映画『早熟のアイオワ』の概要:アグネスは売春婦に身をやつした、母親のサラのもとで妹と共に暮らしていた。家計を支えるため、売春をするよう迫ってくる母をかわしながら、アグネスはバスケットと新聞記者のアルバイトに励んでいたが……。監督の実体験を基にしたヒューマンドラマ。
映画『早熟のアイオワ』の作品情報
上映時間:93分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ロリ・ペティ
キャスト:ジェニファー・ローレンス、ボキーム・ウッドバイン、ソフィア・ベアリー、クロエ・グレース・モレッツ etc
映画『早熟のアイオワ』の登場人物(キャスト)
- アグネス(ジェニファー・ローレンス)
- 中学生。学校でバスケットに励んでおり、町の新聞に載るほどの腕前。新聞記者のアルバイトをしており、詩を掲載してもらっている。売春婦の元締めに恋をしている。
- ビー(ソフィア・ベアリー)
- アグネスの妹。新聞配達と空き瓶回収をして、家計を支えている。仕事で知り合ったホームレスの友人がいる。
- サラ(セルマ・ブレア)
- アグネスやビーの母親。家庭内暴力がきっかけで、神父の夫と別れて以来、家計を維持するために売春婦になった。自暴自棄になっており、娘にも売春を強要する。
映画『早熟のアイオワ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『早熟のアイオワ』のあらすじ【起】
1976年のアイオワ州、カウンシルブラフス。アグネスは真っ暗な部屋で煙草を吹かす。そこにトイレのために起きた男が現れた。男は母親のサラを買った客で、以前に面識があるわけじゃない。アグネスの家計は、母親の売春により支えられていた。妹が起きる時間だからと、アグネスは男を家から追い出す。アグネスは散らかったキッチンでクラッカーを食べながら、この町の人たちは少女が堕落するくらいでは振り向きもしないと嘆く。
起きたばかりの妹のビーに、配達用の新聞を担がせた。朝食を済ませたビーは新聞配達に出かけた。妹が出て行った後、アグネスはレコードをかけながら、洗濯をして、入浴を済ませた。すると、玄関から一人の男が入ってきた。アグネスは密かに彼に恋をしていた。男は大金とハンバーガー、銃をアグネスに渡すと、彼女に口づけをした。何度も口づけを交わした後、アグネスはサラが知らない男と寝たことを話す。男は怒り、サラの部屋に押し入ると彼女を殴りつけた。男は売春婦の元締めで、自分に黙って新しい客を取ったサラを責め続けた。サラが稼いだ金を取り返すと、男は満足そうに家を出て行った。
映画『早熟のアイオワ』のあらすじ【承】
アグネスが宿題をしていると、母親が部屋から出てきた。家から追い出そうとする母親に抵抗しながら、アグネスは宿題を続けた。自分を無視するアグネスに、母親はそろそろアグネスも売春をしろと迫る。自分たちにできることはそれくらいしかない。そう言うと、また部屋に戻っていった。
昔は普通の家族だったとアグネスは嘆く。牧師の父親もいた。しかし、信者に支えられて気が大きくなった父は、家族に暴力を振るうようになった。アグネスたちは警察に保護され、引越しをすることになったのだ。
新聞配達を終えたビーは、その足で町中を歩き回り、空き瓶を集めた。
アグネスは部屋で聖書を開いた。そこにある文言を読むとすぐにページを閉じた。
ビーは空き瓶の回収施設の前で、顔見知りのホームレスたちに挨拶をした。ビーは町を出て行くつもりだと打ち明ける。通っている学校の先生が児童保護施設を紹介してくれて、そこの世話になる予定だと言う。ホームレスたちは茶化したものの、ビーの幸福を祝った。
映画『早熟のアイオワ』のあらすじ【転】
父などいなかった。要らなかった。アグネスは部屋で、誰にも語れない想いをノートに書いた。父は神を必要とする者を食いものにし、その行為は終わらない。だから父は要らないのだと。胸の内を書き留めると、アグネスは家を出て、近所で暇を潰していたビーに、帰ってくるよう言った。
ビーと別れた後、アグネスは地元の新聞社を訪ねた。編集者に部屋で書き留めた詩を渡すと、編集長に成績表を見せるよう要求された。勉強を怠らず努力を続けているアグネスに、編集長は雇用の継続を言い渡す。アグネスは給料の小切手を受け取ると、揚々とその場をあとにした。
掛け持ちしていたアルバイト先の飲食店で今月分の給料を回収した後、アグネスは近所の友人と共にストリートバスケに明け暮れた。近々開かれる公式試合に向けた練習だった。試合中、相手の手が偶然、彼女の胸に触れてしまう。そのことに怒ったアグネスはコートを去った。
家に戻ると、中が騒がしい。アグネスが鍵穴から中を覗き込むと、家は売春婦とその元締めの仲間に占領されていた。しばらく玄関の前で待つことにしたアグネスだが、彼らが帰る気配はない。アグネスは窓からビーの部屋に押し入り、そこで耳栓をしながら騒音を耐えていた妹を連れ出した。
映画『早熟のアイオワ』の結末・ラスト(ネタバレ)
家を出ようとしたアグネスは、元締めの男に呼び止められる。男の言いなりになり、アグネスは家に留まることにした。程なくして、家の前を警察が通ったため、売春婦たちは解散した。元締めは家に残り、アグネスと二人きりになると彼女に口づけをした。何度もキスを交わした後、元締めの男はアグネスをレイプした。アグネスは母親に助けを求めるが、気にも留めず、アグネスに買い物に行ってくるよう言った。アグネスは絶望し、元締めから銃を奪うと、抱き合う母と元締めにその銃を突き付けた。自分は彼無しでは生きられない元締めを殺すなら自分を先に殺せと言う母に、アグネスは呆れて銃を降ろす。すると、母はキッチンから包丁を取り出し、娘に突き付けた。アグネスは母との縁を切ることを決め、家を出た。娘が出て行った後、自分の言葉に後悔したサラはその場に崩れ落ちる。彼女の唯一の救いだった元締めの男も、家を出て行ってしまった。サラは1人きりで涙を流した。
家を出たアグネスは、元締めの車を盗み出し、バスケットの試合が行われている体育館に向かった。ユニホームに着替えて会場入りすると、コーチは遅れてやってきた彼女を早速試合に出させる。彼女の活躍により、チームは怒涛の追い上げを見せ、逆転勝利を果たした。勝利の余韻に浸る間もなく、アグネスは会場をあとにした。一人になった彼女は涙を零した。
涙を拭ったアグネスは、車に乗って妹を迎えに行った。妹はアグネスの試合結果を聞くと彼女のことを祝福した。
町を出たアグネスたち。アグネスは芸術家を目指しニューヨークに向かった。そして、二十年後、彼女は本作を完成させた。
映画『早熟のアイオワ』の感想・評価・レビュー
売春婦の母に、自宅には夜な夜な賭博や売春目的で男たちが集まってくる。そんなカオスで過酷な生活の元、妹たちの面倒を見ながら必死に生きる17歳のアグネス。とても痛々しい作品ですが、目を逸らしてはいけない現実…。「子供は親を選べない」そんな言葉が浮かんできます。最悪の環境の中でかけがいのない妹たちを守り、自力で抜け出そうとするアグネスに心が熱くなります。そんなアグネス役のジェニファー・ローレンスの演技の素晴らしさ、そして妹キャミー役のクロエ・グレース・モレッツの可愛らしさ!悲惨ですがラストは救いがあり、肩を寄せ合い生きていく3姉妹の絆の強さに心が打たれる作品でした。(女性 30代)
本作は、1976年のアイオワ州を舞台に、売春婦の母親と2人の妹を持つ14歳のアグネスが劣悪な環境下の中で生きる姿を描いたヒューマンドラマ作品。
夢も希望も見いだせないような最悪な日常の中で、妹たちを守るために必死に生きようとする姿が幼いながらも強く逞しかった。
そして、子どもが親を選べないという運命ほど憎いものはないと感じた。
何より三姉妹はとても可愛らしくて、特に3人でドライブするラストは素敵で印象深かった。(女性 20代)
中学の少女や幼い子供が身を置くには、あまりにも過酷な環境で、見ている間ずっと苦しかった。本来は守ってくれる存在であるはずの母親から、売春を強要されるなんて、怖くてたまらないと思う。自分だったら、絶望して生きる気力を失くしていると思う。これが実話を元に制作されているのが衝撃的。暴力を奮う父から逃げたとしても、簡単にハッピーになれるほど、現実は甘くないのだなと感じた。心が傷つきながらも必死に生きようとする少女達の姿が、目に焼き付いている。(女性 30代)
いくら親が嫌でも、中学生が一人で生きていくのは過酷すぎますよね。彼女たちもそれをわかっていて、最悪な環境でもなんとか我慢しながら生きているのが可哀想にも思えましたが、その中でも好きなことややりがいを見つける姿を見ると、本当に強い子達だなと三姉妹が愛おしく思えて仕方ありませんでした。
姉妹がいるというのは本当に心強かったと思います。早くこの環境から逃れて欲しいと思っていたので母親が後悔の涙を流すシーンはざまあみろと思ったのは私だけでは無いでしょう。(女性 30代)
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