映画『少年メリケンサック』の概要:レコード会社の新人発掘担当のかんなは、インターネットで見つけた“少年メリケンサック”というパンクバンドをスカウトする。しかし、バンドは25年前に解散しており、メンバーも中年となっていた。宮藤官九郎監督作品。
映画『少年メリケンサック』の作品情報
上映時間:125分
ジャンル:コメディ、青春
監督:宮藤官九郎
キャスト:宮崎あおい、木村祐一、勝地涼、田口トモロヲ etc
映画『少年メリケンサック』の登場人物(キャスト)
- 栗田かんな(宮崎あおい)
- メープルレコードの契約社員。新人発掘担当だが、過去に発掘した新人は全て時田に却下されている。実家は回転寿司屋。マサルを部屋に住まわせている。少年メリケンサックをスカウトしたが、パンクは好きではない。
- 作並秋夫(佐藤浩市)
- 少年メリケンサックのベース。春夫の兄で、バンドのリーダー。口が悪く、かんな相手に平気で下ネタを言う。バンドの復活を喜んでおり、人目を気にせずにやりたいことを貫く。
- 作並春夫(木村祐一)
- 少年メリケンサックのギター。秋夫の弟。バンドが解散した後、実家の酪農業を継いだ。秋夫とは違い真面目で大人しい性格だが、対バン相手に喧嘩を吹っ掛け警察沙汰になる。
- ジミー(田口トモロヲ)
- 少年メリケンサックのボーカル。25年前の解散ライブで負傷した。足腰が弱く、復活時には車いすで移動していた。まともに喋ることができない。
- ヤング(三宅弘城)
- 少年メリケンサックのドラム。あだ名の由来は、メンバーの中で一番若かったから。普段から筋トレをしており、ジミーを背負って移動する。
- スガマサル(勝地涼)
- かんなの彼氏。売れないシンガーソングライター。頻繁にバイトを辞めており、今は牛丼屋で働いている。
- 時田英世(ユースケ・サンタマリア)
- メープルレコードの社長。若い頃にパンクバンドを組んでおり、そのバンドのCDリリースのために会社を立ち上げた。
映画『少年メリケンサック』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『少年メリケンサック』のあらすじ【起】
レコード会社の契約社員のかんなは、契約が切れることを機に実家の回転寿司屋を手伝うつもりでいた。ある日、かんながインターネットで見つけた“少年メリケンサック”というパンクバンドを時田に紹介したところ、かんなの契約を延長してもらえることになる。
かんなはスカウトをするために、少年メリケンサックのホームページから秋夫に連絡を取る。大衆居酒屋で秋夫と待ち合わせしたかんなは、動画とは年のかけ離れた秋夫に衝撃を受ける。そして、バンドは25年前に解散しており、動画は1983年の解散ライブの映像だと説明される。
会社のホームページに載せたライブ動画に問い合わせが殺到し、時田は全国ツアーを企画する。バンドとの契約ができなければクビになってしまうカンナは、秋夫の要望を受けオリジナルメンバーである春夫を説得しに行くが断られてしまう。
少年メリケンサックを若手バンドだと勘違いしたままの時田は、ホームページが10万アクセスだとかんなにメールを送る。かんなは“嘘を裏切る奇跡”という秋夫の言葉を信じ、スタジオを予約することにする。
映画『少年メリケンサック』のあらすじ【承】
ツアー初日まで2週間。秋夫はジミーとヤングに声を掛け、3人はスタジオで練習を始める。25年ぶりに集まった3人の演奏はお世辞にもうまいとは言えず、かんなは言い訳を始める秋夫達に激怒する。遅れてやってきた春夫が練習に加わり、かんなはツアーを強行することにする。
ツアー初日、名古屋。かんなはライブ本番までメンバーが中年であることを隠すことにしていた。挨拶のために楽屋に入ろうとする時田を客席へ追いやり、満員のライブハウスではメリケンサックコールが始まる。しかし、メンバーが登場し照明が明るくなると客席からのブーイングが起こる。
ライブの途中で逃げ出したかんなは、大衆居酒屋で酔っ払って寝ていた。時田からの電話で起こされ、かんながライブハウスに戻ると秋夫と春夫が喧嘩をしていた。真実を知って憤慨した時田は、ツアーが終わったらバンドとかんなの契約を破棄すると言って出て行く。
