この記事では、映画『ヴァージン・スーサイズ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『ヴァージン・スーサイズ』の作品情報
出典：U-NEXT
| 製作年 | 1999年 |
|---|---|
| 上映時間 | 98分 |
| ジャンル | ドラマ 青春 |
| 監督 | ソフィア・コッポラ |
| キャスト | キルステン・ダンスト ハンナ・ホール ジェームズ・ウッズ キャスリーン・ターナー |
| 製作国 | アメリカ |
映画『ヴァージン・スーサイズ』の登場人物（キャスト）
- ラックス・リズボン（キルスティ・ダンスト）
- リズボン家4番目の娘。リズボン夫人からの厳しい抑圧に対し、最も反発心を覚える。やがて、トリップとの出会いから不特定多数の男性と関係を持ち、タバコや酒に手を染め始める。
- セシリア・リズボン（ハンナ・ホール）
- リズボン家の末っ子。思春期の中で夢想癖があったセシリアは、風呂場で自殺を図る。一度は助かるが、その後姉妹のパーティーにて、飛び降り自殺してしまう。
- リズボン夫人（キャスリーン・ターナー）
- リズボン姉妹の母親。姉妹を愛しすぎた故、厳しすぎるルールを作り姉妹を束縛してしまう。自分に罪の意識はなく、ラックスの無断外泊後はいよいよ姉妹を監禁し始める。
- トリップ・フォンティーン（ジョシュ・ハートネット）
- 姉妹の学校に通う男子学生。女子生徒から絶大なる人気を誇るが、ラックスに夢中になりダンスパーティーに誘う。しかし関係を持った後、一気にラックスから去っていってしまう。大人になってからは、理由は不明だが精神科に通っている。
映画『ヴァージン・スーサイズ』のネタバレ・あらすじ（起承転結）
映画『ヴァージン・スーサイズ』のあらすじ【起】
”最初はセシリアだった”大人になった少年の声で、そう語られるところから物語は始まる。セシリアは、自宅の風呂場で腕を切り自殺を図ったのだ。なぜ死のうとしたのかと問う医師。セシリアは、”あなたは13歳の少女じゃないもの”そう答えるのであった。
リズボン夫妻の娘達、5人姉妹は、少年達を夢中にさせた。末っ子のセシリア、その上にラックス、ボニー、メアリー、そしてテレーズがいる。姉妹の母は、必要以上に娘達を厳しく監視していた。それは、男性との交流もほとんど許さない程だった。
セシリアの自殺未遂について、皆が原因を探った。精神科医は、セシリアが厳しすぎる環境から助けを求めていると夫妻に話す。少年とも交流を持つべきだと指摘された夫妻は、ピーターという少年を家に招く。
ピーターは、姉妹の中でも一際色気を放つラックスに魅了される。ラックスの中でも、男性に対して新たな感情が芽生え始める。リズボン家の日常では稀有なこの日から、何かが変わり始めるのであった。
映画『ヴァージン・スーサイズ』のあらすじ【承】
リズボン夫妻は娘達のために人生初のパーティーを開いた。少年達はそこへ招かれる。美人姉妹達との交流を、少年達は楽しんでいた。しかし、再びセシリアが自殺を図り、命を落としてしまう。
その日から、姉妹の父はどこか上の空、リズボン夫人は塞ぎ込んでしまう。一方、少年達はセシリアの日記を手に入れ、自殺の原因を分析していた。
そして、その日記から少年達は姉妹の生活を覗いた。この時のことを、大人になった少年の声が語る。姉妹がすでに”女”として愛や死を理解しているそばで、自分達はただの子供だったのだと。
思春期の自殺について報道が繰り返される中、新学期が始まる。姉妹は4人揃って、何事もなかったかのように現れた。しかし、若いその心の奥には、様々な想いが読み取れるようだった。
少年達は姉妹との交流を試みる。しかし、元気だと言う少女達の、本当の心を覗くことはできなかった。その頃から、ラックスは多くの男子生徒と関係を持ち始める。その中の一人に、トリップと言う男子学生がいた。
猛烈なアプローチにより、トリップはラックスをダンスパーティーへ連れ出すことに成功する。他の姉妹も揃い、全員でパーティーへ向かう。この頃には、トリップの影響でラックスはタバコや酒にも手を出していた。
映画『ヴァージン・スーサイズ』のあらすじ【転】
