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映画『はじまりへの旅』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『はじまりへの旅』の概要:文明社会と切り離された大自然の中で生活する大家族が、母親の死をきっかけに、自家用バスで旅に出るロードムービー。子供たちが焚き火の灯りで読書に耽る姿は、スマホばかり覗いている私たちに、「そんなことが面白いの?」と静かに問いかけてくる。

映画『はじまりへの旅』の作品情報

はじまりへの旅

製作年:2016年
上映時間:119分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
監督:マット・ロス
キャスト:ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、キャスリン・ハーン、スティーヴ・ザーン etc

映画『はじまりへの旅』の登場人物(キャスト)

ベン・キャッシュ(ヴィゴ・モーテンセン)
一家の父親。独自の人生哲学を持ち、6人の子供たちを人里離れた森の中で育てている。妻のレスリーは長い間精神病を患っており、彼女のためにも文明社会から離れるのがベストだと考えていた。子供たちには、文武両道のスパルタ教育を施している。
ボウドヴァン(ジョージ・マッケイ)
通称ボウ。18歳の長男。8歳まではオレゴン州の農場で暮らしていた。内向的で物静かだが、運動も勉強も抜群にできる。名だたる有名大学に全て合格する。
ヴェスパー(アナリス・バッソ)
キーラーと双子の姉妹。15歳。女の子ながら狩りの名手で、超人的な運動神経の持ち主。
キーラー(サマンサ・アイラー)
ヴェスパーと双子の姉妹。15歳。歌が上手な文学少女で、6ヶ国語を話せる。その中でも、エスペラント語を得意とする。
レリアン(ニコラス・ハミルトン)
次男。12歳。兄弟姉妹の中で、唯一ベンに対して反抗的。風変わりな父親のせいで、母親が病気になったと思い込んでいる。
サージ(シュリー・クルックス)
三女。9歳。何事にも積極的で、動物の解剖や剥製作りが大好き。かなりのしっかり者。
ナイ(チャーリー・ショットウェル)
三男。7歳。森生まれの森育ちなので、すぐ裸になりたがる。天真爛漫で、可愛らしい。
ジャック(フランク・ランジェラ)
一家の母方の祖父。ひとり娘のレスリーを奪い、奇妙な生活をさせたベンを憎んでいる。大金持ちで、広大な敷地の屋敷で暮らしている。

映画『はじまりへの旅』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『はじまりへの旅』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『はじまりへの旅』のあらすじ【起】

アメリカ北西部の山間部。この山奥の深い森の中で、ベンと6人の子供たちは暮らしている。18歳になる長男のボウ、15歳になるヴェスパーとキーラーの双子の姉妹、12歳になる次男のレリアン、9歳になる三女のサージ、そして7歳になる三男のナイは、父親のベンの個性的な教育方針に乗っ取って、文明社会から隔離されたサバイバルな日々を送っていた。

電気も水道もガスもない環境の中で、一家はそれぞれに役割を持ち、自給自足で生活している。サバイバルナイフや弓矢で狩りをして獲物を仕留め、野菜も育てている。ベンは子供たちが自然の中で生き抜いていけるよう、厳しい訓練をさせていた。そのため、子供たちは驚異的な身体能力を持つスーパーキッズに育っていた。

ベンは教育にも熱心で、難しい古典文学や哲学書、さらには物理学の専門書なども子供たちに読ませている。子供たちは学校に通っていなかったが、本から様々な専門知識を習得し、数カ国語を話せる語学力まで身につけていた。夜になると、一家は焚き火を囲んで読書に耽り、唯一の娯楽とも言える音楽を楽しむ。子供たちは、ベンの理想通りの人間に育っていた。

そんな一家にとって今の心配事は、母親のレスリーのことだった。レスリーは心を病み、4ヶ月ほど前からニューメキシコの実家で療養を続けている。ベンはボウと一緒に町へ出て、妹に電話で近況を聞く。すると妹から、昨夜レスリーが自殺したという驚きの報告を受ける。

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映画『はじまりへの旅』のあらすじ【承】

ベンは子供たちに母親が自殺したことを告げる。みんなが泣き出す中、レリアンは取り乱し、ベンにナイフを向ける。レリアンは、母の自殺の原因が、父親のベンにあると思っていた。子供たちは、みんな大きなショックを受けていた。

