映画『起終点駅 ターミナル』の概要:完治は東京に妻と息子を残し、旭川で判事の仕事をしていた。その時、担当した事件で、大学生の頃に付き合っていた冴子と再会を果たす。完治は冴子と逢瀬を重ねるようになり、体の関係を持ってしまう。
映画『起終点駅 ターミナル』の作品情報
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:篠原哲雄
キャスト:佐藤浩市、本田翼、和田正人、音尾琢真 etc
映画『起終点駅 ターミナル』の登場人物(キャスト)
- 鷲田完治(佐藤浩市)
- 東京に妻と息子を残し、旭川で単身、判事の仕事を行っていた。だが、かつて付き合っていた冴子と再会を果たし、体の関係を持つようになる。妻と離婚して冴子と再婚することを望むが、冴子が目の前で自殺してしまう。その後、釧路で国選弁護士として働き、細々とした生活を送るようになる。
- 椎名敦子(本田翼)
- 付き合っていた男にダイエット薬だと騙され、覚せい剤を渡され逮捕されてしまう。完治が弁護を担当した。中学生の頃に兄が友人を妊娠させたため、家を出た。10年ほど実家に帰っていなかったが、その間に両親と友人が産んだ子供は亡くなっていたことが発覚する。完治の美味しい手料理に、元気を貰う。
- 大下一龍(中村獅童)
- 父親がヤクザ。かつて傷害事件を起こし、完治に弁護をしてもらったことがある。現在は投資会社を経営している。
- 森山卓士(和田正人)
- 判事補。完治の息子の大学時代の友人。おしゃべりがとにかく好きで、明るく陽気な性格。
- 南達三(泉谷しげる)
- 完治の離婚調停を担当した弁護士。完治が国選弁護士として仕事をするのも助けた。
- 結城冴子(尾野真千子)
- 完治が大学生だった頃、恋人関係で同棲していた。だが、完治が司法試験に受かった日に、突然行方を眩ませる。その後、付き合っていた男が置いて行った麻薬のせいで、逮捕されてしまう。再び完治と再会し、体の関係を持つようになるが、プロポーズされた次の日に自殺してしまう。
映画『起終点駅 ターミナル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『起終点駅 ターミナル』のあらすじ【起】
昭和63年秋。鷲田完治は東京に家族を残し、旭川で判事の仕事をしていた。ある日、結城冴子という女性の、覚せい剤取締法違反の審理を行った。完治は冴子の顔を見て、微かに目を見張った。その後、完治は冴子が営むスナックを訪れた。2人はどこか意味深に目を通い合わせた。それからも完治は冴子のスナックに通い、ある夜体の関係を持ってしまう。
昭和53年春。大学生の頃に完治は冴子と出会い、付き合っていた。司法試験の勉強を頑張る完治を、傍で支えていたのは冴子だった。だが、完治が司法試験に受かった日、家から冴子はいなくなっていた。ペンのプレゼントと、「闘え 鷲田完治」と書かれたメッセージだけが残されていた。
完治は月に1度、冴子と関係を持つようになっていた。ある夜、完治は冴子に一緒に暮らそうとプロポーズした。冴子はちゃんと闘っているのか完治に確認をした。完治はただ静かに頷いた。冴子は泣きながら完治に抱きつくが、完治は抱き返すことに躊躇してしまう。だだ、冴子がキスしてくるのを受け止めていた。
冴子と完治は電車を待ちながら、微笑み合っていた。だが、冴子は少し悲しそうな顔すると、自ら線路に身を投げた。完治は動揺しながらその場を離れた。その後、完治は別の路線の電車に乗り、終点駅の釧路で降りた。
映画『起終点駅 ターミナル』のあらすじ【承】
平成26年秋。完治は自宅で法律事務所を開き、ひっそりと暮らしていた。今回担当した事件は、ダイエット薬だと騙され、覚せい剤を所持していた女性(椎名敦子)の弁護をすることだった。裁判後、敦子は完治に深々と頭を下げて帰っていった。その時、完治は判事補の森山卓士に声を掛けられる。卓士は完治の息子(堂島恒彦)と大学のゼミが同じだったが、先日行われた同窓会で会えなかったことを残念そうに話した。完治は長く息子と会っていなかったため、複雑な気持ちで話を聞いていた。卓士は恒彦が1度の受験で司法試験を諦め、埼玉地検で事務官をしていることを教えた。完治はその話を聞き、驚愕した。
完治の家に大下一龍が訪ねてくる。一龍の社員が敦子に覚せい剤を渡した人物で、一龍はその男の行方を捜していた。だが、完治はその男の情報を何も持っていなかった。一龍はその話を切り上げ、何度も提案している会社の顧問の話を持ち出した。だが、完治は国選弁護士の仕事を辞める気はなかった。
完治の家に敦子が訪ねてくる。敦子は仕事の依頼をしようとするが、完治は詳細を聞く前から依頼を拒絶した。完治は国選の仕事以外する気はなかった。敦子はそれでも諦めきれず、人を探して欲しいのだと頼んだ。それは、一龍の社員の男のことだった。完治は再度敦子の話をきっぱりと断り、帰ってもらった。
映画『起終点駅 ターミナル』のあらすじ【転】
敦子が再び完治の家を訪ねてきた。完治は念のため、探している男の名前だけ聞くことにした。敦子は戸惑った表情をしながら、男の名前が“大庭誠”であることを教えた。完治はこのまま敦子を帰すのが忍びなくなり、食事に誘った。敦子は完治の手作りの料理を、美味しそうに食べた。
