映画『目撃』の概要:クリント・イーストウッドが、監督・製作(カレン・スピーゲルと共同)・主演を務めたサスペンス映画。泥棒に入った屋敷で、現職のアメリカ大統領が関わる殺人事件を目撃してしまった男は、命がけで国家権力と闘うことになる。
映画『目撃』の作品情報
上映時間:121分
ジャンル:サスペンス
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:クリント・イーストウッド、ジーン・ハックマン、エド・ハリス、ローラ・リニー etc
映画『目撃』の登場人物(キャスト)
- ルーサー・ホイットニー(クリント・イーストウッド)
- 凄腕の大泥棒。念密な下準備をして完璧な仕事をするため、ここ30年は刑務所行きになっていない。大泥棒ではあるが、朝鮮戦争以外で人を殺したことはない。泥棒するために入ったサリバンの屋敷で、殺人事件の目撃者となる。
- アラン・リッチモンド(ジーン・ハックマン)
- アメリカ合衆国の現職大統領。貧しい境遇から這い上がってきたタイプで、かなり腹黒い。自分のせいでサリバンの妻が殺されてしまうが、罪悪感は感じていない。
- セス・フランク(エド・ハリス)
- 殺人課の刑事。サリバンの妻のクリスティ殺害事件を担当する。冷静沈着で頭も切れる。
- ケイト・ホイットニー(ローラ・リニー)
- ルーサーの娘。泥棒の父親を軽蔑しており、ほとんど行き来していない。大学で法律を学び、検察官として働いている。1年前に亡くなった母親は、ルーサーのことを心から愛していた。
- ウォルター・サリバン(E・G・マーシャル)
- ヴァージニア州在住の大富豪で、アランを大統領にした立役者。アランを息子のように可愛がり、最大限の支援をしている。長年連れ添った妻に先立たれたため、娘のような年齢のクリスティと再婚した。
- クリスティ・サリバン(メロラ・ハーディン)
- サリバンの妻。80歳になる夫では満たされず、夫の留守中にアランを自宅に連れ込み、浮気する。その時にトラブルとなり、アランの警護官に射殺されてしまう。
- グロリア・ラッセル(ジュディ・デイヴィス)
- 大統領補佐官の女性。アランの地位を守るため、クリスティの件を警察に隠す。アランに恋心を抱いている。
- ビル・バートン(スコット・グレン)
- 大統領警護官。元刑事で、諜報員的な能力に長けている。クリスティの件を警察に通報しようとするが、グロリアに止められる。
- ティム・コリン(デニス・ヘイスバート)
- 大統領警護官。射撃の名手で、殺し屋的な汚れ仕事を担当する。
映画『目撃』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『目撃』のあらすじ【起】
アメリカのヴァージニア州。凄腕の大泥棒であるルーサー・ホイットニーは、念入りな下調べをした上で、大富豪ウォルター・サリバンの屋敷へ忍び込む。サリバンは使用人も全て引き連れ、カリブ海へバカンスに行っており、屋敷の中は静まり返っていた。
最新のセキュリティー・システムを解除し、寝室内にある隠し部屋に入ったルーサーは、高価な宝飾品や札束を袋に詰め込んでいく。ところが、途中で酔っ払った様子の男女が寝室に入ってきたため、ルーサーはマジックミラーの後ろに隠れる。女はサリバンの妻のクリスティで、男はアメリカ大統領のアラン・リッチモンドだった。クリスティは、風邪と偽ってバカンスをキャンセルし、アランとの浮気を楽しんでいた。
2人は愛欲に溺れていたが、途中で雲行きがおかしくなり、アランがクリスティに暴力を振るい始める。クリスティが激しく抵抗したため、アランは激昂して彼女の首を絞める。クリスティはテーブルの上にあったペーパーナイフを掴み、アランの腕を刺す。大統領警護官のビルとティムは、悲鳴を聞いて部屋に駆けつけ、アランに馬乗りになっていたクリスティを射殺する。
