映画『セクレタリー』の概要:自傷行為が止められない内気な女性が、サディスティックな弁護士の秘書になり、自分のマゾ気質に気づいていく。性癖にスポットを当てた一風変わったラブストーリーで、個性的なヒロインを熱演したマギー・ギレンホールの出世作となった。
映画『セクレタリー』の作品情報
上映時間:111分
ジャンル:ラブストーリー、コメディ
監督:スティーヴン・シャインバーグ
キャスト:ジェームズ・スペイダー、マギー・ギレンホール、ジェレミー・デイヴィス、レスリー・アン・ウォーレン etc
映画『セクレタリー』の登場人物(キャスト)
- リー・ホロウェイ(マギー・ギレンホール)
- 非常に内気な女性で、不安になると自称行為をしてしまうため、精神病院に入院していた。自立への第一歩としてエドワードの法律事務所で秘書として働き始める。ずっと実家暮らしで、アル中の父親と心配性の母親と同居している。
- エドワード・グレイ(ジェームズ・スペイダー)
- 自分の法律事務所を持つ弁護士。几帳面な完璧主義者で、オフィスも自宅もきっちり片付いている。サディスティックな自分の性癖を嫌悪しているが、欲望を抑えきれず、女性と良好な関係を築けない。
- ピーター(ジェレミー・デイヴィス)
- リーの高校時代の同級生。リーと同じく精神を病んでおり、友達もいない。リーに恋をして、彼女にプロポーズする。
映画『セクレタリー』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『セクレタリー』のあらすじ【起】
リー・ホロウェイは、姉の結婚式に出席するため、精神病院から退院する。リーは不安を感じると自傷行為を繰り返してしまうため、病院でのシンプルな生活を気に入っていた。そのため、リー本人は退院を望んでいなかった。
自宅の庭で行われた姉の結婚式で、リーは高校時代の同級生のピーターと再会する。ピーターに声をかけられ、リーは彼と踊っていたが、禁酒中の父親が酒を飲むのを見て、自室に逃げ込む。リーは、ベッドの下に隠していた自傷行為のための道具箱を取り出し、太ももを傷つける。いけないと分かっていても、リーは自傷行為を我慢できなかった。
その夜、酒に酔った父親は母親と口論になって暴力を振るい、家を出て行く。両親の喧嘩を目撃したリーは、熱いやかんを太ももに押し付ける。
リーは中学1年生頃から自傷行為をするようになり、成人してからも就職経験がなかった。内気なリーは人付き合いも苦手で、恋愛経験もない。このままではいけないと感じたリーは、コミュニティ・カレッジに通ってタイピストの資格を取る。そして、新聞の求人情報を見て、秘書を募集しているエドワード・グレイの法律事務所に面接を受けに行く。
面接の日はひどい雨だった。リーは母親に車で送ってもらい、恐る恐る事務所の中へ入る。受付はひどく散らかっており、奥のオフィスから荷物を抱えた女性が泣きながら出てくる。女性はそのまま事務所を出て行った。
驚いているリーに、エドワードはコーヒーを入れるよう命じる。リーは空の給水器に水を入れようとしてずぶ濡れになってしまうが、面接はしてもらえた。エドワードは特に難しい質問などはせず、リーを採用してくれる。リーが採用されたことを告げると、母親は涙を流して喜んでいた。
映画『セクレタリー』のあらすじ【承】
翌日から、リーは母親に送り迎えをしてもらい、エドワードの法律事務所へ通い始める。仕事は電話の取次とタイプ打ちという簡単なものだった。しかし、エドワードは、なぜか彼女に対して意地悪で、リーは不安になる。リーは不安を解消するため、裁縫道具で太ももを傷つける。エドワードは、密かに彼女の様子を観察していた。
ピーターから誘われ、リーは彼とデートする。ピーターも精神を病んでおり、2人は内気な者同士で打ち解ける。エドワードは、偶然2人のデートを目撃する。お酒に酔ったリーは、ノリでピーターとキスをする。
翌日、リーはエドワードに呼び出され、タイプした手紙にスペルミスがあると指摘される。エドワードは、間違ったスペルを赤ペンで囲んでいた。「完璧に打ち直せ!」と怒られ、リーは何度もやり直すが、なかなか合格点を貰えない。エドワードは、リーの服装や行動についても細かい指摘をし始める。几帳面で完璧主義のエドワードは、些細なミスや物音にも敏感だった。リーはエドワードの要求に応えるため、自分なりに努力を重ねる。しかし、エドワードは彼女に冷たかった。
ピーターの自宅に招かれたリーは、彼の両親から結婚の話をされる。先日のデートでピーターはすっかりその気になり、リーと結婚すると両親に話していた。
ずっとリーの様子を静観していたエドワードが、「何でも気楽に相談してくれ」と優しく声をかけ、彼女の自称行為について触れる。エドワードは、自称行為をするリーの心理をよく理解していた。そして、「二度と体を傷つけるな」と彼女に命じ、もう大人なのだから自立するよう助言する。その日、母親の迎えを断り、1人で帰ったリーは、エドワードに抱かれているような喜びを感じる。リーは、エドワードに恋をしていた。
映画『セクレタリー』のあらすじ【転】
翌日から、リーは歩いて通勤する。エドワードは、仕事でミスをしたリーをオフィスに呼び出し、机に肘をついて腰を曲げ、タイプした手紙を声に出して読むよう命じる。リーは戸惑いつつ、お尻を突き出した格好で手紙を読み始める。すると、エドワードがリーのお尻を思い切り打つ。リーは驚くが、黙ってお尻を打たれ続ける。エドワードは、リーのお尻に痣ができるほど、強く打っていた。
翌日、リーは自称行為用の道具箱や裁縫道具を川に捨て、ワクワクしながら出勤する。エドワードのサディスティックな行為はエスカレートしていき、リーもそれが快感になっていく。しかし、エドワードはリーと肉体関係は持とうとしない。それがリーにはもどかしく、彼女はエドワードを想って、自慰行為に耽るようになる。
家出中だった父親が、自ら病院に入院していたことが分かり、リーは母親や姉と病院へ行く。父親の弱々しい姿を見て、精神的に不安定になったリーは、エドワードの自宅を訪ねる。リーは愛の告白をしたかったが、うまく言葉が出ない。エドワードは、冷たく対応して彼女を帰らせ、翌日から彼女に対するサディスティックな行為をピタリと止めてしまう。
リーはエドワードの気を引きたくて、様々なことをしてみるが、彼に無視される。思いつめたリーは、庭で見つけた大きなミミズを便箋で包み、エドワードに郵送する。リーは欲求不満を晴らすため、ピーターとも寝てみるが、全く満足できなかった。
干からびたミミズを受け取ったエドワードは、それを赤ペンで囲み、リーをオフィスに呼び出す。エドワードは机に肘をついて下着を脱ぐようリーに命じる。リーは、いよいよ彼と結ばれるのだと期待に胸を膨らませるが、エドワードは一線を越えてはくれなかった。落胆したリーは、事務所のトイレで自慰をして、欲求不満を晴らす。
エドワードは、自分の変態的な性癖に悩み、それを克服しようとしていた。しかし、リーを目の前にすると欲望が抑えられなくなるため、彼女を解雇する。リーは必死で食い下がるが、エドワードの決意は固く、事務所を追い出されてしまう。荷物を抱えて泣きながら事務所を出たリーは、最初に会った女性のことを思い出す。エドワードの前の秘書も、リーと同じ運命を辿っていた。
映画『セクレタリー』の結末・ラスト(ネタバレ)
リーはストーカーのようになり、エドワードの事務所を見張る。エドワードは新しい秘書を雇い、事務所の鍵も変えてしまった。自分の性癖を自覚したリーは、マゾを求める人たちと会ってみるが、何の満足感も得られない。リーは満たされないまま、不毛な日々を過ごす。そんな中でピーターにプロポーズされ、リーは何となく彼との結婚を決めてしまう。
