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映画『裁かれるは善人のみ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『裁かれるは善人のみ』の概要:土地の収用を巡って、市長に対し一市民が友人の弁護士と共に訴訟を起こす。これにより危機を感じた市長は、あらゆる手を使って、密かにその家族と弁護士を陥れるのだった。作中、キリスト教での真実について語られるが、ストーリーとの対比として描かれている。

映画『裁かれるは善人のみ』の作品情報

裁かれるは善人のみ

製作年:2014年
上映時間:140分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
キャスト:アレクセイ・セレブリャコフ、エレナ・リャドワ、ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ、ロマン・マディアノフ etc

映画『裁かれるは善人のみ』の登場人物(キャスト)

コーリャ・セルゲーエフ(アレクセイ・セレブリャコフ)
車の修理工を営む男性。短気な面もあり、手先が器用。酒を飲むと暴力的になる。
リリア(エレナ・リャドワ)
コーリャの後妻。ロマとはあまりうまくいっていない。できれば事を荒立てたくないと思っている。
ディーマ・セレズニョフ(ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ)
モスクワの弁護士。コーリャの友人で愛称はドミトリー。紳士的で友人思いだが、リリアの誘惑に負ける。
ヴァディム市長(ロマン・マディアノフ)
権力に溺れ、金でものを言わせる傲慢な男。世情に通じており、手回しに余念がない。
ロマ(セルゲイ・ポホダーエフ)
コーリャの息子で中学生。頭もそれほど良い方ではなく口が悪い。父を愛しているが、リリアに反発している。

映画『裁かれるは善人のみ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『裁かれるは善人のみ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『裁かれるは善人のみ』のあらすじ【起】

車の修理工場を営むコーリャは、妻と息子の3人家族。川の傍の小さな町で暮らしていた。ある日、コーリャの元に娯楽施設を建設するため、土地を収用せよと市の方から通告がある。
通告の土地は修理工場と温室と自宅がある場所で、取り上げられてしまえば生活ができなくなってしまう。土地の価格評価も随分と安い。コーリャは土地の収用を不当なものとして、市を訴えることにした。

モスクワで弁護士をしている友人ディーマは、コーリャの言い分を聞き協力。2か月かけて調査を行い市長の汚職の証拠を掴んだが、民事裁判では結局、敗訴してしまうのであった。

市長のヴァディムは世情に通じており、金と権力でものを言わせる人物だった。彼は市民を虫けらと呼んで憚らない。コーリャの土地を奪い、家族を追い出そうとしている。

判決が下されたその夜、酒に酔った市長がコーリャを訪ねて来る。コーリャとヴァディム市長は一触即発の勢いで口論を展開。双方共に酔っぱらっているため、口性がない。ディーマが冷静にその場を宥めてくれたお陰で、事なきを得た。

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映画『裁かれるは善人のみ』のあらすじ【承】

市長の本性を見たディーマは翌日、不法に侵入して来た市長を告訴しようとする。だが、検察や裁判所には、すでに市長の手が回っており、権限を持つ者が誰1人としておらず。そのせいで、コーリャは警察へと不当に勾留されてしまう。

ディーマは市長の元へ向かった。彼の過去をまとめた書類を出して交渉に入る。書類を見たヴァディムは土地の返還はできないが、請求してきた金の工面はできると言う。ディーマはひとまず、それで手を打った。

一方、リリアは警官の妻である友人の力を借りて、不当に捕まってしまった夫の釈放を頼んでいた。そして、家が取り壊された跡のことを考え、団地の部屋を下見させてもらう。
ディーマと合流したリリアは、彼から交渉結果を聞く。まだ決定ではないため、今後の動向を様子見といったところだろう。

ディーマの調査結果は思いの外、真相を得ていたらしくヴァディムはかんかんである。1年後には市長選挙が迫っており、この時期に過去の不正が暴かれてしまえば、彼の人生は終わりである。ヴァディムは部下達にディーマの素性を探らせるよう命令した。

コーリャはディーマとリリアのお陰で無事に釈放される。
翌日はコーリャの客である警官から射撃に招待されていた。コーリャ一家とディーマは、他の友人達と共に湖の畔へ向かう。射撃の的として空き瓶を並べ、まずは酒をコップ1杯ずつ飲み、酔った状態で的を狙う。外したら更に杯を重ねるルールだった。

的が無くなったところで小休止に入る。それぞれ自由に過ごし、コーリャは仲間達と車の傍で酒を飲んでいた。良い気分で酔っぱらっていたところへ、リリアとディーマの不倫を目撃した子供が叫びながら駆けて来る。コーリャは激怒して走った。

映画『裁かれるは善人のみ』のあらすじ【転】

友情と夫婦間に亀裂が入った状態で、ヴァディムと会うことになったディーマ。山奥の人気のない場所へと連れて行かれ、拘束後に命を脅かされる。これ以上関わらずに手を引けということなのだろう。

