映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』の概要:ウッドロウ・グラントは、宝くじ当選通知を受け取る。徒歩でリンカーン州まで行こうとした所、警察に保護される。息子のデイビッドが迎えに来るが、ウッドロウの強い意志に折れて車で一緒に向かうことにする。淡々とした視点で親子の心模様を描く、ロードムービー。
映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:アレクサンダー・ペイン
キャスト:ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、ステイシー・キーチ etc
映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』の登場人物(キャスト)
- ウッドロウ・グラント(ブルース・ディーン)
- モンタナ州に暮らす80代。引退後、毎日することもなく退屈していた。「100万ドル当選」の知らせを受け取り、賞金を得るためリンカーン州に向かう。無口だが人の言葉を信じやすく、頼られると断れない。酒癖が悪いことで、子どもたちとは若干の溝がある。
- デイビッド・グラント(ウィル・フォルテ)
- ウッドロウの次男。AV機器店の店長として働く。内縁の妻ノエルとは、2年間の同棲ののち別れる。温厚で平和主義者。子どもの頃は美少年で評判だった。父の意思に押されて、リンカーン州まで同行する。
- ケイト・グラント(ジューン・スコイッグ)
- ウッドロウの妻で兄弟の母。一家の主導権を握り、取り仕切ってきた。直情型で口は悪いが、一家では一番肝が据わっている。ウッドロウの当選話はインチキだと言い張る。
- ロス・グラント(ボブ・オーデンカーク)
- ウッドロウの長男。結婚して子どもが2人いる。放送局でキャスターを勤めている。冷静沈着で良識的。酒乱の過去から、ウッドロウのことはあまり信頼していない。
- エド・ピグラム(ステイシー・カーチ)
- ネブラスカ州に暮らす、ウッドロウの旧友。ウッドロウがネブラスカにいる頃、共同で工場を経営していた。陽気で調子のいい男だが、ウッドロウには金絡みでいろいろと要求がある。
- バート(ティム・ドリスコール)
- ネブラスカに暮らす、ウッドロウの兄夫婦の長男。就職せず、ボランティア活動などに参加している。コールとはいつも一緒で、家を訪ねたデイビッドをからかって楽しむ。
- コール(デヴィン・ラットレイ)
- 兄夫婦の次男。女性暴行の罪で服役していたが、出所した。どこか歪んでおり、柔和なデイビッドを嘲って面白がる。怒ると手がつけられなくなる。
映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のあらすじ【起】
デイビッドが宝くじは詐欺だから行くのは止めようと諭すも、ウッドロウは聞く耳を持たない。家に帰すと、ウッドロウは再び徒歩で旅に出ようとした。諦めたデイビッドは仕事を休んで、父ウッドロウを車に乗せる。宝くじの当選話がインチキだとは感づいていたが、高齢の父にとってよい刺激になるのでは、と考えていた。
旅一日目の夜。モーテルでデイビッドが休んでいると、外をふらついていたウッドロウが部屋でつまずいて頭を打つ。病院で診てもらうと、傷が深いので入院した方がいいと言われる。それにもかかわらず、ウッドロウは金曜までにリンカーン州へ行くことを諦めていない。デイビッドは、ネブラスカの町に暮らす伯父宅でパーティがあるから、週末までそこに滞在しようと提案する。月曜にはリンカーン州に到着できると言うと、ウッドロウは渋々その案を受け入れた。
ネブラスカ州に到着する。デイビッドたちは伯父宅を宿にし、夜の街に繰り出す。子どもたちが幼い頃までこの町に暮らしており、ウッドロウはピグラムという男と共同で工場を経営していた。休憩がてら、昔ウッドロウの知人がマスターを勤めたバーに入る。
映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のあらすじ【承】
ウッドロウは昔の記憶を懐かしむが、デイビッドの記憶に残る父親は酒浸りのイメージしかなかった。ウッドロウの酒癖への開き直った態度に、デイビッドはほとほとがっくりする。その後、旧友のピグラムと再会する。ウッドロウは昔の仲間たちと思い出話に花を咲かせた。
翌日、伯父一家に当選話を知られてしまう。100万ドルという大金のせいか、皆が強い関心を示してきた。母ケイトがネブラスカにやって来るため、ウッドロウたちはバス停に出向いた。すると、知り合いが当選話のことで声をかけた。どうやら町中にウッドロウの噂が広まっていたらしい。
ケイトはバスから降りると、許可なく旅に出た夫と次男を叱り飛ばした。ウッドロウたちは町外れの墓地へ行き、グラント家―ウッドロウの両親の墓を参った。ウッドロウには弟妹がいたが、いずれも若い頃に亡くなってしまった。ケイトは、悪気はないだろうが夫の家族を毒舌で評する。
伯父宅に戻ると、新聞社から使いを任された少年がウッドロウを訪ねてくる。目的は新聞に載せる写真を撮るためで、億万長者のウッドロウは大々的なスクープだった。頭を抱えたデイビッドは、スクープを阻止するために新聞社を訪れる。経営者のペグに当選話は父の勘違いだと伝えると、ペグはすんなり理解してくれた。彼女は父の若い頃の恋人だった。ペグ曰く、ウッドロウは朝鮮戦争から帰還した直後、酒に溺れるようになった。デイビッドは、会社に保管されているウッドロウの若かりし頃の写真を見る。
映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のあらすじ【転】