ダンスパーティーを心から楽しむ姉妹。一方で、ラックスは門限を破りトリップと一夜を共にしてしまう。
リズボン夫人は、ラックスの朝帰りを許さなかった。そして、姉妹には外出禁止令が出された。学校にも行かせず家中を締め切るリズボン夫人。ついに、ラックスが大切にするロックのレコードも始末させる。泣きながらレコードを燃やすラックスであった。
一方、少年達は、望遠鏡で姉妹の生活を覗いていた。屋根の上で不特定多数の男と関係を持つラックス。そして、無表情でタバコを吸うラックスの心を、彼らは何も理解できなかった。
学校では、2週間も休んでいる姉妹についてリズボン夫妻に疑問の声がかけられる。それに対し、夫はどこか他人事のようで、夫人は監禁を緩めることはなかった。
外の世界との交流がほとんどない状態で、4人の姉妹は過ごしていた。唯一、郵便受けに届くカタログだけが外との繋がりだった。少年達は、同じカタログを注文し、姉妹と生活を共有しているかのような妄想をしていた。
いつしか少年達は、姉妹が出すSOSに気づきはじめる。そして、姉妹を娯楽の対象ではなく、自分達が助け出すべき対象だと認識し始める。姉妹から届いた、助けを求める手紙を読む少年達。彼らは、電話越しにレコードを聞かせ、安らぎを与えてあげるのであった。
映画『ヴァージン・スーサイズ』の結末・ラスト（ネタバレ）
あるとき、少年達へ姉妹からある手紙が届く。ある合図を送るというのだ。そしてその夜、少年達は、リズボン家からライトが点滅しているのを見つける。
駆けつけた少年達の前には、ラックスが待っていた。車で出かけようというラックス。彼女は、姉達が降りてくるのを待つように少年達へ伝える。そして一人車へ向かう。
そして、少年達は家の中へ入る。そこで目にしたものは、姉妹3人の遺体だった。
翌朝、警察によって姉妹全員の遺体が運び出される。ラックスも、車の中で死亡していたのだ。
姉妹4人は、それぞれの方法で自殺したのであった。娘達は、愛に飢えていたわけではないというリズボン夫人。そして、リズボン家は買い取られる。残された少年達は、姉妹を忘れようとする。
大人になった少年の声は、彼女達を愛していたと語る。そして、その声はリズボン家まで届けることができなかったことを悔やむ。
リズボン家の前に無言で佇む少年達。彼らは、リズボン姉妹の心の中で起きていた葛藤を想像しながら、そっと祈りを捧げるのであった。
映画『ヴァージン・スーサイズ』の考察・解説（ネタバレ）
映画『ヴァージン・スーサイズ』で自殺した5人姉妹の死因は？
『ヴァージン・スーサイズ』では、リズボン家の5人の姉妹が次々と自ら命を絶つ悲劇が描かれています。最初に自殺を試みたのは末娘のセシリアでした。彼女は手首を切る行為で未遂に終わりますが、その後、二階の窓から飛び降りて命を落としてしまいます。セシリアの死は、姉妹たちの心に深い絶望の影を落とし、彼女たちの孤立感をさらに増幅させることになります。
セシリアの死後、残された4人の姉妹は母親の厳格な監視下で外界から遮断された生活を送ることになります。閉塞感が高まる中、彼女たちは家の中に閉じ込められ、脱出する術もなく、孤独と絶望に苛まれていきます。そしてついに、姉妹たちは集団自殺という極端な選択肢を取ることを決意するのです。
ボニーは屋根裏で首を吊り、メアリーは大量の睡眠薬を飲んで命を絶ちます。テリーザはガレージで車のエンジンをかけたまま眠りにつき、ラックスはオーブンのガスを使って自殺を図ります。彼女たちのこうした行動は、家族や社会からの抑圧に耐えかね、自由を求めて死を選ぶしかなかった絶望的な心情を象徴しているのです。
姉妹たちの自殺は、周囲の圧力に押しつぶされ、助けを求める術もないまま追い詰められた末の悲劇的な結末でした。彼女たちの死は、家庭内の問題や社会の閉塞感に対する悲痛な叫びであり、誰にも理解されることのない彼女たちの苦しみを物語っているのです。
映画『ヴァージン・スーサイズ』で、なぜトリップはラックスを置いて帰ったのか？
トリップはラックスに強く惹かれ、プロムにデートに誘います。二人はプロムの後、フットボール場で一夜を共にし、親密なひと時を過ごします。しかし翌朝になると、トリップはラックスを置き去りにしたまま、一人で帰ってしまうのです。