ベン宛にレスリーの遺言状が届く。レスリーは、自分は仏教徒なので教会での葬儀はしないで欲しい、土葬ではなく火葬にして欲しい、自分の遺灰は大勢の人が集まる公衆トイレに流して欲しいと書いてあった。

ベンはさっそく義父のジャックに連絡し、レスリーの希望を伝える。しかし、ジャックはベンのことを憎んでおり、話を聞いてくれない。レスリーの葬儀は、5日後にニューメキシコの教会で執り行われる予定だが、ベンは出席を拒まれる。ジャックは、「もし来たら警察を呼ぶ」とまで言っていた。

子供たちは、母親と最期のお別れをしたがっていた。義父に従うしかないと考えていたベンも、沈み込む子供たちを見て、決心を固める。一家は「スティーブ」と名付けられた大型バスに乗り、2400キロ先のニューメキシコへと旅立つ。

子供たちにとって、都会は謎に満ちた世界だった。ベンが森へ移住して10年になるので、サージやナイは文明社会に触れたことがない。ベンは「食べ物救出作戦」と称してスーパーで食材を盗み、子供たちにチョコレートケーキを振る舞う。そこで敬愛するノーム・チョムスキー(アメリカの哲学者)の誕生日を祝う会を催し、子供たちにサバイバルナイフなどの武器をプレゼントする。みんなは新しい武器をもらって喜んでいたが、レリアンだけは笑顔を見せない。レリアンは、常識はずれなベンの生き方に反発していた。

映画『はじまりへの旅』のあらすじ【転】

一家はベンの妹家族の家に到着する。妹夫婦は、はるばるやってきた一家を歓迎してくれる。しかし、破天荒すぎるベンの教育方針についていけず、子供たちの将来が心配になる。妹は、子供たちを学校へ通わせるべきだと忠告するが、高校生になる自分の息子よりもサージの方がよっぽど知識豊富なのを見て、黙り込んでしまう。

一家はキャンプ場へ移動し、そこで一泊する。年頃のボウは、同い年くらいのクレアという少女と出会い、彼女に恋をする。初めて女の子とキスをしたボウは、いきなりクレアにプロポーズして笑われてしまう。そしてボウの初恋は、あっけなく幕を閉じる。

いよいよニューメキシコの教会に到着した。ベンと6人の子供たちは派手ないでたちで教会に乗り込み、レスリーの意に反する葬儀を阻止しようとする。しかしジャックの怒りを買い、教会から追い出されてしまう。それでもベンは埋葬場所へ行こうとするが、父親が逮捕されることを恐れた子供たちに止められ、泣く泣く諦める。

レリアンは、ベンに対する疑問をボウにぶつける。実はボウも、このままでは社会に出られないと感じており、密かに有名大学を受験して合格通知をもらっていた。ボウは意を決して、大学へ進学したいという意思をベンに伝える。レスリーがボウの大学受験を後押ししていたと知り、ベンはショックを受ける。レリアンは、書き置きを残してジャックの屋敷へ行ってしまう。

ベンはすぐにレリアンを迎えに行く。しかしレリアンは帰ろうとしない。ジャックは、子供たちを学校へ通わせず、危険な訓練までさせているベンのやり方は、児童虐待だと指摘する。そして孫の養育権を争うと言い出す。ベンは必死で食い下がるが、ついに警察が呼ばれ、屋敷を追い出される。

それでもベンは諦めず、子供たちと「レリアン救出作戦」を実行する。狩りの得意なヴェスパーが、屋根からレリアンのいる2階の部屋へ忍び込もうとするが、瓦が割れて地上へ落下してしまう。ヴェスパーが並外れた身体能力だったため、大事には至らずに済むが、ベンはすっかり落ち込んでしまう。そして、自分がやりすぎたことで、愛する妻や子供たちを不幸にしてしまったのではないかと、思い悩むようになる。

映画『はじまりへの旅』の結末・ラスト(ネタバレ)

ベンは今までのやり方を反省し、子供たちのことをジャックに託す決意をする。子供たちは家へ帰りたがるが、ベンは「自分と一緒にいると、お前たちの人生がダメになってしまう」と言って、独りぼっちで去っていく。

