映画『オンディーヌ 海辺の恋人』の概要:町の嫌われ者で漁師のシラキュースはある日、漁で網にかかった謎の女性を助ける。彼女はオンディーヌと名乗り、シラキュースの助けを借りて生活を始めるのだった。伝説のセルキーの寓話を交え、ファンタスティックな流れの中で描かれるヒューマンラブストーリー。
映画『オンディーヌ 海辺の恋人』の作品情報
上映時間:111分
ジャンル:ファンタジー、ラブストーリー、ヒューマンドラマ
監督:ニール・ジョーダン
キャスト:コリン・ファレル、アリシア・バックレーダ、アリソン・バリー、トニー・カラン etc
映画『オンディーヌ 海辺の恋人』の登場人物(キャスト)
- シラキュース(コリン・ファレル)
- 通称サーカス。嫌われ者の漁師。アルコール依存症で現在、娘のために禁酒中。素面の時は優しいが、酔うと乱暴になり手がつけられなくなる。
- オンディーヌ(アリシア・バックレーダ)
- シラキュースの網にかかった女性。美しく謎が多い。実は麻薬の運び人だった。本名はヨアナといい、泳ぎが達者。
- アニー(アリソン・バリー)
- シラキュースの娘。オンディーヌをアザラシの化身であるセルキーだと思っている。産まれ付き腎機能が弱く、定期的に透析をしている。口が達者。
映画『オンディーヌ 海辺の恋人』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『オンディーヌ 海辺の恋人』のあらすじ【起】
漁師のシラキュースはある日、いつものように仕掛け網を上げて驚愕する。網の中に女がかかっていたからだ。死体を引き上げたかと思ったが、息を吹き返したために救助。彼は女を病院へ連れて行こうとするも、彼女は頑なで人には会いたくないと言う。名前を聞くとオンディーヌと答える。仕方ないので、亡くなった母親が住んでいた家へ匿うことにした。
シラキュースには幼い1人娘アニーがいる。少女は病に侵されており、定期的に透析を受けなければならなかった。歩くこともままならず、車いすでの生活を余儀なくされている。町では嫌われ者のシラキュース。それでも娘のために頭を下げて歩くのだ。
翌日、オンディーヌの所在を確かめると彼女は川で洗濯をしていた。一緒に漁へ行きたいと言うため、船に乗せて出港。仕掛けを上げるも大抵はいつも空っぽなのだが、オンディーヌが歌うとなぜか立派なロブスターが入っているのだった。
その日は大漁で歓喜に沸いたシラキュース。彼女のために衣類を購入。学校帰りの娘にオンディーヌのことを話すと彼女は、それはアザラシの化身であるセルキーではないかと言う。シラキュースはアニーと別れてオンディーヌに物資を届けた。
映画『オンディーヌ 海辺の恋人』のあらすじ【承】
密かに父の後を尾行したアニー。独自にセルキーのことを調べ始める。
シラキュースは2年前までアルコール依存症だった。そのせいで妻とは別れ、アニーとは別々に住んでいる。同じ町でのことなので会おうと思えばいつでも会えるのだが、一緒に住むことは許されていない。妻のことは嫌悪しているが、娘のことは愛していた。そのことを悔いて、今は禁酒に励んでいる。
アニーは翌日、1人で祖母の家がある入り江へ。オンディーヌは海で泳いでいた。物怖じしないアニーはオンディーヌを詰問する。少女は彼女がセルキーだと信じて疑わなかった。
セルキーはアザラシの毛皮を地面に埋めると7年間、陸で暮らすことができる。そして、その間に7つの涙を流し、泣き終えれば思いがけない幸せが待っていると言う。
少女はそれだけ言うと帰って行った。
オンディーヌを連れて漁に出たシラキュース。彼女のお陰なのか今回も大漁だった。しかしそこへ、監視船が調査にやって来る。シラキュースは人と会いたくないオンディーヌを船倉に隠すも、見つかってしまう。上手くやり過ごしたが、町ではきっと噂になるだろう。
