映画『シュトロツェクの不思議な旅』の概要:タイトルはまるでファンタジー映画のようであるが、物語は非常に現実的なヒューマンドラマ。1977年に西ドイツで製作された映画で、ベルリンから夢を描いてアメリカへ渡った男が絶望していく様子を淡々と描いている。不思議な空気感を持った作品。
映画『シュトロツェクの不思議な旅』の作品情報
上映時間:110分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
キャスト:ブルーノ・S、エヴァ・マッテス etc
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映画『シュトロツェクの不思議な旅』の登場人物(キャスト)
- シュトロツェク・ブルーノ(ブルーノ・S)
- 音楽と酒を愛する男。酒の不始末で、2年半ほど刑務所に収監されていた。小柄な心優しい男で、男に捨てられた娼婦のエーファを自分のアパートに迎え入れる。エーファに誘われ、一緒にアメリカへ渡る。
- エーファ(エーファ・マッテス)
- ベルリンの娼婦。恋人らしき男はヤクザ者で、仲間と一緒にエーファを利用して金を稼いでいる。借金を理由に男たちから暴力を受け続けており、アメリカへ逃げることを決意する。英語が話せる。
- シャイツ(クレメンス・シャイツ)
- ブルーノの隣人。ブルーノの留守中、彼のペットの九官鳥の世話をしていた。年金暮らしをしている老人で、アメリカにいる甥のところへ移住する予定。
- クレイトン(クレイトン・スラピンスキー)
- シャイツの甥。アメリカのウィスコンシン州で自動車修理工をしており、ブルーノたちは、彼を頼ってアメリカへ渡る。
映画『シュトロツェクの不思議な旅』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『シュトロツェクの不思議な旅』のあらすじ【起】
シュトロツェク・ブルーノは、ベルリンの刑務所から出所する日を迎える。ブルーノは基本的におとなしくて気のいい男だが、酒癖が悪く、そのせいで刑務所に入れられた。刑務所の所長は、2度と酒は飲まないとブルーノに誓わせ、彼を出所させる。
所長には断酒を誓ったが、ブルーノに酒をやめる気などなかった。刑務所からまっすぐ酒場へ向かったブルーノは、顔なじみのエーファが、男に殴られている現場に遭遇する。ブルーノはエーファを優しく慰め、行き場所がないという彼女に、“俺の家に泊まればいい”と言ってやる。
エーファはブルーノの言葉に従い、彼のアパートへ行く。ブルーノの心の支えは音楽で、彼はピアノを“親友”と呼んで大切にしていた。ブルーノの留守中、九官鳥を預かっていた隣人のシャイツも訪ねてきて、エーファにも笑顔が戻る。
ブルーノは定職に就いておらず、街角でアコーディオン弾きをしてわずかなお金を稼いでいた。ブルーノは器用に鉄筋とアコーディオンを演奏し、自作の歌を歌う。
エーファを殴った2人組の男は、彼女の行方を追っていた。エーファは男たちに見つかってしまい、店へ呼び出される。どうやらエーファは、男たちに借金があるようだった。
2人組はブルーノの部屋をめちゃくちゃに荒らし、エーファにも酷い暴力を振るう。ブルーノは事情を聞こうとするが、エーファは話したがらない。2人組から屈辱的な嫌がらせを受け、ブルーノの精神状態は不安定になる。刑務所で世話になった医者に相談すると、“定職を探せ”と言われる。
映画『シュトロツェクの不思議な旅』のあらすじ【承】
2人組の暴力はエスカレートしていき、ブルーノとシャイツは警察に相談することを考える。しかしエーファはそれを嫌がり、“一緒に街を出よう”とブルーノを誘う。ちょうどシャイツが近々甥のクレイトンを頼ってアメリカへ移住する予定で、エーファもアメリカへ行きたいと言い出す。エーファに“ずっと一緒にいたい”と言われ、ブルーノもアメリカへ渡る決意をする。
旅行の費用とビザは、エーファがどこかで用意してきた。ブルーノには話していなかったが、エーファは売春をしてお金を稼いでいた。クレイトンから仕事や家の段取りがついたという手紙をもらい、3人と九官鳥はアメリカへと旅立つ。
アメリカへ着いてすぐに九官鳥は没収されてしまい、ブルーノは憂鬱な気分になる。3人は安い中古車を購入し、クレイトンが暮らすウィスコンシン州へ向かう。
クレイトンはシャイツとの再会を喜び、エーファのことも気に入る。しかしブルーノは、なんとなく孤独だった。エーファは英語が話せたが、シャイツとブルーノは言葉が理解できない。それでも、アメリカで真面目に働けば裕福な暮らしができると信じて、ブルーノはクレイトンと同じ自動車修理工場で働き始める。エーファはレストランでウエイトレスの仕事を始める。