バスを運転しながらひとしきり泣き、ベンはスーパーのトイレでヒゲをそる。ところが、河原で野宿をしていたベンの前に、子供たちが現れる。子供たちはバスの床下に隠れていたのだ。ずっとベンに反発していたレリアンも素直に謝り、親子は仲直りする。

子供たちは、この旅の目的を果たそうとベンを説得する。それは「大好きなママの願いを叶える」という、一家にとってとても大切な任務だった。ベンは、また子供たちを危険に晒すのではないかと躊躇していたが、彼らに励まされ、夜の墓地へと向かう。

一家は埋葬されたレスリーの棺を掘り起こし、バスに乗せる。ようやく母親と会えた子供たちは、母親の亡骸を囲み、それぞれの思いに耽る。ボウはバスの中で、長い髪をバッサリ切る。

一家は海の見える気持ちのいい高台に木を組み、その上に母親の亡骸を安置する。ベンは愛するレスリーに生涯の愛を誓い、亡骸を荼毘に付す。一家は母親の愛した歌を歌い、大好きなママを見送る。

ボウは広い世界を知るため、旅に出ることにする。一家はボウを見送るため空港へ行き、そこのトイレにレスリーの遺灰を流す。ゴーッという水音と共にトイレへ吸い込まれていく母親の遺灰を見て、みんなは思わず笑い出す。

その後、一家は学校へ通える場所に引っ越し、そこで新しい生活を始める。ベンは、ここでも変わらず黙々と勉強に励む子供たちを見て、満足げに微笑む。

映画『はじまりへの旅』の感想・評価・レビュー

ヒッピー生活を送る一家のロードムービー。
厳しい父と父親独自の教育によって高度な身体能力と学力を併せ持つ子どもたちが、母親の葬儀のため街に出てくる。街に出た子どもたちが初めて見た世界の捉え方が新鮮で頼もしい。
父の教育方法が日本ではあまり馴染みのないものだったために現実味が感じられなかったのが残念だが、強く生きる逞しい子どもたちを見て一種の憧れのようなものを抱いた。
一般社会から逸脱した家族の強い絆や愛情、父が子どもを想う気持ちが心打つ作品。(女性 20代)


主演のヴィゴ・モーテンセンはこの作品でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされているが、なるほど確かに一風変わった、しかし子供たちへの愛情はしかと感じる個性的な父親役を見事に演じている。なんだかんだでお父さん大好きな子供たちがとても可愛い。
ラストは少し切ないような気持ちになるが、がんじがらめだった家族の解放を優しく表現しているあの穏やかな光景が個人的にはお気に入りだ。あれは確かに、“はじまりへの旅”だったのだ。(女性 30代)


絶対に真似はできないが、映画として見る分には非常に最高な物語だった。子供達はこの後、社会に溶け込むのに苦労するかもしれないが、ちょっとやそっとのことではめげない逞しさがあるので大丈夫だと思えた。ベンのやり方は他人には理解されないだろうが、子供達に勉強を教えたりと、彼らの将来をきちんと考えていることが伺える。ぶつかり合いながらもお互いのことを大切に思っていて、ベン一家のことが羨ましく感じた。笑って驚いて感動できる作品だった。(女性 30代)


コミカルな雰囲気の作品と思って鑑賞しましたが、家族の絆をテーマとしたかなり深い作品になっていて泣けました。自分の生き方を考え直すきっかけをくれた作品でもあります。お父さんの性格が大好きです。奥さんの死因をちゃんと話したり、子供たちに生活の選択をさせたりと、家族を本当に愛していることが伝わりますね。子供達も真っすぐ育っていて立派です。”思いを隠さず言葉にする”って中々難しい事ですが、本当に大事な事なんだなとしみじみ思いました。(男性 20代)


父親役のヴィゴ・モーテンセンが、『グリーン・ブック』の人だと知って驚きました。だいぶ雰囲気は違いますが、アウトロー役が似合いますね。
ストーリーを無視して観ればビジュアル的にオシャレでセンスの良い作品ですが、どうしてもこの家族には共感できなかったです。自分の生き方を貫く姿勢は素敵だけれど、普通に生活している人達もそれは同じなので、盗みや挑発的な態度は身勝手だと思います。かなり評価されている作品なので、共感できない私はつまらない人間なのだろうかと不安になってしまいました。(女性 40代)

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