映画『コックと泥棒、その妻と愛人』の概要:傍若無人な泥棒の夫に暴力で支配されてきた妻は、泥棒が経営するレストランのコックに協力してもらい、一目惚れした男性と愛し合うのだが…。人間の欲望がむき出しになった残酷な群像劇で、実力派キャストによる芝居合戦は見応え十分。芸術性の高い演出で知られるピーター・グリーナウェイ監督の代表作。
映画『コックと泥棒、その妻と愛人』の作品情報
上映時間:124分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:ピーター・グリーナウェイ
キャスト:リシャール・ボーランジェ、マイケル・ガンボン、ヘレン・ミレン、アラン・ハワード etc
映画『コックと泥棒、その妻と愛人』の登場人物(キャスト)
- アルバート・スピカ(マイケル・ガンボン)
- 泥棒の親分。泥棒稼業で稼いだ金で、「ル・オランデーズ」というフレンチ・レストランを経営している。毎晩、妻のジョージーナと部下と共にレストランを訪れ、夕食を食べる。無知で暴力的で下品な暴君。ジョージーナに異常な執着心を持っている。
- ジョージーナ・スピカ(ヘレン・ミレン)
- アルバートの妻。あまりの暴力に耐えきれず、何度もアルバートから逃げようとしたが、その度に連れ戻されてきた。教養のあるレディなので、下品で無慈悲な夫のことを心底軽蔑している。夫と正反対のマイケルと急速に惹かれ合う。
- リチャード(リシャール・ボーランジェ)
- 「ル・オランデール」の料理長。料理の腕は一流で、レストランは大繁盛している。横暴なアルバートに対しても冷静に接しているが、内心は彼を憎んでいる。ジョージーナの舌を信用しており、彼女には特別メニューを出す。
- マイケル(アラン・ハワード)
- 「ル・オランデール」の常連客。本屋を営んでいる学者で、知的な紳士。食事中に目が合ったジョージーナと恋に落ち、レストランで逢瀬を重ねるようになる。
- ミッチェル(ティム・ロス)
- アルバートの部下。拷問を得意とする残酷な殺し屋で、アルバートのお気に入り。
- コリー(シアラン・ハインズ)
- アルバートの部下。パトリシアという売春婦の愛人をレストランに連れてくる。
映画『コックと泥棒、その妻と愛人』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『コックと泥棒、その妻と愛人』のあらすじ【起】
フレンチ・レストラン「ル・オランデーズ(以下オランデーズ)」の駐車場では、支配人のアルバートの怒りを買った従業員が、身体中に汚物を塗りたくられていた。アルバートは泥棒団のボスであり、誰も彼に逆らうことは許されない。妻のジョージーナもコックのリチャードも、アルバートの傍若無人な振る舞いに耐えていた。
リチャードの腕がいいので、オランデーズは繁盛している。食欲旺盛なアルバートは、ジョージーナと部下を引き連れ、毎晩、オランデーズでディナーを楽しむ。パリ生まれのジョージーナは本物の食通で、アルバートはそれが自慢だった。教養のないアルバートは食事のマナーも悪く、大声で下品な話ばかりしている。隣に座っているジョージーナは、そんなアルバートを無視して、黙々と料理を口に運んでいた。その時、壁際の席で難しそうな本を読みながら、食事をしている男性が目に入る。彼もジョージーナの視線に気づいたようで、2人は無言で見つめ合う。
ジョージーナがお手洗いに立つと、男性も席を立つ。2人は廊下で無言のまま対面し、席に戻る。その後、ジョージーナはライターを忘れたと嘘をついて、再び席を立つ。すると、男性も席を立ち、2人はそのまま女子トイレの個室に入る。2人はお互いに一目惚れしたようで、激しいキスを交わす。
2人が夢中で愛し合っていると、アルバートが女子トイレの中までジョージーナを探しにくる。ジョージーナはタバコを吸っていたと言い訳し、アルバートを連れてトイレから出ていく。もし、アルバートに男性との逢引がバレたらどんなことになるか…。ジョージーナは想像するのも恐ろしかった。
映画『コックと泥棒、その妻と愛人』のあらすじ【承】
金曜日。いつものように、アルバートがジョージーナと部下を連れて、オランデールにやってくる。あの男性もいつもの席に座り、ジョージーナの様子を伺っていた。ジョージーナと男性は、示し合わせて席を立ち、今日は調理場へ入っていく。ジョージーナに好意的なリチャードは、調理場の奥の食料貯蔵室に2人を隠してくれる。
ジョージーナと男性は食料貯蔵室で逢瀬を楽しむ。途中でアルバートが探しにきたが、リチャードがうまく誤魔化して、2人を逃がしてくれた。ジョージーナが先回りして席に戻っていると、アルバートが帰ってきて、彼女に甘え始める。酔っ払ったアルバートは、子供が欲しかったと嘆いていた。
帰り、アルバートは本を読んでいる男性に嫌がらせをして、皿洗いの少年をいじめる。ジョージーナは少年をかばってアルバートの怒りを買い、駐車場で折檻される。アルバートは、ジョージーナと少年を車の中に押し込み、泣きわめく少年の前でジョージーナを犯す。
土曜日。リチャードの手引きで、ジョージーナは男性と逢瀬を楽しむ。昨夜のアルバートの暴力により、ジョージーナの顔や体には、ひどいアザができていた。
アルバートが騒ぎ出したので、ジョージーナと男性は急いで席に戻る。アルバートは、本を読んでいた男性を自分たちの席に連れてきて、ジョージーナの隣に座らせる。この時初めて、ジョージーナは男性がマイケルという名前だと知る。アルバートに話をするよう促されたジョージーナは、3度も流産して子宮がダメになったことを暴露し、アルバートの怒りを買う。アルバートは、調理場にジョージーナを連れ込み、ひどい暴力を振るう。
映画『コックと泥棒、その妻と愛人』のあらすじ【転】
日曜日。アルバートは友人のボスとその家族をオランデールに招待し、レストランで騒いでいた。そのボスは、アルバートの部下のコリーが連れてきたパトリシアという売春婦を気に入り、調理場の外へ連れ出す。その時、パトリシアはジョージーナとマイケルの浮気現場を目撃する。ジョージーナとマイケルは、いつものように食料貯蔵室で愛し合っていた。この日のアルバートはいつも以上に荒れており、オランデールに踊り子を呼んで、他の客を追い出してしまう。
月曜日。アルバートは、昨夜、パトリシアが自分の友人に失礼な態度を取ったことを怒っていた。アルバートに罵られたパトリシアは、怒りに任せてジョージーナの浮気を暴露してしまう。アルバートは怒り狂い、ジョージーナとマイケルを探し始める。
騒ぎを聞きつけたリチャードは、全裸のジョージーナとマイケルを冷凍庫に隠し、2人を守ろうとする。アルバートは狂ったように暴れまわり、「見つけたら殺して食ってやる!」と叫んでいた。リチャードは、アルバートが駐車場に停めっぱなしにしていたトラックの荷台にジョージーナとマイケルを乗せ、2人を逃がす。ジョージーナとマイケルは、マイケルが書庫にしている古いアパートに身を隠す。
火曜日。皿洗いの少年が、書庫に食事を届けにくる。ジョージーナは、マイケルと幸福な時間を過ごしていた。その帰り、皿洗いの少年はアルバート一味に捕まり、2人の居場所を吐くよう脅される。皿洗いの少年はひどい拷問を受けて瀕死の状態になるが、2人の居場所は話さなかった。しかし、アルバートは少年が持っていた本を頼りに、書庫の場所を突き止めていた。
水曜日。リチャードから、皿洗いの少年が病院に運ばれたことを聞いたジョージーナは、少年を見舞いにいく。何とか命は助かったが、少年の受けた傷はひどいものだった。
その頃、書庫に残っていたマイケルは、アルバートの一味に捕まり、恐ろしい拷問を受けていた。アルバートの部下のミッチェルは、命じられるままにマイケルを痛めつける。マイケルは、人相がわからなくなるほどの拷問を受け、酷い姿で惨殺される。書庫に戻り、マイケルの惨殺死体を見つけたジョージーナは、血まみれのマイケルを綺麗にしてやり、彼の隣で眠る。
映画『コックと泥棒、その妻と愛人』の結末・ラスト(ネタバレ)
木曜日。マイケルの死体の隣で目覚めたジョージーナは、涙を流しながらマイケルに語りかける。ジョージーナは、アルバートからどんな仕打ちを受けてきたかを打ち明け、「すべて終わりにしましょう」とマイケルに誓う。
ジョージーナはオランデールを訪れ、リチャードに「マイケルを料理して欲しい」と頼む。さすがのリチャードも、それだけは絶対に嫌だとジョージーナの申し出を断る。リチャードは、ジョージーナが愛するマイケルを食べるのだと思っていた。しかし、ジョージーナがアルバートへの復讐のためにマイケルを料理して欲しがっているとわかり、彼女の願いを叶えてやることにする。
金曜日。オランデールには「臨時休業」の張り紙がしてあった。そこへ、ジョージーナからの招待状を受け取ったアルバートがやってくる。美しくドレスアップしたジョージーナは、困惑するアルバートをイスに座らせ、「今夜はあなたの記念日になるのよ」と告げる。そして、リチャードとレストランの従業員一同が、アルバートのための特別料理を運んでくる。巨大な皿に乗せられた特別料理には、白い布がかけられていた。
ジョージーナが白い布をめくると、マイケルの丸焼きが姿を現す。従業員はアルバートの銃を奪い、ジョージーナに渡す。ジョージーナは、驚いて逃げようとするアルバートに銃口を向け、イスに座らせる。「食べなさい」と命じられ、アルバートは震える手でマイケルの丸焼きにナイフを入れる。恐る恐る肉を口に運んだアルバートに、ジョージーナは「ボナペティ(めしあがれ)」と声をかけ、アルバートの胸を撃ち抜く。ジョージーナは、床に倒れて絶命したアルバートを「人食い」と罵り、この恐ろしい復讐劇を終了する。
映画『コックと泥棒、その妻と愛人』の感想・評価・レビュー
芸術性の高い監督して知られているピーター・グリーナウェイ監督、納得のできる作品です。
レストランのシーンは横一線に並び、場面が横に横に移動して、まるで舞台のお芝居を観ているかのようです。
映画の中の色も特徴的で、シーンごとにテーマカラーが設けられています。
その世界観がそれぞれの思惑、欲望を際立たせてくれます。
ティム・ロスといえば「レザボアドッグス」のオレンジ役が印象的ですが、この残虐な手下役は本当に最高。(女性 40代)
暴力的で常識のない泥棒の夫に罵られ続けた妻が衝撃的な復讐を果たす今作。まず、泥棒として稼いだ金でレストランを経営するという設定がかなり無理がありますが、そこで出される美味しそうな料理は心が踊りました。
夫から逃げ出したい妻を演じたのはヘレン・ミレン。最近の彼女しか知らなかった私は、若い頃から演技力のある素晴らしい女優だったのだと驚きました。ラストシーンで見せた、彼女の「ボナペティ」が何よりも怖かったです。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー