映画『アカルイミライ』の概要:漠然とした不安を抱える青年。唯一信頼していた友人からアカクラゲを譲り受けた青年は、クラゲの飼育に没頭していく。クラゲを中心に、彼と自殺してしまった友人の父親との奇妙な共同生活が始まる。
映画『アカルイミライ』の作品情報
上映時間:115分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:黒沢清
キャスト:オダギリジョー、浅野忠信、藤竜也、笹野高史 etc
映画『アカルイミライ』の登場人物(キャスト)
- 仁村雄二(オダギリジョー)
- 人間関係に難を抱える青年。工場で働いており、同僚で先輩の守と仲が良い。守るから譲り受けたアカクラゲを大切に育てる。川に流してしまった後も、アカクラゲに執着する。
- 有田守(浅野忠信)
- おしぼり工場で働く男。雄二と仲が良く、アカクラゲを大切に育てている。工場長夫妻を殺し、逮捕される。獄中自殺で人生を終える。アカクラゲに執着し、獄中でもアカクラゲのことばかりを考えている。
- 有田真一郎(藤竜也)
- 守の父。小さなリサイクル工場を営んでいる。雄二と出会い、工場の手伝いをしてもらうようになる。雄二のことが気になり、優しく雄二を受け入れる。優しいおじさん。
- 藤原耕太(笹野高史)
- おしぼり工場の工場長。雄二と守を気に入り、正社員として雇おうとする。しかし、自身への裏切り行為が原因で、二人をクビにする。その後、守に夫婦共々殺されてしまう。
- 仁村美穂(小田山サユリ)
- 雄二の妹。無職の雄二を心配し、夫の会社の雑用として働かせる。兄思いの妹。
映画『アカルイミライ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『アカルイミライ』のあらすじ【起】
おしぼり工場で仕事をしている雄二。彼は、工場の先輩で仲の良い守の家に遊びいく。守は自宅でアカクラゲを飼っていて、雄二はそれに興味を示す。
工場長である藤原の私用の手伝いをさせたれた雄二と守。二人はそのまま藤原の自宅で食事をする。家を出た守と雄二。守は雄二に、幸せそうな藤原の家庭を見て、嵐が来るかもしてないと告げる。
雄二と守を気に入った藤原は、彼らを正社員として雇うと言い出す。雄二は守に相談するが、どうするべきか決めることができないでいる。
雄二はいつものように守の部屋へと向かう。アカクラゲを触ろうとする雄二を、危険だと言って守が止めに入る。そこへ、藤原が寿司を持って入ってくる。
三人は、藤原が持ってきた寿司を食べながら雑談をする。藤原が自分の過去の話をしているとき、突然雄二が席を立って外に出てしまう。
部屋へと戻ってきた雄二。そこには、卓球の試合をテレビで観戦する藤原の姿があった。観戦を終えた藤原は、アカクラゲを見つけて水槽に手を入れる。危ないと言いかけた雄二を、守が止める。そして、藤原はクラゲに刺されてしまう。
映画『アカルイミライ』のあらすじ【承】
守は雄二に、アカクラゲを譲ることにする。守は飼育の注意点を雄二に伝え、しっかり面倒を見てくれと言う。
藤原は、クラゲに毒があることを知る。その後、自分を見殺しにしようとした守と雄二をクビにする。
お気に入りのCDを、藤原に貸していたことに気づいた雄二。彼は、長い鉄の棒を持って藤原の自宅へと侵入する。しかし、そこにはすでに死体となった藤原夫婦の姿があった。
怯えて逃げ出した雄二は、守に電話をかける。しかし。守は電話には出ない。その頃、警察が藤原家へと到着する。
藤原夫妻を殺したのは守だった。守の父親である真一郎が、息子のことで弁護士の事務所を訪れる。弁護士の軽部は真一郎に、一刻も早く捕まった守と面会をして下さいと言う。
雄二が守の面会に訪れる。守はいつも通りの口調で話しているが、雄二は興奮した様子で守に話しかける。守はしきりに、アカクラゲの心配をする。
今度は、真一郎が守の面会に訪れる。二人の再会は、五年ぶりのことだった。真一郎は平常心を装い、雑談をする。守はそれに気づき、気を使わなくても良いと真一郎に言う。
映画『アカルイミライ』のあらすじ【転】
真一郎は軽部から、守の死刑も覚悟して欲しいと伝えられる。真一郎は、もう一人の息子に会う。しかし、息子は守のことに全く関心が無い様子を見せる。
何度も守の面会に向かう雄二。守は、アカクラゲのことばかりを心配している。雄二は、守のことを二十年でも待つと守に伝える。それを聞いた守は何故か怒り、絶交だと言って面会室を出ていく。そして後日、守は獄中自殺で死んでしまう。
水槽を倒してしまい、雄二はアカクラゲを床下に流してしまう。床下でアカクラゲは、光を放つ。それをみた雄二は、喜びの表情を浮かべて外へと走り出す。
真一郎に会った雄二は、真一郎が営む小さなリサイクル工場でお手伝いを始める。仕事の最中、どこかに生きているはずのアカクラゲのために雄二はしきりに川に餌を撒く。川にクラゲがいることを信じられない真一郎だったが、ある日雄二と共に川でクラゲを発見する。
雄二のクラゲへの執着は異常になっていく。やがてそのことで雄二と真一郎がぶつかりあい、雄二は工場を出ていく。
映画『アカルイミライ』の結末・ラスト(ネタバレ)
雄二は家に引きこもっていた。そこへ、雄二の妹の美穂が訪ねてくる。美穂は、夫の高木の会社の雑用として雄二を働かせることにする。
ある夜、真一郎は川に大量のアカクラゲがいるのを見つける。その頃、雄二はゲームセンターで知り合った高校生達と高木の会社に押し入る。警報が鳴って、高校生達は捕まってしまうが、雄二だけが一人逃げ出すことに成功する。
真一郎の工場へと戻った雄二。許して欲しいと言う雄二に、全部許すと答えて抱きしめる真一郎。
工場で作業をしている雄二。その頃、テレビに映し出されたニュースでは、隅田川にアカクラゲが大量発生したというニュースが流れている。
雄二を養子縁組に入れようと考えていた真一郎。しかし、そのことを伝えられないでいた。そんなある日、二人は川にアカクラゲが大量にいるのを見つける。真一郎は、息子の夢が叶ったと言って大はしゃぎする。クラゲ達は海へと向かっていた。真一郎は、クラゲ達を追いかけて川へと入っていく。
雄二が去った工場では、真一郎は黙々と作業をしている。その頃、捕まった高校生達が街を元気に闊歩していた。
映画『アカルイミライ』の感想・評価・レビュー
一番人気があったころの浅野忠信とオダギリジョーが主演した青春ドラマ。二人の空気感が非常に素晴らしく当時は新鮮で観る者を惹きつけた。このノリに乗った時期の二人に対する藤竜也もベテランの味を見せており、けして映画はド派手な演出がなければ面白くならないわけではないことを教えてくれる。個人的にはクラゲは人はどんな毒を持っているかわからないというメタファーだと思っている。読み取り方をじっくり考える映画で感想を言いあえるのも楽しい。(男性 30代)
オダギリジョーに浅野忠信、藤竜也。渋すぎるキャストに監督は黒沢清。これは見るしかありません。黒沢清監督の作品は、本当に暗く彩度のない画。そして小っ恥ずかしいほどオシャレなファッションにインテリア。暗い世界観にはいい意味で似合わない雰囲気。この世界観が好きな人には本当に堪らないと思います。
皮肉というか、ひねくれているというか…何のために生きているのか、そんなことを考える若者にぜひ見てほしい作品です。(女性 30代)
色彩が少なく、暗い夢の中を漂っているような映像がとても落ち着きました。刑務所のようで刑務所ではない面会室、突飛な衣装、閉塞感、全てにおいて独特な仕上がりです。黒沢清監督の奇才ぶりが発揮された作品でしょう。難解なストーリーですから、様々な解釈ができそうですが若者へ生き方を提案しているように感じられました。とりわけラストの、フラフラふざけながら歩く男子高校生と川いっぱいのクラゲのシーンが秀逸で唸りました。(女性 30代)
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