キャンセル料が発生するためツアーを止めることもできず、バンドは次の公演に向けて大阪へ移動する。マサルは自身の岡山でのライブに前乗りし、大阪でかんなとデートする約束をする。
映画『少年メリケンサック』のあらすじ【転】
大阪。時田が急遽ブッキングした人気バンドGOAと対バンをすることになる。かつての少年メリケンサックを知っていたGOAのメンバーは対バンを喜ぶが、ライブ終了後に過去の栄光だと陰口を叩く。それを聞いていた春夫がGOAのライブに乱入し、乱闘騒ぎとなる。
騒ぎのせいでマサルとのデートに行けなかったかんなは、広島に向かう途中でツアーを抜け出してマサルのライブを見に行く。しかし、かんなはマサルの曲の良さがわからなくなっていた。タクシーで広島に向かったかんなは、ライブハウスに急ぐ。少年メリケンサックのライブは初日より良くなっており、観客も盛り上がっていた。
かんなは少年メリケンサックのアルバムを出すべきだと思うようになる。しかし、曲を作った春夫から本当の歌詞を教えられ、どこのレコード会社からもリリースは無理だと判断する。
仙台公演の前に東京の自宅に戻ったかんなだったが、マサルがバイトの後輩を部屋に連れ込んでいた。マサルが彼女と別れたと言っていたことを知り、かんなは言い訳を続けるマサルのギターを床に叩きつけて別れることにする。
映画『少年メリケンサック』の結末・ラスト(ネタバレ)
秋夫と春夫の地元である仙台を訪れ、秋夫は死んだと聞かされていた父親の墓参りに行く。しかし、それは春夫の嘘だった。一方、少年メリケンサックは生放送の報道番組への出演が決まる。
ライブ中に楽器で殴り合った秋夫と春夫が腕に怪我を負い、病院のロビーでかんなは大人気ない2人に憤慨していた。ヤングは泣きながら2人を説得し、ちゃんとした活動をしようと訴える。いままでまともに喋らなかったジミーだが、すらすらと会話に参加し他のメンバーを驚かせる。
仙台から車を走らせ、かんなは1人で東京に戻った。新しいギターで弾き語りをするマサルを押さえつけ、バリカンでマサルの髪を切り始める。かんなはマサルをベーシストとしてバンドに加入させ、右手を負傷した秋夫と左手を負傷した春夫は2人で協力してギターを演奏することにする。
生放送が始まり、時田は少年メリケンサックの演奏に興奮する。しかし、いままでジミーの活舌が悪いせいで“ニューヨークマラソン”と聞こえていた部分は、本当は“農薬飲ませろ”という歌詞だった。怒り始めた時田を見て、かんなは逃走する。
放送後、かんなは実家の回転寿司屋で働きながら、少年メリケンサックの活動を手伝うことにする。
映画『少年メリケンサック』の感想・評価・レビュー
安定の宮藤官九郎脚本・監督による音楽愛のあるコメディー映画。
伝説のパンクバンドが中年になって甦るサクセスストーリーは笑って泣けるものがあり、
中年バンドマン達と、宮崎葵演じるレコード会社の契約社員の栗田の心が通っていく過程も面白い。
バンドをテーマにしている映画であるだけに、実在するミュージシャンの出演も見逃せない。過去のバンドシーンでは、ボーカルを銀杏BOYSの峯田和伸が演じ、さすがのライブシーンを魅せている。
また星野源が劇中でアジカン風のバンドのギターボーカルを演じている。
木村祐一や佐藤浩市にボコボコにされるシーンは今では見れないような、名シーンの一つだろう。
背の高い佐藤浩市がベースを持つと本当に様になっていてカッコイイ。
子供達が中指を立てながら『撲殺!』と連呼するシーンは不謹慎かもしれないが何度見ても笑ってしまう。(女性 30代)
さすが宮藤官九郎作品、個性が暴れ回っている映画だった。
宮崎あおいの突き抜け具合が素晴らしい。ここまで振り切れる女優だとは思わなかった。宮崎あおいは静かな役のイメージが強かったが、今作のようなコメディの役も、全て完璧に演じることができるということは、新発見だった。
その他にはやはり佐藤浩一が目立っていた。三谷幸喜作品でコメディを演じることはあるが、ここまではじけている佐藤浩一は初めて見た。俳優陣の気合が存分に感じられる映画だった。(男性 20代)