結婚式が近づき、リーはピーターの家で、ウェディングドレスを試着する。その途中、リーはどうしてもエドワードへの想いが抑えきれなくなり、婚約指輪を捨てて、ピーターの家を飛び出して行く。
リーはエドワードの事務所に乗り込み、彼に愛を告白する。しかし、エドワードはリーの愛を信じてくれない。彼はリーの愛が本物かどうかを試すため、机に肘をついて腰を曲げた状態にさせ、「僕が戻るまで動くな」と命じる。リーは、素直にその命令に従う。
エドワードは夜になっても事務所に戻らず、外から彼女の様子を観察する。ウェディングドレスを着たリーは、そこから一歩も動かず、エドワードの帰りを待っていた。エドワードはピーターに電話して、リーがオフィスにいることを伝える。その後、オフィスの電話を鳴らしてみる。リーは机から肘を離さないようにするため、受話器を口で咥えようとする。エドワードは健気なリーの姿を見て、「僕も君が大好きだ」と呟く。
ピーターがオフィスへやって来て、リーを強引に机から引き離す。リーは抵抗してピーターを殴り、すぐに元のポーズに戻って、彼をオフィスから追い出す。
朝になってもエドワードは姿を現さず、リーはおもらしをしてしまう。周囲の人々は彼女を心配し、入れ替わり立ち替わりやって来て説得を試みるが、リーは動こうとしない。リーの行為は話題になり、事務所にはマスコミが押しかけてくる。
リーを放置して3日目。エドワードは新聞で彼女のインタビュー記事を読む。そこには「私なら彼の苦しみが理解できる、彼を愛していたい」というリーの言葉があった。それを読んだエドワードは、リーの元へ向かう。
エドワードはリーを抱き抱えてバスルームに運び、彼女を優しく洗ってやる。そして、ついに2人は結ばれる。
その後、リーとエドワードは無事に結婚する。お互いの性癖を喜んでくれる最高のパートナーを得て、リーもエドワードも幸せだった。
映画『セクレタリー』の感想・評価・レビュー
精神病院から退院し、就職をしたこともないリーだったが、なんとか法律事務所での仕事を得て、エドワードのために働き始めた。自傷行為を止めることのできないリーと、それを知っていながらわざと意地悪な態度に出るエドワード。彼らの行動が過激になりつつある中、お互いへの気持ちも徐々に強くなっていっていることに本人同士は認めたがらない。一筋縄ではいかない彼らの恋模様と、過激な性癖がとても興味深い。少し変わった恋愛映画を見たいときにお勧めしたい。(女性 30代)
自傷行為をしている女性が元気になっていくお話なのかなと思っていたら、予想外の展開だったので驚きを隠せなかった。でも、肉体的な関係ではなく、お互いに好意を持っていることが感じられたのが良かったと思う。
エドワードはサディスティックな一面を持つ自分自身にずっと不安を抱いていたのかもしれない。お互いが一緒に居ることで、不安が解消されて満たされた気持ちになるのかなと思った。一風変わった恋愛映画かもしれないが、予想外に良かった。エドワード達が結ばれたことに幸せな気持ちになった。(女性 30代)
リーが「内気」な女性というのが意外と大事なポイントかも知れません。自傷行為を繰り返していたリーがエドワードと出会うことで性的な気持ちの昂りを感じ、自分の殻を破り自分でさえも知らなかった「新しい自分」が芽生えていく様子には、なるほどなと感心してしまいました。
エドワードは自分の性癖を押し殺そうとしていましたが、それとは真逆に彼の為にと新しい自分を見せつけてくるリーがとてもキュートに感じられました。(女性 30代)
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