映画『ミスター・ノーバディ』の概要:2092年の世界では科学が発達し、人は不死となった。ニモ・ノーバディは“人類最後の死ぬ人間”として、人々の注目を集めた。だが、118歳のニモは記憶が混乱し、過去を思い出すことができなかった。果たしてニモは、どんな人生を歩んできたのだろうか?
映画『ミスター・ノーバディ』の作品情報
上映時間:137分
ジャンル:ファンタジー、ヒューマンドラマ
監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
キャスト:ジャレッド・レトー、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、リン・ダン・ファン etc
映画『ミスター・ノーバディ』の登場人物(キャスト)
- ニモ・ノーバディ(大人:ジャレッド・レト / 15歳:トビー・レグボ / 9歳:トーマス・バーン / 5歳:ノア・デ・コスタンツォ)
- 118歳。本名不明。ノーバディとは“誰でもない”という意味。クラフトと呼ばれることもある。クラフトとは“過去が思い出せない”の略。“人類最後の死ぬ人間”として、人々の注目を集める。記憶が混乱しており、過去を正確に思い出せない。
- エリース(大人:サラ・ポーリー / 15歳:クレア・ストーン)
- ニモと結婚したかもしれない相手。ニモと結婚後3人の子宝に恵まれる。15歳の頃から精神的に不安定なところがあったが、大人になるとそれが顕著になり、鬱病を発症して塞ぎ込むことが多くなる。
- アンナ(大人:ダイアン・クルーガー / 15歳:ジュノー・テンプル / 9歳:ローラ・ブリュマーニュ)
- ニモと結婚したかもしれない相手。ニモの母親の不倫相手の娘。15歳の頃に付き合うようになるが、父の仕事の都合で離れ離れになる。
- ジーン(大人:リン・ダン・ファン / 15歳:オードリー・ジャコミニ)
- ニモと結婚したかもしれない相手。ニモがエリースに失恋した後、パーティー会場で出会った。2人の子宝に恵まれ、ポールとマイケルと名付けられる。だが、自分がニモから愛されているか分からず、不安を抱くようになる。
映画『ミスター・ノーバディ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ミスター・ノーバディ』のあらすじ【起】
ニモはフェルドハイム医師と対面した。毎週会っているのに、ニモには医師の記憶がなかった。ニモの名は「ニモ・ノーバディ」。ノーバディとは“誰でもない”という意味だった。また、ニモはクラフトと呼ばれることもあった。クラフトとは“過去が思い出せない”の略だった。ニモは自分のことを34歳だと思っていたが、実際は違った。フェルドハイム医師はニモに1枚の新聞を見せた。そこには「2092年2月9日 人類最後の死ぬ人間118歳に」と書かれ、ニモの顔写真が掲載されていた。ニモは激しく取り乱し、夢から覚めなければと喚いた。
ニモが目を覚ますと、青年の姿に若返っていた。結婚して妻がおり、子供がいた。だが、玄関のポストに入れられた写真には、別の妻と子供と一緒に写る自分の姿があった。ニモは戸惑いながら、傍にいた子供に“ポール”と呼びかけた。だが、ポールじゃないと言われる。ニモは戸惑いながら、誰かに呼ばれる声で目を覚ました。ニモは妻のエリースの名を呼びかけるが、目の前にいたのは別の女性(ジーン)だった。
ニモは“人類最後の死ぬ人間”として、テレビで特集された。だが、ニモの過去は誰も知らなかった。記憶が混乱しており、彼自身でさえ分からないのだ。人々はそんなニモの過去に興味を持っていた。フェルドハイム医師は催眠術を使い、ニモの記憶を蘇らせようとした。
記者の男は知り合いの看護婦に頼み、ニモの病室を訪れた。記者の男は人類が不死になる前の世界を知りたかったのだ。現在生きている人間は、細胞のテロマー化(永久再生)によって不死となった。ニモは初めインタビューを拒んでいたが、昔を懐かしみながら、空気を汚す車が走っていたことや、恋に落ちて体を求め合ったことなどを話した。しかし、記憶が混乱しており、ニモは先程聞いたにも関わらず、再び現在の時刻を記者の男に質問した。
映画『ミスター・ノーバディ』のあらすじ【承】