敦子は強張った表情で、1つだけ完治に質問した。それは大庭が逮捕されれば、どのくらいの期間の刑を受けるのかというものだった。大庭は2年前に窃盗で捕まり、現在は執行猶予中だった。完治は余罪などで変わってくるため、はっきりとした期間を教えることはできなかった。ただ、敦子の執行猶予もなくなる恐れがあるので、下手に関わらない方がいいと忠告した。
卓士は完治に今度行われる、恒彦の結婚式の話を何気なくした。完治はその話に驚くが、動揺を必死に隠して卓士の話に合わせた。家に帰ってポストを見るが、結婚式の招待状は届いていなかった。完治は幼い息子の写真を取り出し、寂しそうに眺めた。
完治は南達三と居酒屋で食事を共にした。達三は完治の離婚調停を担当してくれた弁護士で、完治が弁護士として開業するのも助けてくれた恩人だった。達三は完治がこの町に逃げ込んできたことを感じ取っていた。色々あったとしても、背負って生きていくしかないのだと励ました。
敦子が筋子を持って完治の家を訪ねてきた。完治は敦子に押し切られ、仕方なく筋子をした処理し、醤油漬けにした。そのいくらの醤油漬けは、息子の好物だった。敦子は筋子をプレゼントする代わりに、食事を作ってくれと完治に頼んだ。完治は渋々冷やし中華を作ってあげた。敦子は嬉しそうに冷やし中華を食べた。
映画『起終点駅 ターミナル』の結末・ラスト(ネタバレ)
敦子の具合が急に悪くなり、倒れてしまう。熱を測ると39度もあった。完治は急いで病院に連れて行った。腎臓が炎症を起こしていた。その夜、完治は敦子を連れて帰り、看病をした。完治は敦子の指に1本だけ塗られたマネキュアを見て、冴子を思い出していた。
完治の元に恒彦から電話が掛かってくる。完治は驚きのあまり絶句した。久々の会話に、2人とも他人行儀な話し方になってしまう。恒彦は結婚式に出席して欲しいと頼むが、完治はそんな身ではないと断った。
完治は敦子に実家に帰るように勧めるが、敦子は実家に10年以上帰っていなかった。敦子の兄が敦子の友人を妊娠させたため、中学を卒業すると同時に友人が敦子の実家で暮らすことになった。敦子は友人と入れ替わるように家を出ていた。敦子は夜の仕事を行い、生活費を稼いでいた。敦子は最後の頼みとして、実家に連れて行って欲しいと完治に頼んだ。
敦子は完治に連れられ、実家を訪ねた。だが、実家は敦子が想像していたよりも寂れていた。部屋の中の仏壇には、敦子の両親と友人が産んだ子供の位牌が飾られていた。完治は辺りを見回し、大庭が麻薬を使った痕跡を発見する。敦子は大庭にだけは実家のことを話していたのだ。完治達は近くを捜索し、小屋の中で瀕死の状態で倒れている大葉を発見する。完治は急いで病院に連れて行こうとするが、敦子はちょっと待って欲しいと頼み、実家から3人の位牌を持ち出した。
敦子は警察で事情聴取を受けるが、無事に釈放された。外に出ると完治が待っていた。敦子は大庭を見つけたときに、頼むから死んでいてくれと願ったことを正直に話した。完治は思っているだけで、実行できなくていいのだと伝えた。生きていることが大事なのだ。敦子は晴れ晴れとした表情で帰っていった。
完治が大庭の弁護を担当することになった。全然反省していない大庭を叱り、人生をやり直すチャンスを無駄にするなと伝えた。敦子も法廷で発言することになるが、これからは大庭と関わることなく生きていくことを宣言した。法廷終了後、完治は卓士に声を掛け、大学時代の息子の様子を訪ねた。卓士は笑顔で、恒彦の様子を話した。
敦子は完治の家を訪ね、この町を出ることを伝えた。完治は敦子の指のマネキュアが、綺麗に落とされているに気づく。完治は敦子を駅まで送った後、敦子が気に入っていたザンギの作り方のメモを渡した。敦子は完治を抱きしめ、作り方が分からなくなったら聞きに来てもいいか尋ねた。だが、完治は絶対戻ってくるなと敦子を激励した。敦子はそれを受け、笑顔で去っていった。
完治が家に帰ると隣人の息子が、手紙が間違って入っていたと詫びにきた。それは、恒彦からの結婚式への招待状と、恒彦からの手紙だった。その手紙には、仕送りをしてくれたことへの感謝と、父と同じ司法の仕事に就けた喜びが綴られていた。完治は礼服に着替え、いくらの醤油漬けを持って家を飛び出した。
完治は電車に乗り、東京へと向かった。
映画『起終点駅 ターミナル』の感想・評価・レビュー
家族を捨てたも同然で勝手に家を出て、遠い地で判事として生きる男の人生を描いた素敵な作品でした。
妻と離婚するつもりで不倫していた女性が目の前で自殺をしました。男はそのまま遠い地へ向かいます。この「違和感」を感じる隙も与えないほど物凄く自然に、流れる様に自分の道を決めて進んでいくシーンがとても印象的でした。
時は流れ、判事として沢山の事件を請負い、沢山の人と繋がってきた孤独な男が最後の最後で選んだ道は捨てたはずの「家族」でした。最高のラストで涙無しには見られません。(女性 30代)
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