宮崎あおいさんの演技が最高におもしろくて、可愛い。大げさに驚いている姿とか、顔を歪めて嘆き悲しんでいる表情とか、他の作品では見られない振り切った宮崎あおいさんの演技が楽しめる。バンドマンで口の悪い佐藤浩市さんが見られるのも貴重だと思う。キャストそれぞれが全力で作品に向き合っているのが伝わってくる作品だった。
宮藤官九郎が監督&脚本を担当しているだけあり、笑える要素がテンコ盛りだった。それに、主人公のかんなが一生懸命頑張る姿に、元気をもらえた。(女性 30代)
めちゃくちゃ笑いました。宮藤官九郎監督作品にハズレはありませんが、今作は比較的ベテランの俳優陣が揃っているためあまり期待していませんでした。しかし、それを裏切る面白さ。少年メリケンサックのメンバーが個性的すぎて、どこでも喧嘩するし、ガキっぽいしバカバカしいのに見てしまう、本当にクセになる作品です。
ジミーの「農薬飲ませろ」のところは涙が出るほど笑いました。銀杏BOYZの峯田などかなり豪華なキャストがチョイ役で出ているのも見どころです。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
最初の宮崎あおいの変顔と、ブルーの飴で青くなった口とソーセージを貪るシーンが印象的なこの作品。
よく見ると、彼女の頭に歯ブラシが刺さっていたりで、更に笑いをさそう。
バンド内で唯一の常識人と思われたハルオも、実はかなりの毒舌だったり、焼き飯とチャーハンの違いにこだわるアキオとハルオも面白い。
また、田辺誠一が演じるTELYAの「アンドロメダおまえ」という曲と意味がわからない行動は、何度見ても笑ってしまう。
実際にパンクバンドとして活動している、銀杏BOYZのアイドルシーンは貴重なものになっている。
映画公開前には、スピンオフドラマ「少年メリケンサックを探せ!」が放送されており、DVD化もされていて、映画本編と併せて見ても面白いだろう。
①絶妙なキャスティング
音楽好き、特にロックやパンクが好きな目線から見ると、豪華な脇役やインタビュー相手が揃っている。
ジミー役の田口トモロヲと、25年前のジミー役の峯田和伸は、他の田口が製作陣として関わる映画に出演することが多く、そういった部分のキャスティングには、知っている人にとっては嬉しくなるものだ。
また、峯田がフロントマンの銀杏BOYZというパンクバンドの、他のバンドメンバーがちょい役で出演しているのも、知っている人には面白さを感じるものだ。
真面目な役やヒロインが多い宮崎あおいだが、すぐに変顔をしたり、ハルオに牛糞を投げつけられたり飲んだくれて嘔吐したばかりの中年に絡まれるような、変わった役を演じている。
佐藤浩市演じるアキオは適当なことを言っているようで、どこか説得力を与える変な中年役で、25年前のアキオ役の佐藤智仁とはよく似ていて、キャスティングの上手さを感じる。
②汚さと面白さは紙一重
パンクを知らない場合でも、「パンクって一体なんなの?」というかんな目線から、パンクの面白さを感じることができる。
だが、音楽に全く興味が無い方にとっては、面白味が半減してしまう作品だろう。
音楽に対して軽く接していたかんなが、車の中で平気でオナラをし、セクハラ発言も多い中年メリケンサックに振り回されていくうちに、パンクなんか大嫌いだけど面白い!と成長していく。
だが、ぎりぎりのセクハラ発言や嘔吐物をヒゲにつけたシーン、少年メリケンサックの「ニューヨークマラソン」の本当の歌詞は、大きな声で言えるものではなく、笑いと放送できないものは紙一重だと感じられる。
人によっては嫌悪感を感じる部分も多いだろう。
かんなが彼氏のマサルの歌の下手さに気がつく場面は、下手な歌の歌詞とかんなの行動がピッタリあっていて、素晴らしい演出になっている。
二人でギターを弾く羽目になったアキオ、ハルオ兄弟と、無理やりバンドのベーシストにさせられたマサルの髪型も、半分ずつという点ではよく出来ている。
売れっ子アーティストのTELYAの存在感や歌は、独特すぎて笑えるものがあるが、これが売れているのが謎に思える、設定のいい加減さもある。