トリップがこのような行動に出た理由は、彼がラックスへの感情に圧倒され、その重みと責任から逃げ出したからだと考えられます。トリップは確かにラックスに強い関心を抱いていましたが、その一方で彼女との関係を真剣に見つめることができず、一時の感情に流されてしまったのです。
このシーンは、トリップの未熟さと覚悟のなさを浮き彫りにしています。彼は自分の行動がもたらす結果を受け止める準備ができていなかったのです。ラックスは彼にとって一時の夢のような存在であり、その夢が現実になることを恐れ、逃げ出してしまったのでしょう。
トリップの行動はラックスに大きな衝撃を与え、彼女の孤独感をさらに深めることになります。彼の行動は自身の弱さと未熟さを象徴しており、ラックスの心に深い傷を残すことになったのです。トリップはラックスとの関係に向き合う勇気を持てず、彼女を置き去りにすることで、自分の弱さから逃げ出そうとしたのかもしれません。
映画『ヴァージン・スーサイズ』は実話を基にした作品？
『ヴァージン・スーサイズ』は実際の出来事に基づいた作品ではなく、ジェフリー・ユージェニデスの同名小説を原作としたフィクションです。小説は1970年代のアメリカ郊外を舞台に、厳格な家庭で育てられた5人姉妹の悲劇的な物語を描いています。
作者のユージェニデスは特定の実話からインスピレーションを得たわけではありませんが、当時のアメリカ社会や文化的背景を反映し、若者たちが感じる閉塞感や絶望感を巧みに表現しています。物語に描かれる家庭内の厳しいルールや社会からの疎外感は、1970年代という時代性や社会問題と強く結びついており、多くの読者の共感を呼んでいます。
『ヴァージン・スーサイズ』は、姉妹たちの隣人である少年たちの視点から語られます。彼らは姉妹たちの死の謎や真相を探ろうとしますが、彼女たちが自ら命を絶つに至った明確な理由は最後まで明かされません。姉妹たちの自殺は、彼女たちの内面の苦しみや押し殺された感情を象徴的に表現しているのです。
この作品は実話ではありませんが、当時の時代背景の中で若者たちが感じた疎外感や孤独を鋭く描き出しており、普遍的なテーマを内包しています。『ヴァージン・スーサイズ』は、社会や家庭の抑圧に苦しむ若者たちの姿を通して、現代にも通じる問題提起を行っているのです。
映画『ヴァージン・スーサイズ』のオーブン自殺について
映画のクライマックスでは、リズボン家の姉妹たちが一斉に自殺を図る衝撃的な場面が描かれます。その中でも、ラックスがキッチンのオーブンを使ってガス自殺を試みるシーンは、彼女の絶望と閉塞感が極限に達した状態を象徴的に表現しています。
オーブンの中で死を選ぶというラックスの行動は、彼女が家庭という閉鎖的な環境から脱出できないことを物語っています。姉妹たちは母親の厳しい管理下で育てられ、外の世界との接触を制限されてきました。ラックスがオーブンの中に身を投じようとするのは、彼女が完全に追い詰められ、逃げ場を失った絶望的な心理状態を表しているのです。
このシーンはまた、リズボン家そのものが姉妹たちにとって「牢獄」のような存在であることを象徴しています。狭いオーブンの中で命を絶とうとするラックスの姿は、彼女たちが家庭という檻の中でどれほど息苦しさを感じ、自由を渇望していたかを雄弁に物語っているのです。
ラックスのオーブン自殺のシーンは観る者に強烈なインパクトを与え、彼女たちが味わった孤独と絶望の深さを痛感させずにはおきません。このシーンは、家庭や社会の抑圧に押しつぶされた若い魂の悲劇を象徴的に表現した、映画の中でも最も印象的な場面の一つと言えるでしょう。
映画『ヴァージン・スーサイズ』のタイトルの意味は？
『ヴァージン・スーサイズ』というタイトルには、作品のテーマが象徴的に込められています。「ヴァージン」という言葉は、リズボン姉妹たちの純粋さや無垢さを表しており、彼女たちがまだ人生経験の浅い若者であることを示唆しています。厳格な家庭で育てられ、外の世界から隔離された彼女たちは、ある種の無垢さを保っているのです。
一方、「スーサイズ」という言葉は自殺を意味しており、物語の中で姉妹たちが次々と命を絶つ悲劇的な展開を暗示しています。彼女たちの死は、純真な魂が絶望の淵に追いやられ、自由を求めて悲痛な叫びを上げる姿を象徴しているのです。
このタイトルは、無垢な少女たちが閉塞的な環境の中で、絶望のあまり自ら命を絶ってしまうという物語の本質を見事に捉えています。彼女たちはまだ人生の可能性に満ちていたはずなのに、抑圧的な現実の中でその芽を摘まれてしまったのです。
『ヴァージン・スーサイズ』というタイトルは、リズボン姉妹たちの純真さと、彼女たちを取り巻く冷酷な現実との対比を浮き彫りにし、物語に漂う深い悲しみと虚無感を印象付けています。このタイトルを通して、観客は登場人物たちの内面の苦しみと、彼女たちの置かれた過酷な状況を鮮明に感じ取ることができるのです。
映画『ヴァージン・スーサイズ』で、屋根で男たちと関係を持ったラックスの心理とは？
映画の中で、ラックスが屋根の上で次々と男性と関係を持つ場面があります。この一見すると奔放な行動の裏には、彼女の複雑な心理が隠されています。ラックスは家庭内の抑圧的な雰囲気と、母親からの過度な管理に強いストレスを感じており、外の世界への憧れと自由への渇望を抱いていたのです。
屋根の上で男性たちと関係を持つことは、ラックスにとって自由を求める行為であると同時に、内面の孤独や不安を紛らわせる手段でもありました。普段は立ち入ることのできない屋根の上という非日常的な空間で、彼女は家庭からの一時的な解放を図ろうとしていたのかもしれません。母親の監視の目が届かない場所で自分の意志で行動することで、ラックスは自由を実感したかったのでしょう。
また、ラックスは男性たちとの関係を通して、自分の存在価値を確認したいという思いもあったと推測できます。家族や社会から孤立感を感じていた彼女にとって、誰かに必要とされることは、自分の居場所を実感できる大切な経験だったのかもしれません。男性たちとの関係は、孤独から逃れるための一時的な避難所だったのです。
しかしその一方で、こうした行動はラックスをさらなる孤独と不安定な状態へと導いていきます。性的な関係を通して自由や承認を得ようとする彼女の姿は、内面の葛藤と苦しみを浮き彫りにしています。ラックスの行動は、自由を求める心の叫びであると同時に、深い孤独感の表れでもあったのです。彼女自身もまた、その矛盾に引き裂かれていたのかもしれません。
映画『ヴァージン・スーサイズ』の末娘セシリアの自殺の理由は？
『ヴァージン・スーサイズ』の冒頭で、リズボン家の末娘セシリアが衝撃的な自殺を試みます。彼女はバスルームで手首を切りますが、一命を取り留めます。しかしその後もセシリアは精神的に不安定な状態が続き、両親が開いたパーティーの最中、二階の窓から飛び降りて命を絶ってしまうのです。セシリアの死は、リズボン姉妹たちの悲劇の幕開けであり、彼女たちを取り巻く閉塞的な環境を象徴する出来事でした。
セシリアが自殺に至った明確な理由は映画の中で語られていませんが、彼女の内面に渦巻いていた強い孤独感と疎外感が大きな要因だったと推測されます。セシリアは周囲の世界との繋がりを感じることができず、自分の心の痛みを誰にも理解してもらえないという絶望感を抱えていたのかもしれません。また、厳格な家庭環境の中で自由を制限され、自分の居場所を見出せずに苦しんでいたことも自殺の背景にあったと考えられます。
セシリアが残した日記や絵からは、彼女の内面の葛藤と死への憧れが読み取れます。この世界はあまりにも重く、自分にはそぐわないと感じていたのかもしれません。彼女の自殺は、窮屈な家庭や抑圧的な社会に対する痛切な抗議の表現とも受け取れます。
セシリアの死は、残された姉妹たちや家族に計り知れない影響を与え、物語全体に重苦しい影を落とすことになります。彼女の自殺は、リズボン姉妹たちが抱える絶望感や疎外感を象徴する出来事であり、この物語の悲劇的な基調を決定づける重要な要素となっているのです。セシリアの死は、彼女自身の苦しみを表すと同時に、姉妹たち全員が直面している困難な状況を浮き彫りにしているのです。
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