両親とカフェで食事をしていたデイビッド。トイレに入ると、ピグラムに話しかけられる。かつてウッドロウと工場を経営していた頃、ウッドロウの失敗で事業が立ち行かなくなったことがあった。ピグラムは当時多額の金を工面したのに、一銭も返されていないという。
だから今回の賞金を借金の返済に充ててほしい、とピグラムは望んだ。デイビッドは当選話なんて嘘だと言うが、ピグラムは、返済しなかったら弁護士を立てると脅した。
早朝。ウッドロウは、息子に今日リンカーンに発とうと促す。デイビッドは、今日は親戚一同が会するんだから留まろうと説得する。ウッドロウは了承し、無口な親戚が伯父宅に集まった。日中、デイビッドの兄ロスが伯父宅に到着する。食事が始まると、ロスとケイトが当選話は真実でない、と告白する。が、親戚の誰も本気にしなかった。屋外の庭で親戚がくつろいでいる横で、デイビッドたちは親族の女性から賞金を一部分けてほしいと持ちかけられる。彼女は、過去にウッドロウに金を貸したが返されていないというのだ。そばで聞き耳を立てていたバートとコールが、本当のことを吐け、とロスに暴力を振るった。ケイトが介入してその場は何とか収まる。親戚たちは賞金をめぐって醜い口論を始め、ケイトが激怒したことでデイビッドたちは伯父宅を後にした。
デイビッドたちはウッドロウの生家を訪れる。家は空き家で廃墟と化しており、2階の子ども部屋はウッドロウが弟の死を目の当たりにした場所だった。ウッドロウ曰く、両親からは厳しく扱われており、そのためかウッドロウの家族の記憶は弱いものだった。
帰り道にピグラムの家を通りかかる。息子たちは、ウッドロウが昔ピグラムに農耕機械を盗まれた話を思い出し、“いいこと”をひらめく。そして、ケイトの制止も聞かずに納屋に侵入してそれらしきものを持ち帰る。だが、ウッドロウからそれはまったく別人の物だと指摘されてしまう。
映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』の結末・ラスト(ネタバレ)
温厚なウェスタンドーフ氏の持ち物であることが判り、息子たちはがっくりしながらも納屋に物を返す。同タイミングで、ウェスタンドーフ夫妻が帰宅する。ケイトが会話をして時間を稼ぎ、夫妻には持ち出したことが知られずに済んだ。会話の流れのため、ケイトが車を発進させて去ってしまう。息子たちは慌てて後を追いかける。
バーで休憩していると、ピグラムがウッドロウに賞金を山分けしろと要求してくる。それを無視して店を出ると、ウッドロウたちは変装した巨漢兄弟に襲われる。大した怪我はなかったものの、当選の手紙が奪われてしまっていた。デイビッドは巨漢兄弟の泊まるモーテルに出向く。しかし、巨漢兄弟は当選話がインチキであることを知って手紙を捨てていた。耐えかねたデイビッドは、ウッドロウにもう帰ろうと促す。しかしウッドロウは手紙を捜す気満々で、二人は手紙を求めてカフェに入る。そこではピグラムが手紙を拾っており、客の前で文面を読み上げながらウッドロウを侮辱していた。すでに皆には嘘であることが知られていた。ウッドロウは無言で立ち去るが、デイビッドは怒りが抑えられずピグラムを殴る。
手紙は取り返したが、ウッドロウは体調を崩す。デイビッドは本当にこの旅を終わりにしよう、と強く責める。ウッドロウは賞金でトラックを買うのが望みで、それが彼を突き動かしていた。しかし、本当の理由は息子たちに父として何か残してやりたい、というものだった。ウッドロウはリンカーン州へ行くことを諦めると、気絶する。ウッドロウが病院に入院した後、付き添っていたケイトとロスは先にモンタナ州に帰る。
デイビッドが仮眠から目を覚ますと、ウッドロウが姿を消していた。ウッドロウは弱弱しい足取りで、徒歩でリンカーンへ行こうとしていた。デイビッドは何も言わず、そのまま父をリンカーンへ連れて行く。手紙の送り主であるマーケティング社を訪ねると、当選していないことが明らかになる。帰り道、デイビッドはトラックとコンプレッサーを購入する。ネブラスカに着くと、デイビッドはウッドロウに運転を任せる。久々にハンドルを握り、ウッドロウは瞳をらんらんと輝かせる。当選の真実を知る人々は、新車を乗りこなすウッドロウを見て驚きを隠せなかった。町を出ると、親子は運転を交代し、モンタナ州を目指した。
映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』の感想・評価・レビュー
物語は分かりやすく、意外な展開も特にない。全シーンモノクロなことも相まって、とても地味な作品である。観終えた後は、感動や悲しさが残るわけでもない。だが、家族愛や人間関係が丁寧に描かれていて、共感できるシーンばかりで飽きることなく観れる。特に奥さんの性格が良かった。ボケの始まった旦那さんを嫌がりながらも、どこか一緒にいて楽しそうで、なんだかんだ好きなのが伝わってくる。ほっこりできて、とても心にしみる作品。(男性 20代)
本作は、年老いた頑固な父親と父と距離を置いてきた次男の心の交流を描いたモノクロロードムービー作品。
道中で次第に明らかになる父の本当の姿やそれを受け取った息子の優しさに、じんわりと朗らかな気持ちになった。
また、奥さんの口の悪さやキャラの良さが好みだった。
2人が旅の道中で得たものは計り知れない。自分自身の家族と重ね合わせながら、人生って良いなと感じられたし、親が元気でいてくれているうちに親孝行しなきゃと思わせてくれる作品だった。(女性 20代)
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