時間は戻すことができないため、人は正しい選択をしないといけないと悩む。でも、選択をしなければ、全ての可能性は残るのだ。ニモがアンナと結婚するのか、エリースと結婚するのか、ジーンと結婚するのか、選択肢は多様にある。
9歳のニモはアンナに惹かれつつあったが、自分の母とアンナの父(ハリー)の浮気現場を目撃してしまう。それから、ニモの両親は喧嘩するようになり、別れることになった。ニモは母について家を出るか、父と共に家に残るか選択を迫られる。老年のニモは、父と残ったのか母について行ったのか思い出せなかった。
ニモは母について行った。あれから月日が流れ、ニモは15歳になった。ニモの母とハリーの関係はまだ続いており、ニモを交えて会食をすることもあった。ニモはハリーに良い感情を抱けず、車で事故を起こすと予言めいたことを伝え不安にさせた。母はニモを叱り、父と残ればよかったのにと罵った。鬱蒼とした日々を過ごしていると、ニモの学校にアンナが転校してくる。だが、ニモはアンナと上手く接することができず、海に泳ぎに行こうと誘ってくれたのに“バカとは泳げない”と断ってしまう。
大人になったニモは駅でアンナと偶然再会する。アンナは子供を連れていた。ニモは幼い頃にアンナに言ってしまった言葉を後悔した。時間は遡り、15歳のニモはアンナに海に泳ぎに行こうと誘われる。ニモは正直に、カナヅチで泳げないことを話した。アンナはニモのことを笑うことなく傍にいた。それから、ニモは母からハリーの娘だとアンナを紹介され、一緒に暮らすことになる。ニモとアンナは、両親に隠れて恋をした。
15歳のニモは父と共に家に残った。父は体が上手く動かず、風呂の世話もニモが行っていた。ニモは放課後バイトをし、家計を助けた。母からハガキが送られてきても、ニモは見ようともしなかった。ニモは普段から貯め込んでいる鬱憤を、夜道をバイクで叫びながら走ることで発散させた。そして、父が眠った後、密かに小説を書いた。
ニモがクラブに行くと、失恋して傷ついていたエリースに声を掛けられる。ニモはエリースのことが誰か分からず戸惑った。すると、エリースから小さい頃に近所に住んでいたことを教えられる。ニモは不器用ながらもエリースを慰め、キスをした。しかし、エリースは“自分はいい子じゃないから”とニモを拒み、去って行ってしまう。
映画『ミスター・ノーバディ』のあらすじ【転】
フェルドハイム医師は老年のニモに、“思い出せ”と繰り返し伝えた。15歳のニモは母と共に暮らし、アンナと思いを通じ合わせていた。また、父と共に残ったニモは、エリースに手紙を書いていた。ニモが手紙を届けに行くと、エリースはボーイフレンドと家から出て来た。ショックを受けたニモはバイクを走行中に事故を起こしてしまう。ニモは病院で治療を受けるが、指も動かせない状態になった。ニモは必死に事故を起こす前に戻れと念じ、エリースに手紙を渡して愛していると告白した。しかし、好きな人がいるから無理だと断られる。
失恋したニモは、最初にパーティーでダンスを踊った相手と結婚することを決める。その相手はジーンだった。ニモはジーンと結婚し、生まれてきた子供にポールとマイケルと名付けた。しかし、ニモの書いた手紙を見たジーンは、ニモの愛情を疑っていた。その手紙には「ここまで努力してきたが、今の僕はひどく退屈だ。一体僕はまだ生きてるのか?」と書かれていた。だが、ニモにはその手紙を書いた記憶がなかった。ニモはろうそくの火に手を翳すが何も感じなかった。熱さを感じたのは、アンナと共にいる15歳のニモだった。その日、ニモは母とハリーから別れることを告げられる。アンナは既に知っていたが、ニモと離れるのが嫌で言えなかったのだ。アンナは父の仕事の都合で引っ越すことが決まっていた。大人になったニモは、今でもアンナのことが忘れられず、偶然の再会を求めていた。それは、アンナも同じだった。
15歳のニモは、エリースに告白を断れる前に、再度愛していると思いを伝えた。大人になった2人は皆から祝福され、結婚した。3人の子供に恵まれたが、エリースは鬱病で防ぎこむことが多かった。ニモは必死に子供達の相手をしながら、泣き叫ぶエリースの看病をした。ある日、家で娘の誕生日会が開かれた。誕生日を忘れていたエリースは母としてしっかりしなければと思い、ベッドから起きるとパーティーを盛り上げた。その日、ニモ達家族は仲良く川の字で眠った。
大人になったニモは駅で偶然アンナと再会する。2人は失った時間を取り戻すかのように体を求め合い、愛し合った。しかし、アンナは再びニモを失うことを恐れており、心を落ち着かせるための時間を必要としていた。アンナはニモに電話番号を渡し、2日後に会う約束をして去って行った。だが、ニモが受け取ったメモは、空から降って来た雨に濡れて滲んでしまう。老年のニモはアンナに会うために手がかりを失っても、毎日待ち続けたことを記者の男性に話した。
映画『ミスター・ノーバディ』の結末・ラスト(ネタバレ)
フェルドハイム医師は老年のニモに、“思い出せ”と繰り返し伝えた。大人になったニモはエリースと結婚した。2人は幸せな気持ちに包まれたまま、車に乗り込み移動した。しかし、目の前に止まっていたガスタンクを乗せた車が、突如爆発事故を起こす。ニモは顔面に酷い怪我を負い、エリースは亡くなってしまう。老年のニモから話を聞いた記者は、エリースが亡くなったのか生きているのか分からず戸惑った。しかも、今の話では子供達も誕生していなかった。
ニモはベッドで泣いていたエリースに声を掛けた。すると、エリースから15歳の頃に片思いをしていた男性のことが忘れられないと言われる。それと同時に、エリースはニモに捨てられることを恐れていた。ニモはエリースのことを抱きしめ、慰めることしかできなかった。その後、エリースは家を出て行った。
ニモは車ごと池の中に落ちてしまう。だが次の瞬間、ベッドの上で目を覚ました。外に出ると飛行機が、「目を覚ませ」というメッセージを携えて飛んでいた。ニモは母に会いに行くが、あなたなんて知らないと拒まれる。そこには、自分とは違う息子の姿があった。ニモは訳が分からないまま、外に飛び出した。すると、自分の名を呼ぶ声が聞こえてきた。その方角を向くと、「ニモ 電話しろ」というメッセージと共に、電話番号のパネルが山に掲げられていた。ニモはその番号に電話を掛けるが、いたずら電話に間違われてしまう。仕方なくその電話番号の住所を調べた。
ニモが家に行くと、そこは廃墟だった。中に侵入すると、埃に埋もれたDVDがあった。再生すると、70年後の自分の姿があった。老年のニモはDVDを見ているニモが“こっち側”にいないため、2092年の2月12日の午前5時50分まで生きなければならないと話した。DVDを見ているニモは訳が分からず戸惑った。
記者は老年のニモの話が矛盾点ばかりだったため戸惑った。結局、ニモの話はどれが真実なのか分からなかった。しかし、ニモ自身はどの人生も真実だと譲らなかった。ニモが話した内容の中では、ニモは池の中で死んだり、殺し屋に殺されてしまうこともあった。記者が困惑していると、ニモは記者自身も9歳の少年の想像しか過ぎないのだと伝えた。両親に選択を迫られた少年が生みだしたというのだ。記者がニモに呼ばれて外を見ると、世界が崩れて更地になった。9歳のニモは両親のどちらも選ばず、森に向かって走った。そして、1枚の葉っぱを空に飛ばした。
老年のニモはアンナの名を呟きながら息を引き取った。死亡した日は、2092年の2月12日の午前5時50分だった。
映画『ミスター・ノーバディ』の感想・評価・レビュー
『トト・ザ・ヒーロー』のジャコ・ヴァン・ドルマル監督の、いわゆるif系の映画です。人類最後の死ぬ人間となった男の人生を辿ります。“もしあの時こうしていたら”という人生の分岐点を、回想と空想で繰り返す不思議で独特な作品でした。
SFよりの設定ではありますが、ヒューマンドラマの要素が強かったです。
おそらくは、難解さと独特過ぎる構成に寝落ちする方が続出するであろうと思います。眠れない夜に観るのも良いかもしれません。
神秘的な絵画を鑑賞した気分になる個性的な作品でした。(女性 20代)
本作は、人間が不死を手に入れた2092年の世界で、最後に死を迎えることとなった118歳のニモが、病床でこれまでの人生の様々な分岐点となったシーンを振り返るというファンタジーヒューマンドラマ。
時間軸を移動させるパラレルワールドのような仕掛けや、2092年の白を基調とした空間、しっかりと作り込まれた世界観は物語としても芸術的にも素晴らしい。
科学や哲学、心理学といった要素が混ざっていて、いろんな角度から楽しめる作品。(女性 20代)
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