ビルは警察を呼ぼうとするが、大統領補佐官のグロリアがそれを止める。グロリアは、泥棒がクリスティを殺したという筋書きを作り、大統領に繋がる証拠を隠滅する。作業を終えた3人は、動揺する大統領を連れて、屋敷を出る。ところが、最も重要な証拠となるペーパーナイフを忘れてしまったため、ビルとティムが取りに戻る。
一部始終を目撃していたルーサーは、盗品とペーパーナイフを持ち、窓から逃走する。ルーサーの存在に気づいたビルとティムは、必死で後を追うが、彼に逃げられてしまう。
映画『目撃』のあらすじ【承】
翌日、ルーサーは娘のケイトに会うため、海岸沿いにあるジョギングコースに向かう。母親が死んでから1年ぶりに会いにきて、いきなり遠くへ引っ越すと言い出した父親に、ケイトは冷たく接する。ケイトは、ルーサーが泥棒をしていることを知っており、そんな父親を軽蔑していた。
サリバンの屋敷では、警察の現場検証が行われていた。この事件を担当する殺人課のセス・フランクは、クリスティが泥棒と鉢合わせして殺されたにしては、おかしな点が多いことに気づく。
サリバンは遺体安置所で妻の遺体を確認する。80歳になるサリバンは、若い妻に先立たれ、ひどく落胆していた。
アランにとってサリバンは最大の後援者であり、彼のおかげで大統領になれたようなものだった。アランはサリバンの信頼を得るため、彼のために記者会見を開くことにする。アランとは、そういう姑息な男だった。
ルーサーは罪の意識を感じていたが、相手が大統領ではどうしようもない。もし警察に真実を話しても、絶対に信じてもらえないだろう。それどころか、一刻も早く逃亡しないと、自分の命が危ない。ルーサーは、海外に逃亡するための準備を急ぐ。
ビルはセスと会い、大統領が事件の詳細を知りたがっているので、何か分かったらすぐに連絡するよう伝えておく。ビルは念の為、セスのオフィスの電話にも盗聴器を仕掛けておく。
サリバンは個人的に殺し屋を雇い、妻を殺した犯人への復讐を企てる。大富豪のサリバンは、殺し屋に破格の報酬を用意していた。
セスは、犯行の手口から犯人が大物の泥棒であると推理し、捜査を続ける。その中で、この近くに住む大泥棒としてルーサーの名前が浮上する。セスは、ルーサーが犯人の可能性が高いと考えるが、ひとつだけどうしても納得できないことがあった。ルーサーは大泥棒だが、人は殺さない。セスはルーサーに直接会ってみるが、尻尾はつかめなかった。
逃亡するため、空港へやってきたルーサーは、テレビでアランの記者会見を見る。アランはシラジラしく嘘泣きまでして、サリバンに同情する自分を演じていた。ルーサーはそんなアランをどうしても許すことができず、空港から引き返す。
映画『目撃』のあらすじ【転】
ルーサーは変装してホワイトハウスを見学に行き、そこにグロリア宛の封筒を残しておく。その中には、血のついたペーパーナイフの写真が入っていた。ルーサーの狙いが金ではないと知り、グロリアは不安になる。グロリアはヒステリックになっていたが、ビルは冷静だった。元刑事のビルは、あの時警察に通報しなかったことを後悔しており、セスが真相を突き止めてくれることを密かに期待していた。
セスは検察官をしているケイトを訪ね、ルーサーを呼び出すための囮捜査に協力して欲しいと頼む。ケイトは断るが、セスがあまりにしつこいので、彼と一緒に父親の家へ行ってみる。ケイトは、ルーサーがどこに住んでいるのかも知らなかった。初めて入った父親の家には、母親と自分の写真がたくさん飾ってあり、ケイトは驚く。離れて暮らしていても、ルーサーは妻子のことを愛していた。ケイトはルーサーの安全を考え、セスの申し出を受ける。
ケイトが留守番電話にメッセージを入れると、すぐにルーサーから連絡があり、親子はとあるカフェで会う約束をする。ケイトから連絡を受けたセスは、万全の体制を整える。盗聴器を通してビルがこの情報を仕入れ、ティムがルーサーを暗殺することになる。
親子が会う日。カフェの隣の建物内では、セスとビルが待機していた。ビルの企みを知らないセスは、約束通りビルに連絡し、彼が現場に同行することを許していた。カフェの向かいにある建物の2階では、サリバンの雇った殺し屋が銃を構えていた。さらに別の建物からは、ティムもルーサー暗殺の機会を狙っていた。
午後4時。コートに身を包んだルーサーが姿を現し、ケイトの前に座る。その瞬間、殺し屋が銃を放つが、ビルの窓の反射光に目をやられて狙いが外れてしまい、ルーサー暗殺に失敗する。ルーサーは、銃声で現場が混乱している間にコートを脱ぎ捨て、姿を消していた。ケイトは、駆けつけたセスに怒りをぶつける。予想外の展開に、セスも動揺していた。
映画『目撃』の結末・ラスト(ネタバレ)
その夜、ケイトはセスに自宅まで送ってもらう。セスは今日のことを謝罪し、個人的な連絡先を彼女に教えておく。どうやらセスは、ケイトに気があるようだった。飲み物を出すため冷蔵庫を開けたケイトは、中身が補充されているのを見て、ルーサーが来ていることを知る。ケイトはセスに気づかれないよう自然に振る舞い、彼を帰らせる。
ルーサーは、自分が目撃したことを全てケイトに話す。ケイトは信じられなかったが、「死んだ母さんに誓って嘘ではない」というルーサーの言葉を聞き、これが真実であることを悟る。ルーサーは、クリスティを助けなかったことを後悔しており、命がけでアランの正体を暴くつもりだった。
ルーサーは大統領からと偽って、グロリアに高価なダイヤのネックレスを贈る。グロリアは喜んでこれを身につけ、晩餐会に出席する。晩餐会でダイヤのネックレスを見たアランは、それが死んだクリスティが着けていたものだと気づき、愕然とする。
ルーサーの脅迫を知ったアランは、娘も真相を知っているはずだと考え、ケイトも殺すよう命じる。大統領警護官がケイトに近づいていることを知ったルーサーは、車を飛ばして海沿いのジョギングコースへ急ぐ。ルーサーの予想通り、ケイトはジョギングコースの駐車場から車ごと崖下に突き落とされていた。
ルーサーの発見が早かったので、ケイトは一命を取り留める。ティムはケイトを始末するため、彼女の病室に忍び込む。しかし、ケイトを殺す前にルーサーに捕まり、安楽死用の毒を注射されてしまう。ルーサーは人殺しをしない主義だったが、娘の命を狙う者は許さない。
ルーサーは「電話機を調べてみろ」とセスに忠告した後、サリバンの運転手とすり替わる。ルーサーは車内で自分の正体を明かし、クリスティ殺しの真相をサリバンに伝える。サリバンは、息子同然に可愛がってきたアランの裏切りを知り、愕然としていた。別れ際、ルーサーは証拠品のペーパーナイフをサリバンに渡しておく。
ルーサーの忠告を受け、オフィスを訪れたセスは、そこでビルの死体を発見する。ずっと罪の意識に苦しんでいたビルは、「心からおわびを」と書いた遺書を残し、自ら命を絶っていた。ビルの告白により、グロリアも逮捕される。
サリバンはポケットにペーパーナイフを忍ばせ、ホワイトハウスを訪れる。ホワイトハウスでもサリバンは別格の扱いで、ボディチェックも受けずに、アランのいる執務室に通される。アランは会心の笑みを浮かべ、サリバンの訪問を歓迎する。
その夜、ホワイトハウスで大統領がナイフを使って自殺したという大ニュースがテレビで報じられる。報道陣の取材に応じたサリバンは、前からアランが悩みを抱えており、自分は止めたのだが彼は目の前で命を絶ったのだと説明していた。
病院のロビーでそのニュースを見たルーサーは、ケイトの病室へ戻る。ケイトの病室を訪れていたセスは、ルーサーの顔を見て、黙って帰っていく。目を覚ましたケイトは、ルーサーがいてくれたことに安心する。ルーサーとケイトは、初めて親子水入らずの静かな時間を過ごしていた。
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