つかこうへい原作の戯曲を自身が映画向けに脚色し、深作欣二が監督した東映映画。京都の撮影所を舞台とした大部屋俳優と時代劇スターの奇妙な関係を描いた作品。主演は風間杜夫、平田満、松坂慶子。
映画『蒲田行進曲』 作品情報
- 製作年:1982年
- 上映時間:109分
- ジャンル:ラブストーリー、コメディ
- 監督:深作欣二
- キャスト:松坂慶子、風間杜夫、平田満、高見知佳、原田大二郎 etc…
映画『蒲田行進曲』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『蒲田行進曲』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『蒲田行進曲』のあらすじを紹介します。
時代劇映画華やかなりし頃の京都撮影所では、大作『新撰組』の撮影が行われていた。主役の土方歳三を演ずるのは時代劇スターの倉岡銀四郎(風間杜夫)、映画の見せ場は、新撰組隊士が池田屋へ討ち入った際に大階段の上にいる浪士の一人を土方歳三が斬り落とし、斬られた浪士は派手に大階段を下まで転げ落ちていくという”階段落ち”のシーンだ。
しかし危険すぎるという理由で映画会社からは許可が得られず、大階段を半分以下に縮小して撮ろうかという案が出されたが、銀四郎は納得せず配下の大部屋俳優達に階段落ち役の志願を強要するが、誰もがしり込みする。そんな中に銀四郎を銀ちゃんと慕うヤス(平田満)がいた。
ヤスは銀四郎を心のよりどころとして貧しい大部屋暮らしを過ごしていた。ある日、銀四郎はヤスへ身ごもった女優の小雪(松坂慶子)を自分のスターの座を守るために、女優として落ち目を迎えた小雪を捨てヤスに押し付けてしまう。
3人の奇妙な関係がそこから始まるが、ヤスにとって小雪は憧れの女優であり、お腹の子が銀四郎の子であっても小雪と結婚したい一心で、出産費用を稼ぐために危険なスタント役ばかり挑んでいく。銀四郎に未練があった小雪もそんなヤスのひたむきさに徐々に魅かれていく。そしてヤスは遂に階段落ちの役を引き受けることになる。
小雪が臨月を迎える中で撮影は本番を迎え、銀四郎は大きく見得を切って浪士役のヤスを斬り落とす。
映画『蒲田行進曲』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『蒲田行進曲』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
古き良き日本映画時代へのオマージュ
時代劇が日本映画の中心だった頃のスターとそれを取り巻く大部屋俳優たちの関係とは、まさにこの映画で描かれた模様を彷彿とさせるものだったろうと思わせる。
この映画の物語のテーマはヤスと小雪の純愛物語なのだが、裏のテーマは時代劇全盛時代を支えた映画撮影所や多くの斬られ役俳優たちへのオマージュがある。
その意味で敢えて臭いせりふ回しが効果的だったと思える。銀四郎は如何にも我儘なスターに描かれていて、ライバルより少しでも目立とうとするところは笑えるが、実際にスターごとに派閥があったというので似たようなことはあったのだろう。
ヤスは小雪を好きになればなるほど銀四郎の影がちらつき、小雪につらく当たってしまう。銀四郎もヤスには小雪を押し付けた引け目と危険な階段落ちの役を引き受けてくれたヤスに対して腫れ物に触るような態度を取るようになる。
ヤスは屈折した心情を遂に小雪の前で爆発させてしまい、小雪に内面を打ち明け、小雪はそんなヤスをやっと受け入れる決意をする。この映画のハイライトと言えるシーンである。ヤスは銀四郎にも且ての親分子分の関係に戻りたくて、裏腹なふてくされた態度で撮影に挑んでしまう。
遂に切れた銀四郎に殴られたヤスは本来の銀四郎の姿が見られて、吹っ切れた気持ちで大一番の撮影を迎えられる。感動のクライマックスを迎えた後に演出されたどんでん返しは、タイトルの蒲田行進曲の意味がここにあったのかと思わせる。
みんながヤスを好きになる物語。最初は花形スターでかっこいい銀次郎に注目していましたが、優しさと兄貴分への恩義、そして愛情を真正面からぶつけてくるヤスがものすごく愛らしくて応援してしまいました。
『蒲田行進曲』と言えばの階段落ちはもちろん見応えがありますが、やはり最後の大どんでん返しに驚く人が多いでしょう。
お芝居の中のお芝居という表現はわかりづらいかもしれませんが、なるほどなあと感心してしまう作品でした。(女性 30代)
映画『蒲田行進曲』 まとめ
風間杜夫と平田満の熱演が光る作品である。この映画を機に二人とも一気に有名になったのも当然だろう。特に風間杜夫はコミカルな面も合わせて上手い演技だ。
配役は撮影ぎりぎりで決まったそうだが、大正解だったと思う。つかこうへいの作品は戯曲がベースのせいか、テンポは良いのだが肉体的にハードな演出が多いことが特徴で、今回も平田満演じるヤスは相当危険なスタント(実際にもスタントマンが代役だったと思う)をやらされている。階段落ちの大階段の高さなどあり得ないのだが、それが映画のハイライトシーンとして違和感覚えず見られるのは深作監督の演出力だろう。
ちなみにタイトル曲の蒲田行進曲とは松竹の撮影所が蒲田にあった時代に謳われた所歌である。
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