どうにかコーリャの許しを得たリリア。早朝から工場へいつものように出勤。
ディーマはモスクワへ帰った。家では出て行くために荷物の整理を始める。
その最中、ロマは両親が自宅の地下で盛っているのを目撃してしまう。

ロマは元々、リリアに良い感情を抱いてはいない。それに加え、ディーマとの不倫騒動。ロマが好意を寄せる人々は皆、リリアによって傷つけられている。彼はそれが気に食わないのだ。ロマは感情に任せて、リリアが全てを壊したと叫ぶのだった。

その次の日からリリアが姿を消した。携帯も繋がらず、仕事場の工場にも出勤していない。外が暗くなっても帰宅せず。
リリアはもしかして、モスクワへ行ったのではないか。コーリャはそう考えていた。だが、行方不明者の捜索を願い出るには、3日は待たなければならない。ディーマへ何度も電話をかけてみるも、彼とも連絡は取れなかった。

3日目の朝。外は雨が降っていた。警官の友人がコーリャを迎えに来る。リリアが見つかったと言うのだ。パトカーに乗せられて向かった先は川の畔。そこには、息絶えたリリアが横たわっていた。

映画『裁かれるは善人のみ』の結末・ラスト(ネタバレ)

愛した妻も友人も、家も失ったコーリャは、深い悲しみから更に酒へと溺れていく。酔っていない時間がないほど、浴びるように酒を飲み続けた。全能の神はどこにいるのか。

翌早朝、警察の殺人課に強制連行されたコーリャ。自分にリリア殺害の容疑がかかっていることを知る。検視の結果、遺体には鈍器のような物で殴られた痕があり、その鈍器はコーリャの自宅付近から発見されたと言う。だが、彼にはさっぱりである。コーリャは殺人容疑で起訴されることになった。

ロマは警官の友人へ引き取られることになりそして、コーリャの家は無残にも破壊される。
裁判の結果、有罪と判決が下されたコーリャは、刑務所へ15年収監されることになった。その報告は市長であるヴァディムへも知らされ、彼は喜色満面として祝杯を挙げる。

市長ヴァディムの思惑は、まんまと成功を遂げたのであった。
季節は冬を迎え、町は白い雪で覆われていく。コーリャの土地には、娯楽施設が建設中だった。

映画『裁かれるは善人のみ』の感想・評価・レビュー

ロシアの田舎にある浜辺の小さな家と普通で善人の家庭があることをきっかけに、理不尽で不条理な目に遭い崩壊していく様を描いたアンドレイ・ズビャギンツェフ監督によるヒューマンドラマ。
崩壊に向かう家族の姿を淡々と描いており、絶望的でかなり暗いストーリーとなっていて完成度の高い傑作。
秘密めいた雰囲気の撮り方や、息を呑むほど圧巻の大自然と巨大な鯨の白骨化した死骸のインパクトが強く印象に残っている。
哲学的で、とてつもない重厚感のある作品。(女性 20代)


題名の通り、救いのない物語で悲しみと怒りしか残らなかった。権力を振りかざした市長の思惑通りに物語が終わるのは納得ができなかったが、現実的な作品だと言えるのかもしれない。権力を持った人物に市民が立ち向かうのは、容易なことではないだろう。家族、友人、土地を失い、人生まで狂ってしまったコーリャのその後も心配だが、彼の息子のロマの方が心配である。大人の理不尽な世界に否応なく巻き込まれる、子供の辛さが感じられる作品だった。(女性 30代)


各国の主要映画祭を席巻した非常に秀逸な作品。重厚な雰囲気が根底を支える中、淡々と一家を襲う悲劇が描かれている。ロシア北部バレンツ海に面する荒涼とした小さな町の景色がのどかでありながら、どこかに悲壮感が漂う。
一家の主人の友人である弁護士が来てくれたことで逆転劇が見られるかと一安心したのも束の間、政治的手腕や根回しが上手い市長によって全てを陥れられてしまったことには非常に憤りを感じる。そして、終盤で雨の中、奥さんの遺体が発見されたシーンはとても印象的だった。これ以上は貶めないで欲しいと願った場面でもある。父親も容疑者として収監されてしまったので、今後の少年の先行きが非常に心配になった。今作を鑑賞し、これが現実なのだとまざまざと感じさせられ、ラストシーンでの建設現場が物悲しく思えて仕方なかった。(女性 40代)


『裁かれるは善人のみ』まさにタイトル通りの内容で、正しいことをしている人間だけが不当な裁きを受けて、悪人はのうのうと生きていくストーリーは物凄く胸糞が悪く、救いようがありませんでした。
コーリャの短気で酒に溺れがちな性格は確かに良い性格ではなかったと思います。しかし、土地を取り上げられ不当に罪を問われ、妻まで殺される…。こんなことがあっていいのだろうかと怒りが込み上げてきました。(女性 30代)

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