しばらくして、ブルーノとエーファが暮らす移動式のプレハブハウスが運ばれてくる。家の中には家具やバスタブも揃っており、エーファはカラーテレビまで購入する。しかし全ては銀行のローンで購入したもので、2人は多額の借金を抱えることになる。
映画『シュトロツェクの不思議な旅』のあらすじ【転】
孤独な生活の中で、シャイツは次第におかしくなり、動物磁気を調べるのだと言って、見知らぬ人にまで声をかけて磁気を計測させてもらう。シャイツはブルーノたちに延々と動物の磁気について語るが、ブルーノたちに話の内容はほとんど理解できなかった。
ブルーノとエーファは真面目に働くが、ローンの支払いは滞るようになる。ブルーノは想像と全く違う現実に打ちのめされ、アメリカに失望していく。ローンをどうするのかという不安をエーファに訴えても、彼女は“その気になればお金は稼げる”としか言わない。ブルーノは疲れてしまい、彼女に“任せるよ”と言ってしまう。
エーファはレストランを訪れていたトラック運転手に誘われ、閉店後に会う約束をする。エーファは結局、アメリカでも売春をするようになっていく。
休日、銀行員が2人を訪ねてくる。銀行員は、ローンの支払いが遅れていると説明し、このままの状態が続けば、最終的には家を差し押さえることになると話す。エーファは売春で稼いだ金を渡し、ひとまず銀行員に帰ってもらう。ブルーノは、エーファの差し出した大金を見て、“何をしたんだ”と彼女に詰め寄る。
エーファは1人の時間を欲しがるようになり、ブルーノと別々に眠り始める。ブルーノはエーファの態度に深く傷つき、彼女に精神的苦痛を訴える。ずっと軽蔑されながら生きてきたブルーノは、愛に憧れ、エーファとの愛を信じてアメリカまで来た。しかし今、エーファの愛まで失いつつあると感じており、自分は終わりだと嘆き悲しむ。
映画『シュトロツェクの不思議な旅』の結末・ラスト(ネタバレ)
ブルーノは仕事場でも塞ぎ込み、心を病んでいく。しかし誰も彼の苦しみを理解してくれない。クレイトンは“エーファを俺にくれ”とブルーノをからかう。言葉は通じなくても、クレイトンが自分をバカにしていることは、ブルーノにも理解できた。
エーファは、トラック運転手の斡旋で売春をしていた。ブルーノはエーファの行動に不安を感じ、レストランを訪れる。そして、エーファの売春現場を目撃する。エーファはブルーノを疎ましがり、“この人たちとカナダへ行く”と言って、ブルーノから去っていく。
失意のブルーノが家で酔いつぶれていると、例の銀行員がやって来て、家を差し押さえる書類にサインするよう求めてくる。ブルーノは言葉の意味も書類の内容もわからずにサインをしてしまい、家は競売にかけられる。ブルーノは本当に何もかもを失ってしまう。
シャイツは、“これは何かの陰謀だ”と言い出し、ブルーノとともに銃を持って銀行を襲いにいく。しかし銀行には入れず、床屋を脅して金を奪う。2人とも完全におかしくなっており、強盗をした後に前のスーパーで呑気に買い物をし始める。そこへ警察がやってきて、シャイツは強盗容疑で連行されていく。ブルーノは銃と七面鳥を持って、車で逃走する。
ブルーノは自動車工場で軽トラックに乗り換え、そのまま逃走を続ける。しかし途中で車が故障し、道路脇のサンドイッチ店に入る。そこで金が尽きるまで酒を飲み、エンジンをかけたままの車を駐車場に放置して、前のリフト乗り場へ向かう。
ブルーノは勝手に電気系統をいじり、小動物が閉じ込められたケースや無人のリフトを稼働させる。そして銃と七面鳥を持ってリフトに乗り込む。しばらくして、回り続けるリフトから銃声が聞こえる。駐車場の車は炎上し、リフト乗り場にはパトカーが集まってくる。
ケースの中では、芸を仕込まれた鶏が音楽に合わせて踊り続けており、リフトは回り続けている。警察はこの狂った状況に困惑し、無線で電気技師を要請する。
映画『シュトロツェクの不思議な旅』の感想・評価・レビュー
『カスパー・ハウザーの謎』で人々に大きな衝撃を与えたブルーノ・S。今作でも素晴らしい演技を見せてくれました。ドイツで生きてきた元窃盗犯の主人公が自由を求めてアメリカへ逃亡。しかし、アメリカは全然自由の国じゃなかった!というお話ですが、これは監督のヴェルナー・ヘルツォークのアメリカに対する皮肉と取れます。これを見ると死にたくなるなんて人もいますが、決して大袈裟な表現では無く、私もこんな「バカバカしい世界」とウンザリしてしまいました。(女性 30代)
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