映画『母なる証明』の概要:2009年の韓国映画。日本でも韓流ブームの火付け役となった四天王の1人、ウォン・ビン主演による知的障害者の息子の事件を描いた社会的問題作である。
映画『母なる証明』 作品情報
- 製作年:2009年
- 上映時間:129分
- ジャンル:サスペンス
- 監督:ポン・ジュノ
- キャスト:キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン etc
映画『母なる証明』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★★☆
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映画『母なる証明』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『母なる証明』のあらすじを紹介します。
とある静かな街。
ここで漢方を売りながら鍼治療をして、細々と暮らしている母と息子トジュン(ウォン・ビン)がいた。
息子には知的障害があり、難しい話は理解できなかった。
ただ小さい頃から母親にバカと言われたらやり返せと教え込まれていたため、その言葉だけは許せずきれてしまっていた。
ある夜、トジュンが酒を飲み帰宅している途中に、女子高生のアジョンが歩いているのを見かけた。
翌日、アジョンが他殺体で発見され、目撃証言からトジュンが逮捕されてしまう。
息子を信じ溺愛している母は、無実を証明するために独自で捜査を開始。
調べていくとアジョンは援助交際をしていたことが判明する。
そしてアジョンの携帯を彼女の祖母から借りた母は、トジュンが思い出したという記憶に残る男性の写真を発見した。
それは町外れの廃品回収業のおじいさんだった。
ボランティアを装い、男性のもとへ向かった母。
そこで衝撃的な事実を聞かされる。
事件の夜、アジョンに声をかけたトジュンは、彼女からバカと暴言をはかれ石を投げられた。そこでかっとなったトジュンが石を頭に投げつけたのだという。
その事実にショックをうけた母は男性を撲殺し、家に火をつける。
やがて真犯人だと警察が判断した人物が逮捕された。
本当は違うと知りながらも何も言わない母。
その後何ごともなく過ごし、町内の慰安旅行に出かける母の見送りにきたトジュンは焼け焦げた母の商売道具でもある鍼治療の道具を渡す。
廃品業者の男性の家の焼け跡から拾ったのだという。
動揺を隠せない母だったが、バスの中で全ての嫌な記憶を忘れるツボを針で刺すのだった。
映画『母なる証明』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『母なる証明』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
暗く重いテーマ
全体的に映像が暗い映画である。
韓国映画のサスペンスは比較的暗いものが多く、俳優の心情をうまく描いていることが多い。
本作もその手法で撮影されていて、知的障害のある息子を溺愛するがあまり間違った方向に進んでいく母親の運命を重く、暗く描いている。
母の愛情深い物語にはなっているがこれが本当に親として正しいのかを考えさせられる作品であり、韓国でも社会問題作として扱われている。
このジャンルの映画は韓国のお得意分野とも言える。
このような薄暗い心の闇はリアルで、よりミステリアスに展開させるのは非常に上手い国である。
衝撃的なラスト
ドラマでは何度か「嫌なことを忘れるツボ」という鍼治療の話が出てくる。
息子が犯人だと聞いて男性を殺してしまった母親が、息子に鍼道具を渡され動揺した結果そのツボに鍼をさすというラスト。
真犯人まで冤罪で逮捕させておいて、事実を言わない母。
その嘘に一生苦しまないといけない大きすぎる過ちを、彼女は忘れるという選択肢を選んでしまった。
あまりに罪が重く、あまりに身勝手なラストシーンに憤りを感じてしまった。
トジュンは気がついていたのか?
男性の家の焼け跡で母親の鍼道具を見つけたトジュンだったが、本当は気がついているのかいないのかわからないラストシーン。
気がついていたら殺人のことも覚えているだろう。
本当の彼の頭の中を思わず疑ってしまうような内容であり、何が本当だったのかわからない構成となっている。
そこが見ていてミステリアスであり、心に重くのしかかる。
最後は鑑賞者が決めてくれと言わんばかりのラストは、すかっとしない後味の悪いものである。
もう1度は見たくない部類の映画であった。
母親なら誰しも子供を守りたいと思うのは当然だろう。その人間の性質と、社会の仕組みの矛盾に斬り込み、タブーにまで踏み込んでしまうポン・ジュノ監督の視点の強さとアイデアにため息が出る。
本作は、『パラサイト』のような2段構成になっていて、一筋縄では行かないストーリー展開に終始息を呑むことになる。トジュンの最後の表情はどこかゾッとして、犯行の有無をあやふやにする監督の意図なのだろうか。母のダンスのシーンも独特で印象的だ。(女性 20代)
ポン・ジュノ監督の作品は見終わった後、嫌な気持ちになる独特の後味(しかも癖になる)が特徴だと思っているのだが、この作品はその筆頭。しかも、見終わって後悔はなく、同じような感覚に突き落としてやろうと人にも勧めたくなる衝動に駆られる。
まず冒頭の奇妙な母親の踊り。一体何の意味がと思って見ていると映画のラストシーンで再び出てくる時には、全く違う印象を受ける仕掛け。じわじわと不安が広がり、視聴者に「ああ、そういうことだったか」から一歩進んで「そんな選択しちゃう?」まで気持ちを振り回してくれる素晴らしい作品だ。(男性 30代)
たいていの母親は息子を溺愛しているだろうけれど、この母親には共感できない。というか共感したくないと思った。でもこうなってしまう母親は少なくないような気もする。愛情なのか執着なのか、何なのだろうと考えさせられた。
息子のためになりふり構わず突っ走るパワーには圧倒される。結局、親子で同じ罪を犯してしまう愚かさがなんとも言えなかった。
観ていて苛立ちすら覚えるのに引き込まれる、不思議な作品。ウォンビンが美少年すぎて余計に愚鈍さが際立つところも、面白いなあと思った。(女性 40代)
映画『母なる証明』 まとめ
近年、日本も含めアジアの映画界が注目されている。
大胆でスケールの大きい映画を製作する欧米に比べ、心情に敏感で人情味のある映画を制作するアジアの魅力が最近話題となっているからである。
四季があり小さいながらも彩鮮やかな国で制作された映画は趣があり、人を軸にした映画を作りやすい。
国土がない分、登場人物の内面をより丁寧に描くことができるのかもしれない。
本作はたまたまテーマが重くサスペンス風味の映画であったが、心情をゆっくり丁寧に映画いていることでより不安感や恐怖感を覚えさせられた。
身近では考えにくい事件ではあるが、そのくせリアルである。
ウォン・ビンのさすがの演技力がなお一層ドラマティカルにしていることもあり、流行りの韓流映画とは一味違う本物となっている。
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