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映画『ラ・ジュテ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ラ・ジュテ』の概要:フランス人監督、クリス・マルケルによる短編SF映画。舞台は近未来の荒廃したパリ。ある男が、過去の記憶と未来のイメージの間を彷徨う。モノクロ写真を連続して映し出す技法「フォトロマン」が使われている。

映画『ラ・ジュテ』の作品情報

ラ・ジュテ

製作年:1962年
上映時間:29分
ジャンル:SF
監督:クリス・マルケル
キャスト:エレーヌ・シャトラン、ジャック・ルドー、ダフォ・アニシ etc

映画『ラ・ジュテ』の登場人物(キャスト)

男(ダヴォス・ハニッヒ)
第3次世界大戦後のパリで、ある恐ろしい実験の被験者となる人物。装置に繋がれ、脳内で過去と未来を行き来する。
女(エレーヌ・シャトラン)
男の記憶のイメージに現れる女性。
科学者(ジャッカス・ルドー)
大戦後の人類救済計画に関わっている人物。男に実験を施す。

映画『ラ・ジュテ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ラ・ジュテ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ラ・ジュテ』のあらすじ【起】

第三次世界大戦でフランスは敗戦国となり、パリは荒廃する。世界は放射能に覆われている。

ある男は、少年期のイメージに取り憑かれている。少年の頃に見た暴力的な光景が、大人になった今も彼の心を圧迫し続けている。

男は少年時代の回想に浸っている。大戦前の平和なパリ。少年はオルリー空港の送迎台で飛行機を眺めている。少年はある一人の女の顔に目を留める。戦争中には決して見られない穏やかな表情。女の顔は少年の心に強烈な印象を残した。

突然、少年の前で一人の男が射殺される。男は生涯この光景に取り憑かれている。

戦後、パリは勝利者の支配下に置かれる。生存者の多数は捕虜となり、逃げのびた者たちは地下へ潜伏する。

勝利者は人類の滅亡を防ぐため、ある計画を立てる。それは、時の流れに穴を開け、捕虜の記憶やイメージを介して過去や未来に接触し、物資や技術を入手する、というものである。移動するのは意識のみで、捕虜の体は移動することはない。

計画のための実験が開始され、多くの捕虜達が実験台に送られる。これまでの全ての被験者は、錯乱するか死亡するという末路を辿っている。

実験を成功させるには、想像力の強い人間が必要である。警察は捕虜達の夢を監視し、過去の映像に執着する男を被験者に選ぶ。

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映画『ラ・ジュテ』のあらすじ【承】

科学者は男を奇妙な装置に繋ぎ、薬品を注射する。長い苦しみの末、男の意識は過去の記憶へ向かう。

男の過去に関する記憶の描写が鮮明になっていく。平和時の朝やベッド、本物の子供、猫や鳥などのイメージが次々と浮き上がってくる。

実験開始から16日が経過する。記憶のイメージの中、男はオルリー空港の無人の送迎台にいる。男は、過去に同じ送迎台で目撃した女を再び目にする。

実験開始から30日後。再び記憶の中。市場で、男は送迎台にいた女に初めて声をかける。女は男に反応を返す。男が記憶から戻ると、女の姿は消える。

実験を重ねるうちに、科学者は過去の決まった時間へ男を送ることが可能になる。男は記憶の中で何度も女に会い、二人は親しくなる。男が自分が未来から来たことを女に打ち明けると、女は男が違う時系列からやってくることを既に理解していた。

男の意識が現実に戻っている間、女は止まった時間の中で死んでいる。男が女の前に姿を現わすと、女は生き返る。男は、女が息を吹き返す瞬間を、恋人の目覚めを待つかのように見つめている。

映画『ラ・ジュテ』のあらすじ【転】

今や男と女は強い信頼で結ばれている。男の意識が現実へ戻ろうとすると、二人の間にはガラスのような障壁が出現する。

ある日、科学者は男に第一段階は終わったと告げる。実験の第二段階では、男は一層直接的に女に関わることが可能になる。

女は男に対してすっかり打ち解けており、甘えたり拗ねたりしてみせる。男は、目の前で展開する映像が自分の意志で見ているものなのか、もしくは強制的に見せられているものなのか、そして、これが夢か現実かの区別がつかなくなる。

実験開始から50日が経過する。実験は成功を重ね、科学者は男を思い通りの過去の時間帯へ送ることが可能になる。

イメージの中で、男と女は剥製博物館を訪れる。女は男の出現を自然現象のように受け止めるようになっている。女は男の前では終始笑顔である。二人は、今までで一番楽しい逢瀬を過ごす。男にはこの信頼関係が永遠のものだと思える。

突如、男の意識が強制的に現実へ引き戻される。過去への実験は成功を収め、科学者は男の意識を未来へ飛ばす実験を開始する。男は、博物館でのデートが女に会える最後の機会だったと気付く。

映画『ラ・ジュテ』の結末・ラスト(ネタバレ)

科学者は男に注射する。男は未来のイメージをなかなか明確にすることができず、実験は難航する。苦痛を超えて、男は未来へ意識を向けることができるようになる。

未来の地球は大きく変貌しており、パリは再建されている。男は未来人に接触し、現在の地球への援助を要請する。現在の人類とは全く異なった思考回路を持っている未来人は、過去の人類を拒絶する。

男は、このまま現在の人類が滅んでしまうと、未来も存在しなくなる、と未来人を説得する。納得した未来人は、男に全産業を復活させるエネルギーを渡して未来との回路を閉じる。

エネルギーを持って帰ってきた後、男は監視付きの部屋と少年期の映像を与えられて快適に過ごす。男が死ぬと未来のイメージも消滅してしまうため、科学者は男の抹殺を先延ばしにしているが、いずれは殺す予定である。

ある日、男は時間旅行をして現在にやってきた未来人からメッセージを受け取る。未来人は、男を助けて仲間に加えようとする。男は、平和な未来よりも少年期に戻りたいと望む。

未来人は、男の意識を少年期に戻してやる。再び男は過去の記憶の中にいる。男はオルリー空港の送迎台に女の姿を認め、駆け寄ろうとする。

男を監視していた科学者は、脱走した男を抹殺するために追跡者を送り込んでいた。女のもとに辿り着こうとしたその瞬間、追跡者は男を射殺する。

男は倒れる。少年期の男が見た強烈な殺人現場は、大人になった男が殺されたまさにこの光景であった。

映画『ラ・ジュテ』の感想・評価・レビュー

29分の紙芝居。今まで見てきた映画はなんだったのかと思うほど動きに満ち溢れている錯覚に陥る映画で、映画の肝は脚本なんだろうと思わされた。自分の常識を破壊してくれる貴重な体験ができる映画だといえる。たまに何が面白いのかと聞かれることがあるが、わからなかったならそれが君の限界なんだよ。と心の中で冷笑している。映画ファンを名乗るのであれば自分のセンスを問うための踏み絵代わりに一度は視聴しておくべき作品の一つ。(男性 30代)


本作は、タイムトラベルの被験者となった男を描いており、全編モノクロのスチームショットを連続で映し出す「フォトロマン」という珍しい技法で作られた30分弱の短編フランス映画。
スチール画とナレーションのみのシンプルな構成で、時間と記憶を題材としている。
その世界観は、芸術的、映画的に素晴らしくて一気に引き込まれた。
また、少年時代に一目惚れをしてその過去に執着した男の結末には悲しみで胸が痛んだが、とても良い作品に出会えたと感じた。(女性 20代)

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