どうせ噂になるなら、身を隠しても無駄である。オンディーヌは堂々とシラキュースと港へ降り立った。彼が大漁の礼をしたいと言うので、服を所望するオンディーヌ。途中でアニーと落ち合い、町の服屋へ向かった。
映画『オンディーヌ 海辺の恋人』のあらすじ【転】
その後もアニーは何かとオンディーヌを訪ねて来る。その日は町で祭りが開催されていた。
シラキュースの船でオンディーヌと共に港へ来たアニー。オンディーヌが自分はセルキーではないと否定するため、少女は証明しろと言い海へ身を投じた。大人達は焦って少女の救出へ向かう。幸い大事には至らず、アニーは無事だった。
ほっとしたのも束の間、オンディーヌを捜している男がいるという話を、母親から聞いたアニー。
その頃、シラキュースとオンディーヌは互いに惹かれ合って体を重ねていた。
シラキュースは不安を覚える。オンディーヌを救ってから、彼女と接することで自分が希望を持ち始めていることに。きっとこの先に素晴らしく良いことか、悪夢のような悪いことが待っているに違いない。
そんなある日、入り江の家に男が訪ねて来る。オンディーヌは咄嗟に、裏の温室へ避難してやり過ごした。
アニーを透析に連れて行き、家に送ったシラキュースだったが、元妻が自宅にいない。彼女は恋人とパブへ行っていた。仕方なく娘をパブへ送った後、入り江の家へ向かう。だが、家にはオンディーヌの姿が見当たらない。彼は辺りを探して、川に逃げ込み隠れている彼女を見つけ出した。
したたかに酔った元妻は、恋人とアニーを乗せて車を運転。完全に飲酒運転である。車は出会い頭の事故を起こして、店へと突っ込んだ。
オンディーヌを助けて町に来たシラキュース。事故車が元妻の車であることを知り、錯乱状態となる。
幸い後部座席でシートベルトをしていたアニーは無事で、命に別状はなかった。だが、元妻の恋人はシートベルトをしておらず、助手席からフロントガラスを突き破ったために命を落とした。彼がドナー登録をしていたため、病院はアニーとの適合検査をする。すると、奇跡的に適合。すぐさま腎臓移植が行われた。
後日、葬儀が行われ恋人の遺灰は海へ撒かれる。元妻は怪我のせいでしばらくは歩けない。彼女はシラキュースに娘のことを頼んだ。
禁酒していたシラキュースだったが、誘われてどうしても断り切れず、酒を口にしてしまう。したたかに酔った彼はオンディーヌを連れ回しては、激しく詰問を繰り返した。
そうして、彼女を孤島に置き去りにしてしまう。
映画『オンディーヌ 海辺の恋人』の結末・ラスト(ネタバレ)
翌朝、ようやく酒が抜けたシラキュース。退院したアニーを迎えに行き、自宅へ帰った。
ソファーで横になり目覚めると、もう昼を過ぎている。アニーに食事を作ってやり、洗面所へ来た時だった。テレビからオンディーヌが唄っていた歌が聞こえてくる。男性歌手の歌だった。
シラキュースはアリーの了承を得て自宅を出る。船でオンディーヌを置き去りにした島へ向かい、彼女を探すが見つからない。しかし、向かいの島に人影が見えたため、急いでそこへ向かった。
果たして、オンディーヌはその島にいた。シラキュースは彼女に真実を話すよう訴える。すると、彼女は渋々といった様子でようやく話し始めた。
彼女はルーマニアの麻薬運び人だった。夫と共にヘロインを運んでいる途中で警察に見つかってしまい、泳げなかった夫は彼女に麻薬を託して海へと逃がした。だが、彼女は波に飲まれ麻薬を手放してしまう。そうして死にかけた時、奇跡的にもシラキュースの網にかかったのである。助けられた後の平穏な生活は彼女にとって、大切な時間でありずっと求めていたものだった。故に、手放したくなかったのである。
シラキュースは彼女に名前を尋ねた。彼女はヨアナと名乗る。それが本当の名前なのだろう。彼女を自宅へ連れ帰ったシラキュース。だが、アニーの様子がおかしい。そこへ現れたのは、麻薬運び人であるヨアナの夫だった。シラキュースはアニーを人質に拘束される。ヨアナはバッグを埋めた場所へ夫達と向かったが、いくら掘っても見つからず。
話を聞くとヨアナを失いたくなかったアニーが、密かに隠し場所を変えていたことが分かる。彼女はアニーを説得し、一行はその場所へ向かった。
アニーは父の仕掛け網にバックを隠していた。奴らは麻薬を無事手にするが、隙を狙ったヨアナに海へ突き落されてしまう。泳げないヨアナの夫はそのまま溺れてしまった。
警察に逮捕されたヨアナ。外国人である彼女は国籍を持たないため、このままでは裁判により母国へ強制送還されてしまう。シラキュースは彼女を助けるために結婚を決意。アニーもそれを望んでいる。こうして2人は結婚し、互いに幸せな生活を手に入れるのだった。
映画『オンディーヌ 海辺の恋人』の感想・評価・レビュー
アニーが言うようにオンディーヌは人魚なのかもしれないと思っていたため、予想外の事実に驚いた。不思議でピュアな物語かなと思っていたのだが、サスペンス的なハラハラドキドキした気持ちを感じる物語だった。ラストまで楽しめる作品だと思う。
シラキュースにとってもオンディーヌにとっても、出会えたことが幸せに繋がったところが良かったと思う。オンディーヌの歌声がとても綺麗で、長閑な風景と合っていて素敵だった。(女性 30代)
漁師の網にかかった美女と言うファンタジーな設定から「人魚」をイメージして鑑賞していましたが、ストーリーはとてもリアルで現実的な「人間味」のある作品でした。
身体の弱い娘を持つ、嫌われ者の漁師を演じたのはコリン・ファレル。彼の酒癖の悪さは見ていて嫌になるほど「最悪」で、ウンザリしましたが娘との絆や愛情はとても深く、ラストにはしっかりと親子が望む形の「幸せ」が訪れました。
明るいストーリーではありませんが、見て良かったなと思わせてくれます。(女性 30代)
監督のニール・ジョーダンが母国アイルランドを舞台にオリジナルで脚本を書いた作品。今作には貧困、離婚、アルコール依存症、肉体のハンデ、麻薬犯罪などタイトルからは縁遠い生々しい要素も書き加えられている。
主演の父親役にコリン・ファレルが演じているが、苦悩する彼の演技は逸品だ。加えてヒロイン役のアリシア・バックレーダがとにかく美しい。そして、好奇心旺盛だが、病弱な娘が物語を形作っている。終始、ファンタジックな雰囲気だが、その実人々の生活はとてもリアルに描かれている。アイルランドの美しい風景に加えて中間色での演出をほどこすことでファンタジックさを保ちつつ、生々しい生活や主人公の苦悩を描き、終盤では一変して麻薬犯罪が関わってくるという展開には驚かされたし面白かった。個人的には結婚しなくても良かったとも思うが、伝説性や主人公の希望を完成させるにはハッピーエンドになるのが好ましかったのだろうとも思う。(女性 40代)
お伽話のようでありながら、サスペンスの要素も含まれていて一瞬も飽きませんでした。ファンタジーな物語の中に、アニーの病気や両親の離婚問題、主人公のアルコール依存等、暗い影がちらつくのも秀逸な演出だと思います。人魚だと信じ切っていたところ、最後に現実的な種明かしがありました。夢から醒める感じが凄く良いです。アイルランドの海辺や街並みが全体的に深緑がかっていて、目と心に癒しを感じました。テンポが少しばかりゆっくりな点も大好きです。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー