナーがリリーとしての自分を発見し、女性として生きようと決意する過程を、妻ゲルダとの関係と共に描く感動作。

ここがおすすめ!

エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの演技が繊細で心に響きます。『アルバート氏の人生』に惹かれた方なら、リリーの勇気や社会の壁の厳しさに深く共感するはず。美しくも切ない一作です。

ピアノ・レッスン(1993)

この映画を一言で表すと?

言葉を持たない女性の魂が、ピアノの音色とともに自由を求めて響き渡る。

どんな話?

声を発しないピアニスト、エイダが娘と共に遠い地へ嫁ぎ、そこで出会う原住民との文化の違いや、心の触れ合いを通して、自らの内なる声と自由を見つけていく。サイレントな情熱が描かれる名作。

ここがおすすめ!

言葉少なな主人公が持つ内なる強さ、そして不自由な社会で自分らしく生きようとする姿は、『アルバート氏の人生』に通じる部分が多くあります。映像美と音楽、演技のすべてが調和した傑作です。

ある女流作家の罪と罰(2018)

この映画を一言で表すと?

追いつめられた女性がたどる、偽りと孤独の果ての実話ドラマ。

どんな話?

作家としてのキャリアが行き詰まったリー・イスラエルが、著名人の手紙を偽造して生活費を稼ぐという実在のスキャンダルを描く。社会から見放された女性の孤独と、友情の機微が綴られる。

ここがおすすめ!

メル・マッカーシーが演じるリーは、社会に背を向けられた女性像として非常にリアル。『アルバート氏の人生』のように、声を上げられない人物の静かな闘いが胸を打ちます。淡々としつつも深い余韻